小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

清水玲子『秘密 トップシークレット 1』-それはある種国家機密より重要な。-

 

 

 

-

 

知っているのは大統領の「脳」だけなんだ p.19

 

 

 

 

 

 

 

清水玲子『秘密 トップシークレット 1』(白泉社 2001年)の話をさせて下さい。

 

 

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【概要】

最高傑作、豪華完全版!

大統領殺害の真相は、生前の右脳が見た映像を再現するMRIスキャナーを使った捜査により白日の元に曝された。

それから5年後、日本の犯罪史上類を見ない連続殺人事件と相次ぐ少年の自殺とを結ぶ衝撃の事実が、MRI捜査によって明らかになった!

 

プロローグとして、花とゆめコミックス「WILD CATS」収録の『秘密ートップ・シークレット」も収録、シリーズが全て読める、号アッカラー付きワイド版!

 

帯より

 

MRIスキャナーにかけ生前と同じ状態に保ち一定の電気刺激を与え脳を120%働かせそうしてあなたが生前に「見て」いた映像をスクリーンに映し出すーp.81

 

 

【読むべき人】

・SF好き

・「面白い少女漫画」を求めている人

・BLよりかはBL「風味」の関係性に惹かれる人

 

【感想】

こいつぁ・・・凄いやぁ・・・。

アパートの近くにある貸しコミック屋さんで借りた。

「これは凄いと思ったけどね」

そこにはいつもおばあさんがいるのだが、そのおばあさんが教えてくれた一冊。

以前勧めてくれた不思議な少年バチバチバチバチだったので「そうなんですね!」と何も考えず借りた。

確かにこれは・・・凄いやあ・・・。

 

というのもまず設定からして凄い。

死者の脳が生前最後ギリギリに見た記憶を科学的な技術で再現して、それをモニターで見て、現地行って捜査をして、犯人を捕まえる。という設定である。

凄い。何をしていたらこんなこと考えつくんだろ。犯人未逮捕の未解決事件とか今までインターネットである程度見たり聞いたりしたけれど・・・死者の脳からそれを見つけるなんて全く考えたこともなかった。かすりもしなかった。

多分作者は少女漫画家だけれども、少女漫画だけ読んできた訳じゃないんだろうなぁ・・・。多分ぶっといSF小説とか読んでそう。「1984年」「電気羊はアンドロイドの夢を見るか?」。

くわえて、常に絶え間なく考えていそう。ニュースを聞けば「何故それが起こったのか」。映画を見れば「何故監督はこういう作品を撮ったのか」。科学技術が実現すれば「一体これは如何様な仕組みで成立しているのか」。

私がこういう事を考えるようになったのは数年前小学生の男の子が学校の校庭で殺されて容疑者の少年が飛び降り自殺をして真相は闇の中・・・となってしまった事件がきっかけですp.214

聞いただけでゾクゾクする設定。おばあさんが薦める理由もわかる。

 

そこで非常に若い(ように見える)美少年の研究室の室長と、その少年のトラウマを刺激する東大新卒メガネ君が事件を解決していく・・・という話。

僕「あーこれ表紙ぼんやり見たことあります。BLなんですか?」

おばあさん「BLじゃあないけど・・・」

そう、読んだ感想としては想像よりBLしていない。イケメン童顔年上×トラウマ刺激眼鏡年下といったらもう文字だけでディープキスしてそうではあるが、唇同士どころかほっぺにキスもしない。

逆にびっくり。まぁ冷静に考えて恐らく国家公務員一種であろうインテリ達が事件捜査ガン無視でちゅっちゅしてたらそれはそれで問題なのですが・・・。

イメージ先行でBLを期待すると肩透かしを食らうかもしれない。

 

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1巻、ではあるが、実は前半は全く別の話が収録されている。

本編は舞台が日本だが、前半はアメリカ。

「死者の知絵全ギリギリの映像を再現する」技術が本編では当たり前に使われているが、前半はそれがようやっと実現したばかりの頃の話。

登場人物全員魅力的で、最後主人公・ケビンが旅に出るような描写があるので、「お?これはメインストーリーに後々出てくるのか?」と思ったら、どうやらwikiみたら読み切りだったみたいですね。まじか~。出てこないんかい~。

でもこのケビンがちょーーーイケメンなんですよ。ロン毛なんですけどね。僕は基本ロン毛は二次元三次元問わず高見沢さんしか認めないというスタンスを撮っているんですけどねそれを揺るがす程の美貌。クール。ロング。キューティクル。

最高です。

なので、もし本編だけ読んでいてプロローグは読んでないよ~っていう人がいたらこの「秘密ートップ・シークレットー-1999」が収録されているというゆるぎない事実、それだけでも1巻を手に取る価値が十分にあると思います。

 

 

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ネタバレちょっとしながら感想を残す。

 

「秘密ートップ・シークレットー1999」

2055年、「アメリカ国民の良き父」と称される程の圧倒的支持率を持つ大統領の遺体が、別荘にて発見された。彼の「脳」が見た生前の「記憶」を再現し、彼の死の真相を突き止める。読唇術専門家兼アナリストのケビンはこの国家機密の捜査に参加することになる。

眼で見る事と心で思う事は誰にも止められない

どんなに科学や文化が進歩しても誰にもとがめられない

唯一残された自由な聖域

何をみているのか 何を考えているのか

その人だけの秘密の領域なのだpp.44-45

前半「???」が連発する謎の事件から明らかになった真実は、あまりにも切なさ極まる・・・清廉潔白、正義の人と称されたアメリカ大統領の秘密。

脳を見る、訳だから映像を通して、娘が実年齢より幼く見えたり、感情が伴ったりするのは考えさせられた。自分が見ている世界は実像ではなく虚像で、脳が歪曲している世界。

これ、一回読んだ時は分からなかったのですが、殺したのはあの彼だったんですね。お面から出ているアホ毛で分かる。あれだけ痛切に想った相手に、そのことがバレたらと思うと・・・僕も殺されていいですね。彼になら殺されてもいい。秘密が守られるのであれば尚更。

でも、死んでも秘密は守られなかった。容赦ない程悲しい結末。

「人魚姫」を思い出しました。秘密がバレたら海の泡になってしまう。まぁ大統領は人魚、よりかは魚人に近い印象も受けますが・・・。

あと、結局同性愛がネックになっている地点で本作が2000年前後の作品だと実感させられますね。恐らく、だけれども2021年現在だったらこの物語は成立しないでしょう。同性愛を禁断のものとして捉えること自体が差別に繋がっていると捉えかねないので。だから多分、2021年の僕よりも当時の読者の方がこの大統領の狂おしいほどの切なさに肉薄しているんだと思う。

無論現在成立しないからと言って、物語の持つきらめき輝き切なさは20年後の僕を貫いたわけですけれども。

 

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年下に見える先輩、藪。



 

法医第九研究室・・・MRIスキャナーを使用したのうの資格に関する研究と犯罪の解明p.93

 

「秘密ートップ・シークレットー2001」

2060年皇族の結婚式というめでたき日に9人の少年が自殺をした。捜査によると、この9人は同じ少年院に入っていたことが判明する。法医第九研究室によるMRI捜査で事件の真相を突き止めようとするが、その裏には28人連続殺人事件犯人の貝沼の影が・・・?東京大学新卒の青木と、第九研究室室長・薪がこの怪事件の真相を追う!

「はじめて君を見た時は奴が死にきれずに甦って僕を殺しにきたのかと思ったよ」p.131

ゾクゾクが止まらない一話。9人の少年が自殺した事件の真相がどんどん明らかになっていくのもそうだし、さらにそこに連続殺人犯が来るとなると・・・もう、血が滾るよね。眼球バッキバキですよ。

そしてある事情があって室長のトラウマが、随所で出てくるわけですが・・・結構ホラーチックでこれまた好み。個人的に、小6の時にドはまりして見ていた、金八先生の丸山しゅう君の覚せい剤使用シーンを思い出しました。八乙女光ももう30かあ・・・。まさか濱田岳が一番出世するとは思わなかったよなぁ・・・。

ただまぁ「何故9人の少年が一様に自殺したか」の真相は、ちょっと非現実的なところがあってそれが唯一残念だった。分かる訳ないじゃんだし、出来るわけないじゃん。2055年の科学の進歩がもたらした理由であればまだしも、ちょっとスピリチュアルに寄り過ぎでは?って感じ。まぁ本作ミステリではないので重視するべきところではないのですが、正直ここは肩透かし食らったかな。

「理屈なんてないんだよ ただ奴は人を殺したいだけなんだから」p.180

とにかくテンポ良くてスリリングなんですよね。題材的に非常に難しくなりがち・・・だと思うんですけどとんとん読める。

そしてキャラクターの台詞もいい。上記の台詞はメイン2人ではない、傍役が発した何気ない台詞なんですけど、それでもキラリと光る切れ味がある。さきほども述べましたが恐らく作者の清水先生はなかなかの読書家・・・なのではなかろうか。

ストーリーも良い。まさか青木の■■免許取得がクライマックスになって活かされるとは思わなかった。夜空を背景にしたクライマックスは息を呑む。

キャラだっていい。並みの作家だったら安易に室長を年下にするんですけどあくまで若く「見える」年上に設定するバランス感覚。

演出だっていい。pp.170-171の静謐。

あと絵だっていい。あと・・・・あと・・・あと・・・

 

「すごいよな 第九だぜ!!最先端の操作方法だぜ

被害者が死んでも「おしまい」じゃない

今まで「ヤブの中」だった犯行動機や犯人が

これからは何でもわかるんだよ!!薪」pp.130-131

そしてメイン2人が所属する主人公となる機関「第九研究室」ですが・・・恐らくベートヴェン「第九」、もしくはベートヴェンによる「第九の呪い」を題材にしているんだと思います。

ベートヴェンの第九って、最初は派手で中盤地味、三楽章で穏やかなバラードで、そいでもってあの有名な合唱に行きつくんですよね。まさしく「誕生」「青年期」「壮年期」「死」みたいな、人の一生ってことで絡めたのかな・・・まぁ「第九≒人生」は今僕が思いついた説なんですけどね。

「第九の呪い」というのは、ベートヴェンの死後しばらく「交響曲第九番」を作れた作曲がいなかった事実を表します交響曲の番号と言うのは「その作曲家が何番目に作った交響曲か」を表します。だから第九は「ベートヴェンが九番目に作った交響曲」。そして彼の死後、長らく9の交響曲を生きてるうちに紡げた作曲家は現れなかった・・・20世紀のショタコンビッチショスタコーヴィチが現れるまで長らく「第九交響曲」が作られることはなかった。そしてその目出度きショタの第九も地味に終わったから、そのまま「第九≒ベートヴェン」になってしまったわけです。ちなみにショタは第一と第五が圧倒的に有名。

何故わざわざ研究室に「第九」という名を与えたのか。

まぁそこらへんの真相は物語が進むにつれてわかったり・・・するのかしら?

 

 

 

 

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人の脳を見ただけで

心まで移りはしない

死んだ人の心は死んだ人のものだ

死んだ人のかわりになど誰もならない

(中略)

ただ願うことができるだけなのだ

死んでしまった人の分もこの世界を愛してゆけるように と

pp.208-209

 

 

 

 

 

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以上である。

僕28ですが・・・本当知らない名作少女漫画ってまだまだいっぱいあるんだなって思わされた。おら、わっくわくしてきたぞ!!!!

これからも貸しコミック屋さんとおばあさんの目利きをうまく利用しつつたくさんの名作を読みたいですね。

 

え?買わないのかって?

 

独り暮らしフリーターにそんな余裕はないのだよ・・・(とおいめ)

 

***

 

LINKS

以前おばあさんがおススメしてくれてめちゃくちゃ面白かった漫画。

 

tunabook03.hatenablog.com

tunabook03.hatenablog.com

 

泰三子『ハコヅメ~警察女子の逆襲~ 1-2』-女性警察官のドタバタ★日常活劇!!-

 

 

はえ~。警察官って大変なんだなぁ。

 

 

泰三子『ハコヅメ~警察女子の逆襲~ 1-2』(講談社 2018年)の話をさせて下さい。

 

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【あらすじ!!】

「もう辞めてやる!」

辞表を握り締めた新米女性警察官・川合の交番に、

なぜか刑事課から超美人の藤部長が配属されてきた。

岡島県警(の男性陣)を絶望におとしいれるコンビの誕生である。

 

#某県警に勤めること10年、

隠そうとしても漏れ出てくる作者の本音がヤバい!

労働基準法は警察官に「一部」適用外。

 

理不尽のち愚痴、時々がんばる、

誰も見たことのない警察漫画。

 

1巻裏表紙より

 

 

【読むべき人】

・ギャグ漫画好きな人(1巻は結構雑な部分が多いですが、2巻は結構洗練されていきます。あ、多分これ巻数重ねるごとにどんどん面白くなるやつだ・・・)

・警察官志している人

・将来の夢に警察官がある人

・女性警察官

 

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そういや自撮り棒ってここ1-2年でめっきりみなくなったよね。

 

【感想】

ハコヅメ。去年の「BRUTUS」の漫画特集に掲載されていて興味はあったんだけど、まさかドラマ化するとは思わなかった。まじか。

しかも主演は戸田恵梨香永野芽郁。ゴールデンタイム帯。深夜じゃない。まじか。

という訳で、

「流行に乗り遅れるわけにはいかない!!!!!」

と奮い立って、近くの貸しコミック屋で借りて読んだ夏。

いやだって・・・一冊600円くらいでしょ?全巻揃えると9000円くらいでしょ・・・?高いよ・・・。

 

そして一通り読んだんですけど・・・いやぁー、ばっちばちに面白いですね。

まず、警察官10年務めた漫画家なんですよ。

シンプルに滅茶苦茶勉強になる。

警察官って普段こういうことしてるんだ~。みたいな。

交番や警察って、道端でよく見ますけど何してるのか意外と全然わかんないじゃないですか。まさかドラマみたいに常に容疑者追いかけている訳じゃあるまいし。

それが全部わ・か・り・ま・す!(ワオ!!)

