うおおおおおおおおお!!!!!!!!!
くだばれくたばれPTA!!!!!!!!!!!!!
くたばれくたばれPTA!!!!!!!!!!!!!!!
筒井康隆『くたばれPTA』(新潮社 1986年)の話をさせて下さい。
【あらすじ】
マスコミ、主婦連から俗悪の烙印を押されたSFマンガ家の怒りが爆発する「くたばれPTA」。
高度成長時代の会社員のモーレツぶりを描いた「猛烈社員無頼控」。
処女が寄るごと10億の男たちを交わる「20000トンの精液」。
一卵性双生児の弟が、自分の恋人を奪った兄に奇想天外な訃報で復讐する「かゆみの限界」・・・・・・風刺、SFからホラーまで、黒い笑いが全開のショート・ショート24編。
裏表紙より
【読むべき人】
・面白い本が読みたい人
・PTAなんてクソクラエと思っている人(僕は思ってないです)
・フェミニズムなんてクソクラエと思っている人(僕は思ってないです)
・何が女性の社会進出だクソクラエと思っている人(僕は思ってないです)
【感想】
今作は様々な雑誌に掲載された短編を集めた一冊である。
前半は短いショートショート中心、後半は短編小説が中心となる。
そのどちらもが、筒井先生の独創痛快爆笑アイデアが中心に展開されているので基本的にはジャンルレス、裏表紙にはSF・ホラー等の文字が並ぶが、「ブラックユーモア」。この一言に尽きる一冊だと思う。
もう少し柔らかく言うと、「筒井ちゃんのブラック★ユーモア!~エロもあるよ!ちょっぴりグロもあるよ!~」といったところか。
難しい本をようやっと読み終えたので、ついつい気軽さ求めてぺらりとめくったら、ニヤニヤ少しムラムラしながら一通り一瞬で読み終えてしまった。文体が非常に読み易く、且つ一編一編短いのでとても良い。
以下簡単に24のブラックユーモアに対する感想を述べておく。
あと結構中身がぶっとんでいるけれどそれは時代のせいでもあるので、発表された西暦も合わせて記しておく。
秘密兵器:女の子が高校やきう!!1969年
当時じゃ非現実的だけれども、今じゃ女子が高校野球するのもそう遠くない気がする。
「今」に値する2021年は、この作品が書かれた1974年から見るとおおよそ「50年後」になるわけだけれども。
遊歩道:白いとこしか踏んじゃダメ遊び1968年
「白い所以外踏んだらそこは虚空で落ちてゆくんやで~」の話である。昨今では横断歩道を舞台にその話を見ることが多いけれども、今作では遊歩道。
にしてもこのアイデア、約50年前からコスコスされてきたアイデアなのか。
そりゃあ陳腐であるわな。
癌:患者が突如医者に告白する衝撃の事実?年
この話うんぬんよりも、本作巻末に掲載されている「発表誌不明」の5文字の方が圧倒的に怖い。
え。そんなことある?
え・・・そんなことある??
美女:タイムマシンに乗って世界三大美女と会ってきたぜ!!1968年
美人が美人じゃなかったよぴえんの話である。
けれど結末「未来」の話が一ひねりあって良かった。作品発表時から53年後現在・・・「男の娘」が台頭している現代じゃあ、こんな未来もあり得ない話ではないのかもしれない。
狸:酒好きの狸が狐にたぶらかされる話1968年
Twitterのあの「たぬきときつね」を思い出した。
概ねあんな感じのほのぼのコメディ。
酔いどれの帰宅:酔いどれが帰宅するぞ!!1968年
ホラー展開か?からのまさかのクイズ展開である。
でもこれに収録されている話のほとんどを、筒井先生酒飲みながら書いてそう。
歓待:美人が接待してくれるという星にいくが・・・1969年
いずこも愛は・・・:ロロとピピは愛し合っている・・・1968年
解説によると、こういう話は「オーバー・ロード」といい、この物語自体もアーサー・C・クラーク『太陽系最後の日』からパロったものらしい。p.268
結末意味わかんなすぎて、原作の方に興味がわいた。
落語・伝票争い:どちらの奥様が喫茶店でおごるか言い争いをする話1968年
僕だったら素直に奢られますね。だから友達少ないんでしょうね。
ちなみに、この落語をやってもらいたい女性声優トップ3
1位:悠木碧
理由:ノリノリでやってくれそう。
2位:田中理恵
理由:登場人物全員乳酸菌取ってなさそうなので
3位:ファイルーズあい
理由:プリキュア主演声優にこういう演技をやらせて射精するのが乙なものです。
弾道軌跡:おれたちは、司令船から月着陸船に乗り移った。p.53
1969年
アポロ11号の月面着陸に際して書かれた話である。
当時の作家たちはこういうニュースやテーマを主題にたくさんの話を書かなければならないから大変だなあと思った。今じゃプロがやらなくても何前何万もの素人がやってくれるからいい時代だね・・・いい時代なのかな?
