小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

池田さとみ『REVENGE2』-昨日の自分に恥じない生き方出来てますか?僕は出来てません。-

 

 

 

元気が出るか出ないかといったら

まぁ、出ました。元気。

 

 

 

池田さとみ『REVENGE2』(小学館 2004年)の話をさせて下さい。

 

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青い表紙。

 

【あらすじ】

人生はハッピーエンドのプリンセス・ストーリじゃない。

敗北に涙する夕暮れも、

憎しみに身を焦がす夜もある。

でも、後悔に沈んだ年月の跡にこそ、勇気を奮い起こして戦った果てにこそ、

初めて手に入る愛もある。

それこそが辛かった日々への”復讐”、

あなたのハートに深く突き刺さる、

池田さとみの珠玉の短編集!

 

戦うのは今!

・・・明日の私に恥ずかしくないように

 

裏表紙より

 

【読むべき人】

・なんとなく元気が出ない人

・復讐、がいけないこととは分かっていても復讐心に燃えている人

 

【ためらうべき人】

・塾講師

 

【感想】

貸本屋で「怖い漫画読みたいんです!!」と言っていたら、

おばあさんがおまけで無料で貸してくれた一冊。

職場でリスカ騒動起こした帰りで凹んで歩いてた時だったんですけど、

きっとおばあちゃんには僕が元気ないこと分かったんでしょうね。

それで元気を出す何かしらにはなりますように、と

追加でサービスしてくれたんだと思います。

 

巻末にいろいろ雑誌の宣伝が載っているのが懐かしい。昔の漫画で掲載雑誌や推してる別作者の作品を紹介してたりするページが2-3ページはよくあったなぁ・・・。今じゃあ次巻の予告か、その作者の別作品をせいぜい1ページで紹介するのがほとんど。

本作品が掲載されていた雑誌は「Judy」とのこと。ラインナップ見る感じ、大人のレディース漫画雑誌といったところだけれど、今の小学館であるのはせいぜい「flowers」とかそこらへんじゃなかったか?

調べてみると、2008年に廃刊されていた。なんとまあ。

ところがどっこい、今映画公開されている「窮鼠はチーズの夢を見る」が連載されていた雑誌なんだそうな。見よう見ようと思って見れてないな。あの映画。

 

閑話休題

とまぁ、そんなこんなで手にした一冊。簡単に各話感想を書いていく。

ちなみに5編中2編の悪役の職業が塾講師となんか知らんがめちゃくちゃ傾いていたので、塾講師の方には読むのを勧めない。

 

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裏表紙は一編目の犬と飼い主、ゲンキと杏

 

忘れない瞳:愛しの彼からもらった婚約指輪魅せると、愛犬のゲンキは牙をむき・・・

「ちぎれた耳とひきずる足 

不安ばかりの憶病な瞳 

「ゲンキ」という名は私がつけた

強く元気に育ってほしいから」冒頭より p.6

忠犬ハチ公顔負けの忠犬ゲンキの物語。

作品が発表されたのは2003-2004年。確かに、2000年代初頭って、こういう忠犬物の映画や小説が凄く流行っていたような気がする。

内容は主に恋愛の復讐物といったところでしょうか。まさかの展開にはちょっと驚いた。やっぱりウマい話には裏があるものなのですね。すぐ求婚してくるイケメンにはみんな気を付けよう(いましめ)

あと、その男の職業が「サラリーマン」でも良いはずなのにわざわざ「塾講師」となっているところが気にかかるところですね。

でも確かに「塾講師」の方が犯罪者のイメージが直結しやすいのも事実・・・。というか、この頃になってようやく「学習塾講師の犯罪」というのが出てき始めた時代なのかな・・・と思ったり。

 

同窓会:小学生の時、自分がやっていない「上靴隠し」の罪を担任になすりつけられ・・・

「小学校6年生まで考えていた「正しい人間」は「親」と「先生」だった」冒頭より p.42

この話だけ、群を抜いて凄く質が良い作品だと思います。いや、他の作品も良質なんですけど。序盤の子供との喧嘩と、中盤の同窓会の話をうまくつなげたのは見事。

ちゃんと相手と話をすることの大切さを説いた一編。

「大人」「子ども」で線をガリガリ引くのではなく、相手の言葉に耳を傾ける姿勢を見せれば、明るい未来が見えてくる。

でもまぁ相手が耳を貸さない場合もあるので、一辺倒には言えないですが。

「どなた?」p.68

斜陽に照らされる街が美しい。

 

正義~ジャスティス~:痴漢を見過ごせず電車の中で思い切って告発した女性に襲い掛かる復讐の数々・・・!調査所務めの名波は彼女を守ることを決め・・・?