 

あと今回副題が「交番女子の逆襲」。

そう、この漫画自体がまさしく「秦三子先生の逆襲」みたいなもんで、女性警察官の不満に思うことや鬱憤あれこれギッシリ掲載されています。

女性警察官もまぁ普通に警察である前に「働く女性」であるわけで・・・。

例えば2巻の合コンのエピソード。公務員だから社内恋愛が多いのかな?と思いきやそういうわけでもないらしい。

例えば1巻の小学校で行われる交通安全講習。男性よりもやっぱり女性の方が(子供が)とっつきやすいらしく、色々仕事を押し付けられることにたする不満。みたいな。

今まで「警察官」ものはあっても、「女性警察官」の不満や愚痴って聞いたことないじゃないですか。

漫画という媒体使って、女性警察官のあれこれを国に告発する漫画それが「ハコヅメ」・・・。

 

あと面白いと思った部分は、犯人のあれこれですね。

大抵の漫画は「犯人を捕まえる」までが描かれることが多いんですが、

本書では「犯人を捕まえた」後が描かれています。

主に事情聴取。そら、相手は知らない人な上警察官な訳ですから、犯人は簡単には口を割らない訳ですよ。そこをどう割るのか。そしてそこには一体いかなる真実が・・・?といった具合。

なかなかこれが面白い。

「犯人=悪い人」では済まない様々な事情があったりして、思わずうっ・・・と涙腺にくる場面も。

「警察24時」とかいう番組が好きな人は、本書も絶対好きだと思います。

 

そしてギャグ。基本キレッキレ。

ただ公務員辞めてそのまま描いた漫画・・・、要するにほとんど下積みがないために、1巻は正直結構雑な部分が目立つ。一読しただけではギャグが分かりづらかったり、コマ割りがダメで(多分秦先生の苦手なところだと思う)場面の切り替わりが分かりづらかったりする。

ただ2巻になってくるとそういうところもどんどん減っていって、ギャグのキレがますます洗練されていきます。あ、これ3巻4巻、もっと面白くなるパターンじゃん・・・15巻まで出てるけど15巻まで読んだら一体どうなってしまうんだ・・・?

 

 

 

 

以下簡単に各話の感想と、勉強になった部分を書いていく。

ネタバレは差し支えない程度にする。

 

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1巻

「そもそも子どもが好きなんて優しくてまともな女が警察官になる訳ないじゃないですか」1巻表紙裏より

 

その1 アンボックス(箱から逃げる):新人女性警察官・河合は辞表を握りしめていた。

表紙裏の名言が出ているのもこの話です。草。

でも後半の、小学生の「どうしてルールは守らないといけないんですか」p.20という問いに対する答えがじん、ときました。

川合「昨日お巡りさんはある泥棒と話をしました。(中略)私はその人に”泥棒する町はどうあって決めるのですか?”と聞いてみました。とぉっても怖いお回りさんにたくさん怒られた泥棒さんはとても反省したので教えてくれました

泥棒が狙うのは子供が自転車の二人乗りしているのをよく見る町だと

ルール違反ができるってことは周りの人が注意しない町ってことだから泥棒みたいなな悪いことをしやすい環境なんだと(中略)

まだ小さなみなさんですがみなさんが守る一つ一つの小さなルールは確実にこの町を守っているんです」pp.22-24

名言じゃないですか?これ。

ルールを守らないかんのは何故?ってこれ大人でも抱く疑問だと思うんですよ。社会の維持のため、と頭ではわかっていてもいまひとつ神芯を喰って理解しきれていない部分がある。ましてやそれを子供に分かりやすく説明するなんて・・・無理では!?

それをこんなにもかみ砕いて説明しているのは・・・さすが作者元女性警察官!って思いましたね。それを言っているのが藤部長ではなく、辞表握りしめていた川合っていうのも良かった。一つの事件を通して成長したんだな・・・っていう。まぁまだ1話なんですけど。

あと序盤、川合がなぜ女性警察官になろうと思ったのかの理由も描かれています。いやぁ・・・僕からしてみれば高校卒業後就職してる人って本当皆凄いと思うよ。ましてや警察官なんて・・・。普通楽したいなら大学行かない・・・?って思うもん。専門学校ですらイヤだもん。2年しかないし。

 

その2 サンドバッグ:2話にしてまさかの川合父の登場だ!!!

藤部長「何があっても遺族は大切にしてもらえるよ」

川合「生きている職員は大切にしてもらえないんでしょうか」p.36

ハコヅメ読んで知ったんですけど警察官って休日出勤も当たり前業務時間外出勤も当たり前なんですね。ビックリした。そりゃ警察官やめるっていう人も出てくるわな・・・。でも遺族まで大切にしてくれる「福利厚生」があるとは知らなかった。

あと川合が何故公務員目指したか理由が描かれています。浅くていいですね。公務員目指す人の大抵の理由ってやっぱこういう浅いところにあるんじゃないですかね?

 

その3 ビギナーズラック:家出少女が出て来たぞ!!!

警察学校の教官「あんた達は性的内容の供述を聴取することが多い 聞き手の知識不足による支障が出ないように今から言うことを魂に刻みこめ エロ系用語をマスターしろ」p.52

警察学校で実施されっるエロ用語を覚える授業・・・今回の川合を見ると本当大事な授業だったようです。これ受けるためだけに警察学校入ってもいいな。まぁ僕には必要ないですが・・・。

でもカタカナや砕けた言葉ひとつひとつを漢字に直さないといけないらしく、大変だなあと思いました。大変だなあ。

ちなみに、この話の序盤で藤部長が、喫煙所ですぱすぱ吸っていた未成年達に電話番号を教えるシーンがあるのですが、ここが1巻で一番キレッキレで好きですね。草生えるわ。

 

その4 ポリス・ジャングル:刑事課の紅一点(男性恐怖症)牧高さんの登場だ!

藤部長「すみませんね 警察は指名制じゃないんでご希望には添えませんがちゃんと公平中立にお話をうかがいます」p.75

DV男「チェンジで」p.76

事情聴取って指名制じゃないんですね。確かに言われてみれば当たり前か。

あとやっぱり「刑事課なんてて他のお役所よりリーゼント率高いだけ ただの地方公務員なんだから」p.68 リーゼント多いんだ~。比較的強面に描かれているおっさんが多かったんですけど、やっぱ刑事課って男の巣窟なんですね。こわ。

あと川合が警察官目指した理由も浅かったですが、牧高さんも負けず劣らず浅くて良かったですね。

 

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その5 エース登場!:源刑事と山田がとうとうペアで出てきやがった!!

ばばあ「ダンナがくたばってから一人で生活してるとさ 人の為に作ってた料理も自分の為だけなら面倒でそのうち総菜をレジに通すのも面倒になってしまって」p.92

万引きに走るじじい・ばばあの心境が描かれています。結構心に来る・・・。寂しい、よりかは面倒くさいから来るんだなぁ・・・。

後半源刑事の敏腕によって解決するのですが、いやはや。孤独が人を犯罪にはしらせる。これ如何に。

ちなみにこの話15ページほどなんですが、源刑事が出てくるエピソード2つうまくぎゅっと詰め込まれているんですよ。15ページって感じが全然しない。32ページくらいだと思った。構成がめちゃくちゃ上手い一話だと思います。

 

その6 遺体は語る:おじいさんがおうちで亡くなった!!出むくぞ!!

藤部長「基本病院で亡くなった場合以外検死をしなくちゃいけないの 殺人とかの事件性がないか確認するためご遺体を見分させてもらうの 明らかな自殺や病死でも検死はしなくちゃいけないんだけど 特に最近は独居高齢者が自宅で亡くなるケースも多くて検死件数はかなりあるよ」p.106

事故物件とかの怖い話でやたらめったら警察出てくるな~とは思っていましたが、これでか!!なるほど。病院以外は警察介入不可避なんですね。初めて知った。

手を合わせたり排泄物を処理したり裸にしたり・・・一連の流れが描かれていて勉強になりました。

あと全然優しくない優太君が出てきます。なぜ彼がグレたのか?その要因と見える母親・・・が一話通して読むと全然違う風に見えるのも面白かったです。

 

その7 拝啓お犬様:警察犬登場だ!!

源部長「けいさつけんはすごい能力を持ってはいるけどその分超デリケートなの 大きな音だけで三半規管やられてフラフラになるしちょっとの臭気も捜索の邪魔になるし ともかくお犬様には絶対服従 課長くらいだと思って接しろ」p.122

警察犬ってそういう感じなんだ~ってなる一話。警察官優位だと思ってた。犬優位。

てかそもそも女性警察官って捜索に参加しないといけないんだ。大変だな。でもちょっと遠足ぽくって楽しそうなのは、本書がギャグ漫画だからなんでしょうね。

 

その8 ランナーズ・ハイ:マラソン開催!!

川合「信号機を私が動かすんですか?」p.140

ラソンでの警察というと白バイのイメージがありますが、あれは所謂「花形」で、他にも色々やってるんですね。それ自体初めて知った。初めて知ること、多すぎる。

そういった有象無象の仕事をサボろうとした川合が、道中で見つけた手配中の暴走族の男をひたすらに追いかけるランナーズ・ハイ」!!

ただでさえ初めての業務でどたばたしてるのに・・・大変だあ・・・。

でも一巻の冒頭で辞表を握りしめていた子が、最後の最後こうやって犯人を追いかける姿を見ると・・・ちょっと涙腺にくるものがありますね。

女性警察官として成長しつつあるんだなぁ・・・。

 

ちなみに本書で今はもう「婦人警官」は死語だと知りました。

 

 

 

 

 

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2巻

「カタギと知り合える貴重なチャンス 気合入れてくよ」表紙裏より

 

その9 深夜のパトロール:眠みマックスの川合が夜の学校全力疾走!!

川合「警察官が休めないような社会とクラウンパトの乗り心地の良さが悪いと思いません?」p.5

深夜のパト内で寝てしまった川合を藤部長が嗜めます。いやでも眠くならない訳がない。本当大変だぁ・・・僕は車乘るともうすぐ眠くなるのでちょっともう・・・。

そして絵にかいたような「おとり捜査」が見られる一話です。罰として「おとり」になる川合。大事件じゃなくてもおとり捜査って行われるんだーと思った。あと川合は1巻最後でも走ってましたが今回も走ってます。

漫画の女性キャラって走ると多少なりともエロスを感じるものなんですが、川合には一切感じないの、これ如何に。

 

その10 VS.チカン:山田目線の話だ!痴漢を取り調べるぞ!

山田「洗濯機うじ虫浮いてんですけどまた腐乱死体の検死の後の服いれましたね」

源部長「え?全部払ったと思ったのに」p.22

冒頭のこの会話好きですね。腐乱死体が警察官にとってグロでも何でもないただの日常の出来事であることがぬるっと描かれていて。

でもこの話のメインは痴漢捜査。特に勉強になったのは「再現」。

山田「犯行時の状況を明らかにするため当時の立ち位置やポーズを再現する捜査です」p.31

そんな捜査やるんだ!?しかも写真撮るんだ!?うかうか痴漢もしてらんねぇなあ!?になります。痴漢モノ見て興奮してしたくてしたくてたまらない時があるって人は是非この話読んだ方がいいです。萎えます。

 

その11 暴走ポリス:事件が起きた!!パトカー走らせろ!!

北条班長「捜査一係北条班入ります」p.38

刑事達がパトカーで犯罪者を追いかける時・・・必死&一生懸命。だから多少なりともまぁ起こりますよね。事故。って話。

時々パトカーが事故を起こしたってニュースになるけどその裏側が描かれます。こういう事情があったんだなぁ・・・いやでもダメだろ。

結構今まで、警察学校成績ビリだった源部長の「良い部分」しか描かれませんでしたが、ここでは徹底して「成績ビリだった部分」まぁいうなれば「悪い部分」が描かれています。面白い一話。

あとぬるっと、今まで出てきた刑事達が「北条班」ということも明らかになります。いやいやBLEACH「護挺十三隊」よろしくクールに登場しているけど、初登場シーンが説教されるシーンというのもどうなんだ・・・。リーゼントの北条班長、山田・源部長ペア、そして牧高・那須部長の5人だったんですね。なるほど。

 

その12 尾行選手権:藤ペアVS源ペアで薬物の売人アベック検挙対決!!

川合「張り込みなんであんパン持ってきたんですけど食べていいすか」

源部長「いいよ」p.62

尾行ってこうやるんだ~張り込みってこうやるんだ~になる一話ですが、まぁメインは藤部長・川合・源部長・山田のドタバタですよね。どったんばったん。特に上記の会話が好き。

山田がちょろまかしーで可愛いですね。お前そんなんでころっとやられて刑事やれんのかっていう・・・。

あとヌルっと山田と藤部長が元ペアだったことが明かされます。おいおい山田、お前まさかこの後藤部長に恋、しちゃうのか・・・?恋愛スクエア、期待していいのかこれ・・・?

 

その13 人たらし:つかまえたシャブの売人の女の調査を源部長と川合でやるぞ!

源部長「被疑者の生いたちや学歴・職歴これまでの半生を聞いてまとめたものを 身上調査というんだ 検事や裁判官に被疑者がどんな人物か知ってもらうためのものだよ」p.78

1巻でも描写されていた源部長の事情聴取の敏腕・・・パート2。しかも今回クスリが関わっていて前回よりグレードアップ。「人たらし」・・・源部長凄いですね。まさか最後の最後で鮮やかに自然になめらかに、言わせてしまうなんて。しかも最後また・・・泣かせるんですよね。

川合「女性被疑者のサラリと語る過去が壮絶なの毎回ビビる・・・・・」p.79

そして情にながされる川合をやんわりいなす藤部長も良い上司すぎる・・・。

 

その14 合コン狂騒曲:合コンに参加した藤ペア。まさかの隣で源ペアが同じく合コンやっているとはつゆ知らず・・・。

源部長「いやそっちも徹夜明けの非番でしょ なに寸暇を惜しんで合コン来てるの!?セミかよ!生き急ぐな!!」p.91

合コンでどったんばったんする4人が見られます。

男性警察官が看護師を狙う理由がさらりと書かれます。いやぁ・・・確かにそう考えると看護師って女性就くべき職業ナンバーワンだよなぁ・・・。生まれ変わったら幼少期からナースを目指して順当に育ちたい。途中でアニメとか漫画とかラノベとかそういうサブカルに毒されることなく順当に全うに生まれ変わりてぇ・・・。

あと女性警察官・・・休日もナチュラルにお仕事しててこりゃあ大変だぁ・・・。平日も深夜まで仕事してんのに・・・。川合は今回藤聖子部長という、ペアの相手に恵まれたけれども、これペアの相手クソだったら休日なしだとやってらんないでしょ・・・。

 

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その15 正義の暴走:敷根巡査登場!!うぜえ!!!

