小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

筒井康隆「くたばれPTA」-童貞(メス)の僕は今日も夜明けのワンルームで喘ぐ。「ア」「ア」「ア」「ア」-

 

 

うおおおおおおおおお!!!!!!!!!

 

くだばれくたばれPTA!!!!!!!!!!!!!

くたばれくたばれPTA!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

筒井康隆『くたばれPTA』(新潮社 1986年)の話をさせて下さい。

 

 

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【あらすじ】

マスコミ、主婦連から俗悪の烙印を押されたSFマンガ家の怒りが爆発する「くたばれPTA」。

高度成長時代の会社員のモーレツぶりを描いた「猛烈社員無頼控」。

処女が寄るごと10億の男たちを交わる「20000トンの精液」。

一卵性双生児の弟が、自分の恋人を奪った兄に奇想天外な訃報で復讐する「かゆみの限界」・・・・・・風刺、SFからホラーまで、黒い笑いが全開のショート・ショート24編。

 

裏表紙より

 

【読むべき人】

・面白い本が読みたい人

・PTAなんてクソクラエと思っている人(僕は思ってないです)

フェミニズムなんてクソクラエと思っている人(僕は思ってないです)

・何が女性の社会進出だクソクラエと思っている人(僕は思ってないです)

 

【感想】

今作は様々な雑誌に掲載された短編を集めた一冊である。

前半は短いショートショート中心、後半は短編小説が中心となる。

そのどちらもが、筒井先生の独創痛快爆笑アイデアが中心に展開されているので基本的にはジャンルレス、裏表紙にはSF・ホラー等の文字が並ぶが、「ブラックユーモア」。この一言に尽きる一冊だと思う。

もう少し柔らかく言うと、「筒井ちゃんのブラック★ユーモア!~エロもあるよ!ちょっぴりグロもあるよ!~」といったところか。

 

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 難しい本をようやっと読み終えたので、ついつい気軽さ求めてぺらりとめくったら、ニヤニヤ少しムラムラしながら一通り一瞬で読み終えてしまった。文体が非常に読み易く、且つ一編一編短いのでとても良い。

 

以下簡単に24のブラックユーモアに対する感想を述べておく。

あと結構中身がぶっとんでいるけれどそれは時代のせいでもあるので、発表された西暦も合わせて記しておく。

 

秘密兵器:女の子が高校やきう!!1969年

当時じゃ非現実的だけれども、今じゃ女子が高校野球するのもそう遠くない気がする。

「今」に値する2021年は、この作品が書かれた1974年から見るとおおよそ「50年後」になるわけだけれども。

 

 

遊歩道:白いとこしか踏んじゃダメ遊び1968年

「白い所以外踏んだらそこは虚空で落ちてゆくんやで~」の話である。昨今では横断歩道を舞台にその話を見ることが多いけれども、今作では遊歩道。

にしてもこのアイデア約50年前からコスコスされてきたアイデアなのか。

そりゃあ陳腐であるわな。

 

 

癌:患者が突如医者に告白する衝撃の事実?年

この話うんぬんよりも、本作巻末に掲載されている「発表誌不明」の5文字の方が圧倒的に怖い。

え。そんなことある?

え・・・そんなことある??

 

 

美女:タイムマシンに乗って世界三大美女と会ってきたぜ!!1968年

美人が美人じゃなかったよぴえんの話である。

けれど結末「未来」の話が一ひねりあって良かった。作品発表時から53年後現在・・・「男の娘」が台頭している現代じゃあ、こんな未来もあり得ない話ではないのかもしれない。

 

 

狸:酒好きの狸が狐にたぶらかされる話1968年

Twitterのあの「たぬきときつね」を思い出した。

概ねあんな感じのほのぼのコメディ。

 

 

酔いどれの帰宅:酔いどれが帰宅するぞ!!1968年

ホラー展開か?からのまさかのクイズ展開である。

でもこれに収録されている話のほとんどを、筒井先生酒飲みながら書いてそう。

 

 

歓待:美人が接待してくれるという星にいくが・・・1969年

星新一かと思ったら筒井康隆ンゴ・・・(絶望)

 

 

いずこも愛は・・・:ロロとピピは愛し合っている・・・1968年

解説によると、こういう話は「オーバー・ロード」といい、この物語自体もアーサー・C・クラーク『太陽系最後の日』からパロったものらしい。p.268

結末意味わかんなすぎて、原作の方に興味がわいた。

 

 

落語・伝票争い:どちらの奥様が喫茶店でおごるか言い争いをする話1968年

僕だったら素直に奢られますね。だから友達少ないんでしょうね。 

ちなみに、この落語をやってもらいたい女性声優トップ3

1位:悠木碧

理由:ノリノリでやってくれそう。

2位:田中理恵

理由:登場人物全員乳酸菌取ってなさそうなので

3位:ファイルーズあい

理由:プリキュア主演声優にこういう演技をやらせて射精するのが乙なものです。

 

 

弾道軌跡:おれたちは、司令船から月着陸船に乗り移った。p.53

1969年

アポロ11号の月面着陸に際して書かれた話である。

当時の作家たちはこういうニュースやテーマを主題にたくさんの話を書かなければならないから大変だなあと思った。今じゃプロがやらなくても何前何万もの素人がやってくれるからいい時代だね・・・いい時代なのかな?

 

 

2001年公害の旅:「公害」に汚染されつつある日本で、家庭を持つ私が下した決断

1970年

2001年宇宙の旅をパロディ化したタイトルである。これも星新一か?と思った。

けれど最後、脳裏に漫画のようにくっきりと映像が浮かぶようなあの悪夢のラストははっきりと筒井康隆で、こんな未来が来たら嫌だなあ、と素直に思った。

篠田節子「静かな黄昏の国」を思い出した。あれもあれで悪夢の終わり方だった。

 

 

モーツァルト伝:モーツァルトの一生について書いたよ!!

