幼少期、好きだったものって結局永遠に好きではないですか。
ほら3つ子の魂100までとか言いますし。
たいらめぐみ『増補版 お人形事典~ファッションドール編~』(グラフィック社 2021年)の話をさせて下さい。
【概要】
身長は50㎝以下のプラスチック製の人形で、着せ替えができるもの。p.8 *1
を基準として、所持人形数4000を超えるコレクターでもある作者が、
誰もが知っているリカちゃん等お人形から、
外国諸国で生産されている着せ替え人形、
時代を超えて国境を越えて
きせかえ人形を網羅。
バービーが何故ずっと日本のおもちゃ屋に並んでいたのか
リカちゃんとジェニーのルーツの違い
着せ替え人形の現在・・・
筆者による日本のきせかえ人形史のコラムは必読もの!!
人形者必携の一冊。
【読むべき人】
・ドール愛好者
・昔遊んでいた人形で、名前が思い出せない人形がある人:例えば僕はこれで「ブリッツ」「ココドール」の存在を思い出し、「ドリームポケット」「マドモアゼルジェジェ」の名前を知りました
・人形に関心がある人
【注意すべきこと】
本書はあくまで「ファッションドール編」であるため、
ビスクドールである「SD」「MDD」や、韓国・中国製の「DOLL chateu」「imda」「DOLLZONE]「woodpeaks」等は登場しません。ソフビであもあるLDDも論外。
また着せ替え自体よりもお世話を目的とした、ポポちゃんメルちゃんレミンソラン等も登場しません。
だがしかし、尾櫃制服計画も採用されていないのは納得いかない。なんでや・・・えっくす☆きゅーとが採用されているのに・・・これは採用してええやろ・・・。
【感想】
お人形好きですか?
僕は正直に言うとうんまぁはい大好きです。どれくらい好きかと言うともうTwitterで「人形垢」を作り人形の画像を掲載したり逆に延々眺めたり、ヤフオクで20万30万する人形から1000円のお人形まで津々浦々みて「もしこの子が家に来たら・・・」と妄想したり、ミンネで可愛いきせかえ服を血眼になって探したり、メルカリで「リカちゃん」と検索し永遠と繰り返されるキャッスル製の転売に苦笑をするくらい好き。以上のこと大抵毎日やってる。日課。多分一日24時間の内2時間は人形のことを考えているといっても過言じゃない気がする。
仕方ないのだ。人形の画像を見ると心が癒され落着くのである。心がざわざわしない。しぃん・・・すぅん・・・かわいいー・・・となる。しぃんすぅんかわいいー・・・。
これが例えば人間。ましてやアイドルだとこうはいかない。ヤベ!?可愛いなんで!?どうして!!え!!ライブやるの!!!はぁ!?握手会!!!グッズうぉぉぉおおお!!!になる。エネルギー源や生きる理由にはなりうるが、心が落ち着くかと言うとちょっと違う。まぁ櫻坂46大園玲さんの美しさを前に心を凪で保つことが出来る人の方なんてこの世にはいないとは思うんですけれども。
人形は「静」のかわいい。人間は「動」のかわいい。
この往復をしながら僕は今日もどうにか息をすることが出来ている。
なので本書が発売されると知った時は「ああ買わなきゃ」と思ったし、ましてやそれの新装版が今年の春出ると知った時は「近くの書店で取り寄せなきゃ」とまで思ったものでした。
実際その「近くの書店」である「ひばりブックス」が、奇跡的に本書を取り扱っていたため取り寄せる必要は無かったわけですが・・・。
確かに、ひばりブックスは普通の本屋とは違って駅前の戸田書店の文芸担当だった人がやってるいわゆる「ちょっとこだわった」本屋で、ラインナップは一筋縄ではいかない本屋ではあるけれども・・・・まさか・・・こんな求めていた本がピンポイントであろうとは!!!
僕「え!!!なんでですか!!なんで取り扱おうと思ったんですか!!!」
店長さん「いや・・・かわいい本だなと思いまして」
僕「デュ…デュフフフフフフフ(くぅ~~~~~~分かるぜ!!!!)」
なんだろう。長年本を取り扱っていると、近所の人が求めている本が分かるセンサーみたいなのが発動するようになるのかな。ビビビ。人形者ノ波動ヲ発見。オ人形事典シイレヨ仕入ヨコウニュウサセヨ。
中身の感想としてはまぁうん最高。最高です。
これに尽きます。
まずお人形の写真がいっぱい掲載されている。
しかもほぼ実寸大。
見て下さい。この本。長ぼそいですよね。
なんでだと思います?