2001年公害の旅:「公害」に汚染されつつある日本で、家庭を持つ私が下した決断
1970年
「2001年宇宙の旅」をパロディ化したタイトルである。これも星新一か?と思った。
けれど最後、脳裏に漫画のようにくっきりと映像が浮かぶようなあの悪夢のラストははっきりと筒井康隆で、こんな未来が来たら嫌だなあ、と素直に思った。
篠田節子「静かな黄昏の国」を思い出した。あれもあれで悪夢の終わり方だった。
1970年
モーツァルトの一生を文字通りひっちゃかめっちゃかに描いた作品である。
多分この短編を書くのに少なくとも教養よろしくモーツァルトの本ーツァルトくらいは丸々読まないといけなかったと思うのだけれども、そういった努力を美しく結実させないのが素晴らしいですね。
多分教養あればある程読むと面白く感じる短編だと思う。僕はまぁうん、面白かたヨ。
ナポレオン対チャイコフスキー 最後の決戦:フランスVSロシア
1970年
まずこの短編を楽しむには、「ナポレオンがロシアの寒さに屈服して初めて戦争に負けた」という基本的世界史の知識、「1812年は、VSフランス(ナポレオン)の戦争にロシアが勝ったことを祝福するために作られた曲で、終盤大砲のパートがある」という音楽的知識が必要である。
大砲を!!!ぶっぱなせ!!!!!くたばれくたばれPTA!!!
ちなみに僕は「1812年」オーケストラの曲のなかでもすっごい好き。だからこの短編もすっごい好き。
カラス:お金搾取目的の機械を導入したら、病院にいた鳩がいなくなってカラスがきちゃった!!1968年
最後の一行で大爆笑。事態はますます悪化する!!
しんじまえ!!しんじまえ!!くたばれくたばれPTA!!!
かゆみの限界:ある日顔を真っ白にした双子(弟)が、主人公の所持するノミを譲ってほしいとやって来た 1967年
もう読んでいるだけで痒い。嫌だ。痒い。
特に後半の怒涛の痒みの畳みかけが最悪。もう最悪である。くたばれくたばれPTA!!の勢いはどこへやら、もう全身が痒くなってくる。
ちなみにも3月になって花粉ブンブンしてますね。辛い。鼻が出るのもそうなんですけど、口内も凄く痒くなるんですよ。あー嫌だ。あー嫌だ。
ここに恐竜あり:ある日突然日本に恐竜が来ちゃったよ!!1970年
こういう「話が通じない奴が一方的に殺す」的展開の短編は、筒井先生非常に多く書いている気がする。
例えば「世にも奇妙な物語」で実写化もされた「走る取的」とか。この前読んだ短編集『鍵』に収録されていた「死にかた」とか。
「走る取的」では話通じないお相撲さんがひたすら走って襲ってきた。「死にかた」では話まだ出来る鬼ちゃんがひたすら金棒振るって殺してきた。
今回は、比較的話が通じる恐竜がひたすら日本を蹂躙してきた、にすぎない。
「話が出来る≠意思疎通が出来る」。話し合えば分かるわよ~みたいな理想論をぶっ潰すのが心地よい一編。
密のような宇宙:ロロとピピがいちゃつくよ!1972年
こういう風に愛し合える相手が童貞(メス)の僕にもいるのだろうか。
最近穂村弘の昔のエッセイみたいなことばっか言っていて嫌だ。
猛烈社員無頼控:平垣海苔助は猛烈社員だった1971年
僕も見習わなくては。
このあたりから15ページ程度の作品が増えてきて、ショートショートよりかは短編小説に近い作品が並ぶようになってくる。
最後のクリスマス:彼女が、サンタと毎年えちえちをしていると知ってしまった。1968年
聖母誕生の瞬間を踏み潰す話である。おいおい、お前もヨセフとして名前だけでも後世に残せたのかもしれないのに。
サンタにNTRされるなんてそんな同人誌的展開がもう1972年・・・50年前には出来ていたなんて。くたばれくたばれPTA。
あと、篠田節子「静かな黄昏の国」を思い出した。
女権国家の繁栄と崩壊:革命によって女性が政権を握ったぞ!!1971年
1975年・・・50年前の作品である・・・。この頃からもう「女性参政権」について延々議論されていたのかと思うと気が滅入る。
あと多分、当時は女性議員・女性管理職といった存在が非常に珍かったのではないかと推察する。そしてその存在は理想として語られていたのではなかろうか。
そういった時代風潮にこんな短編ぶっぱなすのはやっぱ頭おか・・・さすが筒井康隆である。
ちなみに、
革命家はしょせん政治家ではなかった。p.166
さらっと書かれているこの一文は、真理なのだけれども人間は何故何度も何度も同じ過ちを繰り返すのだろうか。
くだばれPTA:PTAがSF漫画家のもとに苦情を言いに来た!1966年
1966年・・・55年前の作品である・・・。この頃からもう「PTA」「子どもの教育によろしくない」について延々議論されていたのかと思うと気が滅入る。
大抵そんなの禁止して厳しく育てようとしたって、子供はなるようにしかならない。無菌室などありえないからもう放牧するしかないのである。
ちなみにPTAって「まんP」「Tバック」「Aカップは尊い」の略と聞いたんですけど本当ですか?
