小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

朱雀門出『第五脳釘怪談』-超個人的竹書房怪談文庫フェス前半④!!呪いは虫歯。-

 

 

「あなたのお勧めの、竹書房怪談文庫は何ですか?」と訊かれたら、僕も間違いなく本作の名前を挙げるでしょう。

 

 

 

朱雀門出『第五脳釘怪談』(竹書房 2020年)の話をさせて下さい。

 

 



 

 

【概要】

伝説の実話怪談〈脳釘怪談〉のシリーズ最新刊が満を持して登場!

キャンプ中に突如体験した戦慄の出来事とその顛末「呼ばれる」、

恐ろしい夢を見てしまう禁忌の部屋では過去何が・・・「食人の間」

関が原古戦場で不気味な風袋のものたちに出遭う「欠けた人」

怖い話を綴る業なのか、怪談作家や家族の身に起きたりある恐怖譚「ある怪談作家の家」

無人の部屋で勝手に憑いたモニター、映し出された恐怖とは・・・「窒息オーディション」などファン待望の恐怖満載、60話を収録。

裏表紙より

 

【読むべき人】

竹書房怪談文庫のフェアはじまったけど何読んだらいいのか分かんないぴえんの人:僕も20冊全部読んだわけではないですが、本書は間違いなく上位に来る良書です。断言してもいい。まじ。

・夏だし怖い本でも読むか~の人:実話怪談本は何巻から読んでも大丈夫!第六第七もいいけどとりあえず現在脳釘シリーズで最も手に入りやすいのは本書です。なぜならキャンペーンをやっているから。また、キャンペーンをやっていないような規模の本屋には第六、第七もある可能性が低い為。

・我妻俊樹氏の怪談が好きな人:系統は違いますが両者共に不思議要素が絡んでいるので。

 

 

 

 

【感想】

知人「すざくもんいづる先生の、のうてい怪談、ってやつおもろいですよ(関西弁)」

実話怪談等が好きでどうやら占い等も嗜んでいるらしいTwitterの知り合いの方がおススメしてくださったのが本シリーズである。そういう知り合いは絶対リアルでは出会えないからね。大切にしたい。

1-2巻も出ているのだが入手がなかなか困難で、5-6巻しか本屋で入手できないとのことだったので、とりあえず5巻がいいんでは?となり、数日間粘って、2巻と5巻と6巻の在庫が出揃うのを見計らってブックオフオンラインで購入した次第である。1巻はさらにメルカリにへばりついて後日入手した。

結論やっぱうわあこの人怪談好きとは聞いてたけどやっぱ同胞が勧めるのはおもしろいわね!!といった具合である。そういう知り合いは絶対リアルでは出会えないからね。大切にしたいね。「ところでさ、実話怪談とか好き?オバケとか好き?」聞いたらカルト疑惑まっしぐらだからね。あれ?もしかしてまぐろどん統一されてる?みたいな。リアルの知り合いも大切にしたいね。

閑話休題

とにかく一通り読んでの感想は、6巻は新刊で買えばよかった!!!もうこれに尽きる。

2022年7月末日現在は7巻まで出ているのだけれども実際僕はこのシリーズの7巻で、人生で初めて竹書房怪談文庫を新品で買う体験を致しました。

そして今私は竹書房文庫が今これでもか!!ってくらい頑張っているフェアで新品でこの後も複数冊買おうと思っている所存でございます・・・要するに一つの人生のきっかけを与えてくれたシリーズなのでございます。

 

そしてやはりこの本を面白い、と思ったのは僕だけではないみたいで、2022年7月末から始まった竹書房怪談文庫の「怪談作家推薦!ガチで恐い最恐タイトル10選!」選ばれたのでございますわーーーーーい!!!!わかるーーー!!!僕もおススメの竹書房文庫は?と言われたらこれ挙げるーーーーー!!!!

そう、今までの何倍もの「第五脳釘怪談」が新刊書店に流通するこのタイミング・・・!!是非よい子のみんなには・・・よい子のみんなには・・・!!!本作、買ってもらいたい・・・!!!ということで、他にもいろいろ感想残してない実話怪談本が山ほどあるのだけれどもこのタイミングで本書のことを残しておきたいと思った次第。

その・・・まぁ僕はブックオフオンラインで買ってしまいましたが・・・でもブックオフも中高大そして現在ずっと僕の心のオアシスであって絶対なくなってほしくない日本のチェーン店ベスト3には入るからね・・・ブックオフも大切にしたいからね・・・近くにブックオフが無い今ブックオフオンラインで買うしかないんだね・・・ブックオフ・・・中高時代わざわざ遠回りしてまで寄ってたなぁ・・・大学時代に読書の幅を広げてくれたのも立川駅北にあるブックオフと多摩センターのブックオフだった・・・多摩センターの今はないけど・・・ブックオフオンライン・・・たいせつに、したい・・・。

 

 

 

 

以下簡単に印象に残った話の大まかなあらすじと感想を書いておく。ネタバレ注意。

てかこんなチラシの裏の落書き読まないでとっととお前らの近くの大型書店で平積みされている本書を!!このタイミングで買え!!買え!!!買いなさい!!!

 

 

「二 ノイズ」pp.13-16:

が、座っているだんっ生徒は大きな声で、ガーピー言っている。しかし、会話は枻率している感じだった。p.13

え・・・!?ええ・・・!?になる一篇。

ガーピー言っている生徒と言うのが意味わかんなすぎて凄く印象に残ったし、そいつが死ぬんじゃないんかい!!!という予想外の呆気ない展開で、切れ味鋭く、ひらりと恐怖心が花開く。

なんとなく、日日日ちーちゃんは悠久の向こうを思い出した。ああいう世界の裏側って学校とか身近なところにマジで存在するのかもな。まぁ読んだのも高校時代だし買ったのもブックオフでしたが・・・。

類似するような現象はないんですかね。気になるけど、気にならない。気にしない。気にしたら死んでしまいそうなので。僕が。

 

 

「四 送り先」pp.21-25:知人の電話に起こされる。飲み会帰り、車で家まで送ってほしいとの旨。行くとそこは・・・。

「お前の家は墓なん?」p.24

シチュエーション的には、実話怪談読んだ者ならもう色々浮かぶ感じではある。

・知人が途中で消えており、シートがぐっしょりパターン

・知人は既に死んでいてそこの墓に埋葬されており「ありがとう・・・」と言ってくれるパターン

・墓と思ったら、実際は崖で九死に一生を得るパターン

・そもそもそんな知人などいなかったパターン 

等々・・・。

どれも違う!!!!

シーツは濡れてないし、知人は死んでないし、崖もなかったし、実在している。

それでも、あの一瞬・・・一瞬に思わずゾッとしたのと、上記のようなことが起こらなかった・・・ことがまさしく人智を越えた現象であって、実話性を高めている感じがして、とても怖かった。絶対創作じゃ思いつかないって。

 

 

「五 呼ばれる」pp.26-29:卒業間近。みんなでキャンプに行ったよ。

普段は空をちゃんと眺めていなかっただけで、家のそばでもこうなのかもしれないけど、その場の夜空に見とれていた。p.26

ええ・・・になる話。現れるモノ自体もええ・・・なんだけれども、更にその後の怪異の後遺症にもええええ・・・・となりそれに対処市内体験者たちにもええええええ・・・・になる。

普通の実話怪談だったら、もうここは絶対お祓い展開。寺神社、今回の場合は教会も絡んできそうな案件なんだけれども、それほど生活に差し支えないからかそのまんまにしておく、というのがとても生々しい。し、実際僕もそのメンバーの中にいたらそうしていたと思う。

でもその「後遺症」が今も延々続いている・・・っていうのがね。呪いと言う程でもないが・・・ないからか、そのままにしておいてしまう。でも絶対どうにかした方がいいんだけどね。

今の僕の両奥歯(上)の虫歯に似てますね・・・。

 

 

「六 心の神」pp.30-35:昼過ぎまで寝ていた休日の訪問者は、チャイムを鳴らさずドアをノックする。

「私にはあなたの”心の神”が聞こえます」p.32

中盤まさかのバトル展開からの、終盤のまさかの解決方法!!6ページにもわたり展開を裏切り続ける・・・!!

「なん・・・だと・・・?」チャンスが何度もある実話怪談界のBLEACH!!!!アニメ化めでたいね!!!!

でもこの女、本当何なんでしょうね。実在しているのか生きて居るのか。

意外と普通の人なんじゃないかな。幽霊でもない。奇怪な存在でもな・・・コンコン!あれ・・・・?今ドアがノックされ以下略

 

 

「八 あゆいの男」pp.39-45:

この坂田くんは優しくて面白い子で、小山さんとは仲が良かった。ただ、残念なことに”めっちゃアホ”だった。小五なのに九九がわからない。七の段などは壊滅状態でありシチサンくらいから怪しかったそうだ。p.39

アホの坂田の話である。アホの坂田くん≠あゆいの男、なんだけれども彼のキャラクターが誌面越しにも「面白い子」で、とても印象に残っている。

後半はまさかの結末。実話怪談本では稀に聞く結末ではあるが、そこに「あゆいの男」のような人間もどきが絡んでいるケースは非常にレアなように思う。たいていが廃墟で置いてかれて・・・、みたいなパターンが多い中で、明らか「連れてかれて」というのは強い。

その強さとは裏腹に呆気なく現在その場所は・・・、というのも不思議な感じがしてああでもやっぱり、まぁそうだよなって思った。

 

 

「十 墓を指さす」pp.49-50:

墓石に裸の人が腰掛けているのを長男は必ず見る、というのだ。p.49

以前、つくね乱蔵氏の実話怪談の記事の副題にも書きましたが、「時代は全裸」。白ワンピに黒髪はもう擦られ過ぎてちょっと時代遅れです。令和は全裸。全裸がいっちばん怖い。

 

 

「十一 ギガ雛」pp.51-52:

船場家には不思議なひな人形が代々伝わっているのだという。お内裏様とお雛様が非常に大きい。幼児位の大きさがある。p.51

それくらい大きいお雛様イズシンプルに怖い。

けれど最後の一行が最高だった。

船場さんのお祖母さんの冗談だったのかもしれないしそうじゃないのかもしれない。その曖昧さが実話性せり上がって面白いのと、そこに「ギガ雛」というタイトルが組み合わさって絶妙にくすり、とくる。実話怪談本の幕間にちょうどいい、面白い一話。

 

 

「十二 奇祭 おさおさん」pp.53-54:

(言ったらあかんという言葉を尊重して、祭りの名前と内容は、着た時の不気味さを損なわない程度に少し変えて書いています。)p.54

ってことはこの話をした人は大丈夫なの!?え!?になる一話。

名前、内容ともに不気味なんだけれどもこの一行にクラクラしてくる。・・いや、こういう言葉で締めるのは一度は思いつく、と思う。実話怪談蒐集家ならば。でも一度使ったら、もう二度と同じ手法は使えないからか今まで避けられてきたこの技法を鮮やかに、中盤の2ページにも足らない実話怪談で使ってしまう潔さが良い。

ちなみにまとめサイトとか見るとそういう理解を越えたような奇祭って田舎ではまだまだやっているみたいなんですけど、どうなんですかね。地方都市にバリバリ育った僕には無縁の話なんですけれども・・・。

 

 

「十三 おそうしき」pp.55-57:徹夜で学校で研究している院生。夜、エナドリを買いに学内の自販機に向かうと・・・。

「葬式でふざけんな」p.56

こっわ!!!になった。葬式も何も関係ないようなところで葬式、と言う声を聞く。たまらなく怖い。思いあたりがないのにそういう不吉な言葉に、痺れたように動けなくなる。

いや。思い当たりがあっても突然そんな怒声が聞こえたら怖いか。

とキーボードで売っている現在でも不意に、そういう怒声が聞こえたらどうしよう、と思わずにはいられなくなる。

 

 

「十四 車を数える」pp.58-61:葬儀場で退屈している小学一年生は、外に出て車を眺めて時間を潰していたがそこでお姉さんと出会う。

そのお姉さんは千葉さんに駐車場の車を順に指さして、「何だいあるか数えてみたらいい。ちゃんと数えられないから」と言う。p.59

葬儀場に現れる謎のお姉さん(だけど優しげ)というキャラクターもなんか良いし、さらにはその行為自体が西洋のならわしと絡んでいるという行為なのもなんか良い。

あと、取材してそういう真相に辿り着く、アカデミックに実話怪談に取り組む作者の姿勢にも頭が下がる。

なんだろうな。

なんかそのお姉さんは、いる。いそうな気がする。けれども多分色んな葬儀場に現れるんじゃないかな。そこだけではない気がする。

 

 

「十五 誰かが乗っている」pp.62-64:

「でも、この前に読んだ中国の怪談で、飼っている老犬が夜な夜な人間の姿になって、飼っている馬に乗って遠くまで出かけているという話しがあったの。馬がげっそりと痩せてしまうので気付くのよね。似てない?」pp.62-65

「十四 車を数える」同様に様々な怪談を、学問として取り組んでいる作者のスタンス。凄い好きですね。蒐集する話自体も面白いのは無論、多分本書・脳釘シリーズが好きな人は、それらを蒐集する筆者の学者的姿勢も好きと言う人も多いんじゃないでしょうか。僕もそのタイプです。ということを確信させられる一話。

また、この話は猫チャーンが出てくるんですけれども、めちゃくちゃかわゆい。

 

 

「十六 臆病な小鬼」pp.66-67:彼女の部屋に泊っていると、小鬼を見つけた。

しかし本当に怖いのは小鬼ではなく・・・!?といった話。2ページと言う短さながらも鮮やかに軽やかにスパッとまとまっていて、非常に良質な掌編実話怪談だと思う。

序盤は小鬼の可愛さ。うちの実家の飼い犬も若い時はテレビ台に映る自分の姿にビビっていたっけ・・・。

からの、中盤におお!?となり、後半はいやぁ・・・となる後味。序破急、全部味わいが異なっている。

のと、「十一 ギガ雛」もとい、タイトルセンスが素晴らしい。多分僕だったらタイトルでネタバラシしちゃう。

 

 

「十七  巨人が黙って座っている」pp.68-71:

記憶にある、あの巨人に出遭ったことを話しても信じてもらえなかった。そもそエリアエリアにそんな変なものがでるという話は誰も聞いたことがなかった。また、未だにあんな大きな男の話は聞かない。p.71

タイトル通り、巨人が黙って座っている話である。でも巨人って意外とそんな聞かないし、黙って座っているって意味わかんないし、その目撃した後に起きた事象もさらに意味わかんなくて印象に残った。

ダイレクトメールの配達・・・ポスティングは、大学時代部活動の一環でよくやったけれども、凄く好き。知っていると思っていても一歩いつも違う道を歩けば、そこはもう知らない町。猫が横切り知らないおばさんが自転車で駆け抜けていく。初めて見るスーパーには沢山に人がにぎわっていて私の知らないスーパーで私の知らない誰かの生活が毎日営まれていることについて。そこに多少巨人が一人座っていてもまぁ、そういうものなのかもしれない。

また秋になったらポスティングのバイトはじめようかなぁ・・・。

 

 

「十八 ■■の怒り」pp.72-74:妖怪の「■■」という名前が入った土地の頭首である男性が、占い師のもとに来た。曰く、一族橙収めている者の短命である故、どうやったら長生きできるかという相談で・・・。

妖怪!?そんなことってある!?あるんだろうなぁ。

実話怪談界ではまぁまぁメジャーなジャンルであるが、その多くが微笑ましいものであったり時代が戦前戦後だったりするものが多い。今回は全然微笑ましくないし舞台は現代。

あとマンションとかこういう家でやってる占い師ってそれて経営が成り立っているのだから、結構な腕前だったりするんですよね。

その人が体験したっていうんだから・・・一層怖い。

 

 

「十九 五階の地下室」pp.76-79:鍵っこの少年のもとに訪れたのは。

屈まないと天井に顔が突くくらいに背の高い女と、子供ぐらいの身長をした小さな男の異様な二人組なのだ。p.77

子供が主人公。意味不明な展開が続く。カオスを越えるカオスが次々と起こる。怖い。現実じゃない。ありえない。夢だ。やっぱり現実じゃないと思っても想像以上の恐ろしいことが淡々と続いていく。

目が覚める。ああよかった夢だったんだ。

その後は特に何事もなく過ぎていくが、最後の最後にそれらは総て現実だったんだよニチャア・・・という顛末で終わる。

こういうの、僕は本当に弱い。後味が悪くなく、あっさりそのまま、ていうのが現実性があって厭だ。

我妻俊樹氏が蒐集する怪談にこの種類は多くてだから僕は我妻氏の怪談が好きなんだけれども、本作や「四 送り先」「十三 おそうしき」朱雀門氏の怪談にもこの類が多いので要するに朱雀門氏の怪談も、好きです。

新耳袋」シリーズほどあっさりしているのとはまたちょっと違うんだよな。こういうジャンルなんて言えばいいんだろ。きらら系?