1970年

モーツァルトの一生を文字通りひっちゃかめっちゃかに描いた作品である。

多分この短編を書くのに少なくとも教養よろしくモーツァルトの本ーツァルトくらいは丸々読まないといけなかったと思うのだけれども、そういった努力を美しく結実させないのが素晴らしいですね。

多分教養あればある程読むと面白く感じる短編だと思う。僕はまぁうん、面白かたヨ。

 

 

 ナポレオン対チャイコフスキー 最後の決戦:フランスVSロシア

1970年

まずこの短編を楽しむには、「ナポレオンがロシアの寒さに屈服して初めて戦争に負けた」という基本的世界史の知識、1812年は、VSフランス(ナポレオン)の戦争にロシアが勝ったことを祝福するために作られた曲で、終盤大砲のパートがある」いう音楽的知識が必要である。

大砲を!!!ぶっぱなせ!!!!!くたばれくたばれPTA!!!

ちなみに僕は1812年オーケストラの曲のなかでもすっごい好き。だからこの短編もすっごい好き。

 

 

カラス:お金搾取目的の機械を導入したら、病院にいた鳩がいなくなってカラスがきちゃった!!1968年

最後の一行で大爆笑。事態はますます悪化する!!

しんじまえ!!しんじまえ!!くたばれくたばれPTA!!!

 

かゆみの限界:ある日顔を真っ白にした双子(弟)が、主人公の所持するノミを譲ってほしいとやって来た 1967年

もう読んでいるだけで痒い。嫌だ。痒い。

特に後半の怒涛の痒みの畳みかけが最悪。もう最悪である。くたばれくたばれPTA!!の勢いはどこへやら、もう全身が痒くなってくる。

ちなみにも3月になって花粉ブンブンしてますね。辛い。鼻が出るのもそうなんですけど、口内も凄く痒くなるんですよ。あー嫌だ。あー嫌だ。

 

 

ここに恐竜あり:ある日突然日本に恐竜が来ちゃったよ!!1970年

こういう「話が通じない奴が一方的に殺す」的展開の短編は、筒井先生非常に多く書いている気がする。

例えば世にも奇妙な物語で実写化もされた「走る取的」とか。この前読んだ短編集『鍵』に収録されていた「死にかた」とか。

「走る取的」では話通じないお相撲さんがひたすら走って襲ってきた。「死にかた」では話まだ出来る鬼ちゃんがひたすら金棒振るって殺してきた。

今回は、比較的話が通じる恐竜がひたすら日本を蹂躙してきた、にすぎない。

「話が出来る≠意思疎通が出来る」。話し合えば分かるわよ~みたいな理想論をぶっ潰すのが心地よい一編。

 

 

密のような宇宙:ロロとピピがいちゃつくよ!1972年

こういう風に愛し合える相手が童貞(メス)の僕にもいるのだろうか。

最近穂村弘の昔のエッセイみたいなことばっか言っていて嫌だ。

 

 

猛烈社員無頼控:平垣海苔助は猛烈社員だった1971年

僕も見習わなくては。

 

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このあたりから15ページ程度の作品が増えてきて、ショートショートよりかは短編小説に近い作品が並ぶようになってくる。

 

最後のクリスマス:彼女が、サンタと毎年えちえちをしていると知ってしまった。1968年

聖母誕生の瞬間を踏み潰す話である。おいおい、お前もヨセフとして名前だけでも後世に残せたのかもしれないのに。

サンタにNTRされるなんてそんな同人誌的展開がもう1972年・・・50年前には出来ていたなんて。くたばれくたばれPTA。

あと、篠田節子「静かな黄昏の国」を思い出した。

 

 

女権国家の繁栄と崩壊:革命によって女性が政権を握ったぞ!!1971年

1975年・・・50年前の作品である・・・。この頃からもう「女性参政権」について延々議論されていたのかと思うと気が滅入る。

あと多分、当時は女性議員・女性管理職といった存在が非常に珍かったのではないかと推察する。そしてその存在は理想として語られていたのではなかろうか。

そういった時代風潮にこんな短編ぶっぱなすのはやっぱ頭おか・・・さすが筒井康隆である。

ちなみに、

革命家はしょせん政治家ではなかった。p.166

さらっと書かれているこの一文は、真理なのだけれども人間は何故何度も何度も同じ過ちを繰り返すのだろうか。

 

 

くだばれPTA:PTAがSF漫画家のもとに苦情を言いに来た!1966年

1966年・・・55年前の作品である・・・。この頃からもう「PTA」「子どもの教育によろしくない」について延々議論されていたのかと思うと気が滅入る。

大抵そんなの禁止して厳しく育てようとしたって、子供はなるようにしかならない。無菌室などありえないからもう放牧するしかないのである。

ちなみにPTAって「まんP」「Tバック」「Aカップ尊い」の略と聞いたんですけど本当ですか?

 

 

レモンのような二人:揚子は淳と付き合っていた。1969年

2人で愛するのではなく、皆で愛し合いましょう。といった超絶理論短編である。後半のえちえちシーンがめっちゃえちい。ちょっとこれは危なかった。

にしても、実際こういう愛の形ってあるらしいですね。男2人女1人で同棲している、というのを東京グラフィティで読んだ。

実際少子化核家族化LGBT晩婚化生涯未婚率等々の問題が噴出している現在、こういった愛の形が若者間で流行るのもそう遠くない未来なのかもしれない。まあ童貞(メス)の僕には関係のないお話ですが・・・。

 

 

20000トンの精液:処女のヒルダは毎晩10億の男を相手にしている。1970年

ア p.232

セックスを放送する。といった超絶理論短編2である。後半のえちえちシーンはそんなえちくない。安全である。

実際少子化核家族LGBT晩婚化生涯未婚率等々の問題が噴出している現在、こういった番組が放送されるのもそう遠くない未来なのかもしれない。

というか実質AVも「疑似セックス体験」といった意味ではやっていることそんな変わらないわけだし。それを民法の電波にぶっ放している世界線な訳でしょう?するとそこでは多分AV女優と普通の女優の「ライン」も曖昧な訳でしょう?するともっと可愛いあの子やあの子が全裸になって身もだえする姿をテレビで無料で見られるってわけでしょう?

