小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

瀬尾まいこ『強運の持ち主』- いい占い師≠必ず当たる占い師。-


いい占い師≠必ず当たる占い師。

瀬尾まいこ『強運の持ち主』(文藝春秋 2009年)の話をさせて下さい。



【あらすじ】
元OLが営業の仕事で鍛えた話術を活かし、
ルイーズ吉田という名前の占い師に転身。
ショッピングセンターの片隅で、
悩みを抱える人の背中を押す。
父と母のどちらを選ぶべき?という小学生男子や、
占いが何度外れても訪れる女子高生、
物事のおしまいが見えるという青年・・・・・・。
じんわりと優しく温かい著者の世界が詰まった一冊。

裏表紙より


【読むべき人】
・占いが好きな人
・占いに振り回されちゃう人
・肩の力を抜きたい人

【感想】
コンビニで見つけた。

瀬尾まいこ先生というのは、
国語の中1の教科書(光村図書)にも新しく掲載され(「花曇りの向こうに」)、
今年本屋大賞に選ばれた人で、
結構今勢いのある作家さんである。

「受賞」の帯がかかった本作を
コンビニで見つけた
僕は、
その場で、
ブックオフオンラインを開き、
検索し、
新品価格の半額以下になっているのを確認したうえで、
ぽちった次第。
すまんなローソン。

検索するほど何に惹かれたかというと、
占い。
占いである。

僕結構占い好きで、
信じたり信じたり、時には信じないようにしたりいやでもやっぱり信じてしまったりしている。
そんな占いを題材にした
「じんわり優しく温かい著者の世界が詰まった一冊」
とあればまぁ読まないわけにはいかないじゃないか。
読まなきゃいけないじゃないか。

手に取った次第。


占いはじめようと思って買ったタロットカード。
冬に買って、まだ占ってない。


4編で構成されている連作短編集である。(一作50ページは越えてるから中編集かも。)

どのお話にも元OLの占い師、ルイーズ吉田と、
公務員でルイーズ吉田の彼氏、通彦が出てくる。
この2人の同居生活と、
ルイーズの師匠・ジュリエ青柳等、
身の回りの人物がじんわり出てくる。

ただこのルイーズ吉田、実際はほぼ占わない。
「大事なのは正しく占うことじゃなくて、相手の背中を押すことだから」p.14
青柳の言葉に従って、ほぼ直感で占っている。

めっちゃ分かってるな、と思った。
めっちゃ分かってる。
僕等が2000円-3000円する占いに足を運ぶのは、
結局悩んでいる時なのだ。
身のまわりに打ち明けられないからこそ足を運ぶ。
そこで
「想い人とあなたの相性はさいあくですね」
「転職はうまくいきませんね」
「健康運ないです」

とかそういうことが聞きたいわけじゃないのだ。
「今度デートに誘ってみたらどう?」
「今は忍耐するとき」
「健康診断行ったらどうかしら?」

占いの結果を直に伝えるよりも、
僕等を前向きにさせてくれるような一言に、
英世数人、ときには諭吉を渡すのだ。

必ずしも当たる占い師がいい占い師じゃない。

それをルイーズ吉田が実践してくれているのが気持ちよかった。

以下簡単に各話の感想を書こうと思う。
特に印象に残ったのは表題作「強運の持ち主」

ニベア:少年が打ち明けた悩み事は、ルイーズ吉田にとって重かった。
「父と母のどちらを選ぶべきか」


まさかのちょっとしたミステリーな一作。
予想外の展開になっていく。

子を想う親の優しさや、
それを汲み取ろうとして悩む子、
そしてその二人のゆくさきを告げるために全力を尽くすルイーズ吉田、
彼女の背中を押すジュリエ青柳等、
全員が全員ほんわか優しくて、
じんわりした。

あと、女装って変態だけのものじゃないんだなと思った。

ニベア、いい匂いだよね。わかる。

・ファミリーセンター:女子高生・墨田まゆみにはどうしても振り向いてもらいたい異性がいる。

ファミリーセンター。
聞きなれたようで聞きなれないこの言葉。
要するにダイエーのことをいうのだけれど、
それをさらりと「ファミリーセンター」と名付けて呼ぶのがすごくいいなと思いました、まる

ルイーズ吉田のアベックの距離感もすごくいいなと思いました、まるまる
年かたった熟成のカップルで同棲している。けしからん。
その二人がスーパーで、
便座カバーを選び、フードコートでクレープを食べる。
二人共同で使うものだから、小さなものを買うのにも、いくつか言葉をかわさないといけない。
面倒だけど、実はちょっと幸せな作業だ。 p.103

けしからん。

ちなみにこれもまさかの展開。
だけどまぁ父親とうまくいかないのが、
正常なんじゃないかなぁ。

ちなみに僕もうまくいってません。


そういやこの女の子誰なんだろう。ルイーズ吉田か?

・おしまい予言:あらゆることの「おしまい」が見える大学四年生・武田君が現れて・・・。

直感占い師吉田の前に、
必ずおしまいを当てる武田君が現れる。
彼との出会いによって、吉田は知る。

占いにしたって、事実を伝えるのがすべてじゃない。その人がさ、よりよくなれるように、踏みとどまっている足を進められるように、ちょっと背中を押すだけ。占いの役割ってそういうことなんだね。 pp.196-197

僕は占いに行く。
それは誰にも言えない悩みを抱えているから。
恋愛、転職、家族、健康・・・。
そういった悩みを誰かに相談したくてたまらなくなった時
行ってしまう。

そしてこれを踏まえたうえでの最後。

・強運の持ち主:竹子さんを新たに弟子に迎えたルイーズ吉田だが・・・

ルイーズ吉田は竹子さんの入籍のタイミングを占う。
しかし竹子さんは違う日にするという。

「私の人生は、健太郎しだいだから」p.258

占いに頼り切らず、
自分で明日を決めていく


占いに直感に、アシスタントに師匠に恋人に、いろんなものを頼りに進んでいけば、なんとなくそれらしいものにたどり着けそうな気がする。 p.262

僕は他者に頼るのが苦手だ。
占いにハマる人というのは、そういう人が多いんだと思う。
身近な人を頼れないから、占いに過度に頼ってしまう。
占いは、あくまでひとつの道しるべにしか過ぎない。

占いとの距離感が良い。
必ずしも当たる占い師がいい占い師じゃない。

以上である。
占いに関する点で共感できる部分が多々あった。
一つ一つの短編もほんわかじんわりしていて、
読後感がとても良かった。

ちなみに瀬尾まいこ先生の本で持っているのはもう一冊ある。



瀬尾まいこ『幸福の食卓』(講談社 2007年)
トラウマ本である。
中学生かそこらの時に、
たしか祖母の葬式の帰る飛行機で読む用に、
買ってもらった本だったと思うんだけど・・・。

いや中身は詳しく覚えてない。
だけど、後半確か誰か突然死ぬんですよね。
「全然幸福でも食卓でも何でもないやんけ!」
となった記憶があります。

まだ今作の方が幸福な食卓に近かったような気がする。
読み返す気もありませんが・・・。