 

 

一緒に暮らして2年くらいたつはずなのですが未だに見分けがつかない

 

「二十一 馬超さん」pp.83-85:吹奏楽部の演奏会に、馬の帽子をかぶったイケメンが客としてくるが・・・。

ただ、誰もその人が誰なのかは知らなかった。p.83

定期演奏会。僕も中学高校大学でオーケストラやっていたので分かるんですが、中規模のホールだと意外とお客さんの顔って見えるんですよ。

でもそこに、何かいても演奏はしなくてはならないし曲を止めることもできないしどうしようもない。要するに逃げ場はない。

・・・ステージの木製の床を照り付けるスポットライトの眩しさ。じりじりとうなじを照り付けて暑い。でも見てる。見てるよ。ほら。あんな凛々しい顔で。真剣に。なんであんな帽子かぶってるの。え。よく考えたら分かんない。怖い。うわじっと見てる。あ。もうすぐ出番だ・・・唇を舐め、マウスピースをそっとあてる。ひやりとする金属の冷たさと、また一筋、汗がうなじを伝っていく。

自身の個人的経験からあまりにも生々しく感じられた一篇。

 

 

「二十二 火の玉が飛び出す話」pp.86-88:

安土桃山時代の末期に成立したとされる会談奇談集『義残後覚』に、こんな面白い話がある。p.86

現代日本でもバチバチ起こっていますよという話である。

「十五 誰かが乗っている」でも書いたが、朱雀門氏は実話怪談を蒐集するにあたりアカデミック。けれど内容は難解ではなく、軽妙な語り口だからすらすら読めるし、分かりやすく書かれている。どれも興味深いものばかりである。

西洋美術について明るい文学者の中野京子ちゃんにそのスタンスは似ていると思う。専門家ではない・・・からこそ、面白く読めちゃう。朱雀門氏の専門知らんけど。

怪談自体、よりもそういう点において非常に興味深かった一篇。

 

 

「二十三 鶏妖」pp.89-90:五十年くらい前、男が鶏を捌いていると・・・。

面白いですね。これも民俗学的にほひがする一話。

ファミチキのあの手が汚れないように囲っている袋、あるじゃないですか。紙袋みたいな要領の、あれ。あそこに書いてほしい実話怪談ナンバーワンですね。値上げするならこれを書け!!値上げするならこれを書け!!売上爆上必至!!!

 

 

「二十六 箪笥から降りる人形の話」pp.96-97:

人形はギョッとした表情をしていた。その表情のまま、魂でもぬけたかのように動きを止め、人形はすとんと畳に落ちた。p.97

僕(ドールオーナー)「は?めちゃくちゃかわいいなおい。」

 

 

「二十八 ちょう、穴掘って」pp.101-102:

お祖父さん「子孫のためにお金を埋めておきたい」p.101

面白い。現代まで脈々と続いているということか。

今のところ母型の祖父からも父方の祖父からもそういったことは伺いませんねぇ・・・。

 

 

「二十九 食人の間」pp.103-105:その座敷で寝ると、ある夢を見る。

その夢がまぁ何ともリアルで禍々しくて怖い。

まぁ、タイトル通り人を食べる夢なんだけども。二回目はしっかりと料理されているって言うのが地味に厭でしたね。何らかの意思を感じるので。

あと、ALIPROJECT「人生美味礼賛」を思い出した。あとボカロの「悪食娘コンチータ」。中高時代にハマった曲は今でもサビからAメロBメロ克明に思い出せるのは、何なんだろうね。

「さあ。ご先祖様人間食ってた人がいるんじゃないの」p.105

頼む。その「ご先祖様」は女性であってくれ。可能なら美人であってくれ。

 

 

「三十 毒殺指南」pp.106-107:

「夢の中ですからね、殺人にはなりません」p.106

どっかの誰かが「他人の夢の話程面白くない話はない」と言いましたが、あれは嘘だ!!!

あと最後「今度はお前だ」とか「ばれたか」とか、まではいかなくても舌打ちくらいしてくれれば、怖くなかったのに。そんな・・・そんな風にしないでよ。

 

 

「三十一 修学旅行の夜」pp.108-111:

「お母さんの旧姓は?」

「三村」「中島」「山口」pp.109-110一部省略有

夢怪談なら「三十 毒殺指南」もとい色々読んだことがある。ネット怪談だと「猿夢」が有名か。

でも、寝言怪談は前代未聞。

寝言に答えると死ぬ、という言説もあるが、そう安直には人は死にませんねんな。

妙にSFチック、UFOチックなところもあって怖い一篇。

彼等はもともと、そういう存在だったのか。

それともその日、そういう存在になったのか。

 

 

「三十二 象さんみたいな子の青いマメ」pp.112-114:ある幼稚園で手段食中毒事件が起きた。それから逃れた子たちが言うには・・・。

タイトルど下ネタ。謎が多い一篇。似たような話も読んだことがない、意味がわからない。そいつが救ったということなのだろうか。それとも。姿も意味がわからなければ目的も意味がわからない。

可能であるならば、その豆を食べた子達の現在を知りたい。死んでいるのか生きているのか金持ちなのか貧しいのか共通点は何かないものか、それとも何もないのか。

 

 

「三十四 オンナの顔」pp.117-119:母の顔を楽しそうにケータイで撮影していると、一枚だけ奇妙な写真が撮れた。

そっちかい!!ぜってぇ父親の不貞が原因かと思っていたらそっちかい!!これは裏切られた気分ですわ。

そのオンナの顔が脳裏にはっきりと浮かんでくる・・・ような気がする1話。目付きの悪い細眉の免許写真に写った女を僕はイメージしました。その1枚だけ背景青。

 

 

待って。今見たら2巻ないんだけど。部屋の中にはあるはず・・・ま・・・まじかよ

 

 

「三十五 おじいさんとすれ違う」pp.120-123:

なぜあのお祖父さんを好ましく思ったり、見えない犬を気持ち悪く感じなかったのかと自分を訝しんだという。p.123

結構面白い一話。へえそういうのあるんだみたいな。

現れる怪異の容姿がなかなかファンキーなので、だいたいの蒐集家が目撃した地点でこの話は完結させると思うんですよ。

ところがどっこい今回は後日譚ががっつりついてくる。初めて聞くような話でこちらも興味深い。

前半は怪異のファンキー、後半は話の展開。それぞれ真新しさがあって新鮮なじじい実話怪談。

 

 

「三十六 ぬりかべ」pp.124-126:

「前に進めなくするものは全部ぬりかべちゃうんかいな」p.125

最後の一行が最悪です。その一行で終わるなよ、その一行で終わるなよ・・・本当に終わるんかよぉ!!て感じ。

あとまぁマーベル知らないけど、アベンジャーズあれを思い出しました。みんなでやってくる!!

 

 

「三十八 老火」pp.129-130:マンションの管理人が受けた電話。屋上で火を起こしている老人がいるという。

不思議な話。結局老人はいい奴だったのか悪い奴だったのか。悪い奴な気がする。にしても、え、なんでそこにそんなものを?いや、そもそも悪い奴という仮定が間違っている気がする。だって最終的には助かっている訳だし。にしても、え、なんでそこにそんなものを?なんでそこにそんなものを?

 

 

「三十九 エレベーターの乗客」pp.129-135:

だから、こんなにたくさんの人がエレベーターに乗っているのに住民がいないのはかなり違和感があった。p.132

マンションのエレベーターの話である。あるよね。マンションのエレベーターとかにモニター。ついつい見ちゃうのも分かるわぁ。そこでこんなの起きたらたまんないよ。

結局彼等は何だったのか。生きているのか死んでいるのかそもそも自殺は本当に起こったことだった?

リアリティーのある恐怖と、「三十八 老火」同様畳みかけてくる謎。

マンション怪談は、実話怪談まぁまぁ読んでると結構目にしてきたんですけれども、その数あるなかでもぶっちぎり一位。これを越えるマンション実話怪談ってもうない気がする。

 

 

「四十 お経を書いた服」pp.136-137:数いる参拝客の中に一人、お経を書いた服を着た人がいる。

うへえ、となる一話。

あとあれを思い出した。ネットで出回っている画像なんですけど、精神病蓮に入院している早杉さん、の画像。早杉さん自身まぁ目がイッちゃっていますが、まぁまぁなイケメンなんですよ。でも周りに結構物騒なものが映っているんですよ。多分あれニュース番組のフォトショだと思うんだけれども・・・。検索してみて。あれを思い出した。

 

 

「四十一 逆天冠のモノ」pp.138-141:林間学校のカレー作り中、3人の男子は抜け出して・・・。

なかなか味わい深い一話。まずこの話の主人公は朱雀門氏とタメ、1967年生まれ。今年・・・2022年で数え年で55歳である。その人が小学校の時の林間学校ってどんなんだったんだろう。今とは全然違うんだろうな、でもカレーづくりは1993年生まれの僕もやったな。飯盒炊爨で炊いた米はうまかった、覚えがある。・・・ああ、55と言うと丁度ちびまる子ちゃんさくらももこ氏の同世代くらいか。

後半、え、なんでそんなことが起きるんだろう。でも手を振っているお祖父さんは楽しそうだし何とも全てが和やかに感じられる。恐らく天候は晴天。

今もその能力は現存してるんですかね。してるんなら凄すぎない?

あと3人中2人が高熱を出し、1人が無事。というのは、僕の小学校時代のシチュー事件を思い出した。欠席した子が多くて、余ったシチューのおかわりメンバーを担任が募ると僕、男子①、男子②が手を上げた。3人は皿に並々に注がれたシチューにとりかかったが、②がリタイア。間食したのは男子①と僕のみ。しかし午後の授業、顔色真っ白の男子①はトイレに駆け込み嘔吐。結局生き残ったのは僕だけって言う・・・。「まぐろどんちゃん女子なのにすごい!!」照。まぁこれは小3の話で野外学習も幽霊もクソもない話ではあるのですが。なんかすっごい個人的にノスタルジーなところをくすぐられました。

ちなみにルー系で一番好きなのはハヤシライス、その次はバターチキンカレー。

 

 

「四十三 自己対局」pp.147-149:「四十二歳差の自分と将棋を指す」夢を見る。

面白い話ですね。だいたいこういうのは当たっていて、将来の自分が過去の自分と将棋を指す番になるところまでくるのがオチ(感動)と思っていたんですが、まぁ違ったね。

じゃあお前は誰やねんって言う。どういうことなんでしょうね。逆に興味あるわ。ある意味同一人物オチ、といったところか。

 

「四十四 アオカン」pp.150-151:山のなかで性交している若い男女を見かけた。

えええ!?という話。まじ!?まじであってくれよ!!!

よく読むと、「木に身体を預けているのは女性」p.151だから、後ろから、ってなわけでしっかり其処も辻褄合う。でもせっかくなら前からいけやとも思うけど、わかんないんだろうな。

 

 

「四十五 石塔」pp.152-157:

だいたい、僕は実話怪談の本の感想を書くときは、気になった話のページを折って一通り読む。まぁすぐ書けばいいんだろうけれども放置。そして書くときに改めて折ったところを読む。

実話怪談本は凄い好きなんだけれども一冊にたくさんの話が入っていて、また、好きだからついついハイスピードで読んでしまう。だからしばらくたつと話の内容を忘れがちで、それを思い出すために、また、忘れないためにこうやって、書いている。

だいたい読み返すとああこんな話あったあった!!そう、ここが刺さったから、ここが怖かったから、ここが気に入ったから!!と思い出すのだけれども、この話については特段怖いとも思わなかったし別に気に入った訳でもないのに、でもページが折られている。それが一番怖かった。

 

 

「四十六 欠けた人」pp.158-161:異動先近所の、関ヶ原に現れる人々。

その男には、右腕がなかった。p.159

怖い、よりかは気持ち悪い一話。正直、舞台が「関ヶ原」と訊いた地点であーはいはい落ち武者ね、と期待薄だったのだけれども、そこを裏切るキモ実話。

特にそれが田んぼにいるp.149景色があまりにもキモい。まだ道路の片隅とかに立ってこっちを睨んでくれればよかったんだけれども、田んぼて。いやいや田んぼて。

その後に続く話も気持ちが悪い。

正体が分からない。意図も分からない。

落ち武者だったら、まだよかったのに。

 

 

「五十五 角の生えたお姉さん」pp.188-190:

「大丈夫。まだまだ晩御飯の時間じゃないでしょ」p.189(脳内音声:種崎敦美 ※「魔法使いの嫁」主演のさらにちょっと低くしたちょっとウェッティな声で)

エッッッ・・・!!!!!!

 

 

「五十七 やめろよぉ」pp.195-198:駅のホームで友達とふざけ合っている。軽い力で蹴ると友達がバランスを崩して・・・。

「次、おまえ、押したろか」p.198

こわぁ!てなる話である。現実かと思ったら夢でした!パターンはまぁあるにはあるんだけれども、この話のように主催者がドロン!っと出てくるのはなかなかレアですね。いや、主催者、じゃなく救世主(メ・シ・ア)なのか・・・?

 

 

「五十八 ナンダローネー」pp.199-202:出席した国際シンポジウムである日突然時間が止まる。そして現れたのは・・・。

それは、関節が一つたりないような、脚の短い馬に乗った、西洋の貴族風の衣装を着けた男だった。p.200

ビジュアルが鮮烈。時間が止まって現れるのがそれって・・・ええ・・・。ファンタジー?この現実にファンタジーを期待してもええんか・・・!?小人で馬に乗っている、となるなんとなく、ポケモンのバトレックスを思い出す。

からの、後遺症もとてもユニーク。日本語が分からないから、変なイントネーションp.202になったんでしょうね。

あとフランス語と僕は睨んでる。

 

 

「六十 有機臭」p.211-219:シンナーのような、有機臭が鼻をつく。

なぜそちらを見たのか覚えていないが、網棚を見上げた。

そこには山盛りの男茎が載っていた。pp.216-217

祟りの話である。祟りの話は、もれなく、怖い。

本作もその例外に漏れない。特に上記の部分は意味がわからな過ぎて怖かった。そんなものを電車の網棚に盛るんじゃない。

こういう話を聞くと、ああスピリチュアルとかって多少なりともあるんだなぁ、と不思議な気持ちになると同時にちょっと前向きにもなる。

だから本書のメインディッシュの一つとなる本編を、最後に収録したのは英断。

あと「第七脳釘怪談」の「ヤミクラさん」もとい、この作者の長尺の実話は当たり率高い。当然短い実話怪談も非情に面白いんだけれども。

 

 

 

以上である。

で60篇収録に対して、気に入った・刺さった怪談が30を超えた。

50%越えることなんて、まぁない、まずない。

多分本気で僕の脳に釘がぶっ刺さっちゃったんだと思うよ。

あと比較的掌編が多いのも嬉しかった。長尺のも好きには好きなんですが、短い方がやっぱ切れ味いいので・・・。

 

第九第十とはいわず第五十第百とまで続いてほしいシリーズである。

 

 

 

・・・あと、4冊も一気に記事あげたので、フェス前半終了!!!!