藤部長「こんな現場こそ女が必要なの 収拾がつかなくなったい威嚇合戦をお互いのメンツを潰さず手打ちにできる・・・きっかけとなる存在が」p.120

女性警察官が最も活躍できる場の一つを描いた話。折り合いがつかなくなった刑事VSヤクザの喧嘩をさらりと止める藤部長、格好いい。なるほどなぁ・・・と思った。なるほどなぁ・・・。女性警察官が活躍する場所ってまさしく1巻で描かれていたような小学校の講習くらいしか浮かばなかったから、どんどん藤部長には活躍して僕を翻弄してほしいですね。

あと敷根巡査。やる気にみちみちた背局的な優等生、ならではのうざさ。いやうぜ~。誌面ごしでもうぜえ。でもこういうキャラがいるということは、こういう人も実際いるということなんでしょうね。

川合「この荒ぶり方・・・制服に自我のっとられてるとしか思えないんですけど・・・」p.112

きっとコイツは、「親に幼少期からずっと言われてて」とか「新選組に憧れて」とかじゃない、ちゃんとした理由で警察官になったんだろうな。

あとおまけ漫画で町山警察署の若手警察官育成プログラムが描かれています。大抵の職場で源部長のような人がいないから、離職率ってどんどん上がるんじゃないですかね・・・?

 

その16 筋肉バカ:副署長は武道採用出身だ!

川合「私の動機の武道採用「どうせ配属機動隊っしょ」って勉強はほとんどしてなかったんですけどその・・・副署長とか・・・あの・・・偉くなる方もいらっしゃるんですね」p.128

上記の台詞とうとうと本人の前で言う川合ちゃん強すぎて草。

副署長のちょっと・・・いや、ちょー格好いい所が見られる話。武道経験者だからと言って、無理やり武道シーンを入れないのも好感が持てますね。

ぬるっと警察豆知識もぎっしり入っている回でした。昇任するには試験がいること、武道採用者どいう枠があること、けいさつがっこうでは毎日4キロ走らされること、そして女性警察官ならではの活躍。92へぇくらい。

あと今回のケースは徹底してムカつく女性犯罪者でしたが、容赦なく逮捕されるのもすかっとしました。でもああいうケースって実際あるんだろうな・・・大変すぎるぜ警察官。

 

その17 逮捕術:副所長のもとで道場で特訓!!

川合「お父ちゃん 警察官の大切な仕事のひとつに警察技科訓練というものがあります

市民や自分の身を守るために柔道・剣道や逮捕術の訓練を署の道場で週に一度行っています

執行力強化のため 訓練は毎回真剣そのものです」p.143

まず警察官が週に一度の頻度で道場で特訓しているという事実にビビるよね。知らなかった。まぁやりたくないよねゴネるよね。多分2巻のなかで一番コントやっている回でもある。

でも定年間近の警察官が20代にまじって訓練するのは・・・体力的にも厳しいだろうなぁ・・・。大変だ・・・。

藤部長「熊とゴリラのハーフなの」p.151

藤部長のジト目は素晴らしいと前々から思っておりましたが、ここのジト目が歴代最高峰のジト目ですね。ごちそうさまです。

 

 

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一番右は西野七瀬。分かる~。

 

 

以上である。

なかなか面白い漫画だった。勉強になるし笑える。

警察官目指す、興味がある中高生は是非読んでおくべきだと思う。

 

ちなみに実写ドラマ化、メインの4人のキャスティング・・・プロデューサーの作品愛が伝わりますね。藤部長の期の強い所は戸田恵梨香まんまだし、川合のぽんこつだけどがんばる!感は永野芽郁っぽいし、源部長の人たらしでイケメンだけどちょっとあほっぽい顔且つ若干のつり目は三浦翔平まんまだし、山田の目付きの悪さは山田裕貴っぽいわな。苗字も一緒だし。

一通り読んだらドラマも齧ってみようかなあ。

 

***

 

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紹介されてたBRUTUSの感想

 

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山白朝子『私の頭が正常であったなら』-それでも、僕は眠れない時があるんです。朝子先生。-

 

 

 

 

2か月延滞してる。(読むと辛くなるので)

 

 

 

 

山白朝子『私の頭が正常であったなら』(角川書店 2018年)の話をさせて下さい。

 

 

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【概要】

 

例えば、この世に生を受けずにそのままふっと消えてしまった子、とか。

例えば、当時は無力で助けることが出来なかった幼馴染、とか。

例えば、津波で失った妻と幼き息子、とか。

例えば、命、とか。

 

喪失感と哀しみと寂しさのはざまに揺れている。

 

これは8つの山白朝子の「失はれる物語」。

 

【読むべき人】

・失った経験がある人

・自殺を考えている人

 

【感想】

初めて、駅前の図書館に行った。

感動だった。読みたいと思っていた作家の本があれもこれもあれもこれもと並んでいて、且つそれが全部無料で読めるというのである。凄ぇ!!

いやいや、地元の図書館には何度もお世話になっているけれども、これまた違う図書館だと同じ市だけど、どっちも静岡市がうんせうんせやってる図書館だけれどもいや、やっぱ感動が凄い。

でも僕のことだからきっと借りるの億劫になるだろう。

2冊にとどめておこう。

18歳の僕なら上限いっぱいの10冊借りていたところであろうが28歳にもなると、己の性質をある程度理解している・・・つもりだった。

結論2か月延長している。

 

言い訳させてほしい。

ひとつひとつの物語がとても切なくて悲しくて、読むと心がきゅーっ!!!となるのでる。きゅーっ!!

・・・28歳とは思えない語彙力を発揮してしまったが、このきゅーっ!!!が辛くて一編一編読むのに時間がかかってしまった。

特に表題作の「私の頭が正常であったなら」はもう、悲しすぎて悲しすぎて、次の「おやすみなさい子供たち」を読むまでに1か月以上の期間を要した。

そして昨日無事、本書の最後に収録されている「おやすみなさい子どもたち」を読み終えることが出来、なんとかなんとか、返せそうである。へへっ。

 

でも、いくら心がきゅーっ!!ってなっても、この一冊を読んで良かった。心からそう思った。

出てくる登場人物達は、全員何かしらを失った人々である。

喪失感悲しさ寂しさ苦しみ。

そこから、一歩踏み出す瞬間を描いた作品集である。

彼等が失ったことに対して心がきゅーっ!!!となった訳だけれども、そこから一歩踏み出す彼らの姿に、じ、と僕は勇気を貰える。希望を貰える。

そしてその希望は、きゅーっ!!の分、実在していてしなやかで強い

失っても喪っても僕達は生きていて、明日は無慈悲にやって来る。

救済なんて甘ったるいものは無くて、ないから僕達は明日をこの身一つで歩いていかなければならない。

「・・・痛いよ」

読んだ者の心が、一つ、強くなる。短編集。

 

 

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以下簡単に感想を書いていく。

あらすじは書かず、冒頭の一文だけ記しておく。おつい・・・山白朝子先生は書き始めが非常に優れている作家だと思うので。

一番好きな作品は「子どもを沈める」

 

 

「世界でいちばん、みじかい小説」

中央線沿線のマンションで家内と二人暮らしをしているのだが、先日から三人目の人影を部屋で見かけるようになった。p.6

夫婦と、夫婦の家にいる幽霊の話である。何故いきなり家に幽霊が現れるようになったのか。その謎を自分自身で解いていくことで、ほんの少し癒えた彼女の心の傷。ある種の幽霊ミステリ。

この物語は・・・彼女、妻にあたる千冬が、めっちゃくちゃ良い。風貌はライトノベルチックなのに対して、心の底では純文学に出てくるような深い悲しみが常に流れて続けている。

ぽつ、ぽつと置かれるように発せられる言葉は、主人公と僕達読者に謎解きのヒントを与える。そしてその響きは寂しい。たまらなく寂しい。

筑前煮の筍を食べながら)

千冬「り系かどうかは関係ない。見えてしまったものを否定は出来ないから。うん、おいしい」p.8

多分、おいしいってことを確認しないと、おいしくないんだろうなって思う。おいしいってことを確認しないと常に、考えてしまうんだろうなって思う。それくらい彼女の心にはいまだにとうとうと流れている、哀しみ。寂しさ。朴訥とした口調からは、感情が分かりづらくても、とうとうと、とうとうと・・・。

僕も、そうだ。

否、そうだった。

母親が肺癌を患ってから、「母親が死んだらどうしよう」と常に考えてしまう日々が始まった。

今でこそ、心療内科で貰った薬でそのことを、忘却する時間が多くなった、とはいえど、ふとした瞬間に思うだけで涙腺が緩んでしまう。

職場では、目の前のことに集中できるようになった。レジのお札を数える時。商品の品出しをする時。お客さんの眼を見て話す時。

でも、家だと、それが例えば日付変更線をまたぐ深夜とかだと、えんえんとシーツを濡らしちゃう。Tシャツでも拭っちゃう。

例えば昨日からの、脳に転移したがんの治療のための2泊3日の入院が決まった、ってだけでも僕の心はどこかで大きくダメージ受けてる。

そういう姿を見られたくなくて、特に母親に見られたくなくて、ひとり暮らしをしたというのもあるのだけれど。

・・・それがいつ来るかは分からないが、まだ起きていない喪失に対して悲しんで涙を流すのは馬鹿らしいことだというのは分かっている。

でも僕は、

「・・・痛いよ」

泣き虫で、脆いから。

 

 

「首なし鶏、夜をゆく」

父方の祖母の家は山裾の村にあり、周囲に広大な畑と雑木林があるだけの何もない田舎だった。p.44

雰囲気は、僕だけがいない街とか「砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない」とか。

子どもであるが故の無力で救えない話はもうどうしようもなくて、読んでいて独特のやるせなさがある。子供時代を経験したことのない人は実在しなくて、読者全員身に覚えがあって共感もしやすい。から、創作の格好の題材にもなるんだろうけれど。

大人たちは僕の言い分を聞いてくれなかった。顔をしかめ、気味のわるいものを見るように僕を見た。

僕「おばさんはひどいやつなんだ。ずっと楓子をいじめていたんだ。(略)」p.62

でも、首無しの鶏はそんなこと一切考えることはなく、歩き続けることが出来るんだろうな。夜を。

だって、首が、ないんだから。

風子「でも、これだけはうばえないものだよ。私のなかに生まれた、この感情だけは、おばさんにも絶対に取りあげられないものなんだ」p.62

首無しの鶏はそういった感情を一切抱くことはなく、歩き続けることが出来るんだろうな。夜を。

だって、首が、ないんだから。

・・・ちなみに、僕は酉年だ。僕のこの常に絶え間なく流れ続ける憂鬱を断ち切るためには、誰かが討つしかないのだろう。僕の、首を。

 

 

「酩酊SF」

私はいつもホラー小説を書いているが、たまにSF小説も執筆する。特に時間SFと呼ばれるタイプの作品を作るのが好きだ。p.6

夏への扉」よろしく時間SFに、酒が絡んだSFである。

ところがどっこい・・・僕はあんまり頭がよくなくて、時間SFの傑作ともいわれる夏への扉も挫折してしまった過去を持つ。タイムマシンが絡むとどうも話が難しくなって、理解できぬままに物語は進む。大抵こういう話の根幹はタイムマシンの設計が関わっているので、クライマックスで無事詰む仕様となっている。

ギリギリ理解できた。短編なだけあって。

でも「???」「?????」だけが僕の中に残った。

こんな僕でも、時をかける少女は面白かったから、やっぱり筒井康隆って凄いんだな~って思う。

 

 

「布団の中の宇宙」

小説家という人種は、オカルトめいた出来事に遭遇する割合が多い。p.92

書くことが出来なくなってしまった売れない作家の話である。

失ったもの・・・は恐らく「書くこと」「創作意欲」「現実へ立ち向かう気力」といったところだろうか。この作品だけそこがハッキリしないため、他作品から浮いた印象を受ける。

布団の中に宇宙が広がる。先程筒井康隆の名前を挙げたけれども、この作品だけ筒井康隆SF臭が漂っている。主人公、とその話を聞いた作家達が男性と言うのもあって、この作品だけ山白朝子感が薄かったように思う。おつ・・・違う名義で、発表した方が良かったのかもしれない。

ちなみに、この話はネタバレちょっとしちゃうと、布団の中から女が出てくる。呪怨」のあのシーンが貼られる度に「美人」「すこ」とか言ってる奴は全員これ読んで引きずり込まれればいいと思うよ。

 

 

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「子どもを沈める」

私の高校時代のクラスメイトが赤ん坊を殺した。

すこしたってまた別の友人が赤ん坊を殺し、さらにまた別の友人が自分の子を殺害した。p.116

書き出しが物騒。からの、典型的「死んだいじめられっ子が大人になったいじめっ子に復讐する」ホラー展開が始まるかと思いきや、主人公の決断がもたらした、結末の救済に涙が止まらなかった。何回も泣いた。

ネタバらしををすると、死んだいじめられっ子がいじめっ子達の娘として転生してくるという話である。それに耐えられなくなったクラスメイト達、主人公と同じグループの女達は、赤ん坊を殺すのである。

そしてとうとう主人公も子を宿して生むのだが・・・といった具合。普通のホラーならローズマリーの赤ちゃんよろしく、生まれる直前まで、もしくは生まれた直後までを描くと思う。でもこの話はホラーじゃないから、子供は生まれ、育っていく。

その間の主人公の葛藤が生々しく描かれている。息苦しい。純文学に近い。特に同じ妊娠ものといっても、ある種小川洋子「妊娠カレンダー」に近いのかもしれない。この話は明確なオカルト絡んでいるけれども。

