小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

三津田信三『のぞきめ』-集落を舞台にしたホラーミステリ。-


隙間が怖い。


三津田信三『のぞきめ』(角川書店 2012年)の話をさせて下さい。



【あらすじ】
「首無の如き祟るもの」等ホラー×ミステリーの文筆業で生業をたてているは、
ミステリ評論家の千街晶之からライター、南雲桂喜を紹介される。

「四十澤想一(あいざわそういち)を知っていますか」p.13
バーで南雲が不意に名前を出したのは、怪異に詳しい民俗学者の名前だった。
そして、
入手困難である彼の貴重な著書にこんな記述あるという。
「空で言えますよ。『この覗木子から派生したと考えられるものに、のぞきめがある』という文章です」p.16


「のぞきめ」に惹かれた南雲はなんと四十澤の家から、
その調査ノートを盗んでしまった。
やがてその「のぞきめ」について記録されたノートが紆余曲折を経て、
なんと、僕の元に渡ってきたのだが・・・。

読んでみると、
そこに書かれていた怪異は
かつてインタビューをした小学校教師利倉成留の体験と一致している部分が多々あった。
そこで
利倉の話を「覗き屋敷の怪」
調査ノートの内容を「終い屋敷の凶」
こうやって並べて、これらの話を発表するべきではないのか。そう強く感じるように、いつしか僕はなっていた。p.33

【読むべき人】
ホラー、ミステリ両方好きな人
・「姑獲鳥の夏」みたいな雰囲気が好きな人。まぁ僕姑獲鳥読んだことないけど。
集落×怖い話 組み合わせにキュンキュンしちゃう人
・日本の民俗学的小説を読みたい人
ロりおばけが好きな人

【一旦考えるべき人】
・ミステリが好きで、謎をすべて解明しなければすっきりしない人
・読書初心者



【感想】
地元の図書館で、
怪談おススメコーナーというものを組んでいた。
司書がススめるんだから、外れるはずあるまいよ。
手に取って、読破した。
その4。
結局そのコーナーには4冊もお世話になってしまった。
でもどの本も、やっぱ面白かった。
無論、今作も。

三津田信三
以前からその名前は本屋で目にしていた。
なんか「なんちゃらが如きなんちゃらがもの」
って書かれた分厚い文庫本がずらずら並んでいて、
短編小説が好きな僕はちょっと手を出すのに気後れしていた。
ホラーとミステリ、僕が好きなもの両方兼ね備えているとはいえど、
うーん。
と思っていたところ、
単発の作品を図書館で見つけて(しかも司書さんのお墨付き)
思い切って借りてみた次第。

なかなか面白かった。

今作は「序章」「第一章 覗き屋敷の怪」「第二章 終い屋敷の凶」「終章」の四部構成となっている。

序章
では、第一章第二章の怪異を知った経緯が書かれている。
ここで出てくるのが千街晶之(せんがいあきゆき)。
この方は、実在していて
初野晴『退出ゲーム』はじめ
ミステリ小説の解説を数多く手がけている。
しかも僕はこの方が主催者の一人を務める
イベントにも足を運んでいる。
なかなかパーマが印象的な人だった。

そんな方を介したライターからの話だというのだから、
ぐっと引き込まれる。
いや作り話でしょ、小説でしょ思う一方で、
実話かもしれないぞ・・・ちょっと心がざわざわする。

第一章 覗き屋敷の怪
小学校教師、利倉成留の体験談が収録されている。
終盤は怒涛の展開で、
最後の最後の最後まで、ぞっとさせられる。
終わらない怪異。
けれども序盤に出てくる、大学生4人による探索の場面は読んでいるこっちもワクワクしてくる。
ただ怖いだけじゃない、ワクワクや青春もある。
ホラー小説、というよりはなんとなくホラー映画のような感じ。

ちなみに、ネットの怖い話で言えば「リゾートバイト」に近いかもしれない。
無論似ているのは雰囲気だけで、中身は全然違うし、
こっちのが僕は好きかな。
それくらい最後まで追いかける怪異のしつこさが不気味で好き。

第二章 終い屋敷の凶
これが今作のメインである。
年老いた民俗学者四十澤想一の体験談が綴られる。
集落ものの話が好きな人は、キュンキュンしちゃう話である。
ただその集落における場所の位置関係であるとか人間関係図であるとか、
綿密に書かれていて面白いけれども、
読書を始めたばかりの人にとっては難解かもしれない。
ちなみに僕も、集落の位置関係はメモをしながら読んだ。

それでも徐々にみえてくる気味悪さ、不気味さは、
読んでいてどんどん引き込まれる。
また、第一章で出て来た場所が時を越えて出てくるとそれだけで興奮してくる。

第一章で数々の怪異を起こすに至った、
この集落はいったい何なのか、何があるのか、どういった集落なのか。
気づけば僕等読者は四十澤と同じようにぐいぐい惹かれ、
そして。


書いたメモ。
終章 
ここで全貌が明らかになる。
第二章と終章はいわば、ひぐらしのなく頃にひぐらしのなく頃にの関係性に近いかもしれない。ひぐらし読んだことないけど。
意外なところにまで伏線が張られていてゾクゾクした。

ただ、ホラー×ミステリであるため、
いわゆる「怪異」の一言ですませられる部分が多々ある。
オカルト好きな僕はむしろそこも「デュフフフフコポォ・・・wwwww」だったんだけど、
完全なるミステリ、推理小説を期待する人は気を付けた方がいい。

あと、個人的には決定打となる伏線がどうも弱いように感じる。
漢字一文字からp.342のような事実にいきつくにはなかなか無理がある。
もっとその伏線だけは巧妙に仕掛けられなかったのか。
そこが残念。

でもまぁ徐々に明らかになった真実の切なさは一級品。
読んで損はない。



以上である。
集落ものが好きな人にはおススメ。
特に「第二章 終い屋敷の凶」民俗学者になったような気分で
ぐいぐい読み進められる。
「第一章 覗き屋敷の怪」ホラー映画を読んでいるようで堪能できた。
強いて言うならば伏線が若干不完全に感じられたのが残念。

いやいや、それでも一気読みしてしまった。所謂「徹夜本」。

ホラーすここのまぐろどんなので、三津田さんの他の作品も手を出してみようかなぁと思いましたのでした、おわり。


借りた5さつ、よみおわったねー。

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初野晴『退出ゲーム』
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