後半は逆に20冊の中で気になって読んだ本の感想を書こうと思うよ!!!!でも気力湧くかな!?!?

あったらいいね、後半!!!

 

***

 

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今年の7月に出た最新刊の感想。

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超個人的竹書房フェス、他の書籍。

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夜馬裕『厭談 祟ノ怪』-超個人的竹書房怪談文庫フェス前半③!!すれちがって振り向くと、ばんもん。-,

 

 

選ばれる、理由は分かる。

 

 

夜馬裕『厭談 祟ノ怪』(竹書房 2020年)の話をさせて下さい。

 

 

 

 

【概要】

厭な話をさせたら圧巻の迫力!

メディアや怪談ライブなどで大活躍中の怪談師・夜馬裕が鮮烈に単著デビュー!

土砂にまみれた奇妙な一室のしょうげきのyらいとは・・・最凶最悪の事故物件奇譚「ばんもんの部屋」

神隠しのごとく人を飲み込む山に命を練らん我幾重もの恐怖が襲い掛かる「マレビトの塚」

幼い頃に出遭った怪異が今も闇女の向こうから自信を探し続ける「もういいかい」

屋敷に伝わる機械な風習の裏に隠されていた驚くべき秘密とは・・・「蔵守りの儀」など21篇を収録。

欝々とした最悪の後味を残す厭怪談の妙味に震えが止まらない。

裏表紙より

 

【読むべき人】

・派手な怖い話が読みたい人

・実話怪談において実話性を重視しない人

・「怪談新耳袋」がハマらなかった人

 

 

 

 

【感想】

ですから私は、面白い話を聞いたとき、話の詳細や人間関係について追加取材は大目に行いますが、どんなに派手で驚くような話しでも、それが本当に起きたことなのか、という裏はとりません。p.222 あとがきより

面白いです。

結構派手に怖い。

200ページ強の竹書房文庫で21篇、ということはそうです。1篇平均10ページ。長尺の為物語性もガッツリあります。

ただ、派手に怖い分、「本当にあったのか?」と思わずにはいられない。そんなに都合のいいことがそんなベストなタイミングで起きるかね?

でもそれは、「あとがき」において夜馬氏自身の筆で、そこを重視しないという姿勢が書かれている。それが上記のあとがきの部分である。

だから完全に好みだと思う。

好きか?と聞かれると僕はまぁ・・・うん・・・まぁ・・・まぁ・・・まぁ・・・。

 

派手に怖い情報を詰め込んだ分、まるで一篇一篇がド派手に怖い読み切り漫画のよう。脳内にその情景が結構ハッキリ浮かびます。

ホラー短編集、と割り切って読めば満足感は半端ないです。

文章も整っています。巧み。

別の階段蒐集家に推されるのも分かる。面白いです。

ただまぁ実話怪談本として好きかと言われると・・・うん・・・まぁ・・・まぁ・・・うん・・・まぁ・・・。

 

僕が夜馬裕氏を知ったのは「瞬殺怪談」シリーズにおいてである。

2ページという短尺で、且つ初めて耳にする名前でありながらその怪談は一篇一篇ばっちり怖くて面白かった。ので、単著を購入した次第。

ただ一篇10ページにもなってくると「おいおいこんなことが?本当かい?」と心の中のアメリカ人がまぁね・・・うん・・・まぁ・・・うん・・・まぁ・・・まぁ・・・うん・・・。

 

 

 

 

それでもインパクトのある話はいくつかあった。まぁ基本どれもインパクト重視ではあるんだけれども・・・、実話性重視の僕にもぶっ刺さる話はいくつかあったので、簡単に感想を記しておく。

ちなみに俳優名は、実写化した時に演じてほしい俳優名である。それだけ視覚的に訴える怪談本であった。

圧倒的ベストは「いつもの」

 

 

夜馬裕:草彅剛

 

 

「いつもの」pp.23-30:いつもの帰り道。アベックとすれ違う。しかしすれ違った瞬間女が毎度消えている。

下田:大泉洋 若者:岡山天音 女:岸井ゆきの

飲み屋で、自慢話(嘘クサい)がとりえのおっさん(独身)の話である。

すれ違った瞬間に消える、と言うのも結構ゾッとした。今までありそうでなかった話である。そしてその真相が明らかになった時にさらにゾッとした。

その上での、話を聞いた後の大オチにゾゾゾゾッ。いやいやおいおい・・・。

初めて読んだ時は鳥肌がたった。

 

 

「乗車拒否」pp.49-52:タクシー運転手に面白い話がないか聞くと、露悪的な自慢話ばかりしてくる。

「幽霊なんか、俺はきっぱり、乗車拒否よ!」p.62

運転手:六平直政

その刹那、といった話である。こっわって思った。たまったもんじゃない。

「ばんもんの部屋」のような話より、筆者のこの体験談の方が僕の胸には刺さった。第一者が綴る文章はやっぱりいいですね。心情生々しい。

逆にこの話は、聞いた話だったら成立しないでしょう。それくらい些細な現象ではあるのだけれども、「乗車拒否よ!」p.62後の瞬発力が凄まじかった。

 

 

「治験で世界を旅する男」pp.89-103:世界を旅するバックパッカーにとって、欧州の治験のバイトは非常に都合がいい。

両足の膝から下を失ってしまい、車いす生活を余儀なくされている原田さんへ、その不詳の経緯を尋ねたところ、聞かせてくれた話である。p.103

原田:滝藤賢一

長尺の話でしたが、この話は結構ぶっ刺さりました。え、そこもかい!!となった。

加えて、脚を失うまでに至った重い後遺症も非常に興味深かった。そういうパターンもあるんだ。

そもそも治験のテーマがちょっと怪しい、怪しいけれどもオバケ大国の首都ロンドンだったらありえるのかなぁとか思ってしまう。怖い、よりかは好奇心を刺激される。

地球の歩き方が、コロナ禍になっていろんなテーマで出版するようになって話題とのことだけれども、「心霊スポット」「お化け屋敷」とかそういうテーマはまだですかね。

・・・調べたら、ムー。ムーとのコラボはあるんだけど、それはまたちょっと違うんよ・・・。でもムーのも読みたいな・・・けどなかなか高いな?

 

 

「墓守の儀」pp.130-161:田舎の昏い祖母の家を、相続する。

和則さん:神木隆之介 叔父さん:ピエール瀧

圧倒的長尺。恐らく本書は「ばんもんの部屋」に関わる話と、そしてこの話がメインディッシュなのでしょう。メリハリがついているの、とてもいいと思う。実話怪談本はするする読めるので、怖いと思ってもすぐ忘れてしまう。でも、これとこれ、だけは、と決めておけば何らか読者の記憶に残りやすいし。

30ページかけている分、まぁやっぱり結構物騒です。昏い和風のおうち、にまつわるあれやこれやがドンドン絡んできて最高。あれもこれも全部全部全部。なのにきちんとまとまって、怪談として成立しているので凄いと思った。最後はこう来るかと思った。

ただ、これが実話なのか・・・というと、ちょっと怪しいなぁ、と思わないこともないですが。あまりにも、できすぎている。

好きな人は好きだと思います。怖い話好きなら一読の価値はあります。

個人的に思い出したのは、昏い日本家屋ということで小松左京「くだんのはは」、あと綾辻行人「再生」を思い出した。どちらも有名な短編なので、読んだことある人も多いはず。そのどちらかが好き、と言う人にはおススメ。

・・・。

なんだろう・・・。

なんだろうなぁ・・・。

これが実話怪談ではなく「事実をもとにした短編小説」だったら、とても面白いと素直に言えるんだけれども、「実話怪談」という枠組み上、いやいやそれはないでしょwみたいなスタンスで読んでしまうんですよね。

いつか、竹書房で数を重ねたら、「実話怪談」に至らなかった怪異を元に掌編小説集とか角川ホラー文庫で僕は読みたいですね。切実に。

 

 

 

 

ちなみに、感想で随所現れる「ばんもんの部屋」というのは本書の一番初めに収録された実話怪談である。まぁ結構読み応えがあって怖いが、この話もやはり「実話以下略」スタンスが邪魔して、ちょっと実話怪談としては微妙だった。

でも、この話に仕掛けられたトリック、は目を見張るものがあった。

それを、ここに残してもいいのだけれども、僕は本書を読んで数か月たった今でもその「仕掛け」を克明に思い出せるから恐らく忘れはしないだろう、残さない。

気になる人は、僕が行かなかった分、本屋で新品で、購入必至!!!

 

 

×「たかしのけ」
〇「たたりのかい」

 

以上である。

面白い、んだけれども実話怪談本としてどうかと言われると微妙。

しかしそこは完全に個人の趣向であるし、「怪談作家推薦!ガチで怖い10選」に名前が挙がるのは十分に分かる。これだけの筆力・筆圧で実話怪談を書ける若手が今いったい何人いんのか、って話である。

・・・ああ、筆圧、というか熱量、というか。そういったものはびしびし感じた。

もう一冊単著があるみたいなので、また気が向いたときに手にしようと思う。

 

 

ちなみに、井澤詩織さんの推す10冊のうち買うと、
こんなんな~~~な井澤詩織さんイラストのブックカバーが貰えるよ!!
まぁ本書は選ばれていませんが・・・。
推す10冊のうち、一冊新品で後半で感想書こうと思う。
まぁ本当にフェス後半やるのか知りませんが・・・。

 

***

 

LINKS

「くだんのはは」「再生」が同時に収録されているアンソロジー

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ちなみにアイドルのバンもん!では僕は甘夏ゆずちゃんが一番好きです。

平山夢明ほか『瞬殺怪談 罰』-超個人的竹書房怪談文庫フェス前半②!!あの瞬間、彼女は。この瞬間、私は。-

 

ううーん。悪くはないけど、七巻よりは薄味かなぁ。

 

平山夢明ほか『瞬殺怪談 罰』(竹書房 2022年)の話をさせて下さい。

 

 

 

 

【概要】

あっという間に読めて怖い!どこから読んでも極怖の超短怪談を詰め込んだ人気シリーズ第8弾。平山夢明をはじめ、黒木あるじ、我妻俊樹、黒史郎、つくね乱蔵、神薫、小田イ輔、そして『八王子怪談』でも勢いを増す川奈まり子が参戦。新たな才能が煌めく鷲羽大介に、都市伝説系の鈴木呂亜も久方ぶりに登場する。総勢10名が様々な「恐怖」をこれでもかとばかり、惜しみなく綴る。怖い話が大好きなジャンキーたちに送る怒涛の144話、罰を恐れずに読み進めよ!

裏表紙より

 

【読むべき人】

・実話怪談初心者

竹書房が抱える数いる実話怪談筆者の中で、好きな筆者を見つけたい人:ちなみに僕はいっちばんはじめに読んだ4巻・5巻で我妻俊樹氏が大好きになって単著の竹書房怪談文庫この前とうとう全部揃いました。

 

 

 

 

【感想】

悪くはないけど、7巻より薄味かなぁと言った印象。

同じくらい印象に残った話はあるんだけど・・・うーん。なんだろうね。なんだろう。

あと鈴木呂亜氏を復活させていたのがいただけなかった。実話怪談本って「どれだけ手止めずに一気読みさせるか」一つの面白さだともうんんだけど、いきなり実話怪談の中に世界規模の都市伝説を入れられると、どうしても指がとまるんですよ。だってさ、ページめくってたらいきなりマクベスとかマンデラとか出てくるんだよ。やってられないよ。いきなり舞台が現代日本から世界にしかも場合によっては違う時代にまで飛ぶからさぁ・・・。

ロアとか世界の都市伝説とか僕も嫌いじゃないんで、お願いだからどうか単著で「瞬殺ロア」として出してほしかった・・・かなぁ。それなら安心して買うので。読むので。別に文章自体や話題に不満がある訳じゃないんだけど・・・。

 

執筆陣は・・、あと、小田イ輔氏も復活しましたね。良作をまぁまぁ書いてくれる作家の印象。

あと七巻で瞬殺怪談にまさかのエロスをもたらした鷲羽エロス・パイオニア大介氏が続投しているのに対して、七巻で初登場してバンバカ傑作を出した夜馬裕氏がいないのが残念。

川奈まり子は名前はよく聞きますね。Twitterもやってるよね。なんかボブで着物着ているイメージがある。確かに今まで執筆陣に名前なかったかも。神薫氏に続く二人目の瞬殺怪談書き手です・・・かね?多分。

 

あと、本書はなんとまぁ、2022年、今年刊行というわけで・・・実話怪談界においてもすっかり「コロナ禍」が定着しましたね。かの大先生平山夢明先生も「テレ飲み」(「マイホーム」p.19)を踏まえた怪談を本書で発表しております。

一方で、マスク全盛期迎えてるのに口裂け女は復活しませんね。今こそ頑張ってほしいんだけど・・・。

 

そして、裏表紙の概要の文中に久々に「ジャンキー」って単語が出てきました。ジャンキー。竹書房が長年「怪談ジャンキー」とか言って推してますが、おもしろいくらい定着しないんだ。これが。竹書房、カアイソウ・・・。なので久々に聞けて嬉しかったです。

 

 

 

 

以下簡単に印象に残った話の感想などを書いていく。ネタバレ辞さない。

そのなかでも特に良かったのは「痕跡本」「怨霊物件」「のりかえ」「古民家の解体」「村一番の霊能者」「大きな白い犬」

特にof特に、ベストはまぼろしの来客」。

 

 

鷲羽大介「痕跡本」p.28:

ユリコさんは、古本屋のワゴンセールで、三冊二〇〇円の漫画本を買った。p.28

僕も基本本買う時古本なので・・・、こういうことが起こったらたまらないなぁと思いました。メルカリでも結構古本買うからね。すると本名とかあいてにもろ分かりじゃないですか。結構ありうる話だと思う。いや、本編同様店頭で偶然買った本に書かれてても怖いんだけど、ヨシ!

 

 

つくね乱蔵「快楽殺人」p.29:若い女性を森の中で殺す夢に悩まされている。

お・・・おお・・・(ドン引き)という一篇。

でもさぁ、僕達みたいな人間ってさぁ、ずっとさぁ怒られて怒られて怒られてばっかなわけじゃん?こっちが怒ることとかって基本ないわけじゃん?卑屈の塊になるとやっぱこういう方が生きてる!って感じするのかなぁ。僕もこの夢・・・みたいかも、ヨシ!

 

 

鷲羽大介「犬の躾」p.30:散歩させてたポメラニアンがオッサンに向かって吠えてる。

おっさんの忌々しさと絶妙な間、からの最後の一行のオチのスピード感が見事。

またポメラニアンっていういかにも吠える種類を指定しているのが憎いね。噛む力も強そうだしね。ダックスフントとか「チワワ」だったら違う。絶妙なチョイス、ヨシ!

 

 

黒史郎マヨイガ」pp.34-35:高校生が遠い親戚の家に向かったはいいけれど・・・。

マヨイガ・・・P.Aワークス・・・うっ・・・頭が・・・っ!・・・のちに知ったんですが、「迷い家」という言葉は実在するんですってね。

あと初めて通る住宅街って独特の不安感ありません?住宅街の一軒一軒に人々の暮らしがあるのかと思うと不思議で不思議で、そしてなぜかちょっと怖くなってたまらなく、帰りたくなる。自分の暮らしに。あの感覚を想起させる一篇、ヨシ!

 

 

川奈まり子「怨霊物件」pp.36-37:風俗落ちして亡くなった、田舎出身の女子短大生は怨霊となり・・・。

北海道江別市、札幌、北海道の寒村出身等、この話は妙に場所が具体的なんですよね。ぶっちゃけ瞬殺怪談って、瞬殺「実話」怪談ではないんだよなぁ・・・っていう話が多いんですが・・・まぁそれはページ数の都合もあるし・・・、これは2ページいっぱい凄く生々しくてリアルで厭。ヨシ!

あと北海道の寒村、とありますが僕の父がオホーツクに面したまじのそういう田舎の出身なんですよ。道路がやたら広くて店は基本小規模、空気はいいけれど、冬とか特に殺伐。確かに、ああいうところから札幌にいきなり行っちゃたら風俗堕ちても仕方ないよなぁ・・・とか思ったり。ちなみに僕の父の母校は無事廃校になりました、ヨシ!