NHKは早くこの番組実装しろと思う。最近見なくなった朝ドラ女優とかが深夜一時くらいにこう雇用放送で「ア」してたらもう下半身やっばやばになりませんか?そしたら受信料も全部見事に徴収出来て、新しい社屋くらい10つ20つくらい建てられるでしょう。はい、くたばれくたばれPTA。

 

 

モケケ=バラリバラ戦記:地球の植民星同士の戦争を、タンは家族に会うことを求めて彷徨うが・・・。1973年

筒井康隆先生の大傑作「旅のラゴスを思い出した。あれも切ない結末で終わったのではなかったか。

あと筒井康隆先生の時をかける少女に収録されていた短編を思い出した。主人公の名前が「信子」なのは思い出せるが短編の名前が思い出せない。あれも並行世界を駆け抜けていく話ではなかったか。

 

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まさに頭に矢がぶっささるかのような鋭利なジョーク。


 

以上である。

おおむね痛快ストレス発散にうってつけの短編がそろっていて読んでいてとても心地が良かった。やっぱり筒井康隆サイコ~になる。筒井康隆サイコ~。

 

ちなみに「くたばれPTA」と本書のタイトルで検索すると、真っ黒い動画に白い線で雑に書かれた絵の動画が出てくる

僕「ア」

梨本ういだ。初音ミクの作曲家の。

慌てて再生ボタンを押すと「ア!!」懐かしい。この感じ。公開年数を見ると2010年だった。そうだ。この曲。懐かしい。当時はこの歌詞が抉るように心をぶっ刺したのだった。

多分「うっせえわ」を聴いている高校生は、10年前「くたばれPTA」を聴いている僕達だった・・・と世紀の発見!!!と思ってたらさっそくコメントの一番上に全く同じことが書かれていてワロタ。

頑張ってカラオケで歌えるようにと何度もYouTubeでパソコンで聴いていたけれど・・・結局「ペテン師が笑うころに」「死にたがり」しか歌えなかったけど・・・おいまて、「死にたがり」

再生ボタンを押す。

僕「ア!!!!!!!!」

童貞の僕から出される20000トンの精液。

そうだ、この曲を聞いて初めて歌詞で涙するということをしたのではなかったか。

そして、この曲は10年たった今も鮮度がそのまま保たれている。

ア・・・あああ・・・・。

 

そして、これらの曲から10年たった今でも、梨本ういPは音楽活動を続けていて、昨年の8月に4曲も「うp」していた。

総じて聴くと、確かにそれらは10年前の「死にたがり」程穿つものはないかもしれないが特有の夜明けの不静脈のような梨本さんのメロディラインは健在で、ああ、憶えている。憶えているよ。僕のあの日にアスファルトに打ち上げられた猫の死体、ねえ、だから、「ほめてね」

 

www.youtube.com

 

***

追伸

篠田節子「静かな黄昏の国」はとっても面白い短編集だったので読んでほしい。出来ればリメイク前の文庫本の方が表紙もかわいくてエモいのでそっちを読んでほしい。

書影を掲載したいところだけど実家にあって掲載できないクソ。

 

LINKS

最近読んだ筒井康隆の本

 

・カリエールの絵を思い出した。一番最近読んだ。 

tunabook03.hatenablog.com

 

解説が丁寧過ぎてドン引きした。

tunabook03.hatenablog.com

 

 ・傑作と言われるの分かる。僕も傑作だと思う。

tunabook03.hatenablog.com

 

 

 

「芸術新潮2021年2月号」-愛でたい読書、愛でたくない雑誌。-

 

 

 

芸術×読書特集!?

ワイ得やんけ!!!

 

芸術新潮2021年2月号」(新潮社 2021年)の話をさせて下さい。

 

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【概要】

特集 愛でたい読書

あの人が選んだ、必読本150冊

旅することも、誰かと直接話をすることも、普通のことではなくなった今だけどーーー

本を開けばいつだって、なかなか見ることのできない景色や、

今は亡きあの人の声、いききと躍動する物語の主人公がそこに「いる」。

アートの瀬騎亜で活躍する人たちが、よすがとして読んできたのはどんな本?

知的好奇心を満たし、目を悦ばせる、愛でたき本の入口へーーー

 

p.11 本文より

 

【読むべき人】

・美術に関する書物を何から読んだらいいか分からない人(「橋本麻里×保坂健二朗 入り口としての美術書案内」

美術の特集、両方に興味がある人(ぶっちゃけどっちつかずの内容になっているので)

「春江水暖」が気になる人(本書ではどういった映画か・なぜ観客の心を打つのか4ページも使って分かりやすく書かれているため)

 

【本特集とは・・・?】

マガジンハウス刊行元の雑誌がよくやっている、本所謂書籍を主題として雑誌で組まれる特集のこと。大抵小説・漫画・随筆・評論・新書等々ジャンルをまたいであらゆる本が紹介されていることが多い。

大抵表紙に書かれているコピーで「お!本特集やんけ!」と分かることが多い。

例:「夏の読書は、軽やかに」「朝読書のススメ/夜読書のため息」「あの人の本棚」「シティボーイは電子書籍の夢を見るか?」等 

※全部今僕が考えたそれっぽいコピーです。ちなこの特集はマガジンハウスの中でも&Premium,BRUTUS,POPEYEで組まれることが多い。

 

