小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

楳図かずお『赤んぼ少女』-異形の姿を持つ悲しき少女-



初めて読みました、ぐわしっ!!!

楳図かずお『楳図パーフェクトコレクション!9 赤んぼ少女』(小学館 2008年)の話をさせて下さい。



【あらすじ】
姿心共に美しい少女・葉子は、生き別れの両親の家に引き取られる。
昨日までみじめなくらしをしていたため、喜ぶ葉子であったが、
この家には赤ん坊のまま成長しない少女タマミがいて・・・。

【読むべき人】

・姉、もしくは妹に嫉妬したことがある人
・寂しい人
・愛されたい人

【感想】
全部読めば誰もがタマミを好きになる!そんな作品。

前半は典型的なホラーである。
「赤んぼ少女」であるタマミが葉子をこれでもかと苛め抜く。
なんてなんて酷いんだタマミ!姿も心も醜いのかタマミ!!
だがページを繰るに従いだんだんと、タマミに共感を寄せるようになってくる。
後半はただのホラーではない。ハートフルホラーである。
こわい!だけじゃない。別の感情も刺激される。
赤んぼ少女、タマミの
容姿のせいで、どうしても父親に愛されない深い悲しみ。
歪んでいく心。
そこに容姿も心も文句のつけようのない葉子が現れれば、
嫉妬に狂うよな、誰だって。
せめて葉子の性格が多少悪ければ救いようはあったかもしれないが、
彼女は心身ともに美しい。
容姿も心も醜い自分がどんどんどんどん惨めになる。
やがて葉子への憎しみに変わる。せめて容姿くらい自分と同等のレベルに並べとその美しい顔を傷つけたくなる。
悲しみ、嫉妬、憎しみ。
タマミの強い気持ちが起こした悲劇が今作であると気づけば、
誰もがこの顔可愛く見えてくる筈である。

現代であればタマミは幸せだったかもしれない。
障害の有無に関わらず愛情の享受が出来る現代であれば。
けれども恐らくこの推測はお門違い。
異形の姿を持ちながらも、普通の少女の心を持つタマミの切なさや悲しさを味わうのが本作の醍醐味であろうから。

なのでもちろん今作での推しキャラはタマミ。
いや可愛くないんだけど本当可愛いんだって。
嘘だ!!!!と思う人はまじで一読してほしい。
ちなみに一番の萌えポイントはp.145のドヤ顔と、p.151の泣いているところ。自分に振り向くはずがないとわかっていてもお化粧をするタマミ。健気で愛らしい。

ちなみにこの作品は約50年前の「少女フレンドに連載された作品。
少女漫画である。
そのせいか、葉子の着ているが毎回違っていて・・・尚且つ凝っていてめっちゃええ。かわええ。里香ちゃん人形みたいにふりふり。めっちゃええ。
是非見てみてほしい。
50年前の「可愛い」は現代でも「可愛い」。
あとその相手の高也君も正直初めは「なんやねんこのマッチョ・・・」と思うが見慣れれば「細マッチョはいいぞ」となる。やがて顔のパーツの配置の絶妙さにも気づく。
50年前の「かっこいい」は現代でも「かっこいい」。
また線も太くてとても綺麗。目もキラキラも非常に丁寧。
トーン不使用の演出はまさしく職人芸。
ここまで凝っているからこそ、後世にまで愛されているのだろうな。
今現在の『少女 フレンド』でそういった漫画が何本連載されているか、知らないが。



ちなみにこの本はある読書会の交換で手に入れた本である。
楳図かずお名前は耳にしたことがあるし、作者自身も変な服着て変な家住んでクレームもらって常に揉めているというイメージがあったんだけれども、作品を読んだことは一度もなかった。
読書会で薦められるくらいだから面白いはずと思って手にしたのである。
大正解だった。
繊細可憐なイラストに最後にまさかのまさか共感しちゃうタマミのキャラクター性。
ここまでごった煮になったホラーなんて現代ではそうそうない。
忘れない。忘れられない。
良い作品だった。