 

 

神薫「かえる」pp.38-39:アマガエルを殺して遊んでたら・・・。

カエルが冬眠する冬にはできなくなる遊びゆえ、彼はできるうちにと、よりいっそう殺戮に励んでいた。p.38

「よりいっそう殺戮に励んでいた」。積極的に使いたい日本語です。特に殺戮という物騒な熟語の後に、励むっていう超絶ポジティブな動詞が来ているのがいいなぁと思いました、ヨシ!

 

 

あ!あれは!!!

 

 

平山夢明「塩」pp.48-49:ベテランの万引きGメンの先輩は、仕事前に目元に塩を塗る。

その理由がなんとも哀切極まるもので・・・切ないですね。

平山夢明先生は小説になると時々昭和のすれたような短編・中編書かれることがあるんですけど、それと同じ匂いがする一篇。人情とかね。哀しみ、とかね。

今まで瞬殺怪談でそういう話はほとんど見なかったので、新鮮、ヨシ!

 

 

鷲羽大介「ふるさと」p.52:

尿意で目を覚ますと深夜二時だった。p.52

深夜のトイレ瞬殺怪談といったら、あの平山夢明氏「出会す」という最高傑作が出ているので、意外と題材にされることは無いんですが・・・これはこれで良作ですね。尿意で目が覚めること自体はあまりないですが。多分僕も気づかないと思う、でも幼稚園の年中まで住んでいた社宅のトイレが現れたら泣いちゃうな、和式だし、ナメクジいたので。ヨシ!

 

 

平山夢明年賀メール」p.57:

『久しぶりだなあ。お前四月に死ぬかもしれないぞ、きをつけろよ』p.57

「塩」に対して、こちらはいつもの平山夢明氏のワードセンスで真っ向勝負の瞬殺怪談。ただ強いて言うならば、年賀メール」という文化自体がもう廃れに廃れて実感伴わないのがなぁ・・・LINEなら傑作!!って思えたんだけど・・・ヨシ!

 

 

鷲羽大介「はんぶんこ」p.58:

「いつもこうやって、勝と裕太にはんぶんこしてあげるの」p.58

草。そういう問題じゃねぇだろという一篇。

鷲羽・エロス・パイオニア・大介によるエロエロ瞬殺怪談第2弾。一冊に1-2篇あってもいいかも。不意なるエロスほど良いエロはないから。あと是非実話「官能」怪談みたいなのやってほしいけど、岩井志麻子氏がそこはもうやってるのかなぁ、彼女の実話怪談集読んだことないので何とも言えないですが、ヨシ!

 

 

小田イ輔「覚醒した日のこと」pp.66-67:

いうなれば彼女の死が、私にとってもの凄く自信になったんです、あ、やっぱりこれ合ってるんだって。p.67

えっげつねぇ~になった。えっげつねぇ~。友達の死が絶対的自信になるってもうそれやばいって。

あーでも、自身があることって他人と比べてこれは・・・っていうことが多いから僕達も大差ない。無意識に僕はみんなを殺してる。逆にみんなは僕を殺してる、はず。その地獄から外れるには白地になるしかない。彼女の場合は実際に殺しちゃっただけ。ヨシ!

 

 

黒木あるじ「ためらいがちな」pp.72-73:優柔不断な女性が丑の刻参りやってみた。

どうしようかなぁ・・・やめようかなぁ・・・の体験者の優柔不断ぶりが、ハッピーエンドかなぁ・・・バッドエンドかなぁ・・・とまんま読者の感覚に繋がっているのが面白い一篇。結末もちょっと笑ってしまった。ヨシ!

 

 

鷲羽大介「白い猫」p.74:猫かと思ったら白いビニール袋だったので蹴飛ばす。

猫かなぁ・・・ビニール袋かなぁ・・・となる点ではすぐ前に掲載されている「ためらいがちな」と似ているかもしれない。少ない文字数ながらもまさかの結末にちょっとぞっとした。大通りに転がっているビニール袋、に見えるモノ、とかももしかして・・・ヨシ!

 

 

黒史郎「ライトピンクの上履き」pp.76-77:DVに悩むママ友の家に行ったらピンクの上履きがあった。

家に上履き、ライトピンク、そして泥だらけ。辻褄あいそうであわない。繋がりそうで繋がらない。不吉なのは何となく分かる。そして被害者が無垢なる子供であることも・・・。

別に話自体は正直其処まで怖くはない。ただ、その上履きの存在感が圧倒的で、眩暈がするかのような一篇。

 

 

神薫「マーライオン」p.79:

山武さんの祖母の葬式に、見知らぬ老婆が紛れ込んでいた。p.79

こういうババアってなんかしなしなしおらしくしていて、後日葬式に出席していた親族をばたばた殺すってのが王道だろ!?ふざけんじゃねえよババア!!痛快な一篇ヨシ!

 

 

小田イ輔「形見の鏡」p.88:

「そんなお別れあるんですかね?すごく怖かったですよ、ほんとに」p.88

髪の毛が生えてくるのはまぁよくある話なんだけど、血しぶきまで出てくるのはサービス良いなぁ、と思った。をかし。よく「毛根までしっかりついていた」みたいなのは読みますが、抜いたら血しぶきが飛んだ、みたいなのはありそうでないんですよね。実際髪の毛抜いて血が出ることって滅多にないからだと思うんですけど。ヨシ!

 

 

神薫「屋敷霊」pp.94-95:ある日寝ててふと起きたら、豪勢な屋敷で寝ていたよ。

タイトルまんま。屋敷の霊の話である。

そういう霊もあるんだ~って思った。だとしたら今は現存しないお城の霊とかもありそうじゃない?知らんけどイギリスとかだったら家ごと幽霊とかよくありそうだよね、知らんけど。興味深い一篇、ヨシ!

 

 

黒木あるじ「のりかえ」p.101:

誰もいないはずの室内から”おえい”って聞こえるんだよ。人間の真似して”おかえり”を頑張ってみました、って感じの声。多分女だと思う。p.101

「おえい」が「おかえり」に聴こえるわけないでしょ~って思って、自分で口に出してみたんですが、確かにイントネーション似ているんですよね。すると妙にその声がリアリティ持って再現できるという・・・妙に幼いような・・・腹から声出しているような・・・、怪談朗読最恐決定戦みたいなことを竹書房は去年やっていたと思うんですが、是非「おえい」最恐決定戦もやってもらいたいです、ヨシ!

 

 

小田イ輔「古民家の解体」pp.104-105:古民家を解体する度に、女の子が泣く夢を見る。

予想は出来ましたが、クライマックスの描き方が秀逸でゾッとしましたね。

ホカホカと湯気をあげるのみ。p.105

ファミチキか?みたいなライトな日本語で書かれているのですが、生々しく想像出来ちゃうっていうこのギャップ。実際湯気でることはないと思うんだけど・・・どうなんだか。ホカホカ。

小田イ輔氏の集めた実話怪談の中で一番好きかもしれない。ヨシ!

 

 

鷲羽大介「村一番の霊能者」pp.108-109:家に不幸が連続して起きたから、村一番の霊能者を呼んでみた。一見普通の中年女性だったが・・・。

うーわ、うわうわうーわ、となる一篇。一昔前にカラオケ機器のUGAのCMで「うーがうが♪」みたいな音楽に乗せて会社名言う、みたいなのあったと思うんですが、まさしくあんな感じで「うーわうわうわうーわ」となる一篇。最悪。

接続詞もなしに、さらっと最後の一行で事の顛末を書いているのが素晴らしい、ヨシ!

 

 

我妻俊樹「近況」p.111:前の職場の上司とすれ違う。

まぁ、ぐっすりだったらいいんじゃないかなぁ・・・。

僕も最近ぐっすりできなくて、ヤクルト1000飲んだりするんですけどそれでも目が覚める時ある。いったいヤクルトいくつあればぐっすり?ヨシ!

 

 

鷲羽大介「復讐の叫び」p.112:嫌な感じがする道を避けて散歩した夜見た夢は。

夢がまんま事件の再現ではなく「復讐」展開になっているのが良いですね。

多分何度も何度も何度も男は苦しんでいるんだろうなと。逆に女の復讐に燃える無念たる熱い感情にもちょっと揺さぶられて、妙な後味。ぐっすりなんてほど遠い。いくら絶叫しても止まらない、死ねよ!死ね死ね!!!何度でも、死ね!!!!!死ねよ!!!!!!!!!ヨシ!

 

 

川奈まり子入鹿池(後日)」p.120:

六人で肝試しに訪れた入鹿池で幽霊と思わしき集団に追い回されたあげく、仲間のうちひとりが実はその場にいなかったことが判明したーーーp.120

の後日談なんだけれども、肝試しに行った側に起きるならいいんだけど、行かなかった側に災いがばったばったと起きていて、その規模のデカさたるや、理不尽さたるや。なんか言葉がみつかんねぇ・・・って感じの後味。ヨシ!

 

 

神薫「喜びの家」pp.126-127:

一軒家を包み込む顔の表情は穏やかでうっすらと微笑みを浮かべており、実に満足そうであるという。p.127

憎悪にまみれたような顔だったら、まだよかったのに。人智を越えた何かなんでしょうね。厭だ。その後については書かれていないけれども、家どころか日本全体をゆったりと包み込むような大きさになったらどうなってしまうんだろう。てか、もしかしてコロナ禍現在こそ包まれた結果ってことか?ヨシ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鷲羽大介「まぼろしの来客」pp.128-129:

あの瞬間、もしかすると私の方が霊みたいなもになっていたのかもしれないですね。p.129

結末が見事。ぷつっ・・・と途切れるかのようなあっけなさ。切なさが漂うのは何故。10年前からもしかして、君は。

「幻の来客」ではなく「まぼろしの」と平仮名にしているあたりが憎いと思った。本書の中で一番好きな一篇、ヨシ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

言う程美術部骸骨スケッチしているかとか、野暮。

 

 

 

 

 

 

 

川奈まり子「髑髏の顛末」pp.130-131:文化祭に出品するために、写真部の面々は撮影をすることにしたが・・・。

展開としては同じ氏の「入鹿池(後日)」に似ているかもしれない。軽い気持ちで行ったことが大規模な禍を引き起こす。

でも今回は心霊スポット肝試しでもなんでもなく写真部の撮影、というごく当たり前の些細な日常の延長線上にあるっていうのが忌々しいと思った、ヨシ!

 

 

鷲羽大介「モンキービジネス」p.134:

意味わかんねえ!!!平山夢明氏めざしてそれっぽくなんとなく書いてんじゃねぇぞ!!!ヨロシクナシ!!

 

 

神薫「少女追放」p.136:新築のデザイナーズマンションに少女の霊が出る。

神々しいタイトルとは裏腹に、しょーもない内容のギャップが最高です。そういやアルコ&ピースの平子も、おばけが怖い時はとんでもなくえろい言葉を口にすると言っていました。そんな彼の出身中学は小名浜(おなはま)第二中学校、略して以下略ヨシ!!

 

 

我妻俊樹「金髪」p.137:旅行先の台湾で事故に巻き込まれた。

出てくる少女が「金髪に染めている」なうい容貌の一方でもたらす災厄が昔ながらの、って感じで妙に印象に残っている。あとやっぱむやみやたらに外国語勉強するもんじゃねぇな。英語が苦手な僕を救済する一篇、ヨシ!

 

 

つくね乱蔵「肉塊」p.149:

ぶよぶよした肉の塊が這いずっている。異様なことに、和服を着ている。p.149

京極夏彦先生の短編「成人」を思い出した。あれもこんな感じのが日本家屋で出てきませんでしたっけ?

「くだん」を追うのもいいですが・・・ちょっとこっちも気になります。創作物、実話でこれほどまでに共通点があるということは何かしら絶対原作たる存在がいると思うんだよな。

「成人」を読んだのは京極夏彦先生の短編集で読んだんですけど、でも確か初収録されたのは「怪談実話系」とかじゃなかったっけ・・・ヨシ!

 

 

川奈まり子「事件霊」pp.160-161:

東京地方検察庁に派遣されたとき、明美さんは二〇台後半で、早くも警備員としてベテランの域に入っていた。p.160

場所、時間、あと体験者の経歴などがやたら細かく書かれていて、リアル感みっちりの怪談。

起きている事象は凄く地味で、印象にも残らないんですが・・・、あ、これは確実に川奈まり子氏が取材して入手した怪談を惜しみなくこの「瞬殺怪談」シリーズで披露してくれているんだな、ということが分かる。まぁ、川奈氏の怪談全部に同じこと言えるのですが・・・。

本書で初めて本格的にふれた蒐集家ですが、気になりますね。正直着物とボブで形だけ、女の階段蒐集家なのに美人でしょ?みたいななんちゃって蒐集家なのかな・・・と思っていましたが大変失礼致しました。

ごりっごりの実話怪談作家。

本当、執筆陣の中ではある種一番の「実話」怪談作家といっても差支えが無いです。

怪談界の「まりこ」といえば「小池真理子」なんですが、ちょっとこっちの「まりこ」も今年中に触れておきたい。積読死ぬほどあるんであれですが、単著買うかな。ヨシ!

 

 

神薫「大きな白い犬」pp.170-171:ある日、愛車の助手席に白い犬が乘っているねと知人から連絡が来て・・・?

狂気と悲劇とオバケが混ざり合ってカオスなる一作。ただそこには犬好きの彼女と、その彼女を心から愛していた青年がいて、その二人の真っ直ぐな気持ちがバラバラに散らばった要素をそっとまとめあげる。

一番怖いのは、車見ては連絡してくる知人なんだよな・・・気づいたのか着信拒否してたけど・・・意味が分かると「ヒトコワ」になる実話怪談、ヨシ!

 

 

黒木あるじ「罠」pp.174-175:

そんな予感を証明するがごとく、その日を境に不幸が続いている。p.174

これは実話怪談では定番の締めなんですよ。「不幸が続いている」という漠然とした定義にもかかわらずきちんと実話怪談が締まる。知ってる。ぶっちゃけどんな話でも最後にこういう一行おいとけばそれなり怖くなる。あと「死んだ」とか「狂ってしまった」とかね。

ただ今回その「不幸続いている」贔屓抜きにしても、これはちょっと怖かったですね。怪異自体も怖くないし実話感も薄いのに、まさかの角度から最後の一行が突き刺さって来たからそうきたか、となる。

幽霊に無駄に知恵ついてるところとか。いいよ~になりました、ヨシ!

 

 

黒木あるじ「実家の鯖」pp.192-193:ベランダが生臭い。見ると、鯖がまるまる一尾。

筆者も冒頭で言っているように、まぁ「奇談」ですね。

中盤まではふんふん、だったんだけど、最後自分のドッペルゲンガー(ミッドサマー風)が現れるのは気味が悪いなと思った。どういうことやねん。ヨシ!

 

 

つくね乱蔵「予知」p.209:

「俺、今から一か月後に刺されて死ぬみたい」p.209

通り魔に刺された、彼女に刺された、切腹した、だったら印象に残らない。

まさかそういう形で刺されて死ぬとは。いやはやという一篇。

腹膜炎ってよく聞くけど危ない病気なの?って思って調べたら・・・腸に穴があくらしいですね。こわっ。でもよく考えれば僕も新卒一年目の時我慢して我慢して我慢して盲腸に穴あけるところだったんだわ。他人事じゃねぇなヨシ!

 

 

黒木あるじ「予印」pp.210-211:「ちょっと珍しい苗字」p.210の印鑑を拾ったよ~。

最後の一行でうわぁ・・・どんびきーにょすになる一篇。印鑑から始まる実話怪談って斬新だなぁと思った。

では、ここで本編では■■と隠されている「ちょっと珍しい苗字」予想ベスト10を発表します。

■■■■・■■・■・■■・■■・■■■・■■■・■■・■■・■

結構真面目に10個考えたんですが、なんかやっぱ不謹慎かなーって思って全部隠しました、ヨシ!

