小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

ミステリースペシャル「満願」-傑作ミステリを濃縮還元ドラマ化!-

僕は普段ドラマ見ないんですが・・・(続かないから)

ミステリースペシャル「満願」の話をさせて下さい。

【概要】
山本周五郎賞受賞し、
「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!
国内初三冠を受賞した、
米澤穂信による短編集「満願」から
「万灯」「夜警」「満願」をドラマ化。
全三夜。

【見るべき人】
原作ファン
・1時間で完結するのでさくっと見たい人
・活字が苦手だが、ミステリに関心がある人

【感想】
米澤穂信「満願」実写化である。



米澤穂信『満願』(新潮社 2017年)
僕も実は1年前、文庫化された際に読んだ。
6編収録されている。
警察ものから、旅館、ビジネス、女性の情念・・・等々。
テーマが多様で、
しかもどれも質が高くて
非常に満足したのを覚えている。
賞総なめですわ。これは。とか思った。

そんな短編集から3つ、
NHKでドラマをやると聞いたので見た次第。
「万灯」「夜警」「満願」
ビジネス、けーさつ、おーやさん。
そんなうっすらとした記憶を思い出しつつ、
僕の親指は1のボタンに触れた。



第一夜「万灯」
主演:西島秀俊
演出:萩生田宏治
脚本:大石哲也


驚いた。
万灯。短編集の中でも一番長い作品で、100ページをこす。
後半は確か外国にも行っていたはず。
そんな作品を1時間に収められるのか。
収められていた。

良かった。
序盤、主人公がホテルのベッドに伏せているシーンから始まったとき
直感で「これは期待できるぞ」と思った。
小説で読んだものがそのままドラマに。

特にラオスでのシーンが印象的。
長老と権力者との闘争であるが、
読んだとき、外国の描写はいまひとつ想像が追いつかなかった。
だからラオスの村のシーンを見た時、
「なるほどなるほど」
無意識に何度も頷いていた。
そしてちょっと
「小説の世界がドラマに!!!」
感動した。

キャストもまぁまぁ良かった。

伊丹修平:西島秀俊
キャストの名前を見た時「うーん」だった。正直。
僕の中ではもうちょっとビジネスマンっぽい中年だったんだけど。
でもまぁ見てみれば、
特に後半。
焦るとともに、崩れていく不細工な表情「これだよこれ!!」となった。
特に、終盤のトイレで餌付いて顔を上げるシーン。
アップである。
西島秀俊とは思えないような疲れた顔をしている。
そこが最高。

森下聖司:近藤公園

はえー。と思った。
こういういかにもちょっと皮肉っぽいエリートビジネスマンの風貌をした俳優が、
この世にいていいのだろうか!
いいんです!!
登場シーンから、ちょっと想像ぴったりすぎてびっくりしてしまった。
そして、ジープのシーン、
エリートの見せる
愚かな泣き顔。
そのギャップを見事に演じ切っていた。

他にぐっときたのは、アラム役の俳優さん。
彼の登場したシーンは、終始緊張感があった。
若いながらも権力を手にしたアラムという男の、
野望威厳オーラ・・・見事に再現しきっていたと思う。
だいぶドラマではアラムという男についての詳しいプロフィールを削っていたが
それでも、
削っていても、
アラムの存在を映像でバーンッ!!と見せるような、魅せるような。

脚本もかなり良くできていたと思う。
1時間に見事に集約されている。
100ページを超える話が初見の人でも十分に分かるように出来ていた。

EDの音楽が流れた時しばし余韻に浸った。
文句なしの★★★★★



第二夜「夜警」
主演:安田顕
脚本:大石哲也
演出:榊英雄


「満願」の一番初めに収録されている作品で、
一番好きな短編でもある。
だからといって覚えているというわけではなく
新人警官の焦り憔悴ぶりが印象深かったなー
くらい。

