小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

千足伸行『隠れ名画の散歩道』-”傑作”に属さない傑作を。-


「傑作」だけが傑作ではない。

千足伸行『隠れ名画の散歩道』(論創社 2013年)の話をさせて下さい。



【あらすじ】
名画にはモナ・リザ≪ひまわり≫など”表通りの”著名な作品ばかりでなく、
一部の人のみぞ知る優品も多い。
あえて”裏通りの”知られざる傑作に光を当て 隠れた魅力を紹介する、
はじめての読んで知る名画。

帯より

【読むべき人】

中野京子『怖い絵』を一通り読破した人
・変わった絵をたくさん知りたい人

【留意すべき点】
・表紙以外の作品は全て白黒

【感想】
古書である。
古本屋の外の本棚に108円で見つけた。
そう古くもないのに。
なんでや。
裏返すと書かれていた4文字。
「タバコ臭」。
確かに開くと、
ぷぅんと、におう。
かれど美術大好きまぐろどん、巷でウワサの名にかけて、買って一読した次第。

内容としては、まぁ中野京子『怖い絵』に似ている。
知名度のない興味深い作品を数多く取り上げ、有識者が解説。
ただし『怖い絵』はエッセイストの中野京子先生が書いていたのに対して、
こちらの作品は大学教授で学術書論文を書く千足伸行先生が書いている。
面白さでは『怖い絵』に劣るが
正確性や解説等は本作の方が「勉強になる」感じはする。
まぁその分専門用語とかも多いので、
もともと美術に関心低い人や初心者には薦められない。

それでも中身は読み易い構成となっている。
2ページが基本で、
1ページは作品もう1ページは解説。

扱う作品数も70余点となかなかのボリューム。
種類も多岐にわたっている。
中世ヨーロッパからアメリカまで。
去年行った「怖い絵展」で見た作品も収録されていたのは驚いた。
ギュスターヴ・アドルフ=モッサ≪飽食のシレーヌ≫1905年pp.30-31
それらに丁寧に付された解説は、美術愛好者を楽しませるに十分だろう。



ただし作品が全て白黒。
これがもう馬鹿。馬鹿なのである。
本。
カラー写真でさえ作品の良さが10%も伝えきれない媒体であると思うのに、
ましてや白黒なんて。ありえない。
「観賞用の画集というよりも、読み物として出したい」p.181との編集者の意向というが、
作品あっての読み物だろ。
それなのに何故白黒にしたのか。
新品価格では1600円である本書だが、
2600円にしてでも、もしくは作品数いくつか減らしてでも、
カラーにすべきであったと僕は思う。

70余点の作品の中で一番響いたのはこの作品。
「神秘的な宗教体験を描く ガブリエル・フォン・マックス≪法悦のカタリーナ・エメリック≫pp.84-85」
帯を巻いた頭に手を置き、白いベッドで一人病める女性を描いた作品である。
当時の「神秘体験」を、まるで精神疾患のように描いている画面が印象的だった。



以上である。
内容は多少難解であるがさくさく読めて面白かった。
が、絵が白黒なのは今時ありえない。

ちなみに本を閉じて思うは、
「思ったよりきついな」
タバコ臭。
この西洋美術について書かれた本をタバコを吸いながら読んだ人。
いったいどんな人なのだろう。
スーツを着た初老のおじさん?研究者?大学教授?
それとも案外主婦だったりして。

妄想を掻き立てる臭いなのである。
まぁくさいんだけど。