 

 

黒史郎「彼ら」pp.214-215:

また、この歌をうたうと、いつでもどこにでも、”彼等”がやってきて、うたった子供を攫っていくという怪談的な噂が子供たちの間で囁かれていた。p.214

その「彼等」上陸!という話であるが、その様子がまぁなんとも不気味で・・・うわぁになる。こっわ。絶対歌わないわそんな歌、いや知らないけれども。

意外と、宇宙人とかSFが絡んだ話じゃないかなぁとも思ったり。ヨシ!

 

 

平山夢明「挨拶」pp.218-219:義父母の実家(集落)に行った。

そこでは「孕み憑き」という風習があった。

実話怪談界において、嫁ぎ先の実家(田舎)に行くとまぁ百発百中碌なことが無い。でもなんかだいたいは聞いたことあるようなものだったり、想像つくようなものだったり、最近は意表を突くようにエロが絡んだ風習モノをよく目にする、気がする。

だが今回蒐集したのは平山夢明氏。この「風習」というのがなんとも気味悪く、そしてあっけない最後まで見事

多分ココまで起承転結描くのに普通の実話怪談作家だったら4ページは必要だと思うんですけど、1ページ半に収まっているのはさすがだと思った。ヨシ!

 

 

ねこちゃんかな!?

 

 

集計(敬称略)

鷲羽大介:9篇

神薫:6篇

黒木あるじ:5篇

川奈まり子:4編

つくね乱蔵:3篇

黒史郎:3篇

平山夢明:3篇

小田イ輔:3篇

我妻俊樹:2篇

 

 

 

 

以上である。

意外と鷲羽氏の蒐集した怪談がぶっ刺さった一冊となった。七巻ではそんな存在感ぶっちゃけなかったんですけどね・・・。

あと川奈まり子氏。彼女の実話怪談力を知れた意味でも、本書を手にした意味はあった。2ページでもずっしり、真実性が重い。実話感をここまで重視して書いている蒐集家は、怪談新耳袋の2人と彼女を除いて、もういないのではないか。

夜馬裕氏に続いて、今年中に実話怪談本単著を絶対読もうと思う。

 

残念!おばけちゃんでした

 

***

 

LINKS

フェス第一弾の前巻。

多分あれだけ強く詰め寄られちゃったから、泣いちゃってるんだね。カアイソウ・・・。

tunabook03.hatenablog.com

 

昔書いた4-5巻の感想

tunabook03.hatenablog.com

tunabook03.hatenablog.com

 

平山夢明『瞬殺怪談 死地』-超個人的竹書房怪談文庫フェス前半①!!そのふりかけは、黒ゴマでもなく、海苔でもなく。-

 

 

暑いんで、今日からまぐろどん的竹書房怪談文庫フェスをやります。

といっても、今日から「実話怪談作家が選ぶ10選」「人気声優井澤詩織がガチで推す怪談」に入っていたもので、既読本の感想を連続してあげていくって感じです。フェスなのか。フェスです。28歳喪女の最後の夏のフェスなんてこんなもんです。

で、8月の終わりは、逆にその10選をみて買った本・積んでいたけど読んだ本の感想また連続してあげて終わろうと思います。

フェスその1みんな大好き「瞬殺怪談」7巻です。

 

***

 

2022年竹書房怪談文庫の、「人気声優井澤詩織がガチで推す怪談」に本書入ってましたね。

分かる。分かります。

僕も瞬殺怪談の中で結構上位に入るくらい好き。

なので、下書きでもう眠りに眠っていたこの記事を蔵出しです。

「瞬殺怪談」気になっている人は、まぁぶっちゃけ何巻からでもいけるので、この死地(しち、つまり七巻)から読んで、んな~~~~~をするのはどうでしょうか。

 

 

 

 

瞬殺怪談ワオ!!では免許が・・・。

 

 

 

 

平山夢明『瞬殺怪談 死地』(竹書房 2021年)の話をさせて下さい。

 

 

 

 

【概要】

すぐ読めて、怖い!1話2ページ以内の短編実話怪談を凝縮して詰め込んだ大人気シリーズ〈瞬殺怪談〉第7弾!ホラーの鬼才・平山夢明を筆頭に、我妻俊樹、黒木あるじ、黒史郎、神薫、田辺青蛙、つくね乱蔵ら名だたる書き手に加え、怪談DJの響洋平、せんだい文学塾会長の鷲羽大介、そして〈怪談最恐戦2020〉で怪談最恐位に輝いた夜馬裕が初参加。総勢10名が154話の恐怖をすべて書き下ろす!ノータイムで訪れる、ぶっ通しの旋律の果てに広がる荒涼とした死地を体感せよ!

裏表紙より

 

【読むべき人】

てのひら怪談など掌編怪談好きな人

・短い実話怪談好きな人

 

 

 

 

【感想】

今回も最高でしたね。最高です。

 

執筆陣もちょっと顔ぶれが今回違いますね。田辺青蛙氏、鷲羽大介氏、響洋平氏、夜馬裕氏が今のところ、僕の中で初登場かな。その代わり、よく名前を聞く伊計翼氏がいない。あと小田イ輔氏も。

 

あと表紙、すっごい力んででいいですね。

四巻五巻六巻と、どこか脱力系の顔が並ぶ中で、すっごい気合入ってていいと思う。

絶対クラスで委員長やってるタイプ。

あと絶対便秘だと思う。

 

 

「ちょっと男子!!!掃除まじめにやってよ!!!先生に言いつけるよ!!!!」

 

以下、印象に残った話を書いていく。数が多いので、早めに・・・。

特に好きなのは「ふりかけご飯」「うるさい」「電話女」「万能感」「「切」」「共通点」「親友が見る夢」「予金」「小さな鳥居」

 

 

夜馬裕「ノック音」p.13:

考えればこのマンションに、仲良しなど一人もいない。p.13

いっちばん初めの怪談を初登場の書き手が担うとは。いやはや。

怪異自体もまあまあなんだけれども、この一行が切なくて妙に印象に残った。

考えればこのマンションに、仲良しなど一人もいない。

声に出して読みたい日本語。

考えればこの地方都市に、仲良しなど一人もいない。

考えればこのインターネットに、仲良しなど一人もいない。

考えればこの現実に、仲良しなど一人もいない。

考えればこの人生に、仲良しなど一人もいない。

・・・ヨシ!

 

 

黒木あるじ「いまも」p.14:老人曰く、

「若い頃山で狐に化かされたことがある。」p.14

見事に瞬殺で落ちててこれぞ瞬殺怪談といった出来具合。素晴らしいです。

今までの黒木あるじ氏の集めた瞬殺怪談の中で一番好きかもしれない、ヨシ!

 

 

田辺青蛙「まるやけ」pp.20-21言葉の発達が遅い幼児が発した言葉。

「ボクは、まるやけになって、しぬ」p.20

まさかまさかのダジャレオチか~い!!と思って初読の時はけらけら笑ったが、今改めて読むと・・・本当に?感がぬぐえない。だじゃれですめばいいのだけれど。まるやけにならなければいいのだけれど。

多分読み手のテンションによって後味が変わる怪談だと思う。

要するに今はあかんってことだねヨシ!

 

 

夜馬裕「ふりかけご飯」p.25:

ある日悪戯心が働いて、台所にたくさん落ちてる死んだコバエを、ふりかけだよ、と言って、お義母さんの白飯の上に、パラパラかけてやったんです。p25

それを美味そうに食べる義母、の地点でもう結構瞬殺なんだけれども、それを凌ぐ現象が起きていてうわぁ・・・になった。

語り口調で終わるのかなと思ったらその現象が、瞬殺で「こっち」に来る、そのスピードが見事な一篇。

僕もこのおばさんからその話、きいてみたいなぁ・・・ヨシ!

 

 

我妻俊樹「うるさい」p.39三姉妹で三階建ての一軒家を借りていたが、上の階の音がうるさい。

騒音問題実話怪談である。

だいたいこういうのって、その騒音の原因側に、恐ろしいものがいるパターンが多いじゃないですか。

例えば鼠かハクビシンだろうと思っていた音が、実際天井裏覗くと祠があった、とか。

最上階だけど音が聞こえる、とか。

音出す側に問題があることが多いと思うんですよね。

だからその逆を突かれると、びっくりしちゃうよね。

何度も語り尽くされている騒音会談にまだこんなに新鮮な恐怖驚愕があったのか、と。本書で一番好きかもしれない。ヨシ!

 

 

黒木あるじ「きまり」p.47:バイト先の遊園地では奇妙な決まりごとがあった。着ぐるみを戻す時は、頭と体を4メートル以上離しておくこと・・・。

それを破った際の現象、までは予想がついた。最後の一行でさらにその上を行く現象であることが分かってぞっとした。こんなんたまったもんじゃない。まだ子供の笑い声とか、女のすすり泣き声とかだったら分かるけどさぁ・・・ヨシ!

 

 

神薫「電話女」pp.50-51:心霊スポットに行くと、電話が鳴り、慌てて出ると妹が事故ったというが・・・。

シンプルに滅茶苦茶怖い実話怪談です。怖い。

2頁いっぱいに畳みかけてくるように恐ろしいことがどんどん起きるんですよね。最後の最後で、タイトルの意味が解ってゾッとした。

今までの神薫氏の集めた怪談の中ではこれが圧倒的ですね。絶対間違いない。まさしくそのスポットは死地だったんだろうね。ヨシ!

 

 

つくね乱蔵「小さきもの」pp,52-53:電車内。なんとなく見ていた若者のサマーニット帽が・・・。

小さいおじさん系実話怪談である。ただ、そこで出てくるおじさんがまさしく「見える子ちゃん」のおじさんまんまでほっこりした。気持ち悪いと可愛いの間のぎりぎりを攻めるあのキャラクターはなかなか良かったよね。造形が一体一体違うのも良かった。ぬいぐるみ出してくれないかな。ぎりぎり気持ち悪いので買いませんが。

アンソロジー買わなきゃ。呪みちる先生が描いているので。ヨシ!

 

 

夜馬裕「カレンダーに丸」p.59:

「おい、美佐江。お茶が冷えたから、淹れ直してくれ」p.59

中盤からえ!?ええ?!になる実話怪談。そうくる!?いやはや、そうくる!?

素直に成仏させてたまるものか。ナチュラルに静かに日常的に家族による悪意が絡んでいるところが良い、ヨシ!

 

 

我妻俊樹「コーヒー」pp.62-63:友達からの電話。

「今から行くけど、なんか買ってきてほしいものある?」p.62

それで来た存在が・・・結構なかなか。あとそれを「コーヒー」と言い張る発想はなかったわ。確かに目は醒めそうだけれども。

でも夜更かしあけの朝日の中、ただきらきらと埃が大気中を舞うような・・・雰囲気含めて好き、ヨシ!

 

 

響洋平「壁から」p.169:

ーーーあれからずっと、消えないんです。p.169

所謂腕つかまれてその後、という話である。実話怪談界だと9割9分痣である。赤かったり黒かったり色は様々だかまぁ断言してもいいよ。9割9分痣だよ。

でも毎回実話怪談の書き手はそこを丁寧に丁寧に描くのである。それで恐怖心をぞわぞわせようってわけ。。

だが、この話はそこを一切書いていない。

想像力が掻き立てられる。

本当に・・・痣?

王道になりがちなところをスパッと抜くことで、恐怖を増幅させる、凄いテクニカルな一篇、ヨシ!

 

 

黒史郎「川辺の親子」pp.72-73:毎朝、登校班に入らず小学生の女の子は、カーリーヘアの女性の隣に座っている。

途中まではまぁ分かるよ。怪異が起きる余地があるとしたらまぁその女性自体がよろしくない存在だろうなって言うのは分かる。

でも最後の一行にちょっとぞっときちゃった。え、日中ずっと待ってたってコト・・・?何の為に・・・?暗いなか待たれてたら絶対嫌だし怖いわぁ・・・なんか死にはしないけど絶対よくないことが起こりそう。不穏な結末、ヨシ!

 

 

黒木あるじ「されど」p.77:

「祭りは産土神に贄を見逃してもらうための神事なのだ。止めれば大変なことになる」p.77

コロナ禍を反映した一篇。確かに祭りとかどんどん中止になっているけれど、その代わりとかって神社とか寺でやっているのだろうか。

今年ばかりは仕方ない、という風潮が主流の中、そこに風穴をあける。ヨシ!

 

 

田辺青蛙「牛女」pp.80-81:

生まれつきお化けじゃなくって、人間やったのにお化けになってしまうのってどんな気持ちなんでしょうね。p.81

歴史ある霊?的存在の話である。妖怪、といってもいいかもしれない。

最後の一行がなんともいえない情感たっぷり・・・なところなんだけれども、この話がこれまた兵庫の話なんですよね。

兵庫といったら神戸、淡路島、くだんじゃないですか。

起こった場所の縁みたいなものも感じられて・・・な一篇、ヨシ!

 

 

つくね乱蔵「万能感」pp.90-91:根暗な男いきなり明るくイメチェンした。山歩いていた時に石に座ってから気持ちが全部変わったというが・・・。

うわぁ・・・になる一篇。躁鬱極まれりって感じの一篇。

中盤のバッサリ切られたかのような展開も怖いし、それが起こったであろう所以が明らかになるんだけれどもそこでも更にうわぁ・・・になる。

僕も元気になりたい。自分に自信がつきたい。まことに「気持ちの良い男」p.90よろしく「気持ちの良い女」になりたいところではあるが、ちょっと代償が大きすぎる・・・やっぱり山は良くないね・・・怖いからね・・・おうちが一番・・・ヨシ!

 

気付けばここ1年くらいでこんなにも・・・。

 

黒史郎「お前は行くな」p.97:

「すげぇ気持ち悪い奴だった。お前は川に行くなよ。あいつがいるぞ」p.97

所謂河童系の実話怪談である。だいたい河童って鑑賞して終わりで、微笑ましい存在でしたねちゃんちゃんで終わると思うんだけど・・・この河童凶悪過ぎる。

もしや「すげぇ気持ち悪い奴」p.97というからそれは、河童を真似た何かだったのではないか。

河童モノと油断して読んでいたら瞬殺で不意を突かれた。ヨシ!

 

 

夜馬裕「鬼ごっこ」pp.98-99:

それ以来、学業でも、恋愛でも、仕事でも、欲しいものが手に入ったことが無い。

昭二さんは延々と、何かを追いかけ続ける感覚に囚われているそうだ。p.99

最後の二行が怖い。

でも僕もよく考えれば、学業でも、恋愛でも、仕事でも欲しいものがあまり手に入った記憶はない。第一志望だった国立大学は落ちたし、ひっどい片想いをした末での失恋やら何やらで28歳童貞(メス)であるし、新卒で就職した会社をやめてから3年以上同じ会社にいたことがないし今もフリーターですっくない賃金と貯金を崩してて預金残高の数字に怯えながら日々毎日細々と暮らしている。頑張っても全部手に入らなかった。

強いて言うならばこのブログだ。日々50アクセスを超えるブログになるなんて思わなかった。大変ありがたい。

だから僕はこうやって、日々逃げるために文字の羅列を深夜から明け方にかけて打ち続けるのである。誰か助けてくれ。ヨシ!

 

 

鷲羽大介「ふたりがかり」pp.102-103:

バツイチのヒトミさんと、妻を交通事故で亡くしたミチオさんは、知り合ってすぐに惹かれ合った。p.102

すんごいえっろい実話怪談。なにこれ。えっろ。え、めっちゃくちゃえんろいんだけどどういうことなのめちゃくちゃえろい。くっそえろい。え。え。こんなんずるいずるすぎる僕もなんだふたりがかりがいい。めっちゃえろい。とにかくクソえろい。実話怪談でこんなエロスがあることあるんだってくらいえろいっていうかもう実話エロスだよえっろ、ええ、ええっろ。にも拘わらず実話「怪談」、どこか品のある雰囲気もいいんだけれども・・・やっぱえっろいわ。めっちゃ抜ける。ヨシ!!!

