ババア無双!!!!
押切蓮介『サユリ②』(完結)(幻冬舎 2011年)の話をさせて下さい。
【あらすじ】
マイホームの幸せもつかの間、
父、母、祖父、姉、弟・・・
次々と家族が死んでいった神木家。
悲劇を弾き御起こしたのは、この家に棲む”少女の霊”だった。
残された少年と蠟ボアの、”霊”への逆襲が始まるーーー。
祓ったくらいじゃ、すませない。
裏表紙より
【読むべき人】
・強いババアが好きな人
・VS幽霊ものが見たい人
・ひきこもり(僕含む):死ぬと幽霊になっちゃうぞ~という自戒の念を込めて
【感想】
2巻で終わりの本作である。だから1巻で広げたあれこれの邦画ホラー的要素を全て回収しなくてはならないのだけれども・・・それをまさかの認知症のババアがやるっていうのが激強い。
1巻は邦画ホラー、2巻は幽霊VSババアの激闘もの、ではっきり内容がわかれていていいですね。
ババア。ババアっていうのがいいですよね。まず対峙するのが。
多分1巻読んだ感じだと、普通の作家だと「ああ多分これVS住田だ・・・」って思うと思うんですよ。実際僕もそう思ったし。でも住田はガチガチの霊感美少女だけどゴーストハントできねんだわ・・・。霊感少女全員がゴーストハント出来るとかそんなん偏見なんだわ・・・。ここは、やっぱ、ババアなんだわ・・・。
作者が、シュールギャグ作家とも称されるようですが頷けます。住田が除霊しちゃったら「さんかく窓の外側は夜」になっちゃうもんね。見たことないけど。
そしてこのババアが認知症の時とは全然違う、パワフルババアなのがいい。いやいやお前逆に何で呆けたん?レベル。
暴れまわる年寄りはいいですね。見ていて元気になる。
以下、僕が選んだババア名言3選。
(タバコくゆらせながら)「甘えは聞かんぞ 食べて命を濃くせんとわしゃ許さん」p.33
最近僕希死念慮に悩んでいるんですよ。迂闊に「しにたーい」とか言っちゃう。なんでこの言葉は響きました。ちゃんとしたもの食べよう!!!になる。なので朝はコロッケ2つも食べちゃった。
(サユリを睨みつけながら)「奴に報いるワシらの唯一の武器は何だと思う?・・・・・・・生命力じゃ よく食べよく寝てーーよく活きる 毎日走り外気に触れ心の像を動かすーーー」pp.46-47
最近僕メンタルよわよわで自堕落な生活送ってたんですね。迂闊に朝寝ちゃう。なんでこの言葉は響きました。ちゃんと外出て働いて人間やろ!!!になる。
(仇となる成人男性の首を締めながら)ババア「どうじゃ 苦しかろう 死ぬのはもっと苦しいぞ・・・!ワシの家族はその煮え湯を貴様の娘に飲まされたのだ」p.129
復讐に燃えるババアです。だいたいの漫画って、復讐って「え・・・もうちょっといけるやろ」てところで終わるじゃないですか。でもこのババアは徹底的に復讐してやろう!!!っていう気概が見えるのでとても好きですね。いいぞババアもっとやれぇ!!ってもうプロレスのように応援しちゃいます。
あと1巻のレインコートババア雑魚すぎクソワロタ。やっぱババアみたく月が作ってガツガツ生きて行ったらああいうのも自然とついてこなくなる!!そういうことなんだろうな。あーコロッケ2つじゃ足らないかしら。
終盤はサユリがなんでオバケ化したのかの描写、あとサユリ本体が出てきます。
ネタバレして書いちゃうと、その理由って言うのが単純に思春期にひきこもっちゃってそれを家族がわーわー責め立てる&ご近所の目気にする、でまさかのみんなでサユリを殺しちゃって、でサユリが激おこぷんぷん丸で家のだいぶ悪質な地縛霊になってしもうたでって話なんですよ。
僕は思ったね。
・・・いやぁさすがに極端すぎでは?