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【感想】

西洋美術、とっても好きである。

読書・・・というか雑誌の「本」特集も、とっても好きである。

だから「芸術×本特集」といったらもう買うしかなかった。

税込み1500円もするからすっごい考えたけどもう買うしかなかった。

 

そして一通り読んだわけだけれども・・・うーん。1500円出したことに後悔はしていないが、全体的に非常に「薄い」1冊であるように感じた。

内容が薄い。企画自体も薄い。それが気になった。

 

ただ、この「芸術新潮」、人生初めて読んだのだけれども、これが芸術雑誌として優れているのはよくわかった。

芸術を分かりやすい言葉で解説してくれている。

同じ芸術雑誌であれば、美術手帖等が挙がると思う。ただあれは、非常に難解。読んでいて非常に勉強にはなるにはなるのだけれども、あれを読むのは「雑誌を読む」よりかは、「芸術の専門書を読む」に近い感覚になる。

あと話題がどうも現代アートに偏っている。気がする。僕はそこまでそっちには興味がない。僕が好きなのは西洋美術。なので、滅多に手にとることはない。

ところが本書は、言葉が非常にかみ砕かれて書かれている。高校受験現代文の「評論」が読解できる力があれば十分理解できる文章である。

色んな芸術作品と絡めて、本を特集しているのも好感が持てた。今回の本特集において、とりあげる絵画は「西洋美術」、装丁は「日本美術」、本を使った芸術作品では現代アート、東洋美術・・・はない代わりに今話題の中国映画「春江水暖」を取り上げている。

あと図版が大きくて、作品自体が大きい写真で見られるのも良かった。

雑誌としては非常に満点に近い一冊だと思う。

 

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ただ今回の「本特集」の内容自体は微妙。いろんな美術と絡めて書かれてはいるが、そのひとつひとつの記事の完成度にはばらつきがあり、好感持てても満足度が高いかというとそうでもない。

そもそもこの雑誌で本特集なんてめったにやらないであろうから、普段は展覧会特集やってればよいがコロナ禍においてしか選択しえない特集であろうから、本特集初心者であろうから仕方ないかもしれないが、それでもお粗末な点がいくつか見受けられた。

その改善してほしい点と共に、特集の内の各コーナー、感想を述べていく。

 

特集:愛でたい読書

 

愛でたい読書1

15人が選ぶ、人生の必需本

漫画、画家、美術家、絵本作家、大学教授、デザイナー等々に

「仕事前のウォーミングアップに読む本」「リラックスする時に読む本」「子どもの頃夢中になった本」「最も繰り返し読んだ本」「最近のお勧めの本」を聞いたコーナーである。

一番目玉のコーナーにして、一番がっかりしたコーナーだった。

というのも、前半のヤマザキマリ、野口哲哉、森村泰昌の3人以外は「似顔絵」と「おススメ本の表紙・装丁」と、「なぜおすすめか」しか書かれていなかったからだ。

こんなんだったら別に芸術新潮でやる意味なくない!?

芸術にかかわっている人にインタビュー、ってことで「芸術」新潮かもしれないけど、

これなら「POPEYE」とかBRUTUSとかでよくない!?

てかその2誌はじめとするマガジンハウスがこすり倒した誌面をまんま模写してどうすんの!?

しかも人数15人取り上げ角はいいけどその分短くなるから内容もぺらっぺらだしさあ!!え!!??こんなんに我々1500円も払うんですか!?ふざけんなよ!!!!

って思った。

なのでまぁここだけの話、ぶっちゃけるとね、立ち読みしてぱらぱらめくった時、買おうかどうか本当は悩んだんですよ。

でも「芸術×本特集」両方好き好きだったから迷った挙句買ったわけ。

でも冷静に家で読んでも、このメインとなる特集内容ペラペラで涙出ますよ。

せめて、人数を削って先述した冒頭3人ヤマザキ・野口・森村のように、書斎の写真や飾っているもの、制作風景などを映すべきだった。

芸術新潮」なので、本棚・書斎を「空間芸術」として捉えることをしてほしかった。

となると、やっぱり京極夏彦なんかの書斎くらいは映してインタビューしてほしかったわけですよ。え?知らない?「京極夏彦 書斎」で検索して。びっくりするよ。仏像なんかもあの人すごい詳しそうじゃん。文庫本の表紙に起用するくらいだし。

いやいや、辛酸なめことか起用するならまずそこでしょ。

人選もちょっと馬鹿っぽいかなあと思った。単純に今芸術界で話題の人取り上げればいいってもんじゃちゃうんやぞと。

厚さも薄ければ、中身も薄いんですねー。

強いてあげるなら、

気になった本:谷崎純一郎『春琴抄

 

愛でたい読書2

和田雅成が耽読するアート小説

え?このコーナー、いる?

てか誰だお前。

巻末の個人データを見たらどうやら2.5次元でミュージカルで活躍する方とのこと。

・・・え?いる????

あー分かる。分かるよ。大抵こういう芸術好きとオタクって被っているから、和田ファンが買うのを狙ってここにグラビアはさんだんでしょ?

でもさあ、芸術新潮考えろよおめー。

1500円。1500円するんだよおめーこの薄さで。

この和田とやらのファンが100人いて何人こんなマニアックな薄っぺらい高い雑誌買うと思う?

ちょっとそこも頭足りてないんじゃない?

え?新潮社ですよね?出版社ですよね?

本当に入社試験受けたんですかあ?