だから後半の、主人公が答えを見つけて、心が解れていく過程は読んでいてカタルシスがあって、「良かった・・・」という気持ちと、これから愛が交わされる一般的に言う「母娘」になっていく彼女達に想いを馳せずにいられなくなる。恐らく主人公はこれからも葛藤を続けていくだろう。けれど、愛が勝つだろう。

かつていじめた子の転生である娘を、恐怖の対象ではなく愛情を注ぐ対象としてみる。

その主人公が変わるきっかけが、思春期に仲が悪かった主人公の母親との電話、と、あと(転生した)主人公の娘の一言と言うのも良かった。

母「あんたは子供を殺したらいけないよ」(中略)

母「私はだめなお母さんだったけど、あんたにむかって暴力をふるったことはないでしょう?」p.137

ビールを飲みながら、主人公の母親はダメ押しをする。荒んだ生活を送って母親らしきことが何一つ出来なくても彼女の中で絶対にこれだけはというラインがあるのが、人間らしくて生々しくてとても良い。

母「あんたに似なくてよかったじゃない。つまり、私に似てないってことだから」p.137

そしてそのダメ押しパワーを強める冗句。主人公も中盤から酒に溺れるようになるが、結局はこの二人も母娘なんだなぁと思う。いやまぁ母娘なんですけど。

娘「きてくれてありがとう」p.139

そして終盤ラスト2ページの、娘が主人公に対して発した台詞。酒に溺れる母親に怯えているが、それでも母親として接してくれる娘の尊さに、本来得るべきであった母性を主人公は取り戻したのだろう。

どんな母親でも、この愛を断ち切ることは出来ない。

二人のこの二つの言葉があったこそ、主人公は最後の衝撃の行動に移ることが出来たのだろうし、そして今まで踏み切れなかった母性に沿って生きていくことを誓ったんだと思う。

もうよく分からなくなってきたけれども、とにかくめちゃくちゃ好き。超好きな短編。

多分、だけど、いつか僕が母親になった時この短編を読むと、またきっと違った感想が浮かんでくるのだろう。

 

 

「トランシーバー」

二〇一〇年、会社帰りに通りかかったおもちゃ屋の店先で、ワゴンにトランシーバーが売れ残っていた。p.142

311の震災で、生き残った男の一生を描いた話である。

息子と妻を津波で亡くす(正確には行方不明)。しかし、彼の人生は続いていく。その先を描いた物語。

俺はまだ生きている。生きている側の人間なのだから。p.163

終盤とあるトラブルが起きて、主人公は自分の人生を生きることに対して前を向くことを決心する。3月11日を振り返るばかりでなく、その先をも見据える決心をする。

再生の物語なんだな、と思う。

そして最後の最後は、微笑ましい。

皆、幸せであれ。

生きる者も、死せる者も。

 

 

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「私の頭が正常であったなら」

夫は社交的で友人もたくさんいた。先輩からも後輩からも慕われ、みんなと明るくお酒を飲むのが好きだった。p.168

しかし娘を授かると、夫との間に軋轢が生じ離婚。数か月後、面会しに娘を連れて行くが、夫は、突然娘の手を繋いで連れ出す。そして主人公の前で・・・。元夫が歩く先の道路には車が行きかっている。

このシーンが劇的に辛くて、もうめちゃくちゃだった。行を読むごとにこれから起こる悲劇の予感がして、でも読まないと読み切れないから読むしかなくてそして結局起きた悲劇にもう文字越しに涙。主人公の気持ちを思うといたたまれない。

読者の僕ですらこうなのである。当然主人公はそれから精神を病み、幻聴などにも悩まされるようになる。

しかしある時、日課となっている散歩中、女の子の助けを求める声を聞いて・・・と言った具合。

でもそれは、幻聴かもしれない。幻聴だったほうがいい。だってその声は、助けを求めているのだから。「私の頭が正常であったなら」、悲劇だ。主人公の娘のように辛い目に合っている少女が実在しているということだから。

過去は変えられない。しかし、過去との向き合い方は変えることが出来る。

最終的に、完全、とは言えないが、主人公の心は少しずつ癒えていくところで終わる。過去の自分を克服することで、主人公は少し前を向くことが出来た。

凄まじい話だったな・・・と思う。同時に人間は常に変わり続けることで、その自分自身を救済することが出来るのだなぁと思った。

でも変わるのは怖い。

それは自分の醜い部分に真向に対峙して、今までとは違う行動をするということだから。

総てが未知。

変わるのは怖い。

けれどそこを打破した先に、人生は、拓けるのだろうか。

 

 

「おやすみなさい子どもたち」

私は一人っ子だ。体が弱く、いつも本ばかり読んでいるような子だった。p.204

身近な人を失った話が多い中で、最後は失うを「される」側の話である。要するに死んだ少女が主人公。

そして天使と死後の世界を巡る。ダンテの「神曲」を思い出す。読んだことないけど。

主人公の少女は終始勇気があって、優しく、素晴らしい女の子に描かれている。

だから多分この話は、主人公の傷が癒える物語ではなく、読者の傷が癒える物語なのではないかと思う。山白朝子先生から読者へ向けた物語。

身近な人、その身近さに距離が多少差異あれど、亡くして失った人と言うのは決して少なくないと思う。人によっては立ち直れなかったりとか。あと自分の死後を思いつめて怖くなっちゃたりであるとか。

そういう人達全員に向けて、紡がれた物語なのだと思う。

だから多分この「子どもたち」というのは物語に出てくる子供達だけでなく、僕達読者生者全員のことを言っているのではないか。

 

 

 

 

 

おやすみなさい、子どもたち。

おやすみなさい、人間。

おやすみなさい、やすらかに。p.246

 

 

 

 

 

 

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以上である。

結構一話一話心にクるものがあったが概ね楽しく読めた。あとやっぱ「子どもを沈める」、これが読めただけでも本書を借りた価値はあった。

おつい・・・山白朝子の小説は、怖いだけじゃなく優しくて、優しいだけじゃなく冷たくて、冷たいだけじゃなくて灯。

彼女の作品で読んだのはデビュー作である「死者のための音楽」に続き2冊目であるが、また別の作品も読んで行きたいと思う。

 

***

 

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これは実家近くの図書館で借りた。10冊借りたのに2週間で無事返せた。ニートだったので・・・。

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齋藤陽道『声めぐり』-君と直接会って話したい。-

 

 

 

 

聞こえなくても聞こえるよ。

声。

 

 

 

 

声帯震わせて喉から出るものだけが声とは思うなよ。

その言葉を発しているときのお前の眼差し、口元、えくぼ、肩、手、足・・・表情、全身が声なんだ。

 

 

齋藤陽道『声めぐり』(晶文社 2018年)の話をさせて下さい。

 

 

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【あらすじ】

手話は声だ。

プロレスの各党も声だ。

だれかとの抱擁も声だ。

まなざしも写真も声だ。

 

聾する身体をもつ写真家が、声と世界を取り戻すまでの珠玉のエッセイ

 

帯より

 

生まれつき耳が聞こえなかった作者は幼い時から発音教室に通い、普通学級で過ごしてきた。それは、息詰まる苦しい日々であった。

しかし高校時代から聾学校に通い始めた筆者は・・・。

前半はこれまでの半生を振り返る。

 

現在作者は、障害者プロレス団体に所属し、結婚し子供も授かった。

後半は近年の写真にまつわるエピソード群。

 

音声やことばでしか意思のやり取りが敵わないとしたら、あまりにも孤独すぎる

「皮膚の記憶」よりp.268

 

【読むべき人】

・聴覚に障害をもつ方

・聴覚に障害をもつ方の家族

・写真が好きな人

・コミュニケーションという言葉に突っかかりを感じる人

・手話に関心がある人

 

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いい帯だ。

 

【感想】

「POPEYE」の読書特集が発端だった。

そこでは「POPEYE的読書のススメ」よろしく、約20冊紹介されているコーナーがあった。著名人の誰かが選んだ、のではなく編集部が選んだ(であろう)、というところがなかなか珍しくどれどれどれどれと興味深く読んだ。

そのなかで気になる本は数冊あり、その中の一つが本書と同時刊行された「異なり記念日」である。

聞こえない夫婦間に聞こえる子供が誕生した。

日々のレポートというからへぇ、と思った。どのようにコミュニケーションをとるのだろう。育児で最も苦労するのは何だろう。どのような子供が育つのだろう。「聞こえない」親は「聞こえる」子供にどのように育ってほしいと願うものなんだろう。

全く予想がつかない。

という訳で、脳内の「いつか読んでみたい本」に追加されていた訳であるが・・・。

「おお!!??」

この度、なんと、静岡の超絶古本屋「水曜文庫」の野外の100円コーナーに、「異なり記念日」こそ見つけられなかったけれども、同時に刊行された状態もよい本書を発見したのである。これは買わなくてはなるまい。これは読まなくてはなるまい。ほくほく。と速攻入手、積み(数か月)、のお決まりの流れを経て読了した次第である。

いやぁ・・・にしてもなんで100円コーナーに並べたんだろ。店主の趣味に合わなかったのか何なのか・・・水曜文庫の野外コーナーこういうことあるから侮れない。

 

 

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結論結構面白かった。

というのもまぁ正直僕が今まで聴覚障害に関すること一切勉強してこなかった・・・というもあるのだけれど、結構読んでいて初めて知ったことが多かった。

 

例えば、差別。

21世紀になってなお「つんぼ」を口にすることに躊躇い無い人がいるということ自体にもドン引きしたが、それをわざわざ、こいつがしっかりわかるように罵りたい「悪意のことば」よりp.102と、一つ一つ口を大きく開けて発音する人がいるのは衝撃だった。

そうだ。

確かに、所謂「差別行為」をする人々は、「被」差別者にそれが絶対に分かるように絶対に伝わるように差別していることが多いかもしれない。

昔、白人が黒人を奴隷船に詰め込んだように。

クレーマーがレジの店員に対してタメ口をきくように。

いじめっ子がいじめられっ子を露骨に無視するように。

そのことに気づいて、はっとした。

 

例えば、手話。

「聴覚障碍者のコミュニケーション手段」に、僕の理解はとどまっていた。

手話が自分の気持ちと深くむすびついたものとして話せるようになるにつれて、素朴にありふれた「声」が言えるようになってくる。「声」を出すと、相手からも「声」が返ってくる。なんの曖昧さもなく、明確に伝わってくるものとして、その「声」は目に聴こえる。「夕日の原風景」よりp.22

手話は声だ。帯より

ああ、そうか。

手話は「声」なのだ。

手を動かすことで彼等は話しているのだ。

僕達と同じように。

僕が今まで思っていた「聴覚障碍者のコミュニケーション手段」・・・それはどちらかというと、イメージとしては信号に近いものだった。

お辞儀をしたら敬意を表す。

握手を求めたら合意を表す。

身体表現による信号の延長線として捉えていた。

でも違う。

手話は、「声」。

もっと生々しいものなんだと思った。

 

例えば、筆談の限界。

周りは音声で話をしている。何を話しているのか知りたいと思って、勇気を出して通訳や筆談をお願いする。そうしてありがたいことに何を話題にしていたのか書いてもらったりする。たいていそれらのことばは、短く研ぎ澄まされていて無駄がない。確かに、それで要件や内容の伝達は十分にことたりる。そう思う。そこに不満はない。

でもあれだけ楽しそうに、または深刻そうに、長々と話をしていたのに「たったこれだけなの?」と腑に落ちない。

コミュニケーションは、意味がある言葉だけで成り立っているのではなかった。「悪意のことば」よりp.108

僕はこれまで手話を覚えたい、と思ったことはこれまでほとんどなかった。身近に耳に障害を持つ人がいなかったというのもあるが、「同じ日本人なんだから、筆談で十分伝わるだろう」と思っていたからである。

だからこの部分を読んだ時、ハッとした。そうだ、確かに言葉だけでは伝わらない部分はたくさんある。無意識に僕達は視線表情身振り手ぶり声の強弱高低温度諸々合わせて、会話している。それら総てがたった数秒で書いた文字で、全て伝わる訳ない。

手話を勉強したい、の気持ちが腑に落ちた瞬間である。

ある種メールやラインとも似ているなと感じた。

「はい」。「うんうん」。「そうなんだね」。「またね」。「分かる」。「大変ですね」。

相手はどういう気持ちなんだろうか。分からない。何。悩んだ瞬間は数えきれない。

筆談によるコミュニケーションは、彼等に、あれよりさらに強い隔絶感を、与えているんだろう。

 

筆者は、撮影の際被写体となる人物の身体に触れるのだという。

「音声「だけ」を発しているときよりも触れるという行ないによって、ぼくらの語り掛けがぐんと実りあるものとして息づきはじめる。「皮膚の記憶」よりp.268

あの隔絶感を知ってるから。だからこそ触れることで、相手の「声」を受け止めようとする。全身でなるべく。細部まで。正確に。

「ペラペラと闊達に会話をしながら撮影するとような撮り方に憧れたこともあった」「皮膚の記憶」よりp.271とあるが、恐らくその「闊達な会話」こそが、筆者にとっては「触れる」ことなのだと思う。闊達な会話も身体に触れる行為も、被写体への接近という目的において方法が違うだけ・・・なのだと思う。

 

 

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その他にも、面白いエピソードはたくさんあった。

 

声。

「からだの声」

ダウン症の方の声は、からだを使う。例えば指で刻むリズム、等。そして自然と彼等の声は、相手にほの明るいものをもたらす。pp.178-182

「まなざしの声」

いぬのまなざしには、ことばでもなく、メッセージともいえない、何かが起こる前触れとしての声が乗せられていた。p.189

「声が咲く」

ドッグレッグス所属の女性レスラー霊子さんの指文字がひとつひとつ、花開くことについて。

「音楽の此岸から」

Mr.Childrenのライブを撮影するにあたり、筆者はもどかしい思いをする。

あんなに遠くにいて、あんなにちっぽけにしか見えない四人なのに、これほど大勢の人人間の共鳴を呼ぶ。それっていったい・・・・・・、どういうことなんだろう。p.202

耳に障害を持つ筆者だからこそ、歌の持つ力に対して純粋に考える。

 

 

