小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

我妻俊樹『忌印恐怖譚 みみざんげ』-呪いはきちんと手順を確認して挑みましょう。-

 

 

 

懺悔しなさい。

この話を読んでしまったことを。

 

 

 

 

我妻俊樹『忌印恐怖譚 みみざんげ』(竹書房 2019年)の話をさせて下さい。

 

 

 

【あらすじ】

幻惑の名手・我妻俊樹が描く、日常のすぐ横に口を開けた常世の深淵ーーーーー。

記憶の底にある家を探していると、祖母に異変が起きる「ヒロエおばさん」

バス停で出逢った身の毛もよだつ異形とは・・・「待合室」

バスで得ていたラ知らぬ間に五回に迷い込んでいた「深夜バス」

40歳を境に突然、命を脅かす怪異に見舞われ始める「ガタガタ」など、

48篇の実話恐怖譚を収録。

黄泉からの声があなたにも聞こえるーーー。

 

【読むべき人】

・不思議系の怖い話が好きな人

・厭な話が読みたい人

 

 

【感想】

瞬殺怪談も読んだし、結構いろんな怪談師の話を読んできた・・と思う。

でもやっぱり、一番好きなのは我妻俊樹氏の集めた怪談だなぁ・・・と思う。

摩訶不思議。誰も予想つかないような現象。恐怖。未知。ぞわぞわ・・・と同時に来る巨大な?マーク。

独特な読後感が堪らなく好き。だし、代替のきかない怪談蒐集家だと思う。

だから2020年でとまっているけど一刻も早く新刊単著を出してくれ。*1短歌を謳う人は数いれど、実話怪談を謳う人は我妻俊樹氏だけなのだから。

 



 

以下簡単に、特に印象に残った実話怪談の感想を書いておく。

1-2巻と比べて、女性が関連した実話怪談者が少し多いかなぁ、といった印象。せつなくくるしいじっとりしている。

一番好きなのは「休憩室」

 

「ヒロエおばさん」pp.17-22:昔母親と共に、ヒロエおばさんの家に行ったことがある。整えられた部屋、プードルがいて、そして・・・。

近づくと犬の吠え越えが聞こえてきて、玄関の引き戸を開けたとたん、飛びついてきたリリーという名の雌のプードルに芙美さんはいつも顔じゅうを舐められた。p.17

「2020年こんな西の魔女は嫌だ!大賞 実話怪談部門第一位」の作品ですね。

何もかもがつながらない割に、最後までド派手にバッドエンド突き抜けるのが最高。

あとトイプードル。トイプードルはなかなか実話怪談に出てきませんからね。そういった意味でもインパクトあった。

ちなみに僕の実家にはトイプードルがいます。かしこくてかわいいです。もうお祖母ちゃんなのですが、子犬期から見て思ったのは、僕は老犬が一番好きだなということです。大人しくてテンションが低いのがいい。今が一番かわいい。

 

「人違い」pp.48-51:よく「アサイコウジ」という人物に間違えられる。

タクシーの運転手「・・・・・・アサイくん?」p.50

だいたいこういうドッペルゲンガー話というのは、ドッペルゲンガー自体に怪異が宿るものですが、それを覆す一篇として非常に興味深かった。

ちなみに僕も高校3年の時「すごいまぐろどんに似ている人がいる」と結構な頻度で言われたことがあります。隣の私大付属高校の制服を着ているとのことだったので別人だとは思うのですが、今頃彼女は何しているのでしょうか。それともそれは「中学受験せず公立中学にいて公立高校受験したけど失敗して私立高校に通っている僕」、要するに並行世界のパラレルまぐろどんだったりするのでしょうか。

僕自体非常に動きが特徴的なので、あんまり似ている人っていないと思うんですけど・・・。まぁ顔は普通の顔ですが・・・。

 

「葬式の映像」pp.52-53:入院中の祖父に頼まれた、録画したドラマのビデオを届けるたが・・・。

んなわけあるかぁ~いの一篇である。絶対入院中の祖父の葬式映像じゃんけ!!と思ってワクワクしながら見たら違った。祖父最後まで元気だった。

そういう現象があるんだ、と思った一遍。

ちょっとあの現象に似てる。「■■■の死亡日は?」という大物俳優の逝去を予言した・・・あの・・・。

 