作者が一気に連載畳んでいる時期、っていうのもあると思うんですけど、それでもうんやっぱり、いやぁ~・・・・極端すぎでは。
でもまぁ本作の魅力はそういう「いかにして思春期の少女が悪霊化したのか」という文学的なところではなく、邦画ホラー的演出&ババアにあるので、問題ないんですけどね。それでももうちょっと何かあったやろ・・・とは思った。
あと「サユリ」。悪霊の少女名・九条小百合の名前からタイトル来てるんですが、サユリがね、思ったより全然出てこないんですよ。
庭に百合の花が咲いてたり、ババアの名前も同じ「さゆり」であることが最後に判明したりしたら作品としての体裁がもっと整ったかなぁという印象。
何がいいたいかって言うと、後半ババアに任せて完結させた感が否めない。
それでも、ババアの勢いはさすがだし、後半ババアが呆けて元に戻って最後にヒロインと主人公が二人てくてく歩くシーンはなんとなくエモいし希望感じちゃうし、いい作品ではあるんですけどね。
特に最後、舞台となった物件において「楽しい思い出があった」と主人公が断言するのが良かった。ちょっとね、うるっときた。それでもまぁ言わせてくれ。いやいや勢い。
でもまぁ後半のばばぁは勢いがあったからこそのあのキャラって言うのもあるしなぁ。終盤確かに雑なところは多いんですが作者は一切手を抜いていない、恐らく2巻完結にをベストな形で終えられるように苦戦した跡も見られます。
多分これを土台にして何かしらの媒体・・・例えば映画とかドラマとか小説とかもしくはまたもや漫画とかでリメイクしたらそれこそより良い傑作が生まれる気がする。
でも2巻の表紙はここはさぁ、サユリじゃねぇだろ。ばばあにしろ。ばばあのセンチメンタルショットにしてほしかったですね-じじぃを添えて。
ばばあ「則雄は真っ当に生きろ・・・!!手を汚すのはばあちゃんだけで充分じゃ・・・!!」p.165
ここ最高にかっこよかった。
ちなみに僕も1年ニートしていたことがあります。半年実家で毎日プーをしていました。確か甲子園で吉田君が活躍していた年。
その時にも死にたい死にたいとは当たり前に思いましたが、でも万が一死んだとしても・・・、多分実家に残りたいかと言われるとちょっとそこは微妙。
じゃあどこに行きたいか。
軽く考えたんですけど
まぐろどん的☆死んだらお前のとこ行くぞ!3選。
増田さん(仮名)の家:隣人。昔から頭おかしい。僕に対するクレームを母に言いそれを母が僕に言うため物凄く昔からストレスがたまっていた。もし死んでたら奥さんに一生取り憑いてほっそいほっそいあの目を終始ぎちぎちたてにかっぴらいてやりたい。
田奈先生(仮名):新卒時塾講師だったんですがそこでの上司だった超絶イケメンの男性講師。ただ頭もおかしくてナチュラルにパワハラ酷かった。こいつのせいで僕のキャリア序盤ひっくりかえったっていってもいい。もし死んでたら奥さんの方に取り憑いてヒステリックに家庭崩壊おこして離婚してモラハラ理由に慰謝料ぶんだくるにぶんだくって最終的に36あたりで無理矢理孤独死させてやりたい。
某出版社の色白眼鏡:まさか就職の面接でまるまる人格否定されると思わなかった。過去の名作で食いつないでいるような出版社であるが、もし僕が死んだらまず会社を潰し、永遠言われたことをまんま深夜ぶつぶつぶつぶつ言って鬱病にしてぎりぎりのところで死なせない。でも最後は僕が直接目つぶしする。
と、所謂復讐相手のところなんですよね。
サユリを殺したのは家族じゃないですか。でも大切な存在だから恨み切ることが出来ず家に憑いた・・だと思うんですけど、ちょっとそこが微妙に納得いかないんですよね。
自分の経験を鑑みると、多分一番に殺されるべき存在って、
あのレインコートババアじゃないでしょうか。
所謂近所の目があるからこそ家族も発狂した部分もあるだろうし。現代は基本無関心なのに変なところに関心あるのがムカつく。
だから、この作品の欠点幾つか述べてきましたが、一番僕が気に入らないのが、あのレインコートババアがのうのうと生きたまま終わっているところです。俊もたぶらやかしやがって。何案考えてんのババア。苗字ぜってー増田だわ!!!!是非ババアには最後の最後、レインコート増田をめっためたにして殺してほしかった。
他、引きこもりの原因となったであろう(推測ですが)学校の関係者とか恨みそうなもんなんですけど・・・でも作品中で出てくるものとしてはまず、やっぱ、まず、増田を殺すのが自然なんじゃないでしょうか。
以上である。だいたいとしては、ばばあかっこいい。サユリん引きこもりはぁはぁ、増田を殺せ!!!この3点。
にしてもこの作者の作品ぐいぐい読めるのでまぁ面白かったです。今まで買ってこなかったですが、見ると結構巻数少ない作品も多いみたいなのでガンガン読んでいきたいと思います。
ジト目ヒロイン可愛いしね。
ちな、実写化する時は主人公は主人公(則雄):奥平大兼、ヒロイン(住田):幸阪茉莉乃でおなしゃす。
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1巻の感想と「物件ホラー」小説。
どうでもいいけど上のロゴの「BIRZ」、懐かしい。懐かしいね・・・・。