 

 

黒史郎「「切」」pp.112-113:

その地名は従弟の名前の後に「切」の字が入っている。p.113

地名にはよく気を付けよう、と思った。え、こわ。

ちなみに「僕の本名の下の名前+切」で検索しけどそんな地名はないようです。良かった。あとこれ従弟の母親、叔母の気持ちを考えると計り知れないな・・・地名のこと知ったらもうこれ自殺もんだろ・・・ヨシ!

 

 

我妻俊樹「工事」pp.118-119:留守番をしていると、ある日作業服を着たおじさんがやってきて・・・。

渡されたチラシの意味不明さと、おじさんのまさかの進化オジモンにあっけにとられる一篇。でも小学校の時、というあやふやにな記憶に包まれているからか実話として成立しちゃうんだな、これが。

そしてこの話も「コーヒー」同様、悪意、よりかは不思議に満ち満ちている我妻先生特有の静寂が行き渡った雰囲気がとても良い。好き。ヨシ!

 

 

つくね乱蔵「木乃伊」pp.122-123:蔵を漁っていたら「木乃伊」と書かれた袋から粉が出てきて・・・。

木乃伊。ミイラを漢字表記である。飲むと病に効くという。

その実証結果、としてちょっと興味深かった。癌を患っている母親にも飲ませたいが、「その日以降、眠るのを恐れるようになった」p.123、睡眠をとること自体が恐ろしいまま生きる、っていうのはどういう感覚なんだろうか。ヨシ!

 

 

黒木あるじ「やかん」pp.130-131:

こういう演出はいらないです。テレワークを使って10分で考えた怪談、みたいな内容。これだけ圧倒的にワーストだったな。ヨロシクナシ!

 

 

我妻俊樹「罪悪感」p.135:

ただそんな記憶があるわけでもないのに、彼女はヒキガエルを殺したのは自分のような気がしてならないそうである。p.135

「コーヒー」「工事」が白我妻、だとしたらこちらは黒我妻。

千で繋がりそうで繋がらない事象と、起きる不穏な現象。読んでいて不安になる。

声の主はカエルってこと?いやそれはない気がする。そもそも罪悪感を感じるのは何で?

僕も夜道を歩くことが多い。週6で歩いてる。

そこに、十字で腹が引き裂かれたヒキガエルの死体がいつあっても、おかしくないな、と思う。ヨシ!

 

 

神薫「蛍光グリーンの蛇」pp.136-137:学校帰り友達と山で遊んでいると、栄光グリーンの蛇を発見し、友達はそれを、掴み・・・。

「電話女」に続いて神薫氏本気の実話怪談第二幕といったところでしょうか。2ページいっぱい畳みかけるように怪奇現象が起こる。

ネタバレすると、

①蛍光グリーンの蛇登場:蛍光グリーンの毛虫は見たことある。

②触った友達の変化:ここがグロテスクで怖い。漫画的。

③そもそも友達は一緒に遊んでいなかった疑惑:あるある。じゃああの子は一体?手鳴るんだろと思ったら。

④翌日学校でその友達が・・・といった具合。

で最後に不穏な一行で締めるもんだから・・・もぉう、になる。もぉう。

でも個人的な好みで言えば「電話女」のが好きかな、文章では分かりやすく見えるモノより見えないものを感じ取りたい派なので。グロテスクなものは漫画には勝てないところが媒体の特質上あるとも思うので。ヨシ!

 

 

つくね乱蔵「目撃者多数」p.138:同僚たちとハイキングに行くと、一人が松茸を撮ったと言うが・・・。

ええそれ本当にマツタケか?山の何かのアレではないのか・・・?と思ったけどどうなんだろう。

最後ピクミンよろしく、何かがその同僚の後をついていくのですが、その姿がシンプルながらもなかなか不気味。ヨシ!!

 

 

響洋平「晩酌相手」pp.142-243:

「とてもおちつくし、心地よいですよ。その管を見ていると、全身を何かに包み込まれているような気持ちになるんです、たまに耳を当てると何か聞こえるし、楽しいですよ」p.143

離婚して実家に帰って来た女の話である。初読の時は、「晩酌相手が怪異とかワロタぁwww」とか思っていたが、今改めて読むと「絶対この後よくない事が起きるパターンやんけ・・・」と思った。自殺しそう。

恐らくこういう怪異って、人間の孤独につけ入るんだと思う。日々積もりに積もった寂しさ、心の隙間、そういうところを狙って姿を現して、そして認識されることで「sん在」し、相手をぐっと飲み込むのだ・・・。

自分も結構孤独になりがちな身(28歳 フリーター 地方都市在住 メス)なので、ちょっと身につまされる部分があった、ヨシ!

 

 

夜馬裕「事故のお礼」p.146:よそ見運転で相手にケガさせ一生車椅子が確定したのに、お礼を言われた。

うーん・・・・うーん?となる一篇。どうだろう。一生車いすかそれとも一生自分が轢いた女に憑かれるか。どっちがいい?と言われたら・・・うーん・・・うーん?まぁそりゃ車いすの方かな・・・自分がスポーツ選手とか青山大学の駅伝部のエースとかではない限り・・・ヨシ!

 

 

黒史郎「小道具」pp.156-157:家にある数あるイベント道具のなかに、人毛で作ったカツラがある。

だいたいこういうのって、ゴミに捨てた後でも追ってくるイメージがあるんですけど、この無は違うんですよね。普通に捨てられて終わりな訳です。そこにリアルを感じられた。

まさしくこれこそ「実話」怪談・・・と思う。ヨシ!

 

 

つくね乱蔵「共通点」p.158:実話怪談を聞き出そうと思った3人からドタキャンを食らう。3人とも同じ場所&現象の話をしたかったようだが・・・。

その後、3人に同じくして起こったことが、あっさり書かれている割に恐ろしい。結末、物騒が過ぎる。

前半「なんだよ~3人たまたま用事が入っただけだろ~」かrなお後半ギャップがあって怖いなと思ったヨシ!

 

 

響洋平「美容室にて」p.160:

入り口のドアが開く音がした。p.160

場所が美容院なので「美容院にて」となってますが、美容院以外でもいつ起きてもおかしくない実話怪談。現実か幻か分からない、そもそもその姿は何だ、3、と思う。気を抜くな。特に実家では。全人類の全父親にも起こりうる話だと思うので。ヨシ!

 

 

つくね乱蔵「何がいるのか」pp.166-167:病院で迷惑をかける女性が、ある日警備員である体験者の人生を言い当てて・・・。総合病院の警備員を辞職した理由。

占い師だったんか!?え!?僕も見てもらいたい!!と思ってからのこの結末は確かに気まずい。辞職せざるを得ないわ。

でも言葉の後・・・気になりますね。ご先祖とか守護霊とかそういうのだったら、多分この女性を■さないと思うんですよね。てことは、何か良からぬ存在だと思う訳ですよ。多分ご先祖とか守護霊とかそういうのの、フリをしている・・・ヨシ!

 

 

夜馬裕「親友が見る夢」pp.172-173:金融関係の仕事・趣味は登山・活力あふれる古くからの親友は、夢の話をする時だけ様子がおかしくなる。

「実話怪談」の、「怪談」要素が多くを占める一篇。怖い。

その夢、もそうなんだけれどもその夢から連想される恐ろしい真実・・・。

僕もまぁ間違いなく・・・そうだと思うよ。

一番好き、とか怖い、とかはともかく、一番記憶には残った一篇。ヨシ!

 

 

黒史郎「ヤとの友情」p.183:

きっと兄貴分に殴られ過ぎたんだな、と思った。p.183

妙にノスタルジーを掻き立てられる一遍。切ないというか。哀しいというか。

ヤとは893のことで、ああ二人は本当に互いを大切に想うガチのズットモだったんだなぁ・・・としみじみ思ったり。なんか、いいなぁ・・・・ヨシ!

 

 

黒史郎「今に至る」pp.184-185:

ーーという話をうかがった。p.185

自分の不思議な体験を話すと鼻血が出る、二度あることは三度あると言うからこれで話すのは三回目・・・という話である。その現象についても本作ではバッチリ描かれているのが、良い。逃げてないな、と思う。

上記の抜粋部分は最後の一行である。黒史郎氏はやはり最後の一行の締めが巧いなぁ、と思う。確かにこの話は直接聞いた、よりもさらに聞いた、要するに第三者を挟んで間接的に聞いた方が妙にリアリティがあって怖い。そしてその話を今僕が読んで・・・今に至る。ヨシ!

 

 

黒木あるじ「予金」p.188:亡き祖母が開設した銀行口座には、2030円が入っていた。

怖いですね。でも僕だったらじゃんじゃん預けちゃうと思う。うーん。2100円にしたいから、あと70円くらい?でもそういうのって可能なのかな、1円単位で預金額を動かすのって。多分クレカの引き落としとか公共料金じゃないと一桁まで動かないと思うんだけど・・・意図的には難しくない?だから結局2030円に落ち着いちゃう気がするんだよね、ヨシ!

 

 

神薫「写真嫌い」pp.192-193:死んだ者の写真が嫌いだという友達を使って、卒業アルバムを使って実験をする。

これ他人事みたく自分の経験話してそうだけれども、一種の呪殺では?と思う。

その写真で死者を当てるという能力自体よりも、それを使って人を■していること、さらには体験者にその自覚が恐らくないであろうこと、の方が怖い。

あと、この実話怪談はいかにも「女子」という感じがする。女子。体験者もその友達も、更には被害者も全員女子だろうと何となく思う。女書き手ならではの実話怪談だとも思う、ヨシ!

 

 

夜馬裕「目を剥く男」pp.204-205:

しかし、聞けば聞くほど、どう考えてもそれは、篤さんが昔から知っている、友人の弟にしか思えない。pp.204-205

親しく知っている筈の人物をまるで他人事のように話す、という事象が怖いなと思った。ましてやその男がこの表紙よろしく目を剥いている・・・っていうのが。ありありとその表情が顔が浮かんでくる。まんまるにまんまるに極限まで眼は見開いている。

ただオチが、前述した同蒐集家の「親友が見た夢」と被っているのが残念。ページ数も展開も似ている。別の「瞬殺怪談」の巻に収録してほしかった。その頃には多分忘れているので。

「親友が見る夢」・「目を剥く男」、あなたはどっち派?どっちも嫌でSHOW・・・ヨシ!

 

 

黒木あるじ「一芸」pp.206-207:

あ、そういえば小学校の時、クラスに不思議な女の子が置いたんですけど。

眼力だけで風船を割るんです。p.206

うわぁ・・・って思った。その友達の家に行って・・・といった具合の話である。その女の子も可愛そうだし、そのまぁ・・・風船側もかわいそうだし・・・何と言うか何つうか。

そういえば、昔千里眼で有名になった女性も結局自殺で亡くなったのではなかったっけ?

眼に力を宿すには何か捧げる必要があるのかもしれない。

千里眼とか念力とかそういう本読んでみたいなーと思った。後絶対多分昭和の話。ヨシヨシ!

 

 

夜馬裕「小さな鳥居」pp.214-215:失職中、様子がおかしい祖父の様子を見てこいと言われる。すると彼の家には、小さな鳥居のようなものがあり・・・。

最後の惨たらしい光景が脳裏にこびりついて離れない一篇。

うわぁ、いろんな人のところに回って来たんだろうなぁその最後だったんだろうなぁ間違いなく地獄の業火に苦しんで亡くなられたんだろうなぁ・・・と物凄く後味が悪い。

老後、鳥居が渡されるようなことがあっても絶対に受け取らないようにしようと思った。ヨシ!

 

これはフェスのわきに置いてあった目録。ぼのぼのが可愛いね。

 

集計(敬称略)

夜馬裕:8篇

つくね乱蔵:6篇

黒史郎:6篇

黒木あるじ:6篇

我妻俊樹:4篇

神薫:3篇

響洋平:3篇

田辺青蛙:2篇

鷲羽大介:1篇

あ・・・あれ・・・?平山夢明せんせ・・・?

 

死地、ってよく思いついたよね。

以上である。

初登場ながらも「〈怪談最恐戦2020〉で怪談最恐位」という鳴り物入りで登場した分、やはり夜馬裕氏の怪談は比較的上質でそして怖いものが多かった。

「親友が見る夢」「小さな鳥居」等わかりやすく怖いものから、いっちばんはじめの「ノック音」ささやかに怖いものまで、ふり幅が広いなと思う。あと文章も巧い。

他の初登場の二人には大変申し訳ないが、夜馬裕氏初登場の巻!といっても過言ではないかも・・・。無論3人とも今後の活躍に、期待。

 

 

***

 

LINKS

瞬殺怪談の他の記事。

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METAMUSE「tiffany tiffany/わがままぱじゃま」-弱くて脆い私も可愛い。-

 

 

まるのままでわがままでいたいし、

死にたいと思っている私こそおひめさまみたいでかわいーね。

 

 

 

METAMUSE「tiffany tiffany/わがままぱじゃま」(2022年)の話をさせて下さい。

 

 

 

 

【概要】

脆い感情さえ映えろ。

ZOCから突如改名を発表したMETAMUSEの1stシングル。

 

【聴くべき人】

・ZOC、大森靖子の世界観が好きな人

・ネガティブな女の子

 

今は6人です。

 

【感想】

もともと、大森靖子は大学時代ウォークマンにアルバムが数枚入っていて、卒業後もちらほら聴いて。特に「kiti×××gaia」は結構何度もリフレイン。横浜にいた時に見た深夜の音楽番組バズリズム、の音楽紹介VTRで、「ドグマ・マグマ」が流れててビビッときて、それが収録されたアルバム、それが「kiti×××gaia」。頭おかしー奴にこそガイア(夜明け)がくるって感じであとふつーに×××ってアルバム名に這っているのちょー格好いい。その他の曲もバチバチに良いのがあって何度も聞いてた。ニートの時は「非国民的ヒーロー」、その後は「コミュニケーション・バリア」、どの曲も好きだけど刺さった時期が曲ごとに違うのも凄いしそれでも私が一番好きなのは「ドグマ・マグマ」

ZOCも時々聞いてた。ただメンバーの入れ替わりが激しいのと、私は喪女だから断捨離刷る彼氏もいないしプリクラでちゅーをしたいとも思わなかったしヒアルロン酸注入は金額が先に気になる。そこまでして永遠が保証されない美を手に入れたいのか。まぁロンリーではあるけど。

でも鎮目のどか、が入った後の出したアルバムPvPLiBiDo FUSION」はキューンとなって結構何度もPV見てる。今も時々見る。最近じゃあ「CUTTING AGE」も今更ながらにぶっ刺さて来た。

「わがままぱじゃま」中毒でくらっときて、あと炎上。そう、春燃えてた。

2022年5月末吉良乃ジョナというメンバーが加入して最大風速で脱退したんだけれども、その理由が練習不足との旨。

大炎上。

「ステージに立つ限りは命を懸けろ。」

どこで見たか分かんない。覚えてない。もしかしたらインター・ネットか、私の脳味噌の捏造かもしれない。けど、その燃え盛るインター・ネットの中で言い放った大森靖子の言葉がすっごいよかった。きゅるきゅるした。眩暈。女神。

多分、技術不足だから脱退とかではないんだと思う。その活動に命を懸けられなかった、全力で取り組めなかったってことなんだと思う。それらを凝縮した4文字が「練習不足」。それじゃあ、届かない。見抜かれる。偶像として信仰できない。アイドルって偶像だから。*1

加えて同時期に、「METAMUSE」への改名も突如発表して大炎上。

でもまぁそこは納得。改名はありうるだろうなと私は思ってた。

ZOCというグループ名のコンセプトには、実験云々って聞いたことある。

実験、成功したんだ。

ちょーどいい命のかけ方、見極められた。

ホモ・サピエンスの心臓を撃ち抜く角度の発見。

CUTTING EDGE」「LiBiDo FUSION」、だから最近の曲はこんなに刺さるんだ。

これ以上実験する必要はない、ことはないけれど、ようやく次の段階に進める。第一段階の結果を拡散したい。届けたい。感染させたい。濃厚接触

次のフェーズ。

だから、改名したんだろう。と思う。

定着した名前が変わることは勿体ないなぁとは思ったけど、まぁそりゃそうなるよなと思った。執着をしない。変わり続ける。永遠なんてない。不変を選び進化を選んだ。とどまらないためにも、もしくはメンバーから反対意見が出て結果的にとどまることを防ぐためにも、実験主催者として責任をもって、一方的に改名宣言叩き出したのではないか。