 

声とは何だ。何なんだ。

声は耳だけで聴くものではない。声は全身で聴くものである。身振り手振り含めて総じて「声」とするならば、僕のこの喉から出ている音は何だ。声でなければ何なんだ。

 

 

 

近いうち、「KOE」という言葉の意味は変わる。もしくは、分離する。というか分離してほしい。

喉の声帯震わせるものは「声」。声だけでなく身振り手振り含めて相手に伝えるものは「こえ」。

喉の声帯震わせるものは「人音」(じんおん)。声だけでなく身振り手振り以下略は「声」。

といった具合に。

そうしないと僕が混乱する。

でもその混乱の先に、

より多くの人と対話が出来る社会への進化があるのならば・・・。

 

 

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いい帯だ。そのに。

 

聴こえないというバイアスなしに、自由自在に発言が出て、その評価がダイレクトに伝わってくることがうれしくて、毎日なにかしらの文章を書いてはネットで発信していた。ネットで滑らかに話せることに酔っていた。

けれどもネットで発する言葉は、大多数に域にいられたいがために、計算ずくでジャンが得たウケ狙いのことばだった。

けれども、そんないやらしいことばほど、ネット上ではいとも簡単に伝播していく。「すくわれる秘境の声」pp.237-238

 

ひょえっ・・ここまで言われちゃあ僕ブログ閉鎖しちゃうしかないよお・・・でもしないよお・・・。

このブログは主に「僕が忘れないために」を第一に書いてきてはいるが、それは決して忘れないようにしようと思う。まぁ多少見栄え良い言葉が並ぶことがあっても、そこはまぁうん、必要最低限の飾り立て、ということで甘く見てほしい。

過剰に飾り立てないようには常に注意しておきたい。

 

 

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以上である。

なかなか結構、うんまあ、面白い一冊だった。

ただまぁ仕方ないことではあるが、文筆業を生業としている方ではないため、おもしろさ重視で読むとちょっと退屈になるかもしれない。ヌルっと300ページ近くあるし。

ただ「コミュニケーション」「手話」「声」「耳が聞こえないこと」これらに関して少しでも関心があるのであれば、絶対おススメできる一冊。

 

 

「異なり記念日」も・・・まぁ積読激しい今では厳しいですが、いつか縁があったら買おうかしら。

 

 

***

 

LINKS

 

「異なり記念日」が紹介されていたPOPEYE

 もう1年前かぁ~。

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角田光代『平凡』-「もし」なんていうのは、超リアルな御伽噺にすぎない。-

 

 

 

人生は分岐する。

人生は一つしかない。

 

 

 

角田光代『平凡』(新潮社 2019年)の話をさせて下さい。

 

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【あらすじ】

妻に離婚を切り出され取り乱す夫と、その心に甦る幼い日の記憶(「月が笑う」)。

人気料理研究家になったかkつての親友・春花が、訪れた火災現場後で主婦の紀美子にした意外な頼みごと(「平凡」)。

飼い猫探しに新味に付き合うおばさんが、庭子に語った息子とおにぎりの話(「どこかべつのところで」)。

人生のわかれ道をゆき過ぎてなお、選ばなかった「もし」に心揺れる人々を見つめる六つの物語。

裏表紙より

 

【読むべき人】

・30代後半~40代:主人公がその周辺の年齢の人が多いから

・自分が選ばなかった「もし」を考えてしまう人

・人生に閉塞感を感じている人

 

【感想】

沼津の古本屋「ハニカム堂」で買った。

100円コーナーに「お、角田光代ちゃんいるじゃん」と思ったのと、裏表紙の選ばなかった「もし」についつられて買ってしまった。

新潮文庫×角田光代だと、失恋連作短編小説「くまちゃん」しか読んだことないなああれには救われたなあと思い何気なく手にした一冊だったが、今回も深く僕の心に沈む一冊になった。

 

今回の小説の主人公は、30代~40代の男女である。未婚や結婚離婚等が絡んでおり、僕より全然人生経験値が高い。

そんな彼らがふとしてきっかけで、「もしあの時・・・」違う選択肢をとった自分に思いを馳せた瞬間を描いた短編集である。

人生経験値は彼等より浅いが僕にもその瞬間は山ほどあって、それに翻弄されて泣いたり苦しんだりしたこともあったから、こういう気持ちに一体どうやってけりをつけるのか。

「もし」にどうやってけりをつけるのか。

そのヒントをこの小説に求めた。

「平凡」。

それは、誰もが抱く感情であると肯定するかのような題名。

ヒントは6つ提示された。

 

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以下簡単に、各短編の感想を書いていく。

ネタバレもする。

一番気に入ったのは「こともなし」

 

「もうひとつ」

結局旅行は四人で行くことになった。私、正俊、野村こずえと福田栄一郎とで、ギリシャアテネサントリーニ島六泊八日の旅。p.9

途中から明らかになるが、夫婦と、その夫婦旅行についてきたW不倫アベックの話である。不倫って結構のふつーの話なのだろうか。27歳の僕のリアルでは未だに訊いたことがない。童貞(メス)だから、そもそも起きてても耳に入ってこないだけなのかもしれない。

かーなしー・・・。

閑話休題

この話で出てくる「もし」は、無論W不倫アベックの「もし2人が未婚のまま出会ってそのまま結婚していたら」である。もしくは「もし互いの離婚が順調にすんで2人添い遂げることが出来たら」である。2人は主人公夫婦に懇願しウエディングフォトの撮影や、指輪交換など結婚式もどきのことに付き合ってくれるよう懇願する。

ところがどっこい、このW不倫アベック・2人はことあるごとに喧嘩をする。何故この2人を連れてくることを了承したのか。主人公夫婦の間もなかなか気まずくなる。旅行は結論「楽しい旅行」というよりは「大変な旅行」という結果に終わる。

「もう一つの人生なんかないよ。(中略)きっとそんなものはないよ。自分の人生らしきものから、いかなる意味でも私たちは出ることはできないよ。だからそのおもちゃみたいな指輪は、もうひとつの人生を信じさせてなんかくれない。旅から帰って、きっと別の指にはめなおすであろうその指輪を見て思い出すのは、もうひとつの人生ではなくて、この騒々しくてみっともない旅だけであろう.。

私たちにあるのは、今、とそれ以外、だけだ。

私と正俊がいっしょにいなかったとして、という仮定は、もし私が犬に生まれていたら、という仮定と、なんら変わらないにちがいない」pp.49-50

旅行の終盤、指輪を交換する2人緒後姿を見て、主人公・二三子は思うのである。

おっとぉ、と思った。

おっとぉ。

「もし」のヒントを求めているのにもう初っ端から「もし」にケリをつけている主人公が出てくるとは思わなかったぜ。

確かに、「もしああしてれば」「もしこうしてたら」というのはもうありえないことであって、「もし犬に生まれていたら」「もし猫に生まれていたら」と同じこと。僕にあるのは、まさしく今、とその数々の選択をしてきた過去と、そしてまた数々の選択をしていくであろう未来だけ。

「もし」なんてものはありえない。

初っ端からばしばしぃっ!!!って雷に打たれたような気分になった。いやうすうす気づいていたよ。けれども「犬に生まれていたら、という仮定と、なんら変わりはない」とまで強く断言されると、その認めたくない事実を否が応にも認めざるを得なくなる。

「もし」なんてものは、一切合切ありえないものなのだ。

初っ端にすでに「もし」にハッキリけりをつけてる主人公の短編が、初っ端に来ている本書を読んで、思い出したのはこの言葉。

【結論を先に話しましょう】

塾講師で内定出て、在学中にウケた研修で死ぬほど聞いた言葉である。相手に物事を伝える時は結論から先に伝えなければならない。

二三子(、もしくは角田光代)「もし、なんてものはありません」

でもまぁ、「もし」に翻弄される人、けりをつけられない人が大半なので5つも短編がのちに続くわけですが・・・。

ちなみにこの短編、僕は読んでいて非常にいらいらした。総てを達観した二三子に対して、「もし」に翻弄されまくるこずえがわがままだから。夫婦旅行についてく、ってだけでもかなりのわがままなのにその後二三子夫妻を遠慮なくぎいぎい振り回す様はもう見ていて正直ストレスだった。最後、

「約束ね」と、こずえの言葉を繰り返した。こずえの服は、白い街並みに同化するように光を放っている。p.52

とちょっといい風に締めていても、いやいや、僕は許さない。顔につられて結婚。30超えてもすぐ泣く。W不倫得緒ずるずる引きずる。

いやぁ、結構ストレスフルだったね。主人公が大人びているのに対して少女めいて描かれている節もあるけれど、なかなかストレスフルだった。

そもそもなんだ。大学時代イケメンだからって結婚したのが馬鹿なんじゃないのか。しかもW不倫ってなんだ。自分のダメ旦那にはともかく相手の奥さんに悪いと思わないのか。しかも夫婦旅行についてくなんてどういう神経しているんだこの腐れビッチしねしねしねしねしね。

ので、正直僕はこの短編は、6つの中でワーストです。

二三子が赦しても、僕が赦さない。

 

「月が笑う」

泰春はある日突然、妻の冬美から離婚を切り出される。加えて、心乱れたまま迎えた年末年始休みに、自身の母親が訪れると言い出して・・・?

一番難解な短編であると思う。もしくは、僕が27歳。泰春は30後半。僕は童貞(メス)未婚。泰春はレス既婚。僕がメス。泰春はオス。違う部分があまりにも多いからかもしれない。

この話で出てくる「もし」は、恐らく「もし(浮気・妊娠によって)離婚を切り出した妻を許せたら」

その際に泰春は、幼少期事故にあった体験を思い出すのである。

あのねボク、ボクに痛い思いをさせた人を、許す?許さない?

(中略)

許す。

(中略)

でも、だれかを許さないと決めるのはひどく恐ろしかった。そのだれかもまた、ずっと許されないことになる。そんな重苦しいものを背負って自分もだれかも生きていくことになる。そんなのはいやだ p.90

許す、という行為は、相手は勿論自分自身も救う行為である。ということなのだろう。

確かに僕も数々の人生いろんな人を自分の中で許してきた。いじめてきた先輩達、パワハラをしてきた上司達、犬猿の仲だった友達等々。

でもその「許し」は、ほとんど「諦め」に近い形だ。これ以上憎んでいても仕方ないから許してあげよう。これ以上恨んでも自身のストレス過多になるから許してあげよう。多分僕の、心の脳味噌の本能が、折れた形で、そういう経緯になったと思うのだ。

僕にとって、「許す」は「諦め」だ。

だから、泰春の「だれかを許さないと決めるのは酷く恐ろしかった」から続く部分には正直共感は出来ない。そこまで怒りに対して冷静に考えて、他人を許すことは僕にはできない。

・・・正直、未だに「諦め」られない人が複数人いる。例えば、中学時代いじめてきた先輩たちの中の一人の石橋先輩。例えば昔から理不尽暴虐を尽くしてきた肉親・妹。現在の職場にいる面倒なお局。そういった人達にはことあるごとに「不幸になればいいのに」と思うようにしているし、もしくは極力距離を置くようにしている。

結局泰春は、冬美を許すことになる。けれど僕がもし泰春だったら・・・許せない。死産を願うだろうし挙句の離婚露頭の果てに迷った末のホームレス孤独死くらいまで恨むと思う。

僕は案外器が小さいのかもしれない。

よく「まぐろどんって優しいね」て言われるけどそれは違う。諦めやすいだけ、にすぎないよ。

 

 

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「こともなし」

「ピヨの今日も天下太平」のブログを書く聡子は夫・伸一と7歳になる娘・悠菜と3人で暮らす主婦である。

聡子は所謂「主婦ブロガー」である。家で作った凝った食事の写真を載せ、詳しいグルメを載せる。その際に起きたエピソードも併せて掲載。趣味は料理と裁縫。仕事も本当はファミレスのパートだが詐称して、趣味が高じて仕事となった洋裁関連、ということにしている。人気は上々。幸せいっぱい。順風満帆。

しかし聡子は伸一と順調な恋愛結婚をした訳ではない。望んだ妊娠で子供を授かった訳では無い。長く付き合っていた男・旭に振られてその後たまたま出会った伸一と身体を重ね、その際にできたのが悠菜という訳である。

だからといって、伸一に気に入らないところがある訳でもなく、悠菜も愛おしい。母性も感じる。

でも時々、日常の中でちょっとしたうまくいかないことがあると聡子は旭が不幸になれ、と思う。しかもそれは年々強くなる。独身であればいい。リストラになっていればいい。借金まみれになっていればいい・・・。

この話の「もし」は、「もし、旭と別れなかったら」

まるみ「ブログってさ、そいつらに読ませたくて書いてるわけだ?」p.125

中盤の聡子の親友の台詞である。旭に対して今自分が幸せであるというアピールをすることにより、旭自身の不遇であろう(あってほしい)境遇をより際立たせ、不幸を感じてほしい。後悔をしてほしい。悔しい思いをしてほしい。ざまあみろ。そのために書いているのではないか?

