小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

中野京子『怖い絵2』-今の僕なんてさ、まさしく-


薄気味悪い男の顔が目を引く。
そして堂々掲げられるは「2」

中野京子『怖い絵 2』(朝日出版社 2008年)の話をさせて下さい。


帯を以前やらかしてしまってな。

【概要】
数ある西洋絵画の中にも、
不気味なもの・恐怖を抱くもの・よく見ると違和感がするもの
がある。
それらの絵は何故怖いのか。
絵に塗り込められた恐怖を読み解く。
人気シリーズ第2弾

ちなみに前作『怖い絵』の感想も書いてます。

中野京子『怖い絵』


【読むべき人】
・前作『怖い絵』を読んでどっぷりハマってしまった人
若き王女の処刑 
 この言葉に軽蔑すべきロマンティックを抱く人( ドラローシュ「レディ・ジェーン・グレイの処刑」)
・グロい絵が見たい人

【感想】
前作と同じもしくはそれ以上のスリルがある今作。
情熱的で読み易い、あの文章は健在。
熱い「京子節」で様々な国の様々な画家の絵を、語りつくしている。

前作と比べて大きな相違点はない。
強いて言うならば、前作より扱う作品のが広くなった。
例えば、
ブレイク「巨大なレッド・ドラゴンと日をまとう女」ピアズリー「サロメのような所謂「挿絵」
ハントドラローシュジェラールのような人気画家に隠れた画家
等が多く取り扱われている。
単純に、「こんな絵があるんだ」「こんな画家いるんだ」とめくるたび新鮮な驚きが味わえる作品が多い。

僕がぐっときた絵は以下の5つ。

作品5 カレーニョ・デ・ミランダ「カルロス二世」
高校時代世界史の先生が言っていた。
ハプスブルク家の最期の王子の症状は、あまりにも醜い」
その肖像画がこちら。

醜い。
肖像画特有の美化フィルターをかけても醜い。
何故彼は醜く生まれなければならなかったのか。
また、彼はどのような人物であったのか。
が、情熱的な京子節で語られるのだが、まぁその実態が恐ろしい。
所謂「血なまぐさいヨーロッパ史って感じの耽美な恐怖が味わえる。

それにしても・・・確かに。
ハプスブルク家って受け口なんだね。

作品11 ボッティチェリ「ホロフェルネスの遺体発見」
シンプルに画が怖い。
首の断面図が何ともリアル。
恐らく画家は生で見て描いたんだろうね。
今現在日本ではびこるグロ漫画よりはるかにリアルで、恐ろしい。

ボッティチェリ
ヴィーナスの誕生(3で取り扱っている)で有名な画家だけれど、
本シリーズは1,2,3全てこの画家を中野先生は取り扱っている。
このシリーズ読むまで僕の中では単なるサイゼリヤの天井画家」にしかすぎなかったんだけど・・・
読破した今では彼の描く人物に、陰を探すようになってしまった。



作品12 ブレイク「巨大なレッド・ドラゴンと日をまとう女」
すっごい今風のイラスト。
今話題の挿絵画家が描いたと言っても信じちゃうくらい、
なんかエモい。
でも実際は19世紀初頭・・・約200年前に描かれた作品であるというから、驚き。
その「エモさ」にやられてか、最近でも羊たちの沈黙の続編であるレッド・ドラゴンにも殺人鬼のタトゥーの図柄として出てきているそうでp.149。

弱者(女性)に対して強さを見せびらかすこの姿は、
幼い命(小学生、中学生)に対して刃を向ける男の心情に近いのかなとも思った。
テレビで放映される凄惨な事件の犯人に、思わず赤い竜を重ねずにいられないのは、僕だけか。

作品15 ドラローシュ「レディ・ジェーン・グレイの処刑」
あと数瞬で処刑の、
10代後半のうら若きイギリス女王を描いた作品。

「怖い絵」展目玉作品でもあった。
直接見た時、その大きさにびっくりした。
ほぼ実寸大、もしくはそれ以上。
でかでかと描かれる運命へのカウントダウンは、見ているだけで息苦しい。
王女のドレスの白さが忘れられない。
約200年たった今でも「潔白」(p.177)や「無罪」と訴え続けている、けなげな、白。

作品16 ホガース「精神病院にて」
中世近世のヨーロッパにおいての精神病院の位置づけの話。
比較的ほくほくの黒字(p.190)であった。
なぜ。
京子節で書かれるその理由が、怖い。

ちなみに、僕も薄々病んできている。
やりたいこと、したいことがあって仕事をやめたはずなのに、
ちょっとうまくいかないだけでもう目の前真っ暗。
何もせず毎日を過ごす様は、
動物園の動物と、
精神病院でく狂う患者と、
何が違うだろうか。


以上である。
なんか厭世的になってしまった。
シリーズで見た時は・・・うむ。
僕は前作より今作のが好きかなー。
個性的な作品が多いのと、
なんか精神的にまいる作品が多いので。

ちなみに、前作から並行して読んでいる本がある。
それがこちら。



諸川春樹監修 美術出版社編『西洋絵画史 WHO’s WHO』(美術出版社 1996年)

281人の西洋絵画の画家を、1人1ページ紹介している本。
代表作もカラーで1~4作品掲載されている。
無論索引付き。
網羅しきれている・・・とは言い切れないが(ドラローシュは掲載されていない)、
wikiやネット上で上がっていない画家も簡潔に説明してくれてるときあって、もう手放せない。
美術関連の書籍を読んでいるときや、
美術展に行ったとき、気になった画家はついついこれで調べている。
ちなみに、
出版した美術出版社も「美学」という
卒論に使われるような美術に関する論文を発表する雑誌も刊行していて、
個人的には書かれてる情報は信頼にあたいするもの・・・だと思ってる。



あと700という数字に目が行くと思うが、
去年の夏、下北沢の古書店古書ビビビさんで購入したもの。
ちゃんと本にビニールのカバーがついているのはそのため。
状態がすごくきれい新品ではまぁまぁするのにこのお値段は嬉しい。

なんかすごいエモい古本屋
マイナーな同人誌やら絵本やら・・・いろんな本があったなぁ。
是非また行きたい。