一流大学卒業した雑誌作る人の発想とは思えないくらいの薄っぺらい特集だと思う。それだったら僕が新潮社就職するわ。てか落ちたわ。書類選考で落ちたわ。あー、●んでほしい。

せめて、もっと芸術と関わり深い世界で活躍する人々を取り扱ってほしかった。尾上右近とか。カレー好きなんだってね。知らんけど。

あとこの和田とやらが大してイケメンでもないし、本棚視る限り大した読書家でもないのが更にムカつく。

こんなとこに紙幅を費やすのならば京極夏彦以下略

気になった本:特になし

 

愛でたい読書3

厳選!だいたい75タイトル

橋本麻里×保坂健仁郎入り口としての美術書案内

まだ前の2コーナーと比べたらまだマシ。

専門家に「西洋美術」「東洋美術」「現代アート」「写真」といった具合に各ジャンルからおすすめの入門書3-5冊をおススメしていただく。

でもここで75タイトルを消費するのは負担がでかすぎないかと思う。しかもここで75タイトル挙げたうえで表紙に「必読本150冊」でしょ?かさましにもほどがあるし、この専門家の先生二人に対して非情に失礼だとも思う。

あとこれ、対談形式取ってるんですけど、対談形式にする意味が全く分からない。各々がおススメをおススメするだけで、対談しているところがほとんどない。

 

恐らく目玉となる踏襲との差別化を図って「対談」形式をとったのだろうが、そんな形而上的対談ならいらないとすら思う。まじで●んで。

でも先生自体は非常にマジメに解説しているので、気になる本はいくつかあった。

気になる本:若桑みどり『イメージを読む』 

深見奈緒子『岩波セミナーブックス11 イスラーム世界の建築史』

イアン・ジェフリー 伊藤俊治、石井康史訳『写真の歴史 表現の変遷を辿る』

 

愛でたい読書4

BOOKorART? 本と美術が出会うところ 文:滝口明子

このコーナーだけは圧倒的に素晴らしかった。

まず本を使って創られた芸術作品(「ブック・アート」)を見て感動したし、その作品各々に関する解説も専門家が2ページの紙幅を費やし丁寧に分かりやすく解説してくれた。

こういった分野があること自体初めて知ったし、解説自体も非常に読み応えのあるものだった。このコーナーだけで1500円分のうち500円くらいの価値はあると思う。

気になった本:読む本はないので特になし

 

愛でたい読書5

自装礼賛 等身大の個性が躍如とするもう一つの装丁文化史 文:臼田捷治

自装、というのは作家自らが己の本の装丁を手掛けることである。

その歴史を辿った文章・・・といいたいところだが、解説作品の時代が明治~昭和で終わっているのが非常に残念だった。

平成令和にもそういう作家は少なからずいるように思うのである。当時より「同人誌文化」等も活発になっているだろうし。

自装がひんぱんにあった時代(明治~昭和)と、現代(平成~令和)をうまい具合にかみ合わせてから論じてほしかった。ここで解説を担当する割には、筆者の好み・見聞が非常に狭く感じられる。

気になった本:読める本はないので特になし

 

愛でたい読書5

堪能!アーティストが手掛けた本

ページが余ったから2ページ編集部で作りましたよ~感があるページ。

ちゃんとページの計算をしましょう。

そして掲載する本も総じて「新しみがない」のもなんとかしてほしい。

あくまで芸術雑誌の編集者なんですよね?

もっと我々の心をビンビンにさせるような装丁・アーティストが手掛けた本ってなかったんですか?

こんなつまんない2ページ作るんだったら、装丁繋がりで祖父江慎の本とか取り上げてほしかった。だって今の本のデザイン語るうえで絶対必要でしょ。そぶちん。

気になった本:特になし。というか編集者ならビンビンさせる本一冊くらい取り上げろよ馬鹿。

 

愛でたい読書6

絵画のなかの「読む時間」

読書をしている人々を描いた芸術作品を紹介するページ。

西洋美術好きとしてはなかなか興味深いコーナーで良かったけれども、7枚中6枚西洋美術ってちょっと偏り過ぎじゃない?とも思う。

あとやっぱり表紙にもなっている作品・グスタフ・アドルフ・ヘニッヒ《本を読む少女》(1828年はいいですね。是非生で見たい。

あとジョヴァンニ・ベッリーニ《読書する聖ヒエロニムス》(Ⅰ480-1485年頃)もこの頃の遠近法にしてはなかなか良い感じな気がする。気になりますね。

気になる本:読める本がないので特になし。

 

愛でたい読書7

本と出会う場所

初っ端所沢にできた例のKADOKAWAミュージアムが出てきます。漫画だけかと思っていtら書籍もたくさん取り扱っているんですね。これはちょっと行ってみたい。と思ったら入場1200円・・・いや入場料とるんか~~~~~~~い!!!なら二子玉の蔦屋書店で十分ですわ。

その他は特集1でインタビューした人々の良くいく書店をインタビューしているのですが、ここで「Title」とか「国立国会図書館」とか「大きめの新刊書店」とかつまんねー回答してる奴らの鼻っ面全部ぶっ叩きたい。つっっっまんねーな!!!芸術家云々の前にまず人間としてつまんねえ!!!

気になった本:本を紹介するページじゃないので特になし

 

以上で「愛でたい読書」特集は終わりになる。

 

 

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その他の特集の感想に移る。

 

インタビュー連載vol.31

原田マハ、美のパイオニアに会いに行く

:圀府寺 司(こうでら つかさ)

ゴッホ研究の第一人者らしい。

この度めでたく『ファン・ゴッホの手紙Ⅰ・Ⅱ』(新潮社)を刊行したらしい。この書籍と言うのは、厳選された265通の手紙と共に、添えられたすべてのスケッチをカラー図版で収録したものとのこと。p.84 卒論に使えそう。あと18000円は意外と安いなと思った。スイッチ我慢すれば買えるじゃん。でもスイッチ買っちゃうね。

結構読んでいて面白い話が多かった。例えば子孫のゴッホ家がまだ秘蔵している手紙を所有していることとか、テオにとってのゴッホの存在であるとか。

あとこの圀府寺さんが美術史家になるまでの道のりもなかなか面白かったわね。初めに見たゴッホ作品が贋作、であるとか。そのことに対し、圀府寺先生は以下のように述べていらっしゃる。