レモンのような二人:揚子は淳と付き合っていた。1969年
2人で愛するのではなく、皆で愛し合いましょう。といった超絶理論短編である。後半のえちえちシーンがめっちゃえちい。ちょっとこれは危なかった。
にしても、実際こういう愛の形ってあるらしいですね。男2人女1人で同棲している、というのを東京グラフィティで読んだ。
実際少子化核家族化LGBT晩婚化生涯未婚率等々の問題が噴出している現在、こういった愛の形が若者間で流行るのもそう遠くない未来なのかもしれない。まあ童貞(メス)の僕には関係のないお話ですが・・・。
20000トンの精液:処女のヒルダは毎晩10億の男を相手にしている。1970年
ア p.232
セックスを放送する。といった超絶理論短編2である。後半のえちえちシーンはそんなえちくない。安全である。
実際少子化核家族化LGBT晩婚化生涯未婚率等々の問題が噴出している現在、こういった番組が放送されるのもそう遠くない未来なのかもしれない。
というか実質AVも「疑似セックス体験」といった意味ではやっていることそんな変わらないわけだし。それを民法の電波にぶっ放している世界線な訳でしょう?するとそこでは多分AV女優と普通の女優の「ライン」も曖昧な訳でしょう?するともっと可愛いあの子やあの子が全裸になって身もだえする姿をテレビで無料で見られるってわけでしょう?
NHKは早くこの番組実装しろと思う。最近見なくなった朝ドラ女優とかが深夜一時くらいにこう雇用放送で「ア」してたらもう下半身やっばやばになりませんか?そしたら受信料も全部見事に徴収出来て、新しい社屋くらい10つ20つくらい建てられるでしょう。はい、くたばれくたばれPTA。
モケケ=バラリバラ戦記:地球の植民星同士の戦争を、タンは家族に会うことを求めて彷徨うが・・・。1973年
筒井康隆先生の大傑作「旅のラゴス」を思い出した。あれも切ない結末で終わったのではなかったか。
あと筒井康隆先生の「時をかける少女」に収録されていた短編を思い出した。主人公の名前が「信子」なのは思い出せるが短編の名前が思い出せない。あれも並行世界を駆け抜けていく話ではなかったか。
以上である。
おおむね痛快ストレス発散にうってつけの短編がそろっていて読んでいてとても心地が良かった。やっぱり筒井康隆サイコ~になる。筒井康隆サイコ~。
ちなみに「くたばれPTA」と本書のタイトルで検索すると、真っ黒い動画に白い線で雑に書かれた絵の動画が出てくる
僕「ア」
梨本ういだ。初音ミクの作曲家の。
慌てて再生ボタンを押すと「ア!!」懐かしい。この感じ。公開年数を見ると2010年だった。そうだ。この曲。懐かしい。当時はこの歌詞が抉るように心をぶっ刺したのだった。
多分「うっせえわ」を聴いている高校生は、10年前「くたばれPTA」を聴いている僕達だった・・・と世紀の発見!!!と思ってたらさっそくコメントの一番上に全く同じことが書かれていてワロタ。
頑張ってカラオケで歌えるようにと何度もYouTubeでパソコンで聴いていたけれど・・・結局「ペテン師が笑うころに」「死にたがり」しか歌えなかったけど・・・おいまて、「死にたがり」?
再生ボタンを押す。
僕「ア!!!!!!!!」
童貞の僕から出される20000トンの精液。
そうだ、この曲を聞いて初めて歌詞で涙するということをしたのではなかったか。
そして、この曲は10年たった今も鮮度がそのまま保たれている。
ア・・・あああ・・・・。
そして、これらの曲から10年たった今でも、梨本ういPは音楽活動を続けていて、昨年の8月に4曲も「うp」していた。
総じて聴くと、確かにそれらは10年前の「死にたがり」程穿つものはないかもしれないが特有の夜明けの不静脈のような梨本さんのメロディラインは健在で、ああ、憶えている。憶えているよ。僕のあの日にアスファルトに打ち上げられた猫の死体、ねえ、だから、「ほめてね」
***
追伸
篠田節子「静かな黄昏の国」はとっても面白い短編集だったので読んでほしい。出来ればリメイク前の文庫本の方が表紙もかわいくてエモいのでそっちを読んでほしい。
書影を掲載したいところだけど実家にあって掲載できないクソ。
LINKS
最近読んだ筒井康隆の本
・カリエールの絵を思い出した。一番最近読んだ。
解説が丁寧過ぎてドン引きした。
・傑作と言われるの分かる。僕も傑作だと思う。