小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

みうらじゅん『親孝行プレイ』-コスモス畑の向こうは崖。-


何事にもプロはいるものだ。

みうらじゅん親孝行プレイ』(角川文庫 2007年)の話をさせて下さい。


電車で読んだ。

【概要】
親孝行したいとか親は大切だとか、
”思っている”だけでは気持ちは相手に伝わりません。

親孝行は、具体的に行動しないと意味がないのです。

どうせなら徹底的に親を喜ばせてあげたい。
そこで忘れてはならないのは、
相手が親だからこそ
「誰よりも気を遣い、誰よりもサービス精神を持ち、誰よりも接待感覚を忘れてはならない」こと。
とにかく行動。
初めはぎこちなくてもいいじゃないですか。

著者が実際にやっている親孝行の数々。
これ、感動します。

裏表紙より

【読むべき人】
・一人暮らしをしている人
・だけど親を喜ばせたい人
・親孝行をしたいけどやり方が分からない人

【感想】
就職しなければならない。
母親が癌になった。
しかも結構ヤバいらしい。

入院中洗濯物をとりにいったり、
夕飯は僕が基本担当したり、
配分も微々たるものかもしれないが、変わった。

そして一層思うようになった。

親孝行しておきたい。

いや、正直。
正直僕もまぁ25である。齢言っちゃった。
「親孝行したい」
という年齢ではない、
ただ病となれば話は別。
一体いつまでいてくれるのか。

親孝行しておきたい。

そこで手に取ったのがこの一冊。

みうら先生と言えば、昔母が言っていた。
「普通の親孝行は秋田から、いとうせいこうと親を交換して旅行に行ったらしい」
やべえ人である。
そんなやべえ人が親孝行の本を書いたというのだ。
それは絶対おもしろい。
それは絶対おもしろい。
それは絶対役に立つ。

簡単に章ごとの概要、感想を記す。



第1章 親孝行宣言 親孝行家になるために

子供は小さいころから、親や大人を喜ばせるプレイをしている p.16
確かに、と思った。
例えば僕は小5の時野外学習の作文を23枚書いた。馬鹿である。
まぁその学習がめちゃくちゃ楽しかった、
それを残しておきたかったというのもあるけど、
同時に
「これだけ書いたら先生も、親も喜ぶだろう」

このときから僕は文章を長く書く癖があった。
国語の授業で小説書きましょうねというのがあった、
ノート1冊書いて提出した。
中身はしかもラノベもどきである。
黒歴史だか何だかもうよく分からない。

脱線。
ただこの一文には思い当たることが他にも他にも他にもほっかほかにあって、
さすがプロ。
射貫かれてしまった。

ちなみにその後親孝行界隈におけるスーパースターについて述べられている。
僕たちも、えならなきゃな。

第2章 親孝行プレイ1 親孝行旅行

旅行における親孝行の仕方である。

行き先の決め方から、宿での寝方、
コミュニケーションの仕方、話のタネ等、
どれも詳しく書かれていて非常に実践的である。

特に家族旅行における心構えについては勉強になった。
そうだ僕等はもう子供じゃない。
子供の親孝行と、大人の親孝行は違うのだ。

あと、最後はなかなか過酷な親孝行道について書かれている。

第3章 親孝行プレイ2 帰省のテクニック

帰省した際の
話のタネ、すき焼きタイムの席配分、
母のほめ方、喜ばせ方等について書かれている。

残念なのは、ここら辺の大半が
「子持ちの20代後半以上の男」
前提で書かれている。
「子無し言うなりゃ彼氏無しモジョ25歳の女」
の親孝行の仕方は書かれていない。
残念である。