ただ改名後の1stシングルが、加入に至らなかった幻のメンバー(担当色:水色)を叫んだ歌なのは完全想定外。

 

 

裏面はわがままぱじゃまのジャケット。

 

本作は、METAMUSEとしての一曲目tiffany tiffanyと、「わがままぱじゃま」が収録されてる。簡単にそれぞれの曲を聴いて想ったことを記しておく。両方とも作詞作曲は大森靖子

 

tiffany tiffany

生まれ変わったらアイドルになりたかったな

ならこの人生でやろうって決めてた

1番の最後が「決めた」になっているのに2番の最期には「て」が入って「決めてた」になることに鳥肌。じゃあどうして。季節が変わっても思わずにはいられない。

自殺。

自殺した人を生者が謳うことって何度も幾度も沢山あるけれども、自殺して死なないとその言葉は説得力がない。結局作者は生きてんじゃんになる。

でも逆に、自殺で死ねば、生前その発した言葉一文字一句が全て説得力を帯びる。結局自殺した人々の手記がこの世に蔓延って、且つそれが何度も何度も何度も読まれるのはそれが理由なんだと思う。八本脚の蝶が天空を何匹も舞い、かつて二十歳であった人々は原点を探す。彩ちゃんは永遠に21世紀冒頭・女子高生のまま。

私が死んだら

泣いてしまう人なんて大嫌い

大嫌い 大嫌い

そりゃそうだよねって笑ってよ

だから、今もフツーに生きて、毎日ツイッター「今日も何とか」言うとる大森靖子のここは凄いなって思った。生者が作ったか詩なのにこれほどまでに自死に逼迫する言葉があるとは・・・あー。死にたい自殺したいって思いながら生きてもいいし、そう思っている私達tiffany、無垢だから傷つくの、可愛い。 

あと、1stシングルの背景が全面的に水色なのは、それは、幻のメンバーが彼女自身の人生で果たせなかった理想のアイドル像をMETAMUSEとして実現させる、という意味なのかなぁとも思った。私は彼女について詳しくは知らないし、そのなりたいアイドルって言うのがどういうアイドルなのかもよく分からない。けれども、彼女に近しい存在で且つZOCのメンバーとして限定参加することを約束した大森靖子はそれについて少なからず詳しく聞いている筈で、

METAMUSE・・・「超える (音楽の)女神」

それをも跳躍するアイドルを、実験を繰り返して出来上がったこのメンバーでなら目指せる。

 

「わがままぱじゃま」

ら・めぞん・でゅ・悪苺

でもAメロがこれから始まるZOCZOC的歌詞世界観も本当に好き。ら・めぞん・でゅはフランス語で「~の家」の意。悪苺。イタいけど可愛いのが大好きで、ピンクと黒。バキューン!キューピッド爆発!!的な。厚底スニーカをリボンで結ぶ。

いつの間にかあたし おひめさまだったの

いつの間にか あたしなんにもできない

そこがかわいいのだろう?!

でも「CUTTIN EDGE」同様、全国の女の子のネガティブを「かわいい」に更新してく存在は確かにミューズ・・・女神、の方がしっくりくるかもしれない。

「ZOC」の黒とピンク、リストカット的世界観も大好きだけれども、でも、多分これから私によりぶっ刺さってくるのは「METAMUSE」の音楽。これからの彼女達が放つ音楽に期待。だって音楽の女神だし。パンプスの足跡代わりにひらめくのはリボン。

あ、あと、サビのところで裏でピアノの旋律がハイスピードで展開されるのは、凄いと思った。音楽としても繊細で綿密に作られているんだなぁと思った。

 

 

神様 許さない

tiffany tiffanyに出てくる歌詞。

私も本当に許さない。許せない。

ZOCで歌う彼女の、あの無垢で力強い歌声を聞きたかった。

し、少女のままで年を重ねていく彼女のその先を見たかった。

あと、冬春夏と季節が変わっても、彼女の死を知った時以来から彷徨えるこのやるせない気持ちの矛先を、定めてくれて、せーこちゃん、ありがと。まさかそれがZOC・・・METAMUSEから提示されるとは思わなかったけど。

 

・・・きゅるきゅる。

「ステージに立つ限りは命を懸けろ。」

話はジョナ炎上事件に戻るけれども、この大森靖子のスタンスがあったからこそ、脱退した戦慄かなの・香椎かてぃ等も目が離せない存在になってんだろうなぁと思った。

メンバーの入れ替わりは激しく実験は難航したけれども、彼女達が別のフィールドで面白い音楽・カルチャーを展開しはじめたっていうのは、ZOC。実験の成功の一つなんじゃないかと思う。想定外の長期間にわたる実験が末での想定外たる成功。

 

 

 

 

以上である。

なんかとにかくすっごいいい音楽だった。

し、これからの曲もすっごく気になる。

し、きゅるきゅる・・・ピンクメトセラ

ZOCという存在を、発案してくれてありがと、せーこ。

 

***

LINK

読んだことある自殺した人の手記は2冊。積読の中にも2冊ある。今月には2冊とも読んでおきたい。

 

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*1:逆に、下手でも本気で取り組むからこそ、支持を集めていた典型的例として挙げられるのはけやき坂46時代の井口眞緒の「二人セゾン」のソロダンスだと思う

此元和津也『セトウツミ③』-報われないから三角形は美しいんだ。-

 

 

僕「あ・・・あのねあのね、セトウツミ3巻読んだんだけど・・!!!・・は、はつはつ、ハツ美ちゃんがかわいくて・・・!!!!」

 

 

 

大園玲さん「ふふ・・・かわいい」

 

 

 

(おおぞのさんのがめちゃかわいいよおおおおおおおおお!!!!!!!!)

 

此元和津也『セトウツミ③』(秋田書店 2015年)の話をさせて下さい。

 

 

 

 

【あらすじ】

男子高校生、瀬戸と内海。

いつもの河原で暇つぶし。関西弁で無駄話。

描き下ろしを加えた、放課後トーク11編。

裏表紙より

 

【読むべき人】

・会話劇漫画が好きな人

・キャラメル好き

・猫アレ

 

 

 

 

【感想】

まぁこれミーグリ(握手会代替で行われているオンライン通話会)で話す内容ではないんだよねそんなこと知ってるんだよ。でもついつい話さざるを得なかったんだよこんちきしょー。

「五月雨よ」のミーグリにまで遡る。経験者は分かると思うんだけれども、いくつかの部に別れて予約すると、その隙間時間が結構暇なんですよね。2時間くらいで微妙な時間だし。じゃあここはと、大園玲さんが唯一われわれ人類に教えて下さった漫画「セトウツミ」の2巻3巻を読みながらぷぅ~と待っていたわけですな。ぷぅ~。

そしたらまさかのここで、ニューヒロイン★ハツ美登場。

可愛くないのにめっちゃ可愛いんですよ!!!

想い人にはうまく話せないくせに、それ以外の人間にはずけずけ言っちゃうその気難しい感じが超絶共感で、ワア!!!になりましたね。ワア!!!

さすが大園さんがご享受してくださった作品・・・やっぱめちゃくちゃ面白くてついつい読み込んでしまって、そして上記の会話に繋がる訳です。

僕「あ・・・あ・・・は・・・はつみがはつみが」

ちぃかわかよ!!!

ちいさくもかわいくもねぇよ!!!!

 

なのでこの漫画で一番好きなキャラクターはハツ美です。

今ペット買ったら間違いなく「ハツ美」

Twitterのアカウント増やすなら間違いなく「ハツ美」

ポケモンはじめたら間違いなく主人公名「ハツ美」

にしちゃうくらいには大好きですね。めちゃくちゃ好きやんけ。

 

以下簡単に各話感想を書いていきます。

一番好きなのは、樫村一期とハツ美が出てくる「描き下ろし」。

 

 

大園玲さんの去年の浴衣のアクリルスタンド

 

第17話 キャラメルと2000円

内海「そんなんええから今ナンボ持ってんのか財布見してみい!」p.8

内海「ボンジョビの考え方やん」p.12

間。・・・間と描いて「ま」と読む。そう、お笑いの漫才とかでも重視されるあれですね。あれを描いた話です。

初っ端に内海が間を思いっきり開けてブリブリ言わせるんですけれどもその間っぷり(まっぷり)が秀逸。いやそんな間あける?瀬戸いるのに?読者いるのに?

からの、この話の内海は結構キレッキレ。89になったりボンジョビの考え方やん」とツッコんだり。ボンジョビの考え方is何。てかボンジョビって屋号持ってんのてかボンジョビって人の名前だったんだ・・・・世界三大珍味と思ってた・・・フォアグラキャビアボンジョビ・・・。

また、瀬戸の家が自転車屋であり、とーちゃんがパチンカスであることも判明。今時こんな家庭の主人公居る?なんかほのぼのサイクルみたいな漫画は何回か目にしたことあるけどこんな埃クサい自転車屋の息子が主人公の漫画って何。セトウツミだよ。最高だよ。

 

 

第18話 大根とからし

瀬戸「じゃあ仮にサッカーヤメテ輝き失ったんやったらそんな時こそ支えたいいうのがほんまの愛ちゃうんか」p.28

吉田「なんか・・・難しいフランス映画観た後みたいな顔してはります」p.34

モテたい!!という話である。

ハツ美初登場回でもある。

内海には年下の美少女女子高生が告白にやってくるが、瀬戸にはハツ美が告白にというわけである。まぁ手紙だけど。

ただまぁよく見てほしい。ハツ美、胸めっちゃデカいんだよな。

でもね、意外とこれはプラスにならないんですよ。意外と胸はプラスになんねぇ。僕がおっぱいまぁまぁでかいからよく分かる。

確かに「巨乳最高~」とか言うんですけど、でもリアルで会うと実際男は顔とか表面上の性格とかそーいう所しか見てない。「巨乳最高~」なのはあくまでおかずにする時であって、リアルの相手を探す時にあんまり重視されないんですよ。

しかも肩凝るし。太って見えるし。Tシャツ着れば全部3Ⅾデザインになっちゃうし。

強いて言うならシルエットがまぁ女性らしい、というのもあるけどでも貧乳の方が似合う服多いのは確かですよ。

あんまいいことないっすよ。巨乳なんて。

其処も含めてハツ美が好きやねん!!!

 

 

第19話 戦争と虫歯

内海(ハツ美)「実は中学の時から瀬戸のことを知ってた どこが好きかと聞かれると全部としか言いようがない 今までは遠くから見てるだけで良かったけどただわたしという名のタンポポがそばで咲いてることを知っていてほしくてこうして伝えにきた」p.44

瀬戸「私的な表現力も凄いけどわりと自己評価が高いな」p.45

ハツ美回である。ハツ美単体カラー扉ちょっと見たかったなぁ。

凄い好きなんだけど相手を目の前にすると言えない、でもめっちゃ好き。ずっとずっと好きだった。あと自分をタンポポに形容しちゃうところ。うわぁ、この気持ち分かるわぁ。

でもそうこうもじもじしているうちに離れて行っちゃう、だからこうして会いに来たんだよな。うわめっちゃ乙女。めっちゃ可愛い。てか僕もそうだから、僕もめっちゃ可愛い。

内海(ハツ美)「瀬戸が誰のことがすきやとしてもわたしがどう思ってるかであってそれは関係ない」p.52

でも経験ないくせにこういう所の考えがガッチガチに固まっているのも乙女あるある。

ただハツ美は16歳の高校一年生で僕は28歳の限界フリーターなんですけれども・・・。

あとp.52の人差し指クロスハツ美、めっちゃ可愛くない?もう僕も色々限界だし人差し指でクロスして街中ねり歩こうかな。

あ、ちなみになんで内海(ハツ美)かというと、ハツ美が照れて直接瀬戸に言えないから全部こしょこしょ内海にやってそれを内海が話すからです。シャイかよ!!可愛いね!!!

 

 

第20話 オバケとロック

瀬戸「前はだいぶはしょったから今回はディレクターズエディションでお届けするわ」p.57

瀬戸のクモ嫌いディレクターズカット版の話である。クモ嫌いディレクターズカット版って何。

クモが怖いという話しを「オバケとロック」に例えた話。洋楽ロックに僕は造詣がないのでちょっと分からんとこもあったけれども。

でもこういう、何かを例える会話って友達との定番だよね。

あと中盤タイトル通りオバケも出てくる。

オバケ「なんもせーへん!なんもせーへん!!それに飛べへんし清潔やで!!」p.60

可愛いから今後も時々出てきてほしい。

ハツ美には及ばないけどな!!!!

ちなみに僕はクモよりも普通にゴキブリが無理。あと百足も無理。意外とセミは平気。触れませんが・・・。

 

第21話 確率と期待値

内海「瀬戸 今のはマーチンゲール法といってよくあるギャンブルの手法や」p.74

内海「確かに確実に利益が出せる方法やけど種銭・・・・つまりりんごが無尽蔵に無いと成立せえへんし相手側がりんごの上限決めてたらそこで終わりや」p.74

内海「瀬戸 大数の法則ってわかるか?」p.77

内海「例えばサイコロ振ったら最初は出目が偏るやろうけど回数を増やすごとにどんどんでめは6分の1に収束していくねん 50%の勝負はいつまでたっても5連敗なんか普通にあるぞ」p.77

やべーおっさんがやべーギャンブルを瀬戸に吹っかけて、それを内海が阻止する話である。普通に勉強になる。てか瀬戸がスラスラ解説しているが僕も8割くらいしか分からなかった。瀬戸に分かる訳ないだろ。

てか普通にマーチンゲール法を知っている瀬戸もやべえがおっさんもやべえ。容姿に反比例して溢れすぎてる教養。中盤宝くじの話が出てくるのだけれども、それは結構僕もうんうん聞いてしまった。

でもまぁ、なんでこーいうやべえおっさんってもれなくだっせえ短パンか、だっせえジーンズ履いてるんですかね。そのくせ入れ墨とかバチバチ入っていたりして、いやいや美的感覚どうなってんねんと思う。

 

 

 

 

第22話 下の句とケンカ

内海「エプロン何色か思い出したんかい!」

瀬戸「オータムカラーや!」p.100

エプロンの色をさすのにオータムカラーってある!?と初めて読んだ時ゲラゲラ笑ったけど今読むとまぁ別にそこまでだな。要するに赤っぽいと言う事だろわかる。

 

第23話 上の句とタンカ

内海「具体的に何色やねんそれ!」

瀬戸「多分紺色や!」p.108

オータムカラーは紺色ではないだろ・・・瀬戸・・・。

 

2巻のババ抜きの話のようにこの第22話と第23話は対になってます。内海側から始まるのも一緒。

樫村さんも出てくるんですが・・・内海←樫村←瀬戸・・・この誰も報われない三角関係感、たまんないよね。てか大学の時とか特にそうだったけど、だいたい三角関係になった地点で誰も報われないこと多くない?

ゆらめく、ゆらめく、ゆらめいて。

ちなみに、僕の大学の後輩で一人だけ唯一三角関係から彼女の座を勝ち取った子がいたんですが、その子がそのまま結婚したと聞いたときはちょっとドン引きしました。28まで喪女の自分を棚に上げて、でもまぁしましたドン引き。

最近三角関係の「まま」付き合う、要するに3人で付き合うという新しい恋愛の形もあるらしいんですがそれもそれでなんか違う気がする。

ゆらめく、ゆらめく、ゆらめいて、誰も報われない誰も幸せになんないそーいうのが三角関係で会ってそーいうさんかくこそ、尊い

 

 

 

 

出張版・前編

川坊主「俺そん時めっちゃ荒れてたから」

瀬戸「機嫌が悪かったんですか?」

川坊主「いや肌が」

瀬戸「ああ肌が」p,135

詐欺商法もちかけるオッサン(教養アリ)が登場し一気に治安が心配された河原ですけれどもとうとうもっとやべえヤツが登場した回。だって肌荒れてるし。よくないでしょ。「セトウツミ」の乾燥肌枠は内海なのに・・・。

 

出張版・後編

Q.Sくんとはこれからも友達?