聡子「やだ、何その思考回路。黒すぎる。暗すぎる」p.126

聡子は否定するが、思い当たらないこともなかった。けれど、違う。今の生活をキラキラ二点こもった主婦ブログを書くのは彼等に読ませるためではない。

では何故か。

何故「今日も天下大平」なブログを書くのか。

後半島谷玲香の職場に突然訪れたり、年下のパート仲間の恋愛相談を経たり紆余曲折を経てようやく気付く。

聡子「でもさ、『もし』なんてないのよね。そりゃ誰もが思うんじゃないの。あの人と分かれていなければ。結婚していれば。子どもできていなければ。仕事やめていなければ。仕事やめていれば。どこにいたってぜったい、選ばなかったことのほうを想像する。」

紀実「へえー。天下大平でもそんなこと思うんすか」

聡子「だって幸せじゃなきゃ困るじゃない」

紀実「困るって、だれが?」

聡子「・・・・・・私がよ」

そうだ。聡子はぱちぱちと瞬きをする。今の日々が充実しているとブログで知らせたいのは、別れた男でもその原因の女でもない、「もし」で別れた、選ばなかった私自身だ。pp.134-135一部省略

キラキラブログは、選ばなかった「もし」を生きる自分達に向けて書いたものだと。旭と別れなかった自分、軌道に乗った仕事をやめなかった自分、旭と添い遂げた自分、伸一と出会うも身体に頼らず健全に交際を重ねた自分、望まぬ妊娠で堕ろした自分、伸一と2人で暮らしている自分、もしくは伸一とも別れ一人で仕事に邁進している自分・・・並行して生きているであろうあらゆる自分に対して「私が一番幸せです!」とアピールするために、聡子は多少の嘘をも織り交ぜてキラキラした主婦ブログを書くのである。

「もし旭と別れなかったら」、今ある幸せは手に入らなかった。そして今の方が絶対に幸せ・・・なはずなのである。

僕はこのブログは、主に「記録」するために書いている。もしくは感想を伝えるため。小説漫画映画等読んだ後様々な感想が思い浮かぶけれどそんなの長々とリアルで語ったところで聞き手がうんざりしてしまう。それをここにぶつける。文章なら多少は理解してもらえるであろうから。ブログなら多少は関心のある聞き手(読み手)が聞いてくれるであろうから。

だから、よくある主婦のキラキラしたブログは甚だ疑問だった。なぜ彼女達は何故あんなにキラキラしたものにこだわるのだろう?自身を良く見せたいようなブログを書くのだろう?ビリヤニ・パエリアよく分からん料理を作るのだろう?無印・IKEAなのだろう?

それに対する、答えがバッチリと提示されているのが良かった。今自分が幸せでなきゃ、彼女達は困るのである。今一番自分たちが幸せであると宣言しなくては、無限に分裂する「もし」にけりをつけられないからである。

ましてや、仕事をやめ家庭に入り、母として妻として日々を過ごす女性ならば尚更。「仕事辞めてなかったら」「結婚してなかったら」「子どもを産んでなかったら」。

僕はこの短編を読んで目から鱗がボロボロ落ちるようだった。そうか、今自分が幸せであると宣言するために、言い聞かせるために、彼女達はあんなにも必死に毎日キラキラを装って撮って書いて生きているのか。

すると・・・今まで鼻についていたキラキラブログがなんと愛おしく見えてくることか。健気に見えてくることか。うう。

そしてやっぱりキラキラブログ界のカリスマ・辻希美とかも「未婚のままもう少し芸能活動を続けていたら」とかやっぱ思う時があるのかなーと思ったり。

永遠の謎であったキラキラブログ、その謎に対して作者の考察が刺さるようになされていたのが良かった。概ね的も射てると思う。

ちなみに、僕は本書における「母性」の捉え方がとても好き。

母性と言うのは、抱きしめたいとか、頬ずりしたいとか、噛みつきたいとか、そういう気分ではなくて、この、泣きたいよう気分のことを言うのではないかと聡子は思うことがある。p.105

 

「いつかの一歩」

徹平は、かつて長らく付き合っていたみのりが運営しているという、居酒屋に、意を決して一歩、踏み入れた。

この話における「もし」は、無論「もし、みのりと結婚していたら」。徹平は結婚をにおわす年上のみのりと、結婚をすることなく長らく付き合った挙句、みのりから別れを切り出されるに至った。年下の徹平は徹平で、結婚生活に不安を抱いていたのである。うまくいかなかったらどうしよう。

今考えてみるに、結婚というものは、うまくいくかどうか、などという問いが思いつかない時点でしてしまうべきだ。あるいは、二年も三年も、うまくいくかどうか、などと考えるべきことではない。p.151

その後別の女性との離婚を経た徹平はより一層思うことになる。「もし、みのりと結婚していたら」。

結論から言うと、この作品は二人の関係がまた親密になるであろうことを匂わせて終わる。こんな「もしもし」男どうかと僕は思うがまぁ年上からしてみればそういうとこが可愛いって思うんだろう。

そしてこの作品で一番印象に残ったのは、終盤のみのりの言葉。

みのり「ひとつなければ、次の一つもなくて、そうしたら、またぜんぜんべつのところにいってるんだなあーって、しみじみ思うのよね」p.171

みのりは徹平と別れた後別の男と付き合うが、前の料理上手の彼女と比較されるため料理教室で料理の腕を磨き資格を取るまでに至る。そして居酒屋なら単身女性でも生きて行けるではないかと店を開くに至ったという。

徹平と結婚していれば、次の男と付き合うこともなかったし、居酒屋を開くこともなくまた全然別の人生を歩んでいた、ということだろう。

ただ、居酒屋経営と結婚は必ずしもどちらかを選ばなきゃいけないものなのか?両立は不可能なものなのか?居酒屋経営しながら結婚することも無論可能なのである。

だから最後、2人はちょっと近づいたんでしょう。爆発しろ。

ちなみに僕は、今現在に全く満足してない。大卒なのに申し訳ねえフリーターだしフリーターの一人暮らしだからお金は無いし母親は大病・肺癌でもうなかなか辛いところがあるし。

あのみのりの言葉は、今現在にちゃんと満足している人だからこそ出てくる言葉だと思う。僕もみのりの言葉が言えるような30代になりたいものですなあ・・・(遠い目)。

 

 

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「平凡」

平凡な暮らしをする主婦・紀美子のもとに、料理研究家として有名になったかつての親友・榎本春花が東京から来ると言う。

この話の「もし」は主人公の紀美子目線ではなく、春花目線の「もしあの人と付き合えたのが私だったら」だと思う。きっと平凡な暮らしをしててきっと毎日つまらない思いをしているはずだ。それを確認しに行ったのだろう。

ネタバレすると、終盤紀美子と春花が高校3年の時に同じ人を好きになったことが明らかになる。恋を実らせたのは紀美子であり、その相手が現在の夫となる。一方春花は卒業後上京した。そして30を目前に料理研究家として有名になりメディアに引っ張りだこになる。

そして春花は、かつて付き合っていた世帯持ちの男と同姓同名の人物がこの町で焼死したという事件を新聞で読み、故郷に再びやって来た・・・・。

ことになっている。

けれど、だが、しかし、いや・・・

いや、まさか。春花がたしかめにきたのは、別れた男のことだけではなくて、私のことも、であるはずがない。私が不幸になったかどうか見にきたなんてはずがない。p.218

けれど実際は、紀美子が平凡に暮らしているのを見に来るのが春花の第一の目的だったのではないか。春花本人の自覚があるにしろないにしろ。

紀美子「ねえ、ハルちゃんひとつだけ訊いてもいい」

紀美子「ハルちゃん、どこまで望んでたの、どこまでの不幸ならよかったの」

春花「平凡」

紀美子「え」

春花「ど平凡」

春花はくり返しにっと笑った。

春花「腐るくらいの平凡が不幸って、なんとなく思ってたけど、それも違ったね。だって私、ほんものの松山大介がどこかできっと平凡に生きているって今日知って、心から安心したんだもん」

紀美子「平凡じゃないかもしれないよ、波乱万丈かも」

春花「うん、だからさ、死んでなんかいないで、波乱でもなくて、平凡に生きていてほしいって言うのはさ、呪いっていうより願いに近いよね。無関係になると、願っちゃうんだね。どっちにしても、その人の人生には届かないって今日、わかったけど、あっ、もうそろそろホームいかないと」pp.218-219

僕は思い返す。

僕が未だに赦せない人達。

例えば石橋先輩。石橋先輩は中学の時僕をせせら笑った人である。眼鏡をかけて色白だったが性格の悪さが顔ににじみ出ていた。

例えば妹。わがままで感情が高ぶると抑えられない。反抗期は大変だった。僕の物を勝手に盗む。「いつか犯罪犯しそうで怖い」裏で母親がため息をついていたが僕もそう思う。

2人が不幸になれ、とは思うが、火事で焼死しろ、とまで思うか・・・と言われると違う。借金まみれになって身体をも売らなきゃいけなくなってズブズブ闇に落ちてほしいか・・・と言われると違う。ウシジマくん案件・・・違う。

じゃあこれは。

この、僕のことあるごとに思う「不幸になれ」という呪いは、祈りと同義だというのか。僕と関係のないところで平凡に生きていろ。

春花「腐るくらいの平凡が不幸って、なんとなく思ってたけど、それも違ったね。」p.218

何を知って春花はそう思ったのか。

それはきっと元恋人が生きているという根拠のない報せ・・・ではなく、紀美子が専業主婦として平凡に暮らしている様を知ってそう思ったのではないか。

春花が、ずっと願っていたのは紀美子の不幸ではないのか。

「平凡」。かつては雑誌の題名になったこの言葉だけど、改めて意味を深く考えさせられる一遍だった。

ちなみに。

本作における春花といい、「いつかの一歩」の徹平といい、「もうひとつ」のこずえといい、「もし」に執着する人物は若干幼く感じることが多い。良くも悪くも。

反対に、「いつかの一歩」のみのりといい、「もうひとつ」の二三子といい、「月が笑う」の終盤の泰春といい、「もし」とうまくけりをつけた人物は大人びているように感じる。

「もし」とうまくけりをつけて自分の今を必死に生きるってのが、本当の大人ってやつなのかもしれない。

 

「どこかべつのところで」

逃げた飼い猫を探す庭子と出会った、依田愛が話してくれた息子とおにぎりの話

「もしあの日窓をきちんとしめていたら」を何度も繰り返す庭子は、「もしあの時おにぎりを作って渡さなかったら」の話を依田愛から聞く。

依田愛の「もし」は本書において一番重い。もしおにぎりを作って渡さなかったら、息子は、死んでいなかったかもしれない。

今までの「もし」がかすんで見えるほど重い「もし」に、依田愛は

「おにぎりの日からね、私、二人になった気持ちでいるの」p.246

おにぎりを作らなかった彼女は、作った依田愛と同じように年を取る。スポーツクラブに入会し毎日通い、上手くいかない夫との関係を修復のため退職祝いに旅行に行く。3年前には息子が恋人を連れてくるが余は気が強くなかなか合わない。しかし夫はそこは寛容で依田愛は、夫に対して「どうでもいいって思ってるだけのくせに」と思っている。結婚後息子夫婦はマンションを購入頭金を互いに出したのに相手方の実家である千葉に家があるのが気に食わない。夫と息子にも過干渉だとなだめられ、新聞の人生相談に応募市債寄す荒れるもおおむね同じ旨。女友達と国内旅行を繰り返しつつ今は地方出身者同士東京に墓を作るか否か夫と2人で話し合っている。pp.246-247より一部省略、要約

庭子「なんていうか、そっちのもうひとりも、なかなかたいへんですね」

依田愛「そうなのよ。だって生きているから」

依田愛「どこかべつのところで」pp.247-248一部省略

僕達は、何歳になっても大人になっても、いつか、

本当に人生においてけりをつけられない「もし」に出くわすことがあるのかもしれない。

自分が起こした、取り返しのつかないたった一つの「もし」。後悔をしてもしきれない。身をつんざくような「もし」。

そうしたら、僕達はもう、諦めて。「もし」を並行して生きる自分に拠り所を求めても良いのではないか。

どこかべつのところで生きる、自分に。

結局猫は見つからないが、依田愛との交流を通して、庭子は少し慰められる。物語はそこで終わる。

本書の最初の短編「もうひとつ」の主人公が、とっくに「もし」にけりをつけているのに対して、最後のこの短編の主人公が「もし」にどうしてもけりをつけられていないのが印象的だった。そしてつけられていないからこその、生き方をしているのも。

 

30代40代・・・が最も多いかもしれないが、僕達は人生に幾度となく思う「もし」。それにけりをつけて生きるヒントを僕達は永遠に探してる。

そんな僕達は平凡。

 

泰春の母「ああ、あの時追っていかなければ、私の人生、全然違ったんじゃないかって、また思っちゃったってわけなのよう」p.88

 

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以上である。

主人公が僕より年上の為共感できない部分も多いのかなあとか思ってたけどそんなことはなかった。

「もし」に翻弄されるのは誰もがそうであり、けれどその「もし」はもはや実在しない非常にリアルな御伽噺に過ぎず、だから僕達は僕達の人生の今を必死で生きるしかない。

どの短編にも印象に残る登場人物の台詞があって、恐らくそれを僕はのちに思い出したり、僕の人生の一つのヒントにもなりえる、気がする。

 

***

 

LINKS

最近読んだ角田光代。やっぱどれもいいですね。

 

tunabook03.hatenablog.com

 

 

 

タカノンノ『ショートショートショートさん3』-認めてくれよ。-

 

:

 

自分の本を出す。

 

 

 

全人類の夢。

 

カノンノショートショートショートさん3』(KADOKAWA 2021年)の話をさせて下さい。

 

 

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【あらすじ】

 

今回は、いつものショートショート形式とは少し違い、続きモノの漫画になりました。p.190 あとがきより

 

 

 

 

本を出したい

書いた小説をネットで読んでもらえるのは嬉しい

褒めてもらえるのも嬉しい

 

でももっと

もっと

「も゛っ」

p.5

 

 

 

 

樹短髪の名義で小説を発表しているショートさん。

毎度毎度の承認欲求が高まるあまり、

冬コミケに参加することに!!

 

え?同人誌ってそもそも何冊刷ればいいの?

え?同人誌の締め切りってどうやって逆算するの?

え?「売り子」って何?

え?そもそもコミケに参加する意義って?

え?この承認欲求どうしたらいいの。

 

本作初長編「ショートさんと同人誌」収録!!

この度めでたく「第24回文化庁メディア芸術祭」マンガ部門審査委員会推薦作品にめでたく進出!!

 

認められたい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

アラサー女子の承認欲求がつまりまくりな話題作!

一部帯より

 

【読むべき人】

・創作活動をしているオタク

・承認欲求にさい悩んでいるアラサー

・同人誌出したい人(普通に勉強になる)

・出したいけどよく分からない人(普通に勉強になる)

・認められたい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

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この漫画は帯もいいんだ帯も・・・



 

 

【感想】

はっ!!!そういえばショートショートショートさん続刊どうなったんだ!?

