小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

千早茜『からまる』-二度と読むものか、こんな●●小説-


僕はこの作家、嫌いだな。
もう二度と読まない。

千早茜『からまる』(KADOKAWA 2014年)の話をさせて下さい。


表紙買いでした。

【あらすじ】
地方公務員の武生の家にふらりとやってくる、女。
転送から光が差し込むロフトで、彼女は蝸牛(かたつむり)の話をはじめるが・・・・。
様々な生き方を切り取った7の連作短編集。

【感想】※この作家を好きだという人は読まないで貰いたい。
表紙に惹かれて手にしたものの、いやぁ、ひでぇな。これ。
鷺沢萠を読んだ後の僕にはもう1ページ1ぺージが苦痛で苦痛で仕方なかった。
鷺沢萠の短編はどれもシンプルな文章で中身が濃い。
でもこの作家の短編はくどい文章で中身が薄っぺらい。最悪。

僕がけなす理由は大きく分けて3。

1.文章が下手。
まず目につくのが「俺」「私」一人称の多さ。
1ページに何度も何度も出てきてうざい。英語かよと思う。削れ。
あと言い回しが古い。p.16「ご名答」なんて使う若者なんてどこにいんだよ。
説明も長い。セリフが過多なのはよくあるけど、今作は逆。セリフ少なすぎる。
第三話「からまる」の冒頭。冷めきった夫婦仲って普通日常会話を切り取って読者に空気読んで察してもらうのが普通なんだろうけどそれを全部夫の一人称で済ましているのでくどい。僕は説明文を読みたいんじゃない。
妻側は何を言うかというとp.89「清潔感が満ちているわ」。リアルに則さない言葉使われたって「は?」てなる。は?
とにかく文が下手。
多分作家向いてない。
書評家とか説明文とかそういう文の方が絶対向いてるって。
あともっというと作家の性格もあんま良くないんじゃないかな。
「私は」「私は」と偏った一人称に、一昔前のカッコつけ。読者行間を読ませない身勝手さ。
うんざり。

2。きっかけの欠如。
大抵の小説は「きっかけ」があるから面白いんだと思う。
例えばごんぎつね。
「家の近くをきつねが歩いていたので若者が銃で撃って殺しました」
って話だけど、そもそも家の近くを歩いていたという行動に
優しくしてくれた兵十に恩返しをするために家の近くにいたという
狐のくせに心優しい人間のようなきっかけがあったから面白いわけだ・・・と僕は思う。
特に日本の小説は心情の精緻を重視するのでその傾向が強い。
でもこの短編全部きっかけがない。
から共感が出来ない。
第一話「まいまい」何故武生が女に恋に落ちたかが描かれていないし、
第二話「ゆらゆらと」何故田村が失恋を繰り返すような自己嫌悪激しい女になってしまったのかの欠如、
第六話「うみのはな」何故華奈子がフラメンコを踊るようになったか、
第八話「ひかりを」何故葛月が武生の日の当たるロフトへ通うに至ったのか。

知りたいきっかけが一切ないので読んでいてストレスがたまる。
第六話の横暴な兄貴とか第八話の好きな炭酸飲料なーんだ?とかとてもどうでもいい。そんな新しい情報付け足されても「はぁ?」となる。
特に第八話は、一話の回収しきれなかったところをすべて綺麗に洗うのかと思ったら全部放置。ふざけんなよ。独身男のロフトにどうしてどうやって美人女医が忍び込むんだよ。ありえねぇだろ。私だってイケメン金持ち独身男の部屋のロフトに全裸で忍び込んでうふうふ蝸牛の話をして養われたいよ。
「きっかけについては」第三話「からまる」何故夫婦仲が悪くなったか、第五話「ほしつぶ」何故蒼真が金魚を殺したかがうっすら触れられているくらい。それもありきたりでつまらなかったけど。
とにかく読んでいてイライラする。話の根幹になる「きっかけ」がないので、
だからとにかく

3.話が薄い。
本当に薄い。薄っぺらい。
一行で表せる。
第一話「まいまい」:ロフトに不法侵入する女と再会したぜ。美人女医だったぜ。
第四話「あししげく」:変態ビッチでできちゃったけど相手の男が引き受ける言うから好きになっちゃった、ぽよ。
第七話「ひかりを」:炭酸大好きじじい見てたら元気出た。じじい死んだけど。ご臨終。

こんな感じ。いやまじで。
なんも心に残らない。
しいて言うのであれば、場面は綺麗。
一昔前のレディースの漫画の場面のよう。きらきらー私かわいそうーぶわあああああ・・・って感じ。
だから読書初心者はこの作家の作品を「好きな作品」として堂々挙げてしまうんだろうけれども。
でも「きっかけ」がないから話が薄い。
キャラクターも薄い。
「おしゃれな女医」「レズの美人女子大生」「鬱屈をためた男子小学生」。
どれもどっかで見たようなキャラクターばっかり。
よくもまぁ・・・30後半でこんなキャラクターひょいひょい出せましたね。
せめて「きっかけ」さえ明確に書いてくれればそれぞれのキャラクターにしっかり厚みが出ただろうし、作者自身の個性もうっすらふりかかったんだろうけれどもさぁ・・・・。
うーん。いまいち。
脳内でお人形ごっこ延々やってろ。

以上である。
読者の心に一切届かない・・・もしくは届けようともしない小説・・・まさしく「自慰小説」。こんな感じ。
ちなみに今作、読書メーターでは非常に評価が高い。
まじかよ。
一時期ユーザー登録しようか否か迷ったけど、今後一生登録なんぞするもんか。
僕は心に誓いましたとさ。

ちなみにこの作者の作品はもう一作品読んだことがある。

最近文庫化されたよね。
千早茜『男ともだち』(文藝春秋 2014年)
直木賞候補作に上がっていた時に購入して読んだけど「うーん」だった記憶がある。
医療品を病院で回って売る職業がブラックという知識が身についたくらい。
でも再読することはもうないな。