府立高校に通う2年の少年Uくん「・・・・・・・・・・」

府立高校に通う2年の少年Uくん「・・・・・・・・・・」p.146

まさかの瀬戸逮捕からのドキュメンタリー番組展開である。

カオス。てかこれ、そもそもどこに出張してんねん。

趣旨が分かんねぇ!!趣旨が!!!

 

 

 

 

描き下ろし・イチハツミ

ハツ美「ふーん・・・ていうか樫村さんツインテールとかもうめっちゃ必死やん」

樫村「なんでタメ口なん」

ハツ美「説教っすか?」

樫村「うざっ」p.151

憧れのはずの樫村にはとことん強気で行くハツ美、生々しすぎて可愛い。しかも自撮りはめっちゃ研究しているという。

この2人の会話はいつまでもいつまでも聞いていたい読んでいたい。

だから4巻の描き下ろしもイチハツミっかな~!!?と思ってわっくわくして読んだら全然違って結構悲しかったです。番外編でこの2人緒会話だけで1冊出してもろへんやろか・・・。

あと他人の恋愛に対してめちゃくた冷静に分析出来るのも分かるわ、ハツ美。自分たちのはまったくうまくいかないのに。これなんでだろーね。ハツ美。

 

 

僕達全然、うまくいかない。

 

 

ハツ美「樫村さんは内海くんのことが好きやから!!!」(腹式呼吸)p.54

 

 

 

大園さんにセトウツミの話をしたときの記録。
五月雨よのミーグリの時

 

以上である。

ハツ美という2022年ベストオブキャラクターが出てきたので個人的には最高の巻だった。これだけ最高のキャラクターに・・・作品に・・・会わせてくれた大園玲さんに感謝・・・。本当に感謝・・・。

 

ちなみに作中でハツ美の容姿を「シオマネキ」に例える部分があるんですが、画像検索するとまじのカニなんですよね。

ハツ美がシオマネキなら、樫村はアサリ、瀬戸はヒトデ、内海はナマコだろうなあと思う。そういや静岡市内唯一の水族館が一般公開辞めるんだってね。

悲しいね。

もう結構ぼろいし最後に行ったのなんて10年以上前なのに、故郷の唯一の水族館が亡くなるということの哀しさ。

郷愁。

そーいうセンチメンタル主義漫画、セトウツミ。

僕も好きな先輩いたなぁ・・・。

もうあの日々は、戻れない。

・・・戻らない。

 

 

 

 

 

***

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1-2巻の感想

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三角関係と言ったらこの映画、になるんですよね。

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「わたしは最悪。」-30歳そこそこって一番人生について考える季節なんだと思う。-

 

 

 

 

人生は、止まらない。

 

 

 

見て良かったけれども、映画館で見る必要はまぁうん・・・なかったかなぁ・・・ていう映画です。映画館で初めて意識失いそうになりました。でも見て良かった。これは確実に言える。

 

 

「わたしは最悪。」(監督:ヨアキム・トリアー 配給:ギャガ 2021年 ノルウェー・フランス・スウェーデンデンマーク 主演:レナーテ・レインスヴェ)の話をさせて下さい。

 

 

 

 

【あらすじ】

アート系に才能のきらめきを見せながら、決定的な道が見つからず、いまだ人生の脇役のような気分のユリヤ(29)。

そんな彼女にグラフィックノベル作家としてせいこうした年上の恋人アクセルは、妻や母と言ったポジションを勧めてくる。

ある夜、招待されていないパーティに紛れ込んだユリヤは、若くて魅力的なアイヴィンに出逢う。

新たな恋の勢いに乗って、ユリヤは今度こそ人生の主役に躍り出ようとするのだがーーー。

ちらしより

 

【見るべき人】

・30を目前に控えている女性

・モラトリアムを捨てきれない女性

【ためらうべき人】

・癌患者、もしくは家族に癌患者がいる人

 

 

 

 

【感想】

本作を知ったのはサールナートホールにある静岡のミニシアター系映画館、静岡シネ・ギャラリーのTwitterである。

様々な作品を意欲的に公開していて、且つその紹介文が何とも魅力的。で、この夏映画がひそかなるマイブームになっている僕はTwitterを毎日ガン見。

そのなかでも特に惹かれたのは見に行こうと予定に組み込んでいる。「ハッチング-孵化-」とか。本作とか。

まぁシネ・ギャラリー、今回で行くの2回目だったんですけれども。

 

本作に特に惹かれた部分は、「30歳になった女性が自分の人生を見つける」みたいな文章。

分かる!!と思った。

僕は28歳、所謂アラサーなんだけれども、最近物凄く、人生を感じることがある。

・・・人生!

例えば仕事とか結婚とか子供の有無とか。一方で親の病気であるとか人間関係だとか。様々なことが渦巻いて様々なことが一気に押し寄せてくる。

もう若くないんだぞ。の一方で、このままがいい。20歳前後からずるずる引きずっている少女の感覚も手放せない。あれから体重は10近くも増えているというのに。

第二新卒」という言葉があるが、本来ならば、このアラサーの年代のことを指すべきだと思う。

今までを振り返って、とってもとっても生き方だとか人生だとかそういうのを考える季節。

 

静岡シネ・ギャラリーがあるサールナートホール。

 

 

その年代の、人生の分岐点・選択を描いた映画である。

年上の恋人がいながらも、年下の青年に恋い焦がれたり、現在は本屋でアルバイトをしているけれどもそれを生涯続ける気はまっぴらなかったりするユリヤ。

母、妻というポジションにまだ収まりたくはない。自分の人生を主人公として駆け抜けている実感がないまま、そのまま誰かの人生の脇役になるのは嫌だ。何かが欲しい。

仕事。今は本屋のパートで働いているけれどもそれを一生続ける気はない。けれども何を生涯やっていきたいのかは分からない。けれど生涯ここにいるつもりはない。

現状に不満はないけれど、現状が続いていくのは嫌だ。

そういうアンビバレントにはひりひりと共感した。

また、ユリヤは高学歴である。医学部に入学しその後心理学も学んでいる。

僕もまぁ、まぁ言っちゃうけどMARCH。看板学部ではない文学部だけどMARCH。所謂世間一般で高学歴である。

ユリヤと同様、勉強をひたすら頑張って大学に入学すればその後の人生は自然と開けると思っていた。

でも実際は違って、人生の荒波にもみくだされる。

その折り合いをようやくつけたうえで考えるに至るのが所謂アラサーなんだと思う。考える。考え過ぎちゃう。

人生って何。

予想外のことばっかだったけれども、このまま私は人生の主人公にもなれないまま、妻やら母親やら誰かの人生の脇役になるの。

そんなの嫌だ。絶対に嫌だ。

でも今後を考えると当たり前のことだし、仕方のないこと。40・50になって子供が産めるとは限らないし、ましてや恋人はひとまわりも年上。子供が欲しいならもう今しかない。

だけれど・・・だけど・・・。

そのはざまから、走り出す場面が、このキービジュアル。

何もかもが止まって見える。

本当に、自分の求めているものが見えてくる。

ユリヤはそれに気づいてない。

気づいてないけれども、身体は走り出す。

人生は動き出す。

「人生は選択ーー時々、運命。」

日本版のコピーであるが、この瞬間を的確に切り取った言葉だと思う。

 

 



 

 

何もかもが止まった世界を、僕も確かに走ったことがあった。

今後も、走ることはあるように思う。

いつ・どこでかは全く予想がつかないが。

 

 

 

エレベーターに貼ってあるこの映画もラジオで佐久間Pがおススメしてて
見ようかどうか滅茶苦茶悩んだ。

 

ちなみに、僕が寝たのは本作の前半の部分です。

29歳(30歳)のユリヤが付き合っているアクセルは44歳な訳ですよ。集まるにしても、彼の友達には家庭があって、子供がいて、そこで彼女は居心地に悪い思いをするわけです。

あと、親。彼女が親と会話するシーンがあるんですけど、それもなんか退屈なんですよね。老後のこととか。アクセルの仕事のこととか。本当に退屈で退屈で・・・ここで一瞬意識を失いました。こういう、アラサーを縛り付けるあらゆるモノのつまらなさがリアルすぎてね。

眠い、眠かったけれどもそれはある意味この映画に没頭してたってことなのかもしれない。

そういった意味でも、退屈な時間を全て投げ出して放棄して、時間を止めてすべてを駆けだすシーンは爽快だったな。

 

 

そのシーン。よく見ると、「О」のところに様々なシーンが。

 

インターネットで検索すると本作を「ブラックユーモア」と書かれているのにビックリ。確かに、すぐにおっぱい出すなぁ、ちんちんも出たなぁ、とは思ったけれどユーモア部分そんなにあったか・・・?てか前半の眠たいシーンもある種のブラック・ユーモア

でもあれ、アイヴィンの元カノは面白かった。彼女は最高にミス・ブラック・ユーモアだった。大自然とちょびっと触れ合ったのをきっかけに、環境保全に突っ走り、ヨガ・スピリチュアルに目覚め、インスタにちょっぴりセクシーなヨガ画像を上げれば3万フォロワー。途中三つ編みをして、グレタをパロった髪型してたのはおもろかった。日本にもいるいるこういう人。環境ではなくてフェミニズム(笑)であることが多いけれども。

あと、アクセルのコミック関連の出来事は確かに皮肉ったところが多かったかも。映画化するにあたりおおいに改変されるのは、万国共通なんだね。あとアクセルと女性活動家の討論も面白かったな。

でもその一連の創作物案件は、アクセントとしては良かったかもしれないが、本作に必要だったかと言われると微妙。ヨーロッパの現代社会を象徴する出来事なのかもしれないけれども・・・うーん。そういう創作物の議論については、やっぱり日本のが進んでいて、そしてもうその議題も垢がついてる。

べったべたに・・・。

 

 

北欧の映画なので、途中マジックキノコのシーンがあります。
30で今更・・・みたいなレビューも見ましたが、僕も北欧に生まれてたら実際手を出すのは30そこそこだったと思う。

 

 

でも、本作で一番垢がついているのはそこじゃない。

終盤、アクセルが腎臓癌に侵されていることをユリヤは唐突に知る。

癌。

癌患者の描写。ここが本当イマイチだった。

 

見舞いに行くとアクセルは気弱そうな顔をしている。そして過去のユリヤと過ごした日々についてつらつらと語る。

そして言うのだ。

「君は最高だ」

2回目に出てきた時は抗がん剤よろしくあの帽子をかぶっている。

そして更に顔はコケて、とうとう逝っちゃう。

「生きたい」

 

うんざりした。

 

アラサーになると確かに、病や死というものは「現実」になる。

僕の母親も肺癌であるし、友達にも一人乳癌を患っている友達がいる。

癌はお伽話じゃない。人の死はお伽話じゃない。

僕達の生活の中に人生の中に、必ず組み込まれていく。

そういうことを伝えるために、アクセルは癌を患ったのだろう。

まぁ分かるんだけど、げんなり。元カレ・・・恋人関係にあった人が癌でそこに駆けつけてっていつのロマンス?ICUでぱこってんのか。いつの恋空だよ。

 

でも、でもでもでも、まぁこの物語じゃぁ病気になる身近な人ってアクセルしかいないし、分かるよ。陳腐な展開だけれども、彼が癌を患うのは分かる。俳優の演技も素晴らしく、やっぱ王道展開。ちょっとぐっときちゃったよ。

それでも僕は興ざめ。

癌患者になったからといって、人間は聖人にはならない。

癌患者になったからといって、悲観して物憂げに病室見ているだけじゃない。

癌患者になったからといって、常に死のことを考えているわけじゃない。

 

癌になったアクセルは気弱そうに病室を眺める所謂創作物の「典型的病人」として描写されていて、それが本当に残念だった。

癌患者も、元恋人が訪れたらおっぱいだって触りたいだろうし美味しいもの食べたいだろうし喜怒哀楽があるはずなんですよ。

鬱病患者ヨロシクずっと物憂げな横顔曝しているわけではないんですよ。

癌患者になったからと言って人間は変わらない。

性欲だのなんだのそーいう切ったないことを考えませんもう一生セックスしません欲ないです。全部諦めます。そう綺麗にいくわけがないんですよ。

あと癌患者になったからといって全てが赦されるわけじゃない。ムカつくところもあるはずだし、不謹慎なことを思っちゃうところもあるはずなんですよ。

そこらへんが全部ありきたりの美談になっているのが本当に残念だった。

結局ユリヤが写真家という道を選んだのも、そういう美談のうやむやで誤魔化された感じがあって、エピローグが唐突に感じられた。

前半あれだけ丁寧だったのに後半これかよ、って思った。

 

幡野広志という写真家を君は知っているだろうか。

30そこそこで血液のがんを患った写真家である。

癌になってから文筆活動もはじめて、特にcakesでのお悩み相談はHP屈指の人気コーナーだった。僕も単行本2冊持っている。

さぁどんな風に相談に乗るのかな・・・と読むとこれがまた凄い。ばっさばっさと切っていく。しゃあしゃあと思ったことを書いていく。

相談も癌関連のものもあれば癌関連じゃないものもある。人生相談という枠組みはあれどジャンルは多種多様。

彼の存在を知った時、僕は衝撃を受けた。

あ。

癌患者だからって、聖人なわけないんだ。

癌患者だからって、何もかもを諦める必要もないんだ。

確かに癌は深刻な病気だ。

でもだからといって、それに僕達は縛られる必要はない。

母親が癌を患う前に知った人物だけれども、本当に、前もって彼の存在を知っておいて良かったと思った。母の病を知った時僕は鬱気味になったけれども、彼の存在を知らなかったらもうその状態からずっと抜け出せなかったと思う。

ちなみに、大人気だった人生相談のコーナーは、炎上して終了した。癌患者も炎上するのである。大人気コーナーを失ったcakes自体も今年中に終了する予定なんだそうだ。

 

幡野広志という人物を知ってしまった以上、ちょっとこの作品における癌患者の描写は非常につまんなく感じられた。

前半のアラサー・モラトリアムが非常にリアルに描かれている分、後半のこの癌の描写が蛇足。

こんな、何番煎じだよ、って感じの癌美談見せられるくらいだったら、もっと作品の尺短くしてくれ・・・。若干やっぱ冗長だったんよ。それかあのなんちゃってグレタヨガ女の出番を増やしてくれ・・・。アイツ要素詰め込み過ぎておもろかったんよ。

 

 

ただ今後の生き方、仕事というものが決めるのではなく、自分の選択によって自然と決まっていく、その過程の描写は素晴らしかった。

 

 

わたしは最悪。

だけど不安や何やらに、抱えながらも悩みながらも毎日生きていくしかないんだ。

 

 

右がアクセル(健康)。
脚本がお涙頂戴だったけれども、終盤の俳優の演技力はすごかった。

 

以上である。

悪くない。面白いとは言えないが良い映画だとは思う。

アラサー・人生の分岐点を巧みに描いている。

けれども病。ここ関連の描写に不満が残った。古臭い。古臭すぎる。

アラサーのモラトリアムとか結婚するのかしないのか問題だとかその他全部2022!!って感じだったんだから、そこも2022!!にアップデートしてくれって感じだった。

 

癌患者が家族にいなかったら、多分そこは気にならなかったと思う。

でも僕の母親はあいにく癌を患ってしまい、僕もそのことについて考える時間が増えた。がん保険だけには入っている。

だから癌患者じゃない。もしくは癌患者が身近にいないアラサーには自信をもっておススメできる映画。

 

***

LINKS

同じくシネギャラリーで見た映画。

tunabook03.hatenablog.com