小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

中野京子『美貌のひと 歴史に名を刻んだ顔』-ロマンティックは地に足がついてこそ成立するんだ。-

本当歴史を何故ここまで分かりやすく、面白く、叙情的・・・いや情熱的に書けるのか。
そりゃあもう読んじゃうよ!!買っちゃうよ!!

きょこたーん!!!!

中野京子『美貌のひと 歴史に名を刻んだ顔』(PHP研究所 2018年)の話をさせて下さい。


【概要】
絵画の中の美しいひとたちは、
なぜ描かれるのことになったのか。
そのあと、焼失することなく愛でられた作品の数々。
本書では、40の作品を中心に美貌の奥に潜む光と影を探る。

カバー裏より
※章にしてメインで紹介している作品は24作品

【読むべき人】
肖像画が好きな人
・美人が好きな人
・西洋美術興味あるけど何から読んだらいいかわかんない人
・面白い本が読みたい人

【感想】
一行、目を追えばもうとまらない。
二行三行四行・・・自然と指先はページをめくり、
気づけば半分、ラストまで一気に駆け抜けられる。
シンプルで叙情的な文章が綴る
歴史の数々の事実に僕等は、
目を見張り、驚き、
ため息をつく。

そんな中野先生が、僕の大好きな肖像画について語る一冊とあれば、
何故手に取らないことがあろうかいや取る!
購入した一品である。

今作のテーマは表紙にもある通り「美貌のひと」
1章1作で計24章。
各作品どれも「美貌のひと」が描かれており、
彼・彼女達の生い立ち・一生について
綴られた本である。
歴史上(特に音楽史・美術史上)著名な24の美貌のひとを紹介した本。ともいえる。
芸術史入門にもいいかもしれない。



ちなみにそんななか僕が特に印象に残ったのは
シャネル、パルミジャニーノ、バイロンサラ・ベルナール、忘れえぬ女。


マリー・ローランサン≪シャネル≫
pp112-120

かの有名なココ・シャネルを描いた一品で、
女の一生について触れられている。

開発の遅れた田舎に生まれ、母を亡くすと同時に修道院そこからパリへ出て歌手を目指すもやめ、お針子ととして働く日々。
そこでの出会い、そして死別。
後に次々と作られる国籍を超えた愛人達、そして彼等を反映するかのような変わりゆくデザイン・・・。

わずか8ページにも満たないが、
女の一生には圧倒されてしまった。

とりあえず、僕は何をどうしたらいいのかわからなくて、
ブログをちまちま最近更新してるのも、
女の一生を知ったからとかなんとか。

彼女の映画を見たいな、と思いました、まる。

ちなみにこの作品、横浜美術館に来るそうですね。
行こうかどうか本当悩んでます。
オランジュリーかぁ・・・。ユトリロとかも見ておきたいんだけどね。


パルミジャニーノ≪凸面鏡の自画像≫
pp.121-127
ルネサンス後期に現れた、
美貌の画家の一生について語られた章である。

当時は衝撃だったという。
平面ではなくまんなかにせり出してくる凸面に描かれた顔。
後のマニエリスム・・・これまで禁忌とされた歪みを用いた作品が100年画壇を引っ張っていく。p.125
次の流行を引き起こした作品。
要するにすごい作品。

確かに、500年以上前にここまで奇抜な作品が世に出ていたことにも驚いたけど・・・
印象深かったのは彼の一生。

故郷に帰り、聖堂の装飾等を手掛けるが、
後に創作意欲は減退していく。

パチンコ錬金術にハマったのだ。

しかし彼は芸術では名を残せたけれども、錬金術・・・科学では名を残せなかった。
晩年は精神狂っていたそうだ。pp.125-127

前述したシャネルとは反対に落ちていく人生。
彼は才能あった美術を捨て、
己の好きなものを追い求めた、追い求めた結果うまくいかなかった。
人生に大切なのは才能じゃない、努力だ。
そんな言葉がふと頭をよぎるような一生。
ああ僕もこうやってのんのんしている場合ではない。
もがかなければもがかなかれば・・・就活しなきゃ就活しなきゃ。
・・・。
・・・大聖堂から催促の手紙が来た彼も、こんな気持ちだったのだろうか。

一番好きな章でもあった。


トーマス・フィリップス≪バイロン
pp.128-135

正直。
バイロンの一生も面白い。面白いんだけど、
この章を上げたのは別に理由がある。

男性は男らしさ満点が異性を惹きつけると思い込んでいるが、多くの女性は完璧な相手など望まない。むしろ完璧に見えた相手にほんのわずかな疵がああって初めて魅力を感じる。p.134

この中野先生の文章が良かったからである。

ほんっとうにわかる。
めちゃくちゃわかる。


例えば大学時代、好きになった人はイケメンというのもあったけど、眼を離せない人間として欠落した部分があったから好きになった。
例えば前職時代、好きになった人はイケメンというのもあったけど、仕事にまじめすぎてちょっと融通が利かないけれど不器用だったところが好きになった。
例えば現在、気になっている人はイケメンというのもあったけど、どこかスナフキンめいた・・・。

人は人の欠点を見て好きになるのかもしれない。

まぁ・・・その・・・顔面も大切と言えば大切だけど。



ミュシャサラ・ベルナール
pp.144-152

勉強した分野である。
ミュシャ展も行ったし、サラに関する本読んだ。

あのサラの大きいポスター、6枚並べて飾ってあったけど本当最高だったな・・・。

ミュシャもなんか今東京・・Bunkamuraに来てるらしいですね。
まぁこれはスルーでいいかな。
それくらい、良すぎたので。



クラムスコイ≪忘れえぬ女≫
pp.192-200

この作品も実は見ている。

2月にBunkamuraミュージアムで開催されたロマンティック・ロシアにせこせこ足を運んだのだった。
この展覧会、めちゃくちゃ良かった。

70点という丁度いい中規模ながらも、
一つ一つの作品はどれも個性的。
ロシアというのは美術の発展が著しく遅くて、
19世紀末くらいからようやくみられる作品が出てくるんだけれども・・・
だからか妙に漫画チック・現代チックな作品が多い。
他国からも離れているからガラパゴス化していて、
カラフルだけどアメリカよりド派手に、
叙情的だけどフランスよりは冷淡に。
それが見ていて非常に面白かった。

そのなかでもやはり今作。
最後に飾られていたけれど、
ため息が出るほど美しかった。

存在感。
他の作品は、「ある」のだ。
ただこの作品は、「いる」のだ。

とにかく圧倒された。

だから、この本を買ったというのもあるし。
ただこの作品における解説やはり図録の方が充実していた。
きょこたんいまいち正確性に欠けているところはあるからなぁ。


最近は一展覧会につき一枚気に入った絵の絵ハガキを買います。

以上である。
今回も楽しく読ませていただきました、おそまつさまでした。



LINKS
読了済みのきょこたんの本。
中野京子『怖い絵』
中野京子『怖い絵2』
中野京子『怖い絵3』
中野京子『新 怖い絵』
中野京子『名画の謎 対決篇』
中野京子『名画の謎 陰謀の歴史篇』
中野京子『名画の謎 旧約・新約聖書篇』ミュシャ展 運命の女たち
フランソワーズ・サガン 吉田加南子訳『サラ・ベルナール 運命を誘惑するひとみ』