小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

福澤徹三『盛り塩のある家』-後味悪き実話怪談-


福澤徹三『盛り塩のある家』(メディアファクトリー 2012年)の話をさせて下さい。



【あらすじもしくは概要】
『幽』に連載していた、
実話怪談集を単行本化。

家の中で・・・会社で・・・心霊スポットで・・・
近所で・・・公園で・・・
あらゆるところに恐怖は潜んでいる。

【読むべき人】
・実話怪談系が好きな人
・10ページ未満の怖い話をサクサク読みたい人
・後味の悪い実話怪談も好きな人

【感想】
所謂「実話怪談系」の本である。
僕はこういう本がもう大好きで、
疲れた時、ストレスを感じた時、もう何もかもが嫌になった時は
すぐに手に取ってしまう。
下手なエンタメ小説よりも、ぐいぐい、読んでしまうのだ。

今回は福澤先生の本である。
僕はこの人の著書は・・・まぁてへぺろ、読んだことはないのだけれども、
怪談界隈ではかなり名をはせた人であることを知っている。

からか、かなり優れた本であったように思う。

というのも、
「三角定規」「消えた同級生」「侵入者」・・・。
一通り読み終えて、目次を見ても
題名だけで大抵の話の内容が思い出せる。
大抵の本は最後に目次を見返すと、
思い出せない。
「定規・・・?」
「どうきゅうせぃ・・・??」
「しんにゅうしゃ・・・?」

一気に30、多ければ50、100の話を一気読みするわけだから当たり前なんだけれども、
「知らないうちに三角定規が建てられている話」
「スナックのトイレで同級生が消え、同時に交通事故死の連絡を受ける話」
「もう一人の自分が出てくる話」

今回は、思い出せた。
一話一話インパクトの強い、良い怪談集だった、ということなんだろう。

それに、実話怪談系にしては後味の悪い話が多い。
大抵こういう短編集は「実話」であるため、
不幸な顛末で終わることは少ない。
主人公が亡くなれば、語り手が亡くなったということであり、
「実話」ではなくなってしまう。
けれど今作に収録されている多くの話が、その「主人公の死」以外の形で、
ぞっとする冷ややかな後味の悪さを残している。



そんな怪談集で特にインパクトが強かったのが以下の四話。

「静かなマンション」pp.58-59
2ページの、怪談というよりは不気味な話。
引っ越すときは要注意っということだな。

「ベランダの箱」pp.69-76
この話は怖い、と同時に非常に興味深い。
実話、実話であるならば彼はいったいどこへ行ってしまったのか。
そう考えるだけでちょっとぞくぞくする。

「最後まで聞いて」pp.97-100
理不尽な恐怖が鮮烈な一遍。
起こった場所が心霊スポットでも廃校でも廃病院でもなく、
普通の公園っていうのが恐ろしい。

「斧」pp.113-115
この話が個人的に一番インパクトあったかなぁ・・・。
特に最後の理容師のくだりはぞっとした。
人をも振り回すような土地の念は怖い。

ちなみに最近読んだ実話怪談系では、
立原透耶先生の『闇より深い闇』『悪夢の連鎖』(ひとり百物語シリーズ)がある。
恐怖や不気味、ゾッとする感覚で言えば今作『盛り塩のある家』のが秀でている。
実際に聞いて集めた怪談・・・人の死をも交えるような後味の悪さ・・・。
ただ文章の読み易さやおもしろさで言えば「ひとり百物語」のが秀でている。
霊感がある作者の心霊体験・・・どちらかというと日常に潜む柔らかな恐怖・・・。
同じ実話怪談系でも筆者の個性が出るから面白い。

以上である。
実話怪談にしては、
後味悪くてインパクトの強い作品が多かった。
また、この人の作品は読んでみたいと思う。
うーん。
小説も書いてるみたいだから次は小説かな。



LINK:
立原透耶『闇より深い闇』
立原透耶『悪夢の連鎖』