小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

石井ゆかり『選んだ理由。』-何に縛られるかを選ぶ-


僕達はどうやって生きていけばいい?

石井ゆかり『選んだ理由。』(ミシマ社 2016年)の話をさせて下さい。


シンプルな表紙。

【概要】
インタビュイー(インタビューを受ける人)についての情報を一切開示されない状態で、
様々な職で生きている人々にライター・石井ゆかりがインタビュー(通称:闇鍋インタビュー
すると、どうして今の仕事についたのか、その生き方を選んだのか・・・
浮かんできたのは、選んだ理由。

【読むべき人】
・自分の生き方を変えたい、考えている人
・変った生き方をしている人へのインタビュー録を読みたい人
何かはじめたいと思っている人

【感想】

僕がこの本を手にしたのは、某駅前にあるタリーズである。
そこの店舗は店長が本好きなのか、
本の貸し借りを行っていて
(以前 星野源『いのちの車窓から』を借りてその場で読ませてもらった
星野源『いのちの車窓から』)、
今日久しぶりに来てみると


ぎっしり本の詰まったカラーボックスの上に。

「すげぇ・・・とうとうコーナーできてる!!」
ちょっと興奮しつつ一冊手に取って、読んだ次第。

惹かれたのは、タイトル。
「選んだ理由。」
僕は編集者になりたくて思い切って前職やめちゃったわけだけど、
でもそこからうまく就職先を見つけられず、
自分が何がやりたいかもわからなくなって、
ぼんやりとした言葉をハロワの人に吐き出したばかりだった。
なんか鬱屈としている。
曇っている。
そんな中、ふと目にしたのがこのタイトル。
読んでみようと思った。


タリーズは絶対チョコラテ。
クリームがわりとふわっふわしていていつもスプーンですくって食べちゃう、
12歳なので。


内容は、インタビュー記録。
このライターの石井ゆかりさんという方は、
占い関連の書籍で有名なライターさん。
近年では『3年の星占い』シリーズが一番有名と思われる。
小さい黒い本で、そう一時期ありとあらゆるヴィレヴァンにおいてあった、アレである。
そんな彼女がミシマ社と企画したのが、
前情報なしのインタビュー、
通称「闇鍋インタビュー」
今回は意図的に出版関係を外して(チッ)
コーヒーショップマスター、
京都大学の研究センターから合気道の先生になった人
喘息もちのJK
イラストレーターする僧侶

等など様々な生き方をしている人を取り扱っている。
特に転職を経て今の道に落ち着いている人が多いので、
今作のタイトルが「選んだ理由。」になるのも必然の由。


2016年の選挙の栞が。
内田篤人選手・・・こんな仕事もしてたのか。


特に僕がぐっときたのは、
株式会社はてなの平村さんのインタビュー録。
彼女は新卒でメーカーに入り、
大学事務
その後株式会社はてなの人事へと転職をした人である。
僕よりはるかに器用に生きていそうで、
転職、今までの生き方とかそういった面ではあまり響かなかった。
けれど、最後の3ページの彼女の言葉と、
それを受けての石井先生の言葉が印象的。

やってみたいこと、というのは特にないんですが、決まったルートのようなものにはハマりたくないな、とは思います。(中略)公私ともにそういうルートを、いつでも、ぽいっ!って、飛び出していけるようにありたいです。

この言葉を聞いた石井先生は、以下のように綴っている。

「自由」とは、いつでもなんにでも縛られることが出来るということなのだ。(中略)
しかし縛ったものが「ほどける」ことを受け入れられるなら、もっと自由に好きになれるし、選べる。
勿論「ほどけた」ときにどうにもならなくなってしまうことがある。
それでもほどけた後に、「わからない」「はなれていく」ことを受けいれる自分を信じられるなら、もっと自由に、豊かな選択ができるのではないか(一部変更有)


就職、恋愛、結婚、介護、等々僕達はあらゆるものに縛られている。
そして縛られてる僕等はほどける瞬間を不安に思う。
退職、失恋、離婚、老後等々。
その時の「どうしたらよいかわからない」「置いてけぼりにされた」という不安を、
不安になる自分自身を、
受け入れられるならもっと人生前向きに生きられるんじゃないか。
・・・と僕は解釈したんだけどどうだろう。



特に「ほどけた」後の受け入れる自分を信じられる・・・というところが僕はピンときた。
僕は今編集者・・・もしくは声優になってしまおうかと企んでいる。
けれど編集者・・・は激務だと聞く。
ついていけなかったらどうしよう。
けれど声優・・・だって食っていけないと聞く。
ホームレスになったらどうしよう。
でもついていけなかった自分、家がない自分を
受けいれられるのであれば、

僕は編集者、声優という道をそれぞれ選んでいける。

実際僕はいったん仕事辞めたじゃないか。
「先生」という縛りから抜け出した。
どうなるだろうという不安が大きかったけど、
このブログをはじめ新たに趣味を見つけることもできたし、
まぁなんとかやっていけてるし、受けいれられてる。ような気がする。
いっそのこと両方目指してしまおうか。
・・・ちょっと躁に入っているかもしれない。


よく見るとしたの八みたいなやつは、
分岐点がモチーフか。

他にも様々な人のインタビュー録、
それを聞いての石井先生の感想は読んでいて非常に面白かった。
でも最後の僧侶と石井先生の共にしていたイメージ、
「自分はこの道を選んだ担当であり、他の道を選んだ担当もパラレルワールドにいる」
みたいなやーつ。
これは僕は共有できないなと思った。
えー。だってパラレルワールドなんていけるわけないし、存在しないも同じじゃんかー。
まぁ年取ったらわかんのかもなぁ・・・。

以上である。
様々な人の生き方は読んでいて面白かった。
特に僕にははてな人事の平村さんのページがぐっときた。

ちなみに文章はすらすら読める感じ。
読み易い。
ただその分どこが大切なのか、がわかり辛いので、
太字等を用いても良かったのではないかと思う。
私小説のイメージも若干あるので、あえて何も変化させなかったのかもしれないが。