見て、ああそうだった。
真相を思い出し、
同時に「二夜連続傑作かよ・・・」
固唾をのんだ。

岡潔安田顕
主演。
前に見た映画「銀魂」の時にすごくいい演技をしていて、
主演が彼だと聞いたときに僕はもう胸のときめきを抑えきれなかった。
期待に応えた。
良い。
出世コースから外れた、
交番に勤める警官の疲弊が終始漂っていて、
タバコの煙がもくもくと哀愁を誘う。
特に、ピストルの弾を落としたシーン。
叱責されるが、
さりげないシーンでもその時主人公柳岡の署内における立場が一瞬で全部伝わってくるよう
素晴らしかった。
「安田さぁん・・・しゅき」
となった。

川藤浩志:馬場徹
新人警官である。
今作のキーマン。
真面目で実直でやる気200%!!が空回りする演技は見事。
特に、上司から呼ばれたとき「はい!!」とすぐに立って真っ直ぐ見る瞳は、
動作はハナマルながらも、
ダメだこいつと思わせるオーラ。
ピンピンの新人感満載。
だから馬場さんの年齢見た時驚いた。
30だとは。てっきり24くらいだと思っていた。
ただ、終盤拳銃を撃つ時の表情は、
少し陳腐だったように思う。
ああやって舌出すほどの余裕が小心者の川藤にあったかというと疑問である。
せいぜい口開いて笑ってる・・・くらいではないか。

川藤隆博:吉沢悠
うーん。
正直トラックの運転手感あまりなかった。
演技も一辺倒で表情が乏しい。
イケメンすぎる、というのもあるだろうけど・・・。
この俳優さんでなくても良かったのではないか。

一番好きな作品なだけあって、一番面白かった。
1時間、間延びすることなくきっちり収まっている。
満足度高かった。

EDはまさかのぶつ切りである。
余韻を残し、
柳岡の哀切を感じられて素晴らしい終わり方
だった。
普通に★★★★★



第三夜「満願」
主演:高良健吾
脚本:熊切和嘉
演出:熊切和嘉


最終夜にして表題作、満願である。
だが・・・その、
一夜二夜が良すぎるのもあるけれど、
正直、期待値以下の出来だった。

個人的にキャストがなんかもう違う。
想像とかけ離れていた。

藤井:高良健吾
違う。
僕の想像では藤井はイケメンではなく、
もっと司法試験に賭ける、焦っている青年を想像していた。
苦学生というか。
余裕のない人。
イメージとしては濱田岳のような。
高良さんの演技も良かった、
年齢ごとにみごとに演じ切っていて良かったんだけれども。
僕の中で「違う!!!」

鵜川妙子:市川実日子

彼女も「違う!!!」
僕の中ではもっとふっくらしていて、
他人行儀でもどこかなまめかしさのある、
けれど瞳はうつむく・・・そんな人。
なんかもっと湿った人。
市川さんのような乾いた声じゃない!!
と思った。
ただ一緒に見ていた母親は「市川さんは良かったと思う」と言っていたから、
賛否両論とかいうやつなのかもしれない。

脚本も正直、いまいちだった。
なんか話のヤマがどこだか見えてこない。
原作読んだときは「おお・・・!!」と感動したことを覚えているが、
今作見た時は「うーん・・・・うん?」って感じ。
単調というか、なんというか。

いらないシーンに時間を割きすぎのように思う。
例えば、10年後のシーン。
7分8分割いていたけれど、
あそこは家庭の存在をにおわす程度にしておいて、
真相が分かったシーンに時間をもっと費やすべきだったのではないか。

他にも、「誇り」という言葉や「先祖が私塾講師」という
大切な伏線をすらすらと流しているため、
最後の大家さんが掛け軸に血を散らせた理由が見えにくい。
分かりづらい。
「ちんぷんかんぷんだ・・・」
一緒に見ていた母親が視聴直後に漏らした一言である。

この作品だけ脚本が違う人だけれども、
何故一夜二夜と同じ脚本家に頼まなかったのか。

EDは良かった・・・
けれどどうもこの作品の出来だけ、
他の2作より一段階下がるように思う。残念。★★★☆☆。



以上である。
「万灯」「夜警」の出来にはかなり満足。
その分「満願」の出来が悔やまれる。

ちなみに米澤先生の作品は「満願」以外僕は読んだことない。
映画化したボトルネック
私気になります!!氷菓エトセトラエトセトラ。
気になる作品はいっぱいあるんだけど・・・。
また機会あれば他の作品も読んでみようかなと思う。