とふと思い立ったのが5月中旬。

慌てて作者のTwitterを見ると

「なん・・・だと?今週・・・発売・・・だと?」

これはさすがに運命だと思ったね。

さっそく発売日仕事場のショッピングセンター付随の書店で購入しました。

まあ読んだのは7月に入ってからですが・・・。

最近普通に漫画も積むようになってきてまじの加齢を感じる・・・。

 

今回はなんとサクッと初の長編。といっても、1-2巻と同じように数ページでお話区切られていますが、そこを越境しての長編は初。

こうやっていうと、1-2巻面白かった~!ていう人が「ええ・・・3巻買うのやめよかな」になりそうですが、安心してください。吐いてますよ。主にショートさんが。

安心してください。今回も今までの良さを崩さず面白いです。

 

 

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新キャラゾクゾク。

 

 

今回はお馴染みネット小説家でもあるショートさんが紙媒体・同人誌を出すお話。

同人誌って 何冊刷ればいいの。同人誌の締め切りはいつ。同人誌ってそもそも何。同人誌ってどういうスタンスで臨めばいいの。初のコミケ、自分の同人誌はどれくらい売れるものなのか。コミケ参加の際に大切なこと云々云々・・・。

同人誌に興味ある人には勉強になる一冊でもあります。3巻単体で買ってもいいくらい。

ていうか実際同人誌に興味ある僕には、ちょー勉強になった。いや、コミケとかまでは考えてないけど、地元の文学イベントとか挙句の果てには東京文学フリマとかさ格好いいじゃん。

あと単に自分の文章が紙媒体の本になる。

本。

ほん・・・。

BOOK・・・。

HON・・・。

もうこれを考えただけでよだれがじゅわ~~出てくるよね。で、それを誰かがいくらか出して買ってくれるんでしょ?よだれどころじゃないよね。脳汁汗腺全部から身体水分じゅわ~ものですよね。

本書読んで僕は思いました。

ああ・・・やっぱり今年作ろう同人スィ・・・。

 

という訳で、本書ではショートさんの大学時代のサークル仲間が出てきます。

ショートさんの単行本(!)の表紙を描くイラスト勢とか、コミケに常連で参加している漫画ガチ勢とか、卒業後も東京に住んでいて宿を提供してくれる友達であるとか。

うーん。なかなか結構リアル。特に、イラスト勢の単行本表紙のイラストがうんまぁそのあんまりいうところまでリアル。あと漫画ガチ勢がデブの男先輩であるところとか。デブもしっかり自分の画風に落とし込んでいて凄いと思った。

カノンノ先生はデブから逃げない。

 

そしてなんと同じく本書でまさかのショートさん、恋人候補が出てきます。

予想外の角度からぶっ現れてきたから思わず前巻読み直してしまった。

凄くいい感じではあるんですが、この先どうなるでしょう。

あ~うまくいってほしい。

ただ勝手な予想ですが、うまくいかない予感もする。

というのも、僕はショートさんの相手は出てくるとしたら、職場でいつもキーボードをたたいている眼鏡のあいつだと思ってたんですよ。ずっとモブとして出てきているし、画角にいつも収まっているし。顔も程よいし。ショートさんと趣味は合わなそうだけどまぁ2人の会話想像できるし。

って思ってた読者は多分僕だけではないはず。

違いました。

登場したのは彼ではなかった~。

じゃあお前なんでいつもそんなうまい具合画角入っていたんだこんちくしょう~・・・・というわけで、現行の人と付き合ってちゅっちゅして、でもうまくいかないくて、アラサーの年齢のはざまにショートさんが揺れに揺れて、悩んで、別れて、眼鏡とくっつく。そして最終回は「30歳の誕生日」を迎える・・・っていうコト!?©ちいかわ

 

でも、もっと裏を欠いた予想をすると、多分誰とくっつくのか。作者はまだ決めていないと思うんですよね。

作者、タカノンノ先生がSNS発の漫画家である以上、このショートさんの持つ「承認欲求」を少なからず持っているはずで、何ならショートさんは作者の分身の節もあると思うんですよ。

自分の分身であるならば、多分最初から最後まで決めることはしない。

毎回本気で描いているであろう一話一話の積み重ねで、

毎回本気で撮っているであろうショートさんの人生のワンシーンの積み重ねで、

結末が決まるような気がするんですよね。

誰とくっつくのかそもそもくっつかないのかその時ショートさんは何を思っているのか絶え間ない承認欲求を彼女は度するのかこのままネット作家兼OLを続けていくのか寿退社するのかそれともいっそのことプロの作家になってしまうのかなったとしても作家を続けることが出来るのか成功するのか等等等等。

なので予想の裏の裏は、この「ショートショートショートさん」の結末は2021年7月現在僕達読者含め作者含めまだ分からないのではないか、予想。

 

 

並行世界でショートさんは、生きてる。

 

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以下簡単に各話の感想を書いていく。

ネタバレ含む。

 

ショートさんと同人誌①

ショートさん「私の小説面白いよな・・・?面白いんだよな・・・?」p.7

ショートさんの小説更新ツイート何気なく「いいね」×18、「リツイート」×9も言っていて凄いと思った。というか10000ビューで小説ってそこまでいくものなのか。

僕には、遠い道・・・。

そもそもどの小説サイト使ったらいいのかもう僕にはわからん・・・。カクヨムも「なろう」に侵略された今この僕の妄想はどこへ・・・発散するべきなんだ・・・?

 

ショートさんと同人誌②

高坂「冬コミ申し込み期限今日だぞ?」p.11

高坂のような創作意欲溢れる人が大学時代欲しかったですね。

漫画研究会入っていたのですが、幽霊部員だったのと、

先輩(5年生)「この漫画研究会に、漫画好きな人はなかなかいないからね」

の名言を生み出したサークルですからね。

数年に一回ガッチガチのプロの漫画家を輩出するという・・・。ただそれは僕が在学中の年にはあたらなかったってだけよ・・・。

 

ショートさんと同人誌③

弟「売れないよ?コミケでマンガでもラノベ系でもない地味な創作小説が売れるワケないだろ」p.17

何気なく二人称が「拙者」の弟も弟だよな。草。

あと「私ひとりで同人誌だすんだ」と考えた瞬間、荒野で一人立つ自分、しかもちょっと格好よく立つ自分、CMっぽく立つ自分を想像するショートさんですが、これ僕もやりますね。・・・あれ?脳内・・・読まれてる・・・ってコト!?アルミホイル案件ってコト・・・!?©ちぃかわ

 

ショートさんとアルミホイル同人誌④

和久井「そうだコレちょっと前に描いた同人誌 いっちゃんに見せたくて持ってきた」p.26

イラストガチ勢和久井の登場回です。

分かる。自分の創作物って創作してない人にはとても魅せられないけれども、同じく創作している人には見せられますよね。

まぁぼくの周りにはブロガーいないので、このブログは「まぐろどんの♥ドキドキ♥秘密のダイアリー♥」しているわけですが・・・。悪夢か?

 

ショートさんと同人誌⑤

ショートさん「同人誌つくるのって金めっちゃかかるね」p.32

確かに同人誌出来ましたはいおわりじゃない訳で・・・。なかなか痛い出費の内訳が分かります。ていうか、サークル参加料ってあるんだ・・・。1日だけなのに・・・。何それ、「みかじめ料」みたいな感じじゃん・・・こえー・・・しかも高いのか・・・こえー・・・。これで一冊も売れなかったら本当に辛いな?

 

ショートさんと同人誌⑥

ショートさん「調べたら印刷所は12月5日までってなってたー」p.39

コミケが月末であるならば無論それまでに本を完成させないといけない。

小学生でもわかる当たり前のことだけれども小学生でもわかる当たり前のことだから見落としがちである。

あとコミケよりかなり早めに締め切り設定すると割引がある「早割」の存在も知る。はえ~。高坂はショートさんだけにではなく、誌面を通して読者にもご教示下さるありがたい先輩。

 

ショートさんと同人誌⑦

ショートさん「書きたいことはある。たくさんあるんだ。でもそのうちそのうちって引き延ばしてそのそのうちが今 書け」p.46

締め切りと闘うショートさんのこの台詞は、ずん、と僕の腹の底に響くものがある。

書け。

ショートさんの職場のが書く眼鏡「寝不足?」p.51

ちなみに画角眼鏡も登場してます。この人既婚者だったら僕だいぶショック受けるな・・・。ショートさんとくっつかないなら僕とくっついてほしい。え・・・それはつまり、次元を超える・・・ってコト!?©ちぃかわ

 

ショートさんと同人誌⑧

ショートさん「もしもーし ワク 何? うん今準備してたとこー」p.58

てか会社が前日に現地に書物を持ってきてくれるとかそういうシステムあるんだ凄いな。普通に勉強になる。

そしてまさかのワク・・・発熱・・・!!新キャラがまさか熱を出すとは・・・!!ショートさんだけでなく読者もびっくりの展開だ・・・!!

 

ショートさんと同人誌⑨

ショートさん「ワク!ワクが当日買いたかった他のサークルの本とかあったら買ってくるよ!言って あと謝らないで」p.62

こういう時に友情に篤いショートさんは本当に格好いい。一番不安になるべくは彼女なのに大見得張って啖呵を切る。けれど描きおろしの後ろ姿が切ないんだ・・・。

ショートさん「私ひとりだ」p.64

 

ショートさんと同人誌⑩

高坂「でも買ってもらった時は本当に嬉しかった クセになっちゃう」p.71

我らがコミケ先輩高坂。ショートさんとタメだったのか。デブだから先輩だと思ってた。

新幹線に乗る2人。往復だけでかなり金飛ぶと言っていますが・・・、ショートさん、ていうか君関東近郊住みじゃなかったんだ・・・!?勝手に栃木だと思ってた。でも結構之詰まってたしなぁ・・・。え、じゃあ愛知?名古屋とか豊橋とか三河安城とか岐阜羽島とかってことかなぁ・・・。岐阜羽島なのかなぁ・・・。

 

ショートさんと同人誌⑪

森トワ@fovforest

足立区の夜は人智を越えた者がいる p.80

なんでこう、この漫画は、ツイート一つとっても、一人暮らしの部屋一つとっても、いちいちリアルで生々しいんだ・・・。文化庁メディア芸術祭推薦者は恐らくそこに目を付けたのではないか・・・知らんけど。

 

ショートさんと同人誌⑫

森トワ「樹短髪さん? もッ森です はじめまして」p.86

・・・。

・・・。

・・・そして、

森トワ、かっこいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!ロシアのザキトワ、日本の森トワ。

でも前回登場シーン「好きな子いる」って言っている・・・!?おいおい森どーいうことなんだおまぇ・・・でもかっこいい。好き。細マッチョ具合がリアル。文化庁承認細マッチョ。

 

ショートさんと細マッチョと同人誌⑬

ショートさん「私の本だ・・・ 私の本ですよ森さん!!同人誌ですけど!!」p.94

おいおい・・・純粋に喜んじゃってるショートさんに顔赤らめやがってどういうことだ森ィ・・・お前の言ってた「好きな人」とやらは失恋したのか?森ィ・・・。

元カノ関連云々恋愛事情も総じてやっていくってことなのか?うーん。面倒じゃないといいが。

 

ショートさんと細マッチョと同人誌⑭

ショートさん(うおおおおおおおおおおおおお!!!!)p.104

初めて本が売れた感覚に腰振ってるガクガクになるショートさん。普段から持て余していた承認欲求が一気に満たされたんだろうなぁ・・・そりゃあもう絶頂ものだろうなぁ・・・いいなぁ・・・同人誌・・・。

 

部屋とワイシャツと私とショートさんと同人誌⑮

師匠「見してくーださい」p.109

師匠、コミケ★降臨。凄いなこの人。何処にでも現れる。

ショートさんの「影」ですからかね?

思うんですけど、この漫画において2021年現在・リアルに見ることが貴重になったショーパンを履いているのって、ショートさんと師匠だけなんですよ。服装は似ている訳です。ショートさんが直毛に対して師匠はウェーブのかかった髪の毛。対照的な髪型。

そして師匠は常にショートさんを試すようなことを口にします。

それはショートさんの「影」的存在だからかもしれない。

師匠は五十嵐樹の影。

同時に、師匠から見ればショートさんは同じく師匠の「影」。

ショートさんは■■■■(師匠の本名)の影。

師匠自身が今までの人生で捨ててきた希望だとか夢だとかキラキラだとかを、未だに純粋に所持しているショートさん。それは自分の「IF」を見ているようで、もしくは捨てる前の若き自分を見ているようで、常に気になる。何なら少し鬱陶しいくらいかもしれない。

だから惹かれる。

惹かれちゃう。

・・・冬コミ、師匠×ショートさんの百合ものありませんかー!?

 

ショートさんと同人誌⑯

森さん「面白いですよ 樹さんの小説」p.118

師匠にたぶらかされ揺らいだショートさんをひしとささえるのは、ファンの声。何なん。森さん。こんなこと言われたら凄い好きになっちゃうじゃん。細マッチョの割にオタク趣味があるというのがいい。さらっとその後「今回樹さんの小説だけが目当てだった」p.120とか言われたらさー、泣いちゃうよ。大好きだよ。結婚しようよ。

閑話休題

でもそこで、己の自信を少し取り戻したショートさん。

あー、ファンレターとか送ろーって思うよね。それはタカノンノ先生含め好きな作品の作家さんであったり、もしくはキャラクター自身にであったり、推しているアイドルであったり俳優であったりタレントであったりスポーツ選手であったり諸々諸々。

僕達の声が、あなたの自信に繋がるのであれば。

でも、完全にはショートさん自信を取り戻していませんでしたね。

ファンの一声よりアンチの一声の方が影響力高いことを、僕はとても悲しく思う。

それは人間の本能に根差すところなんだろうけれども・・・。

だからと言って、何度でも「大好きです」と一人から何前何万男億と発信するのはちょっと違うし・・・。可能であれば多くの人から多くの「大好きです」が届くと最高だよね。

だからやっぱファンレター送ろー。推し・大園玲さん(櫻坂46)に送ろー。

 

ショートさんと同人誌⑰

武田きゅんクソかわ。

現役社会人ショタってヤヴァ。ヤヴァイわ~。初め高坂の彼女か?って思ったもん。志尊淳だな。アニメ化したら山本和臣。実写化したら志尊淳。 

・・・冬コミ、高坂×武田R18のBLものありませんかー!?