ただ最後の「上級者向けの最終テクニック」には
目を見張った。
そうか。
親孝行の極致はそう、なるのか。

第4章 親孝行プレイ3 妻活用法


先ほど
「子持ちの20代後半以上の男」前提で書かれている、
と書いた。
帰省先での、男の妻の心づもりについて書かれている。

この章は、いつかとても役に立つかもしれないぞと思った。
それこそいつか僕は妻になるのかもしれないのだから。
誰のだかは知らんけど。


表紙は謎のコスモス畑。
こんな鮮やかなピンクで「みうらじゅん」という字面初めて見た。


第5章 親孝行プレイ4 孫活用法


お年玉をいかに子供(親からとって孫)に喜ばせるかのテクニックは笑った。

さらに、祖父母孝行におけるパソコンの有意義な使用用途についても記載。
今だとスマホとかタブレットでもいいのかもしれない。

第6章 親孝行プレイ5 父親にも花束を

ここまで母親中心であった。
そこで父親との接し方であるが、

先ほど
「子持ちの20代後半以上の男」前提で書かれている、
と書いた。

と書いた。

そう男同士の父親の親孝行について書かれているのである。
それでもまぁ面白いからいいんだけど。

特にプレゼントについて

相手に必要なものを贈る行為ではない。そのようなものは本人が自分の意志で購入すればいいのである。プレゼントとは本人では絶対にあくぁ無い物、しかしもらうと以外に嬉しいものをチョイスすべきなのだ。 p.115

親以外にも参考になる一行である。

ならば、最大難関相手・CHICHIOYAにどのようなものを勧めればいいのか
についても、触れられている。

第7章 親孝行プレイ6 親孝行寿司

そんな父親と行く寿司屋は、
どのような店がいいのか。
選ぶ際の注意すべき点、寿司屋での話題の振り方、
寿司屋の大将の理想的スタンス等について書かれている。

僕はまだ回る寿司のが好きかなぁ・・・。

第8章 親孝行プレイ7 友活用法


親孝行旅行に、親友連行のススメ。である。
ここでようやく噂のいとうせいこうが出てきた。

いとうせいこう氏はみうら先生の親孝行道に、
一筋の光を照らしてくれた。

奥さんじゃなくて友がアピールするってことは、そこには「社会的にもみうらさんはこんなに評価されているんですよ」っていう、「社会」も入ってくるわけでしょう。親子のべったりくっついた感じに、社会的なものを入れることができる。 p.144

みうら先生はこの言葉を聞いて「結婚してくれ!」と叫んだらしい。
僕も叫んだ。

さらに最後には関東関西における親との距離感についても記載。

第9章 母親はいつまでも恋人 --私はいかにして親孝行家となったのか

親孝行特に母親への意気込みについて書かれた章である。
息子にとって母親は「諸君にとってタチの悪い、いつまでも見あk田でいてくれる恋人」p.164であるとしたうえでの、心構えについて書かれている。

しかし先程
「子持ちの20代後半以上の男」前提で書かれている、
と書いた。

と、書いた。

そう、これはあくまで息子向け、男向けの章であって、
女性から見た父親とはまたこれは違うと思う。

ただ最後の項目は女性でも言えることだろう。

反抗期とともにロックへと傾倒していっていしまった者が親孝行をするためには、その世界での「ウハウハ期」を体験しなくてはならないと私は思う。
(中略)
「ウハウハ期」を迎え、反抗期のころに思え以外た理想がある程度叶ったあとで、ようやく人は満足するのである。そしてそのとき初めて、反抗期前に親孝行プレイをしていた相手、すなわち「親」のことを考える余裕が生まれるのだ。 pp.168-169


要するに、「人生で一定の成功を得て安定したころにようやく心からの親孝行ができる」ということだ。

僕は、「ウハウハ期」、一定の成功を得ていない。
加えて、親の病。
イムリミット、ストップウォッチが神によって押されていることを、
実感する出来事があった。

僕は一刻も早く小さくてもいい、小さくウハウハしなければ。

そのためには。


文庫版あとがき

最後みうら先生も述べられている。

死とはたぶん崖のようなもの。まだ、その崖が見えてない内はいくらでも「死にたいね」などと余裕があるが、だんだん見えてくるに従い、屁放り腰になる。親孝行とは、そんな屁放り腰な親をこちらに向かせ、少しでも崖の恐怖を和らげる行為だ。 p.184


中古本なので、2007年当時の新刊案内パンフレットが。
そういえばカバでしたね。
今はなんか黒い犬だよね。


以上である。

基本男性向けであったが、
まぁ僕こと女性が読んでも面白い本だった。

あとみうら先生の文章はおもしろいのもあるけどなんでこんなすらすら読めるんだろうね。
やばいよねえ。
やばたにえん。