そう、お人形をほとんど実寸大で掲載するためなんですよ。
最高じゃないですか?そうつまりは最高。
要するに実寸大のお人形の写真がたくさん見られる本ということなんですね。
Twitterだといくら美麗な写真と言っても実寸大、となるとなかなか厳しいじゃないですか。27センチのジェニーちゃんも50センチを超えるスーパードルフィーも1メートル超える乙姫ドールも何ならラブドールの写真だって、全部僕の掌サイズのスマートフォンサイズの写真になってしまう訳です。
ところがどっこい、実寸大。
あーリカちゃんって昔はもっと小さかったんだーとか外国の人形ってなんか知らんが顔でかいなとかやっぱココドール顔ちょっとココリコ田中に似てるわココリコ田中ドール略してココドールとか当時一人思ってたけどまぁ分かるとかそういうのが丸わかりな訳です。
スマホの写真以上に実物感がある。
そういった意味でも人形者の琴線にはビシビシ触れる一冊になっていると思うのです。
あと単純に知らないことがいっぱい掲載されている。
お人形たち自体。
知らない国産お人形群。昭和のものであれば知らなくても当然だけど、21世紀に入って生産されていてもその存在自体知らないお人形が結構あって驚く。例えば「フーズザットガール」。今やSDのメッカ・ボークスが昔出していた着せ替え人形。え!?あのボークスが!?21世紀に!?こんなお端正なお人形を!?になりました。
そしてヨーロッパの着せ替え人形群。バービー以外に外国製の着せ替え人形・・・って言われると案外知らないもんじゃないですか?人形者だとタミーちゃん、て出てくると思うんですけどじゃあタミーちゃん以外は?え?ん?になる訳です。ビスクドールでとまっていたヨーロッパの人形史が更新されていく。
そしてお人形のバックボーン。
国内の人形製造会社。タカラって、リカちゃん以外にもこんなに出していたんだ・・・となります。そのどれもがなんとなくリカちゃんと似通っていてそしてどれもがまぁ可愛い。昔から人形と言えばタカラだったのかしら。そしてバンダイ。まじか。人形作ってたのかよ。あと日本の着せ替え人形史を語るにはオオイケという会社を避けて通れないことを知る。あとココリコ田中ドールココ・ドールが、あのmomokoで有名なセキグチから生まれた人形であることを知る。
そして着せ替え人形史。なぜバービーちゃんがこんなに国内でメジャーな存在になったのか。眼球の色が変わるブライスはどういった背景の中誕生したのか。本書に3か所にはさまれるように書かれた、お人形史のコラムは非常に勉強になる。ていうかもうこの「きせかえ人形史」だけで1冊まるまる書いてほしい。
お人形を趣味にしていて、且つそれをちょっと勉強しようかなとか思い始めた人形者にはうってつけの内容である。
以下簡単に、一通り読んでビビッときたきせかい人形を挙げておく。
・おしゃれスタイルドール(タカラ):きゅるんの顔面が良い。普通に欲しい。
・ミニー(オオイケ):物憂げな顔面が良い。普通に欲しい。
・スージー(R&D Fashiondolls):切れ長な目の顔面が良い。普通に欲しい。
・ターニャ(Giochi Preziosi):絶妙なリアル加減が良い。普通に欲しい。
・フーズ・ザット・ガール(ボークス):クールにアニメライズされた顔面が良い。普通に欲しい。
・ジョディー(IDEAL Toy corp.):雰囲気が良い。普通に欲しい。
・シンディー(Petigree Toys):表情が良い。普通に欲しい。
・ドリームポケット(バンダイ):懐かしすぎて良い。見たことある。普通に欲しい。
・きらきらセーラ(トミー):小さい。可愛い。普通に欲しい。
・ピコ(タカラ):昔ながらの顔面が良い。普通に欲しい。
あと本書を読んで初めて知って「ええ!?」ってなったことも挙げておく。ネタバレにならない程度に・・・。
・バービーちゃんと日本の歴史
・ジェニーちゃんとエクセリーナさんの違い
・momokoとrurukoの関係性
・タミーちゃんという存在について
・東欧と着せ替え人形史
以上である。
とにかく勉強になる一冊。そして人形者には琴線に触れまくる一冊。
といった感じで最高の一冊であった。
永久保存版である。
買おうか否か悩んでいる人は是非購入することをお勧めする。
読めば手元にいる彼女達への愛が、ひと際深くなること間違いなしである。
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LINKS
僕のドール垢。
過去に書いたジェニーちゃんの写真集の感想です。
ドール関連書籍ブームがきてる。
*1:その他にも掲載基準は多く挙げられております。