小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

中野京子『怖い絵3』-衝動的関心に、駆られる。-


絵は、見て終わりじゃない。
絵は、見て読むもの。

中野京子『怖い絵3』(朝日出版社 2009年)の話をさせて下さい。


イナバウアーに通じるものがある。

【概要】
数ある西洋絵画の中にも、
不気味なもの・恐怖を抱くもの・よく見ると違和感がするもの
がある。
それらの絵は何故怖いのか。
絵に塗り込められた恐怖を読み解く。
人気シリーズ第3弾

ちなみに、前作、その前の前も感想書いてます。
中野京子『怖い絵』
中野京子『怖い絵2』

【読むべき人】
・西洋絵画に関心がある人
・ちょっとマニアックな、王道から外れた変った絵を描く画家を知りたい人
文化史に関心がある人

【感想】
怖い絵シリーズ第3弾。
一気読みしてしまった。

本作は前作2冊と比べて非常に幅広い印象。
サイゼリヤでおなじみ・ボッティチェリヴィーナスの誕生から、
レッドグレイブアミゴーニ
検索してもまともなサイトに行きあたらない画家まで取り扱っている。
京子先生の知見の深さが垣間見える。
ちなみに、レッドグレイヴにいたっては本作の内容を丸パクリしたキナ臭いブログまで出てくる始末。
呆れる。

作品も、「見るだけで怖い」ような作品が
今シリーズで一番多く取り上げられている。気がする。
「怖い絵」シリーズに興味がある人は、意外とこの3から手に取るといいのかもしれない。


お腹の上にのってるのが、ウサギだったらよかったのに。

本作で特に僕に刺さった作品は以下の通り。

作品2 レーピン「皇女ソフィア」
前作『怖い絵』でも取り扱われている画家である。
ロシアの出身で、共産主義への反発を表す作品が代表的。
荒々しいタッチで、鑑賞者の目に恐怖を焼き付けるような作品が特徴。

僕はこう見えて中高大ずっとオーケストラをやってきた人間である。
チャイコフスキーラフマニノフムソルグスキー、カリンニコフ・・・エトセトラエトセトラ。
ロシアの作曲家の音楽も、まぁまぁ演奏してきた。
他の国と違い、フォルテの並ぶ圧の強い音楽が僕は割と好きだった。
けれど、ロシアの画家。
と聞いて人物名挙げられる人がどれだけいよう?
僕は、恐ろしい皇女の顔を見て、「こわーい」とちょっと恐怖すると同時に、
ついつい、熱くて厚いロシアの音楽を思い出してしまった。
久々にクラシック、きこっかな。

作品3 ベアトリーチェ・チェンチ
悲劇のヒロインというのは、昔も今も美少女化されるのは必然である。
で、今回のベアトリーチェゃんがんんああああああああああああ!!!!かわいいかわいいかわいいよぉぉぉおおおおおおおおおお!!!んああああああああ!!!悲劇も相まって萌え〜悲劇も相まって萌え〜!!!!!んあああああああああ!!

僕の中のモナリザ

作品6 シーレ『死と乙女』
僕はシーレという名の画家の存在を、今作初めて読んだ時に知った。
作品自体もなんとなく怖いんだけれども、
その背景を中野先生の語り口で読んだとき、
切なさと悲しさで胸がいっぱいになった。
再読しても、その感覚は変わらない。
男の視線・・・女の安らかな顔を見るだけで
胸をきりきりするような痛切さを感じる。
改めてシーレ・・・ちょっと他の作品彼についての本も読みたくなった。
が、

作品19 アンソール『仮面にかこまれた自画像』

ジェームズ・アンソールの生き方が僕の心を一番真っ直ぐに穿った
短命のシーレに対して彼は長生きしたのだが・・・
彼の苦しみを片鱗でもいいから理解したい。
そして苦しんだ彼の作品をこの目で見たい。
ということで、読了そのままAmazonでアンソールの本を注文してしまった。
衝動的関心を持ったのは久々だったので、この作品が今作の一番かなー。
あとどうやらこの作品は愛知県の小牧市にあるメナード美術館にあるらしい。
今年の夏思い切って見に行ってみようか・・・うーむ。


「怖い」がテーマなのに暖色の背表紙。

以上である。
前作と比べて幅広い作品を取り扱っており、
見た瞬間に怖いと思う分かりやすい絵も多く、
久々に僕を行動に移す衝動を与える絵があったということで、
まぁ3作目も読んでて楽しかったぽよ〜
そんな感じ。

朝日出版社で出された1〜3では、
今作、3が一番お気に入りかな。

ちなみに。
何気にこの本、表紙も僕は気に入っている。
特に、2と3.
でかでかと絵画の上に数字を掲載するこのデザイン。
唯一無二だし、なんか一目見たら忘れられないよね。
タイトルも「怖い絵」ではなく「怖い 絵」なのも素敵。
カバーの内側に小さくUniphoto Pressって書かれてるけど、
ブックデザインした個人は誰なんだろ。
気になる。


悪夢。