「事前に画家の名前を知っているだけで、すでに色眼鏡をかけているわけです。作品の背景、歴史を知っていると、その流れの中で見ることにもなるし、色眼鏡は結局、必ずかけているんです。それを自覚し、たとえ色眼鏡を外せなくても、外そうという意識を持てるかどうかが大切ですね」p.82

心が洗われる・・・。

僕が画家の個展よりも美術館展が好きなのは、ちょっとここにも通じるのかな~とか生意気にも思ったりした。

美術館展で一番お気に入りの作品を選ぶと、大抵画家の名前はほとんど無名で、聞いたことがないような画家だったりする。メインとなる有名な画家の作品でもなく、何気なくさらっと置かれた作品の数々・・・のなかに僕の「名作」はあったりする。ポストカードになっていることも多いがなっていないことも多い。なってない時は待ち受けにする。そして、こういう発見があるからやめらんね~になるのである。展覧会やめらんね~。

画家の個展・・・例えば一昨年開かれた「ゴッホ展」のようになると、全部ゴッホが描いたものだから全部凄い!!となってしまう節がある。だから個展に行くときはよく注意しなければならない。よく見ろ。ゴッホの初期のスケッチなんて中学生レベルなのである。僕の方が多分上手い。

まぁ正直僕はそこまでゴッホに傾倒してないのでこれを読むこと・手にすることは多分ないだろうけれど、この圀府寺さんが書いた本と言うのは読んでみたいと思った。

 あと「圀府寺」と言う苗字が日本に10人しかいないことにも興奮した。(苗字net調べ)

 

artnews

春江水暖~しゅんこうすいだん~

風景の転生/古典の再生 文:岩倉聖哲

中国と言えば、川である。

世界史やっていた人にはピンとくると思う。

そう僕達は中国史をやるたびに何度何度もあの「いっちょくせん」と「うにょうにょ」の長江と黄河の線を書いてきたではないか。

そしてこの「春江水暖」というのは、「川の国」中国の「川」を主題にした映画らしい。もうその地点でワクテカするのだけれどもどうやらそれが凄い傑作らしい。ワクテカワクテカ。川の流れを描きながら、血縁関係を重んじる中国の家族を描いたものらしいよ。ワクテカワクテカワクテカ

めっちゃ見たいと思っちゃった。

 

artnews

コレクションによる小企画

男性彫刻

股間若衆に春が来た 文:木下直之

東京国立近代美術館で開かれる男性の裸体像が並ぶ小企画に寄せて書かれた文である。

タイトル通り注目するのは無論股間

そしてこの「股間若衆」というのは「またぐらの表現に異を凝らした男性裸体像」p.97のことらしい。筆者が名付け親なんだそうな。馬鹿なのか。最高だな。

そしてまあ股間若衆の股間について延々と語るのがこの文章なんだけれども・・・やっぱみんなち●こすきなんだなぁと思った。こんなん美術手帖に絶対掲載されないでしょ。

んったく、誰だい?こんな面白いち●こ作文書いたのは!!おもろーじゃないかおもろーおもろー!!

と思って巻末の筆者の経歴見たら静岡県立美術館館長でした。『股間若衆』『せいきの問題』など著書多数。p.99

え・・・あの静鉄の駅の美術館の館長こんなこと考えてたんか・・・。

股間若衆とかせいきとか・・・・ずっとち●このこと・・・ち●このこと考えてたんか・・・。

ええ・・・。

え・・・えええ・・・・・。

 

REVIEW:編集部の展覧会見て歩き

石岡瑛子って聞いたことあるけど聞いたことあるだけだ。

大小島真木ってもう名前が凄い。

マティスの空間は行ってみたいと思った。多少デブでもマティスなら赦してくれそう。

キューピー人形を魔改造しただけじゃんか、これを「芸術」と言って発表し評価するなんて現代アートはやはり理解しえない分野。

 GLOBALNEWS 2021 FEBRUARY

工藤哲巳の作品はエモいと思った。90年に亡くなっているけれど朽ちてない。

紀元前79年のミイラを再現する際に、100年以上前に唱えられた方法が採用され、そして無事成功したらしい。世界史じゃん。

ザネレ・ムホリさんは黒人女性でレズビアンの芸術家だそうだ。美人。なんか存在が美しい。

ジェフリー・エプスタイン。また美しい人の名前を一つ知ってしまった。

 

国宝クラス仏を探せ!

第2回:田沼意次菩提寺に関東最古の木彫り

世界史すこすこ西洋史学専攻卒業のまぐろどんには全然ち●こがピクリともしない題材であった。

ただ、ここ以外は東洋西洋殆ど世界史特集であった気がするからまあ、ここで日本美術の顔・仏像の連載持ってバランスとっておきましょうねー作戦なんだろうなあ。単行本化も視野にいれてそう。させない!!!

 

図書館を建てる、図書館で暮らす

第9回:なぜ書棚を作るのか 文:山本貴光

《森の図書館》と言う何やら凄い空間が東京にあるのは知っていたのだけれども結局行かずに一生を終えそうである。でもなんか読む限りこの山本さんと言う緒は図書館に住んでいるらしい。どういうことだぁ・・・?