女性一同「・・・・・・なるほど」p.138

 

ショートさんと同人誌⑱ 

師匠「別に今のままでもいいんじゃない?」p.143

この師匠の言葉は正論であるが故に非常に恐ろしい。

そう僕達承認欲求にまみれた僕達は、いつだってそこで満足しようと思えばできるのだ。

ブログの更新数が月10越えた。満足。

ブログの閲覧者数が衝き1000超えた。満足。

ブログの閲覧者数が一日50越えた。満足。

 

ショートさんと同人誌⑲

ショートさん「全然足りません 満足できません」p.149

できるわけ、ないだろ!!!!!!

こちとら死ぬ気で「まぐろどん♥ひみつ♥ダイアリー」やっとるんじゃ!!

そしてあわよくばnoteだってもっと更新したいし小説だって書きたいし「新進気鋭若手の小説家」とか言われたいんじゃ!!!!

もっとみんな見ろ!読め!!僕の恥部を見ろ!!!

そのために僕は晒す!!!!!!!!!!!!

 

ショートさんと同人誌⑳

ショートさんと僕:本を出したい p.163

 

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溢れろ♡承認欲求!!

佐久間先生と同人誌

佐久間先生「じゃあ試しにねー・・・.・・・・・・・・・・・・」p.171

表紙の佐久間先生此処でやっと登場ですね。

佐久間先生一番好きなキャラだったので、描き下ろしで早速主役に据えた話を描いてくれてとてもありがたかったです。

そして同人誌にずぶずぶ分かりやすくはまっていく佐久間先生もかわいかったです。

本棚に飾られていた物物が全部同人誌になっていくのはなかなか生々しくて良かったです。

悪い男に騙されないか心配だ・・・。

 

森さんと樹さん

森さん「あの時言った人にはフラれて今は誰も・・・」p.181

森さん視点から見るとショートさんは「樹さん」なんですね。

樹短髪と、下の名前を苗字にしているからなんでしょうけど、

でも下の名前+さん呼びなんですね。

ほおん。

あと森さん、その言葉信じてええんか?

我らが承認欲求の星・ショートさんを任せてええんか?

でも遠距離になるんだよなぁ・・・どうなんでしょう。

 

黒田と五十嵐

黒田「そりゃ五十嵐の小説好きだし」p.188

あ~いいね。こうやってリアルに創作物・書いたもの読んでくれる友達がいるっていうのはとても素晴らしいことだと思うよ。僕にはいないけど。

 

 

 

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表紙にも関わらず今回出番少なかった佐久間先生。次回に期待。

 

 

 

以上である。

「同人誌を出す」という僕自身が以前から興味あったことに取り組んでいる回だからか、いつも以上に楽しんで読めた気がする。

やっぱりショートさんなんだよな。ショートさんなんですよ。(何が)

 

僕も髪、切ろうかな。

 

***

 

20211003

と、書いたのが7月である。8月9月は全く更新しなかった・・・書いてはいるくっそたまってる。けど編集が面倒過ぎて・・・。

でも僕は僕自身が記録をするため、だけじゃなく、誰かに読んでほしいからわざわざはてなブログをしているのであって、

それを忘れてはならないし、

それを忘れないために再読しようかな。3巻。

 

***

 

LINKS

 

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「LARME 049」-いないからかみさましんじるみたいに、いないからかんぜんなるおんなのこをゆめみる。ぼくたちは。-

 

 

お人形のように。ペンダントのように。

リボンのように。フリルのついたワンピースのように。

愛したい。

私を。

 

 

「LARME 2021 SUMMER 049」(徳間書店 2021年)の話をさせて。

 

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【がいよ。】

「知らない世界を教えてくれてありがとう。」

 

Never Let Me Go.

甘くてかわいい♥女の子のファッション絵本

 

背表紙・表紙より

 

大人になっても私たちは Playful&Lolita Mind/LARME 8 COLORS RENGERS!/Summer Coktail Make-up/なえなのBOOK/PALIPITATION IN THE AFTERNOON/リボンの逆襲/そこ曲がったら、浴衣姿の櫻坂46♡/Start a new KATY

 

「この世界の女の子は、みんなあなたの味方です」p.127

 

【よむべきgirl&Boy。。】

・10代の女の子

・可愛い女の子が好きな人

・可愛い女の子がいる世界が好きな人

・櫻坂、KATY、femmefetale推し

 

 

【感想】

中郡編集長が作る雑誌は、「雑誌力」が高い。

買いました。LARME。復刊後初。

実は、2017年の12月号だったかな・・・渡辺梨加が初めて表紙を務めた号も購入していたのですが、全部読み通すことが出来なくて、実家の本棚に眠っているんですよ。その時はもう中郡さんはLARMEに関わってなかった。

ただ今号は、もうさらさら~っっと、一文字もかかすことなく読めました。

まぁそりゃぁ、僕も27歳(童貞、雌)であるので、ファッションの参考に・・・てよりかはまあ観賞用に・・・てよりかは、まあ櫻坂の守屋麗奈ちゃんと関有美子ちゃんが「夢の雑誌に出れて嬉しいです!!」とブログで言っていたので・・・買ったんですけど、でもまぁ圧倒的に違いますね。雑誌力が。

 

雑誌好きの間では有名な話ですが、中郡編集長とLARMEの関係性を簡単に説明します。

まず、2010年代初頭に中郡さんが20代中盤にして、創刊したのがこの「LARME」です。20代中盤で雑誌を、しかも書店に並ぶ雑誌を作る、且つそのまま編集長就任、というのはなかなか異例of異例で注目されました。

そして数年後LARMEを去り、光文社にて中郡さんは「bis」を復刊させ、編集長に就任します。確か復刊後初の表紙が志田未来で凄く目を惹いた表紙だった、気がする。

ただ光文社で何があったのか分かりませんが、まぁ結構短いスパンで去ります。(「bis」は退任後も刊行。2021年夏現在も刊行され続けてます)

ところがどっこい、2020年3月中郡さん退任後も続いていた「LARME」廃刊するというので、

中郡さん「じゃあ私が復活させるわ」

と、LARME編集プロダクション「株式会社LARME」をたちあげ、復刊させたのが2020年の秋号。表紙はなえなの。モデルを一般人から、Twitter推薦で募集したのが話題になりました。

要するに、雑誌不況と言われる昨今、3度雑誌を立ち上げている。加えてその両誌「bis」「LARME」が今も刊行されて続けている。

スーパーミラクル雑誌編集ウーマンなのであります。

 

その彼女が編集長を務める雑誌をこの度初めて読んだわけなのですが・・・雑誌力高い。(何度でも言います)

LARMEって、まぁサブカルこじらせた高校生~大学生くらいまでの年齢が対象の雑誌だと思うんですけど、その対象年齢から外れた27歳(童貞・メス)の僕が読んでも結構面白いんですよ。積んでる期間は長かったのですが、開いたら結構すぐに読み切った。読ませる力がある雑誌。

確かに、掲載されているファッションと亀行くとかスタイリングとかはあんまり参考には・・・ならないんですけど、「そういう世界」を鑑賞しているような気分。

「MORE」「with」を読んでいる・・・よりかは、装苑」「FUDGE」を読んでいる感覚。実用ではなく鑑賞に重きが置かれているような。

地下アイドルが好きな女子は絶対LARME、好きだと思う。

 

 

「女子高生」という最高峰のブランドを脱いで真っ裸で歩くとき、

ショートケーキにも賞味期限があるように、女の子にも賞味期限ってあるのかしら。

 

 

 

 

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モデルちゃんも基本全員可愛いですね。

越智ゆらのちゃん。可愛い。「8color rengers」では白を担当しているのですが、色白のちょっと幸薄そうな感じが良い。でもそれに反して出てるのはLARMEというゴリゴリの雑誌というギャップも素晴らしい。

佐藤ノアちゃん。声優の上坂すみれの顔ですね。眼球くりっとしていて、多分ちょっとほっぺぷにっとしているのかな。でも多分本人はほっぺがコンプレックスで、エステに行ってるのかスチーマーしてるのか知りませんが、写真によってはシュッとしている。ので、まぁ写真によって結構顔変わるんですけどそういう高い美意識も含めて可愛い。

ノアちゃん「ナチュラルメイクとかつまんないから!」

ノアちゃん「ファンの方と自分がもっと近くなれるようになりたいとおもっています」p.11

容姿含め中身含め、多分一番「LARME」の象徴に近いんじゃないでしょうか。

 

 

 

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特に良かった特集を、以下簡単に。

 

「そこ曲がったら、浴衣姿の櫻坂46♡」pp.58-64

渡辺梨加関有美子、守屋麗奈と一期・二期・新二期とそれぞれの期から一人ずつ登場。はいまぁみんな可愛いなオイ!!

浴衣なんですけど、どの浴衣も3人ん意欲にあっているんですよ。しかも浴衣によっていちいち髪型を変えてくるという・・・おいおい、最高か?

別に3人、正直言えば推しではないんですけど、それでもこの8ページのために買った価値はあった。なんだこれ。なんだこれ?!

昔bisの「長濱ねる」ちゃん表紙の時も素晴らしかったですが・・・中郡編集長が絡むとアイドルは最高に輝きますね。

各人一番好きなスタイリングは以下の通り。

 

渡辺梨加:p.60の黒猫●

大人でミステリアスな雰囲気と、ふわふわした雰囲気が絶妙にマッチしていて素晴らしい。

関有美子:p.62の水色の浴衣●

ツインテール・・・っ!!!!!コーデ自体もよく見ると同系色のパンプスを履いていた莉となかなか面白いコーデでとても良い。可愛い。

●守屋麗奈:p63のリボンの浴衣●

こんな浴衣普通似合わないって・・・それをさらっと着こなす顔面偏差値高めの櫻坂ぶりっ子担当守屋麗奈。三つ編みにリボン2つついているのもすっごい良い

 

・・・そして、やっぱりレイアウトした人も同じこと思ってたみたいでp.64のインタビューのアザーカットもこの3つの浴衣が起用されていますね。最高です。

櫻坂の生写真の浴衣は、まぁその、これくらいはっちゃけても、ええんやで・・・。

 

 

 

 「Start a new KATY」pp.94-101

ZOCの元★人気メンバーで、抜けたことは覚えてるんですけど知ってるのはそれくらいで、でもこの特集を読んでああ絶対面白い子じゃんと思いました。

最近ツイッターでも鬱病を公表しましたが弱さをも見せながら生きていく感じが本当に格好いい。不器用でうまく生きてけない男ウケとかどーでもいいそれが私。みたいな。語彙力。

スタイリングも彼女が手掛けたらしいんですが、なんかピタッとした服が多いのと、あと大人ベイビーって感じがして強い。

多分彼女の道は前途洋々に見えて凄い険しいと思うんですよ。いちいち無から有を生み出さないと誰も振り向いてくれないわけだし、多分彼女自身メンタルだってそんな強い方じゃない。

でも一回一回ぶつかって砕け散るかのように創造していく彼女の世界には興味がある。

「Hello, new KATY...」

 

 

「8COLOR RANGERS」pp.18-32

LARMEモデルとLARMEに深くかかわる女の子達がピンク・黄色・青・紫・緑・赤・オレンジ・白色の衣装に身を扮する今号メインの特集。

カラフルなページは「夏!」って感じがしてよかったのと、モデルの個性・・・を際立たせようとする作りが面白かった。実際に際立っていたかどうかはおいといて。

ただまぁ越智ゆらのちゃんが白なえなのちゃんが青なのは分かるが、他の子×色がマッチングしていたかと言われると微妙。

佐藤ノアちゃんは多分だと思うし、齋藤なぎさちゃんは絶対ピンク。景井ひなちゃんは紫。ねおちゃんはこの顔立ちならか黒でしょ。佐々木彩夏ちゃんはピンクなのは分かり切っているのだからこそ違う色が見たかったってのもある。

あと色それぞれの世界観を出し切れていたか、と言われると微妙。正直その色を使ったメイク・ファッションにモデルが身を包んでいるだけ、で終わっているのが本当に残念。

でもまぁページめくるたびに色が変わるのは楽しかったので・・・ぎり、よし!!

なんだろうなぁ・・・。強いて言うなら「LARME」、おポエムが足りないと思うんですけどそれは僕の気のせいですかね。

 

 

Playful&LolitaMind:山本舞香ちゃんって10代の憧れなの・・・か?写真は面白かった。

なえなのBOOK:一時代前の長濱ねる枠に、今この子がいるんですね。ねるみたくつまんない大人にならないでほしい。

Dollな100の質問2021:戦慄かなのが生きるドールっていうのは凄く分かる。ただ可愛いだけじゃなく若干メリベルみあるのも良い。可愛いだけのお人形は詰まんない。呪って。

明日、誰かのカノジョになるためのファッション&ビューティLesson:この漫画マジで10代に流行ってるみたいですね。歌舞伎町のホストとホスト狂の話なんですね。この特集読んだだけで結構詳しくなれた、気がする。

リボンの逆襲:装苑やGINZAのような本格ファッショングラビア導入はいいですね。雑誌全体としても締まるし、LARME読んでいる女の子にはこういうのももっともっと見て素敵って思ってその気持ちを抱きしめたまま大人になってほしい。経済回せ。

PALIPITATIONINTHEAFETERNOON:これを見て僕は「ちゃんとした下着・・・買わなきゃ・・・」と思いました。現役6年目2人で回して酷使しているので・・・。

 

知らない世界を教えてくれてありがとう

 

 

 

 

 

毒があるだけじゃあ、つまんない。

 

 

 

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以上である。久々に読んだらなんか雑誌全体としての質が上がっていて良かった。

満足度高い。多分漫画特集やアイドルの浴衣特集、インタビュー記事、装苑のようなハイグラビアを入れることで内容に幅を持たせているからだと思う。ただのファッション紹介とモデル紹介とついでにジャニーズ・・・みたいな普通の雑誌に成り下がっていないのが良い。

・・・と、気づいたけど、LARME、ジャニーズは愚か男性モデル一人も出てこないですね。男子禁制の女子の蜜園・・・。

 

 

 

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愛せる私なんてどこにもいない。