小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

岩本ナオ『マロニエ王国の7人の騎士1-2』-愛を捧げる。-


ファンタジーは好きですか?
え?まぁ・・・僕はまぁまぁ。

まかろに・・・違う

岩本ナオマロニエ王国の7人の騎士1-2』小学館 2018年)の話をさせて下さい。


表紙がもうロマンチック。

【あらすじ】
マロニエ王国の女将軍バリバラは、7人の個性豊かな息子達をそれぞれ周囲の国へ大使として派遣する。
長男の眠くないは、婚約者のエリーと共に夜の長い国へ行くことになるのだが・・・。
どうやら夜の長い国は眠くないを王国に返したくないようで・・・
「国に帰ったら君とーーー」

【読むべき人】
ダンジョン飯が好きな人
・お姫様・王子様・精霊・・・・王道ファンタジーを読みたい人
・構図、セリフ回し、表情等画力自体よりも漫画力高い作品を読みたい人

【感想】
思わず「ザ」をつけたくなるような王道ファンタジー漫画。
1巻の前半7人の息子マロニエ王国の大まかなニュアンスを紹介し、
後半から夜の長い国編に入り
2巻はまるまる夜の長い国編である。
僕はもうこの1巻の終わりがものすごくものすごくもどかしくてもどかしくて、2巻をまだかまだかまだかまだかまどかまぎかと待っていた。
約10カ月ぶりの新刊。
1巻を再読するほどの用意周到ぶり。
2巻も、楽しく拝読させていただきました。


1巻。

1巻はいわゆる序章である。
7人の兄弟「眠くない」「博愛」「暑がりや」「寒がりや」「獣使い」「剣自慢」「ハラペコ」(これが名前)と、
マロニエ王国をはじめ世界観の全体像を伝える章である。
寒がりやブルーノ様甘酢っぱい関係が中心に描かれる。
特に2人がボートに乗るシーンが素敵。
「そっか良かった」
「あからさま過ぎるぞ 寒がりや君」


episode.3にて主人公が変わる。
「僕は今・・・もしかしてうたた寝をしてたのか」
眠くないうたた寝から始まる。
眠くないの、うたた寝
不穏な気配から「夜の長い国編」は始まる。


2巻。

2巻で描かれる「夜の長い国」は、ロマンチック。
眠くないエリーもどかしい関係を描きながら、
夜の長い国の諸事情が、美しい文化の中で描かれる。
「それは特別なことでもなんでもなくて誰にとっても当たり前のことなのだから」



まぁ、ざっくりこんな感じなんだけれども、
読んでて思うのはこの漫画は・・・うーん。
なんというか、澄んでいる。

まず世界観。
今作は中世もしくは近世ヨーロッパをモデルにした世界観なんだけれども、
まぁきちんと作られている。
出てくる国には文化がある。
1巻に出てくるマロニエ王国の城(1巻p.34)と1-2巻に出てくる夜の長い国の城(1巻p.177)は明らかに違う。
マロニエ王国は農業大国のような力強い城なのに対し、夜の長い国はギリシア正教コンスタンティノープルを思わせるような繊細な城
他にも衣装政治体制公的施設までにわたって国ごとに違うのは読んでいて楽しい。
ほんじょそこらのなんちゃって異世界とは違う。
隅々まで丁寧に描く、作者の澄んだまなざしが心地いい。

登場人物。
まず7人の兄弟が個性的でよい。
ド直球の変な名前もわかりやすくて良い。
特にepisode.1、episode.2で描かれる彼等の関係は読んでいてまぁ楽しくて、
たった2話にもかかわらず7人の兄弟を愛おしく思う。
女性陣、エリーブルーノ様等ヒロイン役も魅力に描いているけれど
バリバラヒュロッキン等の中年の女性も表情豊かに描かれているのが面白い。

登場人物の会話。
そんな魅力的な登場人物達が魅力的な会話を交わす。
例えば、
1巻p.10
バリバラが7人の息子に問うシーン。
「お前達の大義を言ってみろ」
「いつかかっこよく 我が国のお姫様を助けること!!」

2巻p.149。伝言。
「僕が押しつけられたのは城代の仕事と領地のほうなんだよ」
・・・独特なのだ。
いや語彙は普通で僕達にも難なく伝わるが、使い方が独特でけれど日本語が崩れることはなく、読んでいてなんとなく気持ちいい。
新しい言葉を読んでいる感覚。
それはある意味小学生が新しい国語の教科書を読んでいる感覚に近いのかもしれない。

構図。
今作は変わった構図が多い。
例えば第一話p.14 お姫様の初登場のシーン。
一瞬、風と共にひらめくお姫様の美しさ・可憐さを感じられる構図。
他。2巻第八話p.101-102の展開。
会話劇からシーンがかわる様はまるで映画を見ているかのよう。
読者の文字を読む時間を想定しつつ間髪入れず最後の言葉を次のシーンに持っていき、
漫画に読者を惹きつける。
高い漫画力を備えた作家のように思う。

絵。
この人は絵がうまいのか!!!???と聞かれると僕は正直うん・・・まぁ・・・うん・・・まぁ・・・となる。
この人は漫画がうまいのか!!!???ときかれると僕は断言できる。うまい!!と。
それは世界観・登場人物・会話の表現や構図といったのもあるんだけれども、
作者が心から楽しんで漫画を描いているのも大きいと思う。
背景や衣装、そして登場人物全てを楽しんで描いている。
心から作者は自らの世界を愛している。浸っている。
だからこんなに惹かれるんだろうし、澄んだ気持ちになるんだろう。
今作は恐らく15巻は超える大作になるだろう。
前作が12冊続いているのでそこまで心配はしてないが、
最後まで飽きることなく愛を全うしてほしい。

ちなみに、絵が下手でも作者の漫画への愛が実って人気になった作品といえば、アレである。
進撃の巨人
あっちはもっと絵が下手だったけど・・・でも最近は画力もかなり向上しているらしい。
うーん。
やっぱこれからはストーリーや絵のうまさよりも、
作者の愛がうまく発散された作品が売れていくのかな。
複雑化していく。難しい時代。


1巻の表紙めっちゃ好きなんすよね。

以上である。
世界観やら登場人物やら言い回しやらもう全部好きー。
そんな感じ。
欠点は、強いてあげるならば、
会話で話が進むことがちょっと多いかな・・・。
あと、ちょっと言い回しが独特すぎて合わない人もたくさんいるんじゃないかな。
『このマンガがスゴい!2018』のオンナ編1位に選ばれてはいるが、
一話だけ読んでみて購入を検討することを勧める。