「待合室」pp.54-57:バスの待合室の向こうから金髪碧眼の少女が手を振って来るが・・・。

少女「・・・・・・だから逃げなってあんなに言ったのに」p.56

頼む実話であってくれ!!!と思った実話。だいたいの実話が、頼む実話じゃないといってくれ!!!と思うのが相場なんですが、これだけは事実であってほしいですね。

というのも、漫画というか小説というか・・・そういう世界観が垣間見える実話怪談なんですよ。超能力とか幽霊バスターとかそういうのが僕達の知らないところで起きているのか起きていてくれ!!あわよくば僕も仲間に入れてくれ!!!29歳、婚期のことを言われるとブちぎれる、ダウナー白衣眼鏡女になってやるから!!

 

「チコちゃんの傷」pp.64-67:電車で居酒屋の女の子を見かけた。しかし、左ほおには見たことのない傷があり・・・。

「だからやっぱり、夢じゃなかったんですよね」p.67

え?ってなる一篇。最後まさかの展開過ぎて怖いんだが。傷が伝染るということなのだろうか。妙な後味がインパクトある一篇。

普通だったら、なんか視力が極端に悪くなるとか・常に悪臭がするとか・歯がない・眼球がない、とか、五感に訴えかけたり視覚的に恐ろしい容貌になるならまだ分かるんですけど・・・。

 

「ピース」pp.68-69:犬のピースを散歩させていたら何処からかお経が聞こえてきたのでハミングをすると・・・。

「ちょっとピース、あなたもお経が唱えられるの?」p.68

冷静に考えると、お経に合わせてハミングなんかしますか?しませんよね。この地点ですでに何かしらに取り憑かれていたんじゃなかろうかと思う一篇。結末も陰惨。そうくるとは・・・。

あとキングオブコントのピースのネタを思い出した。綾部がなんか又吉をリードでつないで散歩させてる・・・。

 

「休憩室」pp.73-76:工場で働き始めた。すると先輩が声を潜めて教えてくれることには、休憩室は幽霊が出るからだれも使わないという。若い女の幽霊が・・・。

頬に目立つほくろがあったことが印象に残った。p.74

幽霊が出てくるシーンもあり、上記のように具体的な言及もされている。この場面だけでも十分幻想的でなかなか良いのだけれども、結末が予想外すぎて、あとあっけなさすぎて衝撃を受けた。

残酷。

でも若い女とは無縁のドライな工場と言う環境にもたらされる人さじのロマンチック。

多分、多分だけど先輩だけが好きで二人で時々会うのが彼女の唯一の楽しみでありこの世にとどまる理由であったのに、誰にも言わないでほしかったのに、第二者に言っちゃったからこういうことになったんじゃないのかなぁ。

 

「蝋人形の蝋人形」pp.89-93:蝋人形の館の夢を見る。著名人の蝋人形が並ぶ中で一つ、見知らぬ顔の長い男の蝋人形を見つける。誰の蝋人形かを館長と思わしき男に尋ねる。

「これは蝋人形の蝋人形なんですよ」p.91

おまえもろうにんぎょうにしてやろうか~~!!??という声が聞こえそうなあらすじであるが、実際は静謐に淡々と物事が進む無口な奇譚である。

発生する怪異の目的や原因が一切分からず、しかし悲劇性もないのが良い。そうだよね、別に夢の中でたまたま館に迷い込んだからと言って蝋人形にされる筋合いはない。

また、主人公は女性なのであるが、その謎の蝋人形の男が将来の結婚相手だった、という王道展開がないのも良い。夢で見た館に将来の結婚相手がいる筋合いはない。

ただ粛々と館は存在し粛々と物事は進んでゆくのです。

 

「カメイ」pp.94-97:カメイと名乗る五十代くらいのが上司を尋ねてきたが、あいにく不在であった。後日カメイと名乗る老女が上司を尋ねてきたが、あいにく不在であった。後日、

すると女性はなぜかぱっと花が咲いたような笑顔になり、どこの病院ですかと訊いたのでその社員はうっかり病院名を教えてしまったのという。p.96

呪いか死神か。さぁどっちだという具合。

会社に訪問しているのが、五十代くらいの男⇒老女⇒童顔の若い女性といった具合に、相手の警戒心を解く姿にどんどん変化しているのが恐ろしい。なんとしてでも上司と会って■してやる!!という気概が感じられる。熱意が違う。就活なら間違いなく採用されるであろう人材?霊材?である。

