小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

吉村家−家系の語源ー


ついうっかり「日本一おいしいラーメン」を食べてしまった僕なんだけど、
だらだらニートよろしくアニメを見ていたんだ。
そう。世界名作劇場の最高傑作と言われているラーメン大好き小泉さんという素晴らしい作品を。
お腹ぼりぼり搔きながら見ていたら「家系」という話をやっていてね、
そこで初めて知ったんだ。
「家系」という言葉は一軒のラーメン屋に由来してるということを

吉村家の話をさせてください。



横浜駅西口から約8分。駅前と呼ばれるゾーンの片隅に、そのお店はあった。
赤い看板に白い文字。吉村家」。
目の前にはベンチが置かれていて、なんだかたくさんの人がぞろぞろ並んでいる。30人・・・いや40人・・・50人?
しまった土曜に来たのあほだった。ニートの特権活かして平日に来るべきだった。内心唇をぎりぎりしつつも、列の最後尾に並んだ。

客層は様々で、例えば5.6人でおしゃべりに花咲くサラリーマン。チェックシャツよろしく男子大学生らしき2人組。黒服を着たずっとスマホを見ている若い男性客一人が僕の手前にいて、アベックが僕の後ろにいた。
そんな多種多様なラーメン大好き✖✖さん達を、若いお姉さんが10人単位でどんどん店内へと案内してさばいていく。

ターンが回ってきたので、食券を買う。すると
「からん」
明らかに硬質なものが落下した音がする。
はて、さてはセラミックを使った何やらすごい食券なんかなと思い手に取ると、赤いプラスチックのカード。何も書かれていない。
なるほど、ふむ。思わず唸った。
おそらく客の出入りがあまりにも激しいため、メニューを単色のカードにすることで、見直す手間を削り時間短縮をしているのか。
確かにあの切符みたいな紙より見やすいしな。
行列店すげーーーー。
並び始めて40分後、僕は念願のカウンターに着席を果たした。

台上にプラカードを3枚。(残り2枚はライスとトッピング)置いた後、まず出てきたのはライス。
「お」
110円、なんだ10円それが行列店のプライドか100円でいいじゃねーかと思っていたが、
「なるほど」
ごはんにおしんこがついていた。
ラーメン屋のライスに漬物がつくのは珍しい。かなり珍しい。
しかもおしんこ。たくあんとかなんか赤紫色のお漬物なら「ご自由にお取りください」コーナーにあるが、おしんこ白菜しんなりおしんこである。
吉村家」という野郎感まるだしの店名で、こんな上品にお漬物を添えられると、なんかギャルが意外と正座きれいだった・・みたいなギャップ。そう。ギャップ萌えを強く感じた。
また、米も丁寧に炊かれている。僕の近所の家系は「米が手抜き」が多かったので、そこもギャルが正座したうえでお抹茶を綺麗に立てている・・・以下略。
前行った「丿貫」さんもご飯が丁寧に炊かれていたっけなぁ・・・。海苔ついてたし。
なるほど。米までこだわって一流のラーメン屋という事か。
孤独のグルメごっこをしながら、メインディッシュを待つ。読んだことないけど。

メインディッシュは、思ったより早く来た。
これが「家系」の元祖。
ごくりと唾をのみこみ、シャッターを切る。



一口、啜った。
なるほど。
麺は家系に多い「つるつる」の太麺。しかしそれにスープがよく絡んでおり、しょうゆとんこつの味が口いっぱいに染み渡る。
改めてスープを蓮華ですくう。
思ったより味は濃厚。しかし喉を責め立てる濃さではない。輪切りにされたネギがうっすらアクセントを残しつつ、喉の奥へ消える。
・・・うまい。うまいぞ。
チャーシューはスープとは反対に、脂身がほぼなく、「くどさ」を感じさせない。感触としては生ハムに近い。
「家系」の特徴の一つであるほうれん草をご飯と一緒に口に入れれば、ふふ・・・ふふふ。思わず笑顔になる。ほうれん草の優しい甘い苦みは、家系の濃厚醤油豚骨スープとよく合うのだ、素晴らしいのだ。そうか、お前が・・・お前がほうれん草の起源なのだな。
そして、増しにしてもらった海苔。麺をくるんで口に入れると、
じゅわ〜〜〜〜〜ぁ・・・・・っ。
ふやけた海苔からいっぱいに醬油豚骨が口に広がり、麺を一気に啜ると、ああ・・・あああ・・・・・。幸福感に全身が包まれる。
そして麺が少なくなってくると、スープに浸りきった海苔をご飯でくるんで食べると、素晴らしい。ご飯と海苔と豚骨。合わないはずがない。
もう一口・・・と白いご飯が進むのは森羅万象の理であり、
更にここにおしんこを一口ぽりっと齧れば、口内に風がさわやかに吹く。
・・・ふふ。
そして残り少ない麺へとまた箸が伸びる。
啜るとつるつる入ってくる麺・・・咀嚼しああ今自分は家系の元祖を食べているのだという喜ばしき事実を再確認し、また多幸感に包まれるのだ・・・

結論。いや、並ぶ価値あった。
思ったより濃厚なスープで、しかしくどくなく、ご飯・海苔・麺のバミューダトライアングルに入れば一度、食べた者は帰ってこれない。そんな感じ。
でも僕は帰ってこれた。
「家系の元祖」を胃に入れた幸福。
二度と忘れはしないし、機会があればもう一度噛み締めたい。