小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

「恋妻家宮本」-ファミレスには、物語がある-


実家に越せばWOWOWが繋がっていて、
言うなれば去年今年のある程度新しい話題作も無料で好きなままに見れるわけで、
とうわけで何気なく録画して見たのが今作。

「恋妻家宮本」(2017年 遊川和彦監督 東宝配給)の話をさせてください。



【あらすじ】
「できちゃったの」
と控えめに告げる彼女にプロポーズををしてはや27年。
息子が結婚し家を出て行き、50を目前にして家に残された教師・宮本洋平(阿部寛)と妻・美代子(天海祐希)。
これから二人で変わらず暮らしていこうと思った矢先に、洋平は妻の署名がされた離婚届を見つけてしまい・・。

【見るべき人】
・熟年の夫婦(冷えてるのも未だに熱いのも両方)
・過去のIFに執着する大人
・教師

【感想】※少しネタバレあり
良い映画だと思った。
特にこれからを不安に思う妻と、漠然とした不安はありつつも大きな焦りはない夫の気持ちのすれ違いが、見事に描かれている。
最後に発覚する妻の心中も、結婚はおろか彼ピッピもいない僕にさえ、手に取るように分かった。最後に線路を挟んでホームで語り合う二人のシーンは秀逸、だと思う。

想像と違って驚いた点は、思ったより「教師ドラマしてんな」ということ。
宮本の職業が教師であり、そこでもさえない宮本なんだけれども、二人の生徒との関係性が良かった。
男子と女子、2人ともこれまたどこにでもいる性格を備えてるのが素晴らしい。
教師を斜め下から鋭い目線で見上げて、強い言葉で攻撃を図る少女。
「先生って、冷たいね」
とか臭い台詞なんだけど、いるんだよな。こういうこと言っちゃうやつ。クラスに一人は居る、こじらせてんだかこじらせてないんだかわかんない系の。ちなみに私服がちょっと野暮ったいのも良かったぞ。ぐっ。
一方で、ムードメーカーを気取る少年。
どうだろうね。たぶんこういう奴はムードメーカーに憧れてるだけで実際にメーカーになってるケースは少ないと思うのだけれども、それでも。教師が心を開こうと努めれば案外すぐ思いを口にしてくれる素直さは、いかにも男子中学生っぽい。
そしてその2人に対して不器用でも向き合おうとする宮本の姿は、日頃の雑務に追われてモチベだださがりの教師の心に深く刺さるのではないか。
意外と教師教師してんなと思った。

生徒以外のキャラクターもほど良く個性とリアルさ加減が調節されていて良かった。
料理教室の菅野美穂と、相武紗季
気が強いながらも「ちょっといい女」風を、黒髪の毛先からにおわせる人妻・菅野さんは、僕の目指す姿だと思いました。修行しよう。
一方で、婚約直前で浮かれていざ婚約破棄され仕事にがむしゃらに生きようと努力する不器用な女・相武さんはかわいそうで、でもこういう人いるんだろうし、僕もそうなっちゃうかもと思わせるような感じでした。グレーのスーツ似合ってた。
さりげなく、職員室の教師ではなく料理教室仲間にキャラクターを置くところに、監督・脚本の優秀さが際立っていると思う。そうだ。僕らは教師ドラマが見たいんじゃない。料理が趣味の、なんかやたらと顔濃い悩む中年・宮本が見たいんだ。

また、映画での宮本の言葉も素敵。
「2つの正しさは対立するが、2つの優しさは対立しない」
なるほど。
この言葉「優しいけど、それだけ」「気が弱い」「いまひとつ」とか言われがちな人々の光の言葉になるのではないか。
いわゆる陰キャみたいな人達に。
少なくとも僕の心には光になったね。多少は。
自分に自信が持てなくてうじうじしちゃうとき、この言葉を思い出せば、少しはしゃなりと背筋がのびる・・・と思う。

ただ思った折この映画、どこが「演劇」じみている。阿部・天海をはじめとする個性の強い、演技が若干オーバーな人々をそろえたというのもあるのだけれども。
けれども美男美女の夫婦だからこそ、こういう話を嫌悪感抱かずに、すんなり見れるのであろうな。
でもさすがに最後ファミレスでみんなで歌うのは・・・うーん。ちょっと見てるこっちが恥ずかしかったぞ。
後、何気なく行った家庭訪問。これが気になった。
さすがに2017年に、未だに家庭訪問やってる学校はほぼ無いと思うし、訪問はおろかキッチンなんて使おう者ならおなわだろうし、さすがに中学生男子が料理クラブに入るのは、ちょっとなと思うんだ。
さすがにそりゃないだろーとちょっと思ってしまう。

それでも、宮本の作る卵掛けご飯はおいしそうであったし、最後のファミレスのシーンは泣きそうであったし、よく浮きがちな「文字の合成」も見ていて自然に受け付けられたし、良かった。
中年夫婦のこれからとかいう一歩間違えれば真っ暗の話題も、先述したようなキャスティングで嫌味無く見れた。後味も良かった。
あと、ファミレスに行きたくなったね。