ちなみにカメイさんとは、僕は人生で一回会ったことあります。同じサークルの優しい女の子でした。今元気にしているのかなぁ。

 

「ベンシン」pp.104-108:少年が返ってくると家の前に救急車が止まっていた。慌てて部屋に入り、人気がない階段を上がろうとすると知らないおじさんが二階から覗き込んでいる。

「あのねボク、ちゃんとベンシンの管理をしてないからこういうことになっちゃたんだよねー」p.106

最後におじさんは将来の少年?ということが暗示されて終わる、謎が謎を呼ぶ一篇。黄色い救急車の話は聞いたことあるけどそれ以外のやばい救急車もあるんだなと初めて知った。

ベンシン、という言葉の意味は最期まで明らかにされていない。僕は「分身」の類義語だと思う。漢字だと弁身、「わきまえる身」、要するに将来の自分をしっかり管理していなかったから、ぼんやり出てきたということじゃないかなぁ。

でもじゃあ、今の僕(29歳・限界フリーター・喪女)も将来の自分とか管理出来ている自信ないから・・・だから、ふと通勤で通る大通りの棲みとかに女のホームレスとかふと歩道橋に道路を覗き込んで今にも飛び降りそうな女であるとかそういうのを見たら絶対に目をそらそうと思う。現在に実在しているかどうかわからないので。逆に幸せそうな30代ー40代の家族連れ等はバンバカ積極的に目にするようにしよう。特に帰宅が夜道なので、気を付けて毎日通勤退勤したいデスネ。

 



 

「火」pp.116-117:

最後の出勤日に勇五郎さんは病める原因になった上司の名刺を一枚失敬して、帰りに火災現場に現在建っている某施設の敷地内でそっとその名刺を燃やしてはを憎しみを込めて踏みつけてきたという。p.116

呪いはちゃんと手順を踏んで呪いましょうという一篇。なんとなくでやるなよと。だとしても、結構主人公の男は可哀相だなぁ、と思う。

今後僕が人を呪おうと思ったとき、まぁ大抵は内なる炎のごとき憎しみで終えるわけですが、人を呪おうと思ったときはちゃんと手順を踏んで方法調べてしっかりと呪おうと思います。そんな時無いのに越したことはないが。

 

「骨壺」pp.123-128:酒浸りのニート・久男のもとに、若いショートカットの女性が突如訪れる。外に出歩き、墓地につくと、骨壺まで持たされるが・・・。

「久男さんの分は一生の物、けっして手放してはいけない素敵な宝物」p.127

怖い、よりかは不思議、幻想的な奇譚。骨壺、土、等出てくるもの一つ一つは別に美しくもなんともないけれど、女の雰囲気・言葉・そして「久男さん」呼び・・・が複雑に絡まって夢か夢でないのか、現実なのか現実でないのか、全ては怪談のあわい。そう、まさしく「実話怪談」というのにふさわしい一話。

最後久男は助かって終わる。書かれていないが、就職したのかどうかは気になる。後年旅行の趣味を復活させた旨が書かれているが、それは様々な墓地を訪問してショートカットの女性を探しているからでは?と思うのは勘ぐり過ぎかなぁ。

真人間になったのか。それとも幻の女を追い求める亡者・・いやき■■■となったのか。

 

「ラーメン屋」pp.151-154

すると路傍に広がった吐瀉物はたった今食べたばかりのラーメンの麺や具ではなく、小さなネジや輪ゴム、それに派手な色のプラスチック片らしきものが大量に混じっていたという。p.152

ええー、どゆことー!?になる一篇。まぁ予想通り、ラーメン屋自体存在せず主人公が食べたものはラーメンではない、ことが暗示される結末である。でも目的が分からなすぎる。プラスチック片をラーメンとして食べられるならばSDGsにはとても良さそうだけれども、多分目的はそれと違う気がする。

中盤、地球柄のスーパーボールを吐き出す描写がある。登場する社会科の先生が常時教室に持ち込んでいた地球儀と関係あるのでは?と親友が言及しているが、それはふつーに今インスタとかで話題の地球グミでは?じゃあカラフルなプラスチック片ももしかしてインスタ映えを意識して・・・?社会科の先生は主人公の青年と一緒に、インスタ撮りたかった・・・ってコト!?