「本当に守るべき大切なものを見失った おまえだ!」p.107

自分が何を守るべきなのか。大半の人は本能的に分かっているはずです。難しい問題ではない。けれど、見失った途端、人間は壊れてしまうのでしょうね。

この話に出てきた犯人のように、

「忘れない瞳」の塾講師のように、

「同窓会」の女教師のように・・・。

この話に出てきた犯人が守るべきだったものは間違いなく「家族」「家庭」でしょうね。忘れて一時の性欲に負けたのが間違い。

「忘れない瞳」に出てきた塾講師が守るべきだったのは「ルール」「モラル」でしょうね。恐らく彼は家族もパートナーも大切に守ることが出来る人だと思います。ただ社会のルールを理解していない。壊れている。

「同窓会」の女教師が守るべきだったのは「正義」「児童」でしょうね。児童の話をよく聞いたうえで、自身の正義にのっとって判断するべきだった。二つ同時に守れなかったからこそ、延々と後悔に苦しむこととなる。

本書に収録されている5編中3編目と所謂「まんなか=中心」にある作品ですが、

本書の自体の「中心」も担っている作品だと思います。

 

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聖・コンバット:いじめられっ子天馬の前に現れたのは謎の女。

「あたしは爆弾を隠し持った女 使い方によっては被害甚大」 冒頭よりp.113

この「謎の女」こと朝日のキャラがいいですね。

いじめられっ子に声を掛ける26歳に僕もなりたかった。今は27歳なのでもう無理無理タンタンメン)でも今声かけたら事案案件なのかなぁ・・・とも思ったり。とほほ。

この作品のメッセージはまあ概ね「明日の自分に恥じないように生きろ!」といったところでしょうか。毎日僕は恥じてます。

まずこの時間(AM2:33)にのんのんとブログを書いているのがいけないね。眠たいね寝たいね!!でも貸本屋さんの期限明日だから寝るわけにはいかないんだ・・・!!

すさんだ家庭環境も結婚も今の僕からはちょっと遠い話だったので、インパクトは薄めだったかなぁ・・・。もう少し違う時期に読んでいたら心の爆発の導火線になっていたのかもしれない。爆発したらどうなるのかは知らないけどさ。

 

冬枯れの記憶:厳しい叔母・幸恵ママに育てられた沙代子は妊娠が発覚し・・・!?

「怖い夢はいつも同じ 雑木林にわたしは目を凝らしている 何が見える?何も見えない 何が見える?」冒頭pp.150-151

謎の夢の真相に迫るちょっぴりスリリングな作品。

恐らくこの幸恵ママは、長い長い年月、想像を絶するほど物凄く苦しんできたと思うんですよね。出来ればママサイドの苦しみももうちょっと描いてほしかったかな・・・。

あと明らかになる真相は意外でしたね。道理で幸恵ママは厳しかった・・というかまあ若干当たってた部分もあるんでしょうね。

ちなみにこの作品、最後のフレーズがいいんですよ。

「だってわたし達は忙しいのよ そう 「未来」っていうやつを生きるために」pp.182-183

恐らく幸恵ママはきっと良い「祖母」になるでしょうし(多分厳しめの)、

そして沙代子はきっと良い「母親」になるでしょう。(多分沙代子ママと揉めながら)

幸せな未来のために運命がもたらした障害を乗り越えていく、母娘の物語といったところでしょうか。

 

一通り読んで気づいたのですが、

あとこの作者さんは話の冒頭のモノローグが素晴らしい作品が多いですね。

5編中4編、冒頭のモノローグから引用しています。

毎号ブログにモノローグを書いている僕としてもこれは貸本屋使ってでも追うべき作家では???と本能が言うとります。

 

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合わせて借りた5冊。

 

以上である。

結構どの話も楽しんで読むことが出来た。

あと刊行時期が2003年だったため、当時をついつい振り返っちゃうような漫画自体の構造も良かったわね。巻末の雑誌の宣伝っていつからなくなったんだろ。最近はカラーパンフレットですよね。

あと、裏表紙のコピーに「戦うのは今!・・・明日の私に恥ずかしくないように」とあるのですが、「リベンジ」というのはある意味昨日の自分に「リベンジ」なのかなあと思ったり。

 

にしてもこれは「リベンジツー」てことは

「ワン!」もある、ということである。

また貸本屋さん行ったときに借りようかな。