後半書棚の写真が掲載されている。右は手を加える前、左は手を加えた後と言った具合に。確かにすごく見やすいしすっきりしている。右もすっきりしているのだけれども左はもっとすっきりしている。

きっと本棚検定1級持ちなんだろうな。この人は。

 

至高の名画を支える「タキヤ」のピクチャーレールとファン・ゴッホ美術館

まず名画を支える「レール」というところに考えが及びもしなかったしそのシェアを日本企業が結構占めてるなんてもっと考えが及びもしなかった。凄い(こなみ)。

こういう企業をもっと新卒とかは知るべきなんじゃないかなあと思うけれども、こういう陳腐な問題自体何年も何十年も言われている気がする。インターネットは意外とどこにも繋がらない。インターネットは孤独を加速させるだけ。

 人間国宝 鈴木藏 志野焼に追い求める「心の宇宙」

焼き物の記事である。何もわかんなくてもどうやら凄いことは分かる。

でも焼き物は実は全然ぴんとこない。可愛いとは思うけれども、茶碗も皿も見た目が良ければ100均でいいかなとすら思う。よくない。

 

PICKUP

MOVIE:「閣下をお守りいたします」

韓国映画。読んで、見たいと思い、静岡でもやっていることを確認し、終わった。

BOOK:図鑑の国で、僕たちは生まれた

図鑑も基本ときめかないし好きではないんですよね。美術好きで読書の習慣もあるならば好きそうなものですけど。

RECOMMEND:特に気になったのは『羊飼いと風船』という映画。大半の映画は気になるものが多いけれど大抵見ないで一生を終える。

ぐるぐるキョロキョロ展覧会記:希代のプロモーターの原点を知る 文:小田原のどか

あのおにぎりで有名な山下清、そしてゴッホの裏には一人の男「式場隆三郎」の存在があった・・・こと自体も知らなかったし、この人についての本を読んでみたいと思った。

 

定形外郵便:堀江敏幸「適材適所の使い方」

近々どっかの頭いい高校か、そこそこの大学の受験評論文に出てきそうなお手本のような文章を書かれている。股間若衆とは全然違う。

あの人と食器棚:吉川修一さんの食器棚

食器はマグカップはちょっと興味あるけど、それ以外は興味がない。不器用で結構落として割るので、そんんあものに愛情注いでいたらもう立ち直れなくなりそうなので。

千住博の往復書簡:宛先 姜尚中

芸術とは、失われた理想を明らかにし、それに形を与えて発信していく行為です。p.127

千宗屋の飲みたい茶碗、点てたい茶碗:道入黒楽馬上杯茶碗銘「初午」

 「飲みたい茶碗」の日本語五収まらないくらい何度の高い文章で何言ってるのかもうわからなかった。ここだけ美術手帖だった。

 

GS I LOVE YOU

バカラの茶飲みがあるのは驚いた。

あと「静岡市近代美術館」が1ページ丸々カラーで広告掲載していてさらに驚いた。金あるの、あそこ。

 

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裏表紙までアートでクールでこれは良い。

 

以上である。

おおむね楽しく読めた。が、それは「股間若衆」や「春江水暖」の紹介等、メインの本特集とは違うところが多かった。

やっぱ本特集を定期的に組んでいないと、質の高い本特集は組まれないんだなと思った。「POPEYE」「BRUTUS」「&Premium」のマガジンハウスの本特集が総じて質が比較的高めなのはやっぱり年に一回、2年に一回程度の間隔で本特集組んでいるからなんだなと思った。

そういった意味でも、やはりはじめての本特集にして、あれだけ密度の濃い雑誌を作った「ケトル」は素晴らしい。

「ケトル」「芸術新潮」共に雑誌としての偏差値は比較的高いと思うのだけれども、初めての本特集においてこれ程にまで質に差が出たのは何故か。編集者の怠慢だと思う。

 

でもまあ、あの静岡県立美術館の館長があんだけち●こち●こ連呼する人だったとは・・・これが分かっただけでも十分な収穫と言えよう。

 

***

 

LINKS

ケトルの本特集は本当に質が高く良かった。素晴らしかったと思う。

 

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その他マガジンハウスの本特集の感想

「GINZA」はこの号で初めて本特集を見たけれど結構定期的に組んでんのかな。結構無縁な雑誌だったからノーマークでした。

 

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「U-29 新しい働き方と暮らし方 いま世の中を沸かせている20代のリアルライフ」-僕達の人生は見えない道を歩くようなものだから-

 

 

 

 就職だけが全てじゃない。

 

 

「U-29 新しい働き方と暮らし方 いま世の中を沸かせている20代のリアルライフ」(枻出版社 2017年)の話をさせて下さい。

 

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【概要】

いま世の中を沸かせている20代のリアルライフ

 

働き方が多様化している。

大学に進学して、就職活動をして、企業に就職して・・・・・

そんな流れが、いまや当たり前ではなくなった。

「どこに就職するか」を選ぶ時代から、

「就職をするかどうか」を選ぶ時代になってきている。

「就職≒安泰」ではなくなったいま、

自由な働き方や自分らしい生き方を求める人々が増えており、

世の中もそれを認める風潮にある。

ここで取り上げるのは、既存の枠組みにとらわれて、

成功を収めている若き起業家と、新しい働き方を実践する人々。

「起業家」などというち遠い存在に思えるかもしれないが、

彼等をもっと身近に感じてもらいたい。

そういう思いで、プライベートにも存分に迫った。

いつかは起業したい、独立したい。

漠然とそう思っている人は多いはず。

これは、そんな悩める20代に向けて、

20代編集者が作った一冊。

企業や独立を考える人々、自分らしい働き方を模索する人々の

ヒントやきっかけになることを願う。

 

pp2-3 本文より

 

【読むべき人】

・起業を考えている人

・会社に勤める以外の生き方を模索したい人

・は、あえてこの2017年に刊行された本作を読むのはいかがでしょうか。 

 

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【感想】

今現在フリーターで月々手取り12万イェン(一人暮らし・家賃月々41000円)で暮らしているがどうも苦しい。

バイトという身の雀の涙ほどの給与も苦しいと言えば苦しいのだけれども、

多分僕、会社勤め自体がなかなか苦しい人間なような気がする。

 