 

「暗いカップル」pp.155-159:居酒屋の隅にいた暗いアベックの写真を撮ると・・・。

頭の中でハルミユルシテー、ハルミユルシテーって聞こえるんだってさ。p.158

不気味で意味不明で気持ち悪い。怖い。

普通なら女の声が聞こえそうじゃない?亡くなっている(と思われる)のは女の方なんだしさ。でも「ハルミユルシテー」ということは、恐らく聞こえているのは生きてる(と思われる)男の声、ってことでしょ?

そもそも赦す、って何を?考えれば考えるほど怖くなる沼のような実話怪談。

 

「屋上の話」pp.159-164:島に住んでいる高校生が、友達の家から帰る途中で見た物は。

人間の立ち姿のような形で、しかも顔に当たる部分が横を向いているように見える。p.163

屋上に関する2篇が収録されている。特に二篇目の話が印象深かった。

屋上にたくさんの人影が見えて、雲の形が人の形に見えた。それだけである。

それだけ、なのだけれども、島、夏、雲、蜃気楼がごとくこの世の存在でない物物・・・雰囲気が素晴らしく良い。

何か昔、似た話がアニメ「闇芝居」でもありましたね。あれは病院の屋上で3人が手を振っている話だったか。

シンプルな話なのに雰囲気にやられた一篇。

ちなみに前半の一遍目もまぁ悪くないです。謎の親子の話。知らない人、っつーか、知らないモノ、にはついていかない方が賢明ですね。

 

「海岸の家」pp.165-168:夢の中で海岸をとぼとぼと歩く夢を見る。疲れている。

「あの家で、あたしが死んでたのに、あなたは見捨てた」p.166

不思議な話である。簡単にあらすじを話すと、夢に現れた家に辿り着いたら変な匂いがする。妻がいる。「見捨てた」云々言う(上記抜粋部分)。起きる。見た夢のことを話す。「正夢かもね」と妻が言ってその日失踪。後日離婚届が届く。支離滅裂なようで、筋は通っているような気もするし、筋が通っているようで何もかもがめちゃくちゃな気がする。怖いよ。

思うに、妻は本当に人間だったのか。魚とか人魚とかぎょ人とかそういう類だったんじゃないのか。だから生臭い家で女は死んでいたんじゃないのか。

なんとなく、昔ばなしが舞台を現代にしたらこういう風になるだろうなぁ、とか思った。

 

「キヨミ」pp.195-204:ヒモをやっていた男は、カンがいい彼女に自分の死を予告される。彼女は泥酔しているとはいえど妙に気がかりで・・・。

知らない女だが、よく知っている女のような気がしてならなかった。ずっとこの女をここに待たせていたのだ、と浩志さんは思った。p.201

本書のクライマックスに当たる長編実話怪談。帯にも一部抜粋が掲載されていますね。帯なくしたけど・・・。

怖い、けれどどこか詩的でそしてノスタルジー、まるで心がきゅってなる。痛いよ。随所で我妻先生の実話怪談本にこういう長編は掲載されていましたが、本作はそのなかでもかなりの良作といっても差支えないと思います。段落ごとに話が進んでいく特殊な文体も良い方向に作用している。

あと、ただ赤い視界の現象だけではここまで印象に残らなかった。玄関先での女がこれまた凄く良い存在感出しているんですよね。

 



 

以上である。今回も良作が多かった。

そして最新作となるシリーズも残り一冊。せつねぇー。

大切にしかし一気読みします。

 

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20250615

約2年ぶりのブログ更新である。この記事も書いたのは2年前、編集も約2年前と思われる…と思ったら、多分これ文章は今から5年前っぽい。やべぇよ。どんだけあっためてたんだよ。暖かくなりすぎて腐り始めているかもしれない。

実はこの文字の大きさの編集が面倒で、記事は100以上溜まっているし、何なら最近も書き始めた。

少しずつでああるけれど、そのストックを放出したり新しく書いたりして、更新頻度を上げていこうと思う。

 

*1:記事自体は初夏に書いたのですが、今年の10月に名著を出しております。