小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

岡部えつ『枯骨の恋』-独身中年女性の憂鬱を綴る。-


しおれた恋愛談。

岡部えつ『枯骨の恋』(メディアファクトリー 2009年)の話をさせて下さい。



【あらすじ】
男との関係が長続きしない、
独身の中年女・真千子

彼女の部屋に、背の高い骸骨がぶら下がっている。
それは、かつて若かりし日に体を交わし、愛を交し合った博也の骨だった。

ある日、初めて愛情を五あ抱かない男に身体を許した日、
その愛撫に
博也の癖を見つけてしまい・・・?

表題作他7編収録

【読むべき人】
・独身の30代、40代
・が主人公の小説を読みたい人
憂鬱な女

【感想】
地元の図書館で、
怪談おススメコーナーというものを組んでいた。
司書がススめるんだから、外れるはずあるまいよ。
手に取って、読破した。
その2。

女というものは、終始憂鬱である。
独身中年女の部屋にその憂鬱をすべて詰め込んで詰め込んで
成り立つ怪談。

本作は筆者のデビュー作と聞く。
確かに表題作は素晴らしかった。
他は、面白かったけど、
ちょっと物足りない。
以下簡単に、一遍ずつ。

・「枯骨の恋」
表題作。
独身中年女の恋のゆくえ。

恋愛小説のような文体で、煮詰めに煮詰めた怪談。
最後の最後に、ぞっとした。

話もいいけど、言葉もいい。
田と阿部男女の関係を「二人は燃え上がったのだから、鎮火も同時にすればいいものを、決してそうなることはない。先に消えればうっとうしいし、先に消されれば未練だし、どちらにしてもこじれにこじれ、男と女は鬼になる」p.13

端正な言葉遣いだなと思った。

設定もいい。
約20年も前の元カレの骸骨が部屋に、ずっと垂れている。
怖いより先に、女の未練を感じさせるような。

話、言葉、設定。
全てが優れていたため、
受賞に至りデビューに至ったのだろう。

でもやっぱり、最後の一言の余韻がいいな。
この話は。

・「親指地蔵」
女性の友達関係の上下を上手く切り取った作品。
独身中年女の友情、貧困。

僕もその・・・「要領よくない」側で、「うまくいかない」側に回ることが多い。
身につまされるような話。
最後の公園の池のうつくしさが、
主人公の孤独を掻き立てるようで良かったかな。

・「翼をください
展開読めなかった話、そのいち。
独身中年女の殺意を描く。

物置を新しくすることと、姉のできもの、
嫌な感じの男、定年後精神的に弱る母。
全てがうまい感じで収束していくのは気持ちよい。
2番目に好き。

・「GMS

PMSをもじった作品。
独身中年女の焦り。

チョコレート嚢胞がある僕には一番タイムリーな作品。
まぁ・・・筆者の一つの実験的作品である。
登場人物の名前が多すぎるように感じた。
別に、個人名出さなくても「結婚した友達」でよかったのでは。
子供がほしくなったきっかけも書かれてないし、
最後もぶっとびすぎてて・・・うーん。
イマイチ。

・「棘の路」
展開が読めなかった話、そのに。
独身中年女のもつれ。

一番「怪談」に近い作品かもしれない。
自殺前夜の部屋の描写は見事。
それでも、ちょっと最後の一行が間抜けすぎたかなぁ・・・。
あとなんで成長してんねん。そこはしない方が怖いのでは?
惜しい作品。
傑作になれなかった作品。

・「アブレバチ」

独身中年女のむだな正義感。

うーん。
ページ数に見合わない内容かなぁ・・・。
確かにアブレバチの由来や集落の真実等、
後半の半ばくらいまではなかなか良かったと思う。
それでも最後が無理矢理すぎる。
一気に陳腐になった感じ。
ここは、主人公は別に無事帰ってパソコン見た展開の方が良かったのではないか。
別にバッドエンドにしたからといって怖いというわけではない。
うーん。
安易なバッドエンドがどうも気にくわない。
駄作
とまではいかないが凡作。

・「メモリイ」
よくあるような設定の話を、
筆者ならではの観点で丁寧に書いてみました!!

っていうような作品。
独身中年女のおもいで。

短編集の最後にはまぁ、うってつけかな。



こんな感じ。
つまらない作品はなかった。
だがどうも物足りない。
それはちょっと主人公があまりにも「独身中年女」に偏りすぎているからではないか。
恐らく筆者が独身の中年女性の方なんだろうな・・・。
うーん。
それでも、偏りすぎでは。
まぁデビュー作だから仕方ないかな。

以上である。
割と面白かったよーぽよー。
あと、
絶対結婚しようと思える作品なので、
ある意味国を挙げてあらゆる本屋で平積みすべき本かもしれない。

ちなみに、
筆者の他の作品は読んだことないにゃーと思ってたんだけど、
調べたら
嘘を愛する女の原作の方だったとは。
あれですよね。
高橋一生長澤まさみで組んだ、あれ。
不思議な設定の恋愛映画だなと思ったけれど納得。
怪異と恋愛をうまく組み合わせた作品でデビューしたならば、
ああいった変わった設定の話も書けちゃうんだろうな。
是非読んでみたいもしくは、見てみたい。

怪異と恋愛。
両方極めるぞ〜!という点ではある意味次世代の小池真理子かも。
年齢の割に、文章もお若いし・・・。
その・・・・20代後半くらいだと思ってまちた・・・。
50代だとは・・・びっくり。

ちなみに筆者はデビューの前にこちらの
てのひら怪談」で一遍書いている。



加門七海 東雅夫 福澤徹三編『てのひら怪談』(ポプラ社 2008年)
800文字以内で素人中心に怪談を書いて
一冊に収録するという趣旨のシリーズ。
割と斬新な設定の作品が多く、面白かった。
岡部先生が書いた作品はpp.122-123「白壁」
再読したけどまぁ普通の怪談だわな。

僕はこのシリーズを買い集めてたんですけどね・・。
新刊出してほしいなあ〜。