小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

傳田健三『若者の「うつ」 「新型うつ病」とは何か』-「新型うつ」を知る-


新型うつとは何なのか。

傳田健三『若者の「うつ」新型うつ病」とは何か』(筑摩書房 2009年)の話をさせて下さい。



【概要】
若い人たちに見られる「新型うつ病」とはどのようなものか。
新型うつ病」になりやすい体質や性格があるのだろうか。
思春期・青年期にかかりやすい「うつ」について、
気づき、立ち直るための対処法をわかりやすく解説する。


裏表紙より

【読むべき人】
新型うつ病。という正体不明の病気について知りたい人
・もしかして自分「新型うつでは?」と疑う人
・「新型うつ」患者(もしくは患者と思われる人)の、周囲の人
・新型うつ、という言葉にマイナスイメージを抱いている人
・病んでいる人

【感想】
「新型うつ」。
言葉だけは何回も聞いたことあるけれど、
実際どんな病気なのか。
漠然とは知っている。
なんかうつだけどゲームとか漫画とか楽しめちゃうやーつ。
でも詳しくは知らない。
三浦しおん『ふむふむ 教えてお仕事!』
を借りにきた図書館で、
ふと目に入ったので一緒に借りて来た。

全部で200ページにも満たない。
だが非常に濃い新書だった。
さらさらっと読んでみたが、
それでも「新型うつ」についてちょっと分かった気分になる。
なるほど!!となる。

作者の傳田さんは、精神科医である。
2009年地点で
北海道大学大学院保健科学研究院の生活機能学分野に着任しているという。
・・・なんか漢字が多くてよく解らんが、
精神科リハビリテーション学を教育・研究する部門p.187-188なんだそうな。
まぁ精神科のリハビリの専門家、ってとこか。
そんな人が書く新書だから、
患者周囲の人は勿論、
患者本人にも向けるまなざしが温かい。
周囲、本人共におススメできる新書。

第一章 「うつ」ってなんだろう?
「うつ」という言葉の解説から始まる。
その後に筆者自身のうつ体験であるとか、
うつ病の分類、
うつ病と分かりづらいことについての言及がなされている。
感冒でも肺炎でも明確に区別できないグレーゾーンがあるように、本物のうつ病と単なる落ち込みでも明確に区別できない場合もあるp.28

第二章 若者にみられるさまざまな「うつ」の表れ方
では具体的なケースが3つ挙げられている。
どういった症状で、どういった治療をし、どういった過程を経て、結果患者はどうなったのか。
が、15ページ弱にわたって記載。
一つは、従来のうつ。
ゲームも漫画も読めないような、あの暗い感じのうつ。
一つは、躁うつ。
テンション爆上げと爆下げを繰り返すやつ。
拒食症も絡んでいるケース。
そして最後は、新型うつ。
特に最後のケースは、
家族とのコミュニケーションの大切さを痛感させられる内容で、
新卒3年以内で人のプーさんやってる僕にも、響いた。

第三章 若者の「新型うつ病」とは何か

今作の根幹となる章。
筆者は新型うつ病は、3つに分類できるという。
過度な自信や漠然とした万能感伴う「ディスチミア型うつ病p.83
気分の変動が激しく過食・過眠を繰り返す「非定型うつ病p.97
アスペルガー症候群発達障害が起因する発達障害うつ病p.113の3つ。
第二章のようにそれぞれ具体的なケースが挙げられている。
「新型うつ」について知りたいのならば、
この章から読んでもいいカモネギーってレベル。

第四章 「新型うつ病」をどう考え、どのように向き合うか
では、新型うつ病は要するにナマケモノでは?」問題についての見解、
その治療における心得や具体的な方法について述べられている。
今作で一番難解な章になる。
冒頭で、
思春期・青年期の人たちを対象p.12
に本書を書いたと筆者は述べているが、
この章だけは精神科医に向けた章に思う。

第五章 若者の「うつ」現代社
何故今になって「新型うつ」なる病気が誕生したのか。
章の冒頭で
筆者はうつ病自体の本質は変わっていないとしたうえで、
病像(病気の症状)が変わっていると考察する。
社会・文化の大きな変動により、社会全体の価値観や倫理観が変わり、人々の意識が変わり、性格形成にも影響し、うつ病の病像が変わりつつあるあると考えられるのではないでしょうか。p.163

以上である。
内容が濃くていい新書だった。
一読しただけで、簡単に新型うつについての知識がつく。
図書館の「おススメ棚」に入っていただけのことはある。

まぁただ本書は2009年に刊行された本であるので、
10年前の見解ということは踏まえておかなけばなるまい。
逆に、
10年前にはもう「新型うつ」という言葉があったことに、
そしてこれほどの深い見解を示す医者がいたことに驚く。



精神関連で今まで読んだ新書は、
こちらの福永雄二『大人のアスペルガーがわかる 他人の気持ちを想像できない人たち』のみ。
でもこっちより・・・その、全然良かったです(小声)