小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

福永雄二『大人のアスペルガーがわかる 他人の気持ちを想像できない人たち』-周囲か、本人か-


発達障害の人々にどう接したらいいのか。

彼等との共存はどのようにして図ればいいのか。

発達障害周囲の人へ向けた新書。

福永雄二『大人のアスペルガーがわかる 他人の気持ちを想像できない人たち』(朝日新聞出版 2015年)の話をさせて下さい。

アスペルガーとは】
別名ASDアスペルガー症候群 発達障害の一種
「他人の気持ちがわからない」「KYな行動をとる」
「言葉の裏が読めない」「優柔不断で優先順位を決めるのが極端に下手」

極度のマイペースであったり、言葉や心情の機微を感じ取れなかったり する症状のこと。
脳の構造が原因であるため、精神病のように治るものではない。

ちなみに僕もこのアスペルガー症候群の疑いがあると医者に言われたことがある。(軽度であると信じたい)




なんかここ最近新書多いな。

【概要】
アスペルガー症候群はいつから認識されるようになったのか」

「うつや統合失調症等他の精神障害との関係性」

アスペルガーの人が活躍できる仕事は何か」

アスペルガーの子への適切な教育支援とは」

アスペルガー症候群の周囲について学ぶ解説書。

【読むべき人】
周囲にアスペルガー症候群と思われる人物がいて、その人への対応に悩む人

・「アスペルガー症候群ってそもそも何?突然出て来たけど。カイオーガなら知ってる」と思っている人
学校の先生


【読むとき注意する人】

アスペルガー症候群の人、もしくはアスペルガー症候群かも?と思っている本人

【感想】

「自分がアスペルガーかもしれない」と思う本人ではなく

「もしかしてあの人・・・アスペルガーかもしれない」疑惑を抱く周囲の人へ向けた本である。

著名人の具体例から始まり、症状、分類、歴史、特性、教育、就職、プログラム・・

様々な角度から解説。

特に「教育」の部分は内容が充実している。100人に1人はいると言われているアスペル

ガーの児童に対し、どのような接し方が適切か、どのような習慣を付けさせるべきか

いった日常生活において留意することから、アスペルガー等の発達障害児に対応した高

校・大学等進学先の具体例まで。アメリカや北欧の例で終わる専門書が多い中、日本の

教育を主軸に述べているのは貴重だと思った。

特に学校の先生におススメ。

普段何気なく飛ばした指示が、マイノリティーの彼らを苦しめることがある。

日本にも発達障害児を支援する教育プログラムを設置している教育機関がある。

知っておくだけでもかなり違うのではないか。

無論教育のさらに先・・・就職についてもページを割いている。

アスペルガー症候群を積極的に受け入れている大企業のケース(勤務形態や会社名、個人のケースなどかなり具体的)や、

アスペルガー症候群の人が就職する際に身に着けるべき技術を数値化するTEACCHプロ

グラム等について、かなり詳しく書かれている。

職場にアスペルガー症候群と思われる人がいて、彼等に悩んでいるような人がいたら

是非読むことを薦めたい。

何かしらの改善へ向けたヒントが見つかるのではないか。

 

アスペルガー症候群の周囲の人へ向けた学術的で実践的な解説書。
ただし「自分がアスペルガーでは?」と悩む本人には、なかなか薦め難い。

普段の生活で、

何に気を付けるべきか、

こんなときどうすればいいか
本人がすべきことについては全く本書では書かれていないからだ。

アスペルガー症候群の人はひとつの特性であると考えており、周囲の人が配慮をすべきである。
そういった筆者の考えが薄々見える。

でも実際どうなのか。


「周囲の人との齟齬は、確かに少しでも減らしたい。

でも周りに全部負担押し付ける自分はいったい何なのか・・・。

やっぱり自分はダメ人間なのでは・・・?」

 


本人が読むには注意が必要。

低い自己評価は、本書でも触れられている精神障害(鬱、統合失調症等)を招きかねない。
あくまで本書は「彼ら(≒アスペルガー症候群本人)を理解するためのやさしい解説書」(本書カバー裏)なのである。

アスペルガー症候群の人は、「彼ら」。

当事者へ向けた本ではない。

周囲の人へ向けた本である。

本人に向けた本ではない。

ではアスペルガー症候群の人はいったい何を読めば・・・となると、

西脇俊二先生の関わった本を僕は薦めたい。
難病の治療と同時に、アスペルガー症候群の本を近年出している精神科医である。

というのも西脇先生自身がアスペルガー症候群本人であり、かつて「生きづらい」経験を積んできた人なのである。

彼が書く本は、「本人がどうするべきか」が第一に書かれている。

当事者である分視点が違う。

アスペルガーでは?と悩む人は、本書ではなく西脇先生の本を読むことを強く薦めたい。




例えばこちら。
国実マヤコ著 西脇俊二監修『明日も、アスペルガーで生きていく。』(ワニブックス 2017年)


アスペルガー症候群の人々を主人公にした短編集であり、

最後には一遍一遍のケースに触れた先生の解説が収録されている。

アスペルガー症候群の性質と改善策が丁寧に書かれており

読んだ本人は実践にすぐに移せるかともかく、

「よし、がんばろう」

となるので、かなりお薦め。

以上である。

タイトルに配慮が必要だと思う。

恐らく、このタイトルで本書をとってショックを受けたアスペルガー当事者は少なくないのではないか。結構僕は読んだ後ブルーになった。

そもそも、アスペルガーの人達を「他人の気持ちを想像できない人たち」と断言することが冷たいように思う。若干差別の意すらこもっているようにも思う。

周囲の人・特に学校の先生は読んでもいいかもしれないけど、それ以外の人は別の書籍を読むことを勧める。他にもいい本は山程あるはずだ。

 

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20201109 内容を一部変更・編集しなおしをしました。