小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

「彼らが本気で編むときは、」-性的少数者が直面する厳しい現実を、優しく包む。-


久しぶりに高校の同じ部活の子と会った。

僕は大学で東京に行ってしまったから、
その後の地元に残った友達の近況を聞いた。

結婚を控えてたり子供が出来てたり・・・は予測できてた。

ただ
「ああ・・・そういえばさ、高橋君なんだけど」
「うん。同じ部活の。」
「あー・・・カミングアウトしてもいいよね、うん。本人もいいって言ってたし」
「何?」


「高橋君さ、彼氏できたんだって」

「彼らが本気で編むときは、」荻上直子監督 スールキートス配給 2017年)の話をさせて下さい。


小池栄子がめっちゃうまく描けたと思う。見て。

【あらすじ】
女子小学生・トモは、今日のコンビニのおにぎりを齧る。
母親は、今日も帰ってこない。
結局母親の弟・マキオの部屋にしばらくお世話になることに。
そこにはマキオのパートナー・リンコもいて・・・・。

【見るべき人】
LGBT、性同一障害の方、彼等の身近にいる人
・また、上記のようなことに理解を示せない人
・母からの愛情に飢えている人

【感想】
知人が同性愛者だった。
衝撃が伴う話を聞いてから、ちょっと気になっていた映画。
それが本作。

良い映画だったと思う。
登場人物ストーリー共に。

まず登場人物。

生田斗真演じるリンコ。
元男性の熱愛報道を最近よく聞くし、
今まで正直、「ええ・・・・」と思ってたけど、
まぁ今ならその彼氏たちの気持ち、わかるね。
だってリンコさん、女より女なんだもん!
すごく繊細で、優しい。
肩幅確かにめっちゃ広いんだけど、
ふんわりした服がまぁ・・・似合うこと似合うこと。
演技も素晴らしかったです。
肩幅をカバーする女より女らしさをむんむん、出せてました。
あれ、食べ方・座り方・声の出し方・動き方とかいろいろ研究したんだろうなぁ・・・。

生まれつきの性別は異なるけど、女より女らしい。
そんな彼等(彼女達)の魅力が実感できるので、
LGBTに理解を示せない人こそ見てほしいなーと思う。
あと、生田斗真さんっつったらほら・・・イケメンで男らしい!みたいなイメージで
他にもっと合ってる俳優いるんじゃないか?ってみる前は正直思ってたけど、
生田さんで正解ですね。
存在の華が半端ない。
さすがジャニーズ。

マキオ。
桐谷健太さん演じてるんですよ。
そう、桐谷健太さん。
僕の中では、
「おえええええええ!!!!」
ってなんか目かっぴらいて(ちょっと血走ってて)某携帯のシーエムで叫んでる俳優。
のイメージだったんだけど・・・。
今回はそんなの片鱗も見せない、
「さえないけど優しい男」オーラ満載。
若干セリフが棒読みに聞こえるところもあったけど、
でもそういう人なんだなと思わせるような演技は生田斗真さんに負けてない。
リンコさんの女性らしさを際立たせるために、
やさ男でもなんとなく男らしさが際立つ桐谷さんを起用したのも、大正解ですね。

この2人のキャスティングが完全に合っていた、
そして2人が真摯に演じたからこそ
本作は良い映画になったんだと思います。

勿論他の役者さんも素晴らしかったです。
主人公のトモちゃん役の柿原りんかちゃんも
普通っぽさ凛々しさがあってよかった。
リンコの母を演じる田中美佐子さんも
中学時代の水着を着たがらない息子を寛容に受け止める演技が良かった。
マキオとヒロミの母りりィさんも
呆けた認知症の演技がリアルでよかった。
カイの母役の小池栄子さん
ケーキ屋でのストーカーが超良かった。

けど、あの子凄かったな。
カイ役の込江海翔君。
育ちの良い、ちょっとウザい少年感が・・・素晴らしかった。
トモちゃんがうざがる気持ちがまぁわかることわかること。
そして終盤の無邪気さと切なさが詰まった演技も、苦しみがひしひしと伝わって、切なかったね。



そしてストーリー。

素晴らしかったと思います。
初め、リンコとトモの関係性の話から始まって
徐々に徐々に周りの人に広がっていくのですが・・・。

特に母娘問題が良かったな。
例えばリンコの母親田中美佐子は、片親ながらリンコの問題に向き合って乗り越えた。
けれどリンコを大切に思うあまり周りが見えていない。
カイの母親小池栄子は、息子を一番に愛している。
だから・・・愛は盲目、息子が良く見えていない。
マキオ・ヒロミの母親(りりィ)は、厳しくする一方でうまく娘を愛せなかった。
トモの母親(ミムラ)は、だから自分が女であることを優先してしまって、娘にどうしたらよいのかわからない。

この物語には、できた母がいない。
全員、欠けている。
けれどその根底にはがあって・・・愛してるからこそ欠ける、というか。

大多数がわからない問題・LGBTと並行して
大多数がわかる問題・親子関係を見つめることで
各々の苦しみを共有することが狙いだったんだろうな。

他。
ホモ、性同一障害、男の娘。
こういった言葉が出てくると創作物ではベッドシーン等がお約束になるんだけれど、
今作ではそういったシーンが一切出てこない。
リンコ・マキオ・トモはずっと「煩悩」というアレを編んでいたり、
最期にリンコがトモにとんでもないものプレゼントしたりするんだけど、嫌な感じがしない。
全部リアルに寄せるのではなく、
世間からはドン引き・・・されてしまうようなことをうまくカットすることで、
マキオとリンコ、二人の愛を綺麗に描いていて良かった。
だから自然と僕達は見ることが出来るし、
なんなら子供にも見せることが出来るくらい。
多くの人に作品を受け入れてもらうために、
愛を綺麗に撮る。
監督の意図はうまく作用しているなと感じた。

一方、マキオとリンコの2人が心無い言葉で傷つく場面が多いのも良かった。
なんだかんだ2018年、21世紀とはいえどLGBTへの理解はなかなか難しい。
そこも2人側からありありと描いていて・・・うんまぁ普段のふるまい、気を付けよう。


本作では川のシーンがたくさん出てきます。

以上である。
登場人物・ストーリー、共に良い映画でした。

ちなみに本作は2時間ある。
はじめ「なっが・・・」と思ったけれど、
リンコとマキオとトモの日常を体感させるに必要な長さ・・・だったんじゃないかな。