小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

沼田真佑『影裏』-遠い。-


うーん。
難解。

沼田真佑『影裏』(文藝春秋 2017年)の話をさせて下さい。



【あらすじ】
東北地方。
わたしは釣りを趣味にしており、
よく友人の日浅と出掛けた。

だがある日釣り場所に向かっていると・・・
水楢みずなら)だ、今野。水楢
通学路上に鳩の死骸でも見つけた子供みたいに日浅がさけんだ。
p.7

【読むべき人】

・難解な文学を好む人
・性的マイノリティの方
東日本大震災が遠く感じられる人

【感想】※微々たるネタバレ有
芥川賞受賞作品である。
だか読み終えた僕の頭には、「?」
はてな

難しい。
とにかく、難しい。


文章自体はそんなに難解ではない。
すらすら読める。
だがすらすら読める分、今作の主題が何なのか、作者が何を思ってこの作品を世に出したのかが全く見えない。
時系列もあっちこっちいって一読しただけでは、
順番に並べ替えられるか自信がない。
もしやこれはあれ、コネ受賞(小声)ってやつなのでは?と思い作者の経歴を調べると、
どうやらそういうことでもなさげ。
作者は塾講師で本作がデビュー作で、さえない風貌。
とてもコネを使うような人には見えない。

じゃあ、何なのか。

わからない。
わからないなりに僕が思うに、
東日本大震災」「性的マイノリティ」の切り口か。



今作は震災後の東北が舞台である。
しかし震災を悲劇的に描くことはせず
終始淡々としている。
もう、終わったことなのか。

中盤で明らかになるが、主人公は同性愛者である。
だからといって
迫害されるようなこともないし主人公も悲観はしていない。
かといって相手に過剰な愛情をぶつけるわけでもない。
淡々としている。
もう、嚥下したことなのか。

今まで悲劇的に扱われ、問題となっていたことが
この作品では一切問題になっていない。
一つの事実にすぎない。

影裏というのは「日光のあたらないところ」という意味だそうだ。
全てを自分の中処理しきった主人公を俯瞰した時に、
「影裏」、なのだろうか。



以上である。
わからぬことが多い作品だった。
まだまだ僕も読書量が足りないということだ。

今作を「駄作」と認定せず読み手である僕自身に非を認める。
それくらいの「何か」があるのは分かるのだけれでも把握できない。つかめない。遠い。






ちなみに芥川賞で以前読んだのはこちら。



吉田修一パークライフ』(新潮社 2008年)も難解。
今作と同じくらい難解。
ちんぷんかんぷんだった覚えがある。
スタバじゅーっと吸ってたら終わったみたいな。



田中慎弥『共喰い』(集英社2013年)
感想はこちら。
こちらはまだ何となく良さというか・・・おもしろさというか・・・そういうのは分かった。

でも多分この「共喰い」だって中学生高校生の時に読んで面白かったかというと、
多分面白くなかった。つまらなかった。
今作も、そういう本な気がする。

また年月が経って、筆者の作品がたまって、短編集の文庫本が出た時に再読してみたい。

LINKS:田中慎弥『共喰い』