小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

初野晴『初恋ソムリエ』-クラリネットはさ、リアルでもクセ強い人多いよね-


青春×ミステリ×エンタメ。

初野晴『初恋ソムリエ』(角川書店 2011年)の話をさせて下さい。



【あらすじ】
進学と同時にフルートを始めた高校生・チカは、
幼馴染のホルン奏者・ハルタと幼馴染。
二人は吹奏楽(部員10名p.128)に所属している。

顧問の新任教師・草壁先生のためにも、
絶対普門館に行きたい!!
そんな思いを抱きながら日々部活に励む。
が、
部内外問わず奇人・変人が多い清水南高校。
様々な謎が日常に影を落として・・・!?

吹奏楽×青春ミステリ、「ハルチカ」シリーズ第二弾!
第一弾の『退出ゲーム』の感想はこちら。

吹奏楽部の門扉をたたいたのは、
プロ志向のクラリネット奏者・芹澤直子

持っていたのは、叔母のもとに届いた一枚のはがき。
差出人には「清水南高校初恋研究会代表初恋ソムリエ 朝霧亨」と書かれている。
叔母と不審人物との接触に危機感を抱いた彼女が、
情報を求めて部室にやって来たのだ。

彼女をなんとしてでも吹奏楽部に入れたいチカとハルタは、
旧校舎にある「初恋研究会」の部室に、ついていくことにしたのだが・・・。
(表題作:初恋ソムリエ)

【読むべき人】
吹奏楽部員、吹奏楽部員であった人
・高校舞台の小説を探している人
・文化部の高校生


1巻。退出ゲーム。

【感想】
「退出ゲーム」の続編である。
我らが母校、清水南高校が舞台と知れば、
まぁシリーズ読破するしかないよね。

あと個人的にハルタ同様ホルンをやっていたので、
(母校はオーケストラ部であったが)
まぁシリーズ読破するしかないよね。

今作も十分楽しませてもらった。
ただ、ミステリ成分は前作の「退出ゲーム」のが濃かったように思う。
けれど、青春成分・エンタメ成分は今作の方が濃い。

以下、簡単に各編の感想を、
つれづれなるままに。

・「スプリングラフィ」
待望の、吹奏楽部の花形、クラリネット奏者登場の巻!!!である。
まぁ例外にもれず、
クラリネット奏者、芹澤直子はクセが強いが・・・。

彼女は音大を目指す、プロ志向である。
「なぜプロ志向の学生は吹奏楽部やオーケストラ部に入らない人が多いのか」
問題について言及されている。
とても参考になる話だった。
ぼくはぶっちゃけ下手だったので。

同時に、
「なぜプロ志向(演奏がうまい人)の学生なのに吹奏楽やオーケストラ部に入る人が多いのか」
側の言葉もマレンや成島さんの言葉を借りて書かれていて、
ああ・・・あの先輩やあの同級生たちはこういう気持ちで部活に参加していたんだな、
と高校時代に思いを馳せたり。

いるよね、どの団体でも楽器上手い人。
はー。私にもその才能があればなぁ・・・。
どっちかてーと、チカちゃん側だったからな。僕。


本作で出てくる「商店街」は清水銀座がモデルなのかしら。
もうすっかりシャッター街なんすけど。

・「周波数は77.4MHz」
ラジオの話である。
学園物なのに、ラジオが主題だなんて!!!
この変わった主題が多いのがハルチカシリーズの特徴でもある。

今作では、一番ミステリしている短編でもある。
何故地学研究会に20万円の部費が付与されるに至ったか、
また研究会はなぜその受け取りを拒否したか、
FMはごろものカイユがDJを務める番組はどこから流れるのか。

謎が謎を呼ぶ構造。
それでも後半しゅーっと回収していくのは
書き手としての確かな実力を感じる。

登場するのは、パーカッション奏者・檜山界雄
トリッキーな彼が話にこれからどう絡んでいくのかも見どころ。

・「アスモデウスの視線」
まさかの舞台が別の高校になる。
前からちらほら出て来た人物がキーマンになるのがいい感じ。

暗号ものであるけれど、
他の高校の謎をときほぐしていくことが主軸。
味方側にいる・・・・はずの、
大河原先生の人物像がくるくる変わっていくのも面白い。

強いて言うならば、背中についての伏線をもっとしっかり張ってほしかった。

・「初恋ソムリエ」

語感がいいよね。
何度でも言いたい。
はつこいそむりえ。

表題作である。
謎の多い芹澤さんの叔母の初恋をつまびらかにしていくのが主軸。
また登場人物の親族を起点に
時代をさかのぼって昔に行くのは「退出ゲーム」と同じ。
もしかしたら次作の「空想オルガン」もそういう感じなのかしら。

けれどそうやって時代を行き来する中編は僕は嫌いじゃない。
し、
この本を読んだ中学生・高校生とかが
過去にそういう時代があったということを知れば、
むしろいいことなんじゃないかなーとすら思う。
そういった面でも、
僕はハルチカシリーズ=ライトノベル」説を強く推していきたい。



以上である。
今作も収録作品全部楽しめた。
次作も購入必至である。

あとこの作品を読むと僕はいつも思う。
「あー、ホルン吹きたいなー」

LINK:初野晴『退出ゲーム