ADHDASD併発気味であるのを言い訳にしたいところだけれども、

今思えば、普通に学校の大多数の行動も苦手な方だった。

出来ないことはない。そこまでひどくない。ただ学校でのつまらない・興味がない授業はとにかく寝て過ごした。中あと高一貫の5年間の昼寝のせいかとしてついたあだ名は「眠り姫」。体育では一人だけ身体の動き方のぎこちなさが悪目立ちした。球技が特に嫌だった。自分の運動不足が連帯関員になる理不尽さ。極端に手先が不器用で、大抵のことは人並み以下にしかできない。家庭科の裁縫はいつもビリだった。小学校の時にミシンの分からないところを何度も優しげな山田先生に効いていたブチギレられたのはトラウマだった。「入学式」「卒業式」で動くのも好きじゃない。当日はまだいい。特に前日の準備においては自分は何をしたらいいのかいまいちわからずぼうっといていた。一方でこの文章力や美術、料理・・・中途半端な才能を発揮する分野があるのも自覚している。ただそういったわずかながらの才能は圧倒的「生きづらさ」の前では全く意味をなさない。心理テストは必ず「芸術家タイプ」。

なんかぎこちなかった。

けれどそれは小学校中学校高校大学学校では赦された。

しかし社会では赦されなかった。

ことを、大学卒業後の5年でしみじみと感じている今ぼんやりと思うのは、「会社勤め以外で食っていきたい」「いっそのこと起業でもしちまいたい」ということ。

大勢の中にいるのが苦手ならいっそのことトップに立ってしまいたい。

その下に人がいようがいまいが、私が指揮をとればその事業が続く以上、私の居場所は保証され、且つマジョリティーの中のマイノリティーであることを逆に活かすことにつながるのではないか。

という計画・・・いや幻想が最近頭から離れない。

何かをしたいから起業するのではなく生きたいから起業をする。

甘いのかもしれない。

ただ時間は確実に刻一刻と過ぎていく。気づけば2021年も6分の1終わろうとしている。

今現在僕は27歳になる。今年28歳になる。

30までにはざっくりとした人生の指針を決めておきたい。

 

と思っていた矢先。静岡駅前の週末古書店・琵琶舎で目についたのが本書である。

しかもお値段200円。買わない手はない。買うっきゃない。買った。

 

ムック本である。

中身は手抜きシンプル。本書は20代で起業した人々に、たちあげた事業についてのインタビューとプライベートについてのインタビューをし、それをただひたすらに掲載している。

前半の9割は、25人(24事業)の起業家達について、1人当たり4-6ページ使って書かれている。

事業についてはそれぞれ分かりやすく真面目に掲載されている。事業内容、コンセプト、理念、起業した企業の詳細(名前・資本金・従業員数等々)、起業に至る経緯、事業の過去現在未来(展望)。

プライベートは多種多様。身長・体重・座右の銘、家賃・最寄り駅・給与の使い道、1日のタイムスケジュール、趣味、本、新聞、スマートフォンのOS・入っている音楽と入っているアプリ、多々。

加えて巻末・後半の1割は、22人(+1人)のクリエイター達を、1人当たり0.5-1ページにわたって掲載。

職業(ユーチューバー、カメラマン、MV監督、詩人、ニート株式会社代表等)、経歴、目標等々。

起業家、クリエイター・・・、会社・公共に雇われる以外の己の食い扶持を見つけた20代達を、20代に対して紹介するのが本書の目的のようである。

ましてや編集してる側も20代というから、20代による20代のための20代の雑誌ということになる。*1

 

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そしてこれを一通り読んだわけだけれども・・・「なるほど」

うん、なるほどって思った。

というのもシンプルにインタビュー記事が羅列されているだけだから本当それ以上それ以下でもないんですよね。何も思わないというか何の感想もないというかなんというか。ああそうなんですね、みたいな。

そんな誌面にそれ以上の何の感想を求める?「なるほど」しかないでしょ馬鹿。

 

それでもまあいくつか気づいたことがあるので、

メモをしておく。

 

まぐろどんmemo

 ・OSは絶対アイフォン

・学歴はMARCH以上、ほとんどが私立。

・マイナーな会員制のサイトの運営している会社がほとんど。その大半が今2021年現在もマイナーなサイトであることが多い。しかし「タップル」は除く。

・イケメンは案外少ない。

・基本お洒落な人が多い。女性も。そして男性も。

・読書をする人が多い(そして自己啓発書が多い)

・都内というか23区内に住んでいる人が多い

・大学を中退していてもそのほとんどが「意識高い中退」

・学生時代になんちゃってインターンではなく「ガチのインターン」をやっている。

・留学しがち

・意外とみんな黒髪。男性で茶髪はほとんどいない。

・当挙に住んでいるにもかかわらず意外と早く結婚している人も多い。背負うものが違うのか・・・?

・見た目と事業がマッチしている人が多い。奇抜なお洒落な恰好をしている女性が手掛ける事業は女性下着。シャツとカーディガンが似合う男性はIT。性欲強そうな顔はタップル。二枚目は休日提案型サイト等。

これは恐ろしいこと。なぜなら見た目で何しているか大抵わかるということだから。

・休日も仕事をしている人と、休日はしっかり休みをとっている人は半々。でも勉強時間、読書時間を一日のうちにとっている人は多め

・意外と小太りが多い。多分西麻布と恵比寿で美味しいものをたくさん食べているんだおと思う。そして美味しいもので出来た脂肪には貫禄がつく。

・残念ながら、多分実家が元からお金持ちっぽそうな人も。3分の1くらいは。「起業して成功する」にはDNA・遺伝の力も必要なのかもしれない。

座右の銘一位:Done is the better than perfect.

 

ざっくりこんな感じである。

薄い。

薄いとは思うが、特に僕の打つ事業を展開している人もいなかったので、

まあこんなもんかなと思う。

でも何人かの人が挙げていた「Done  is th better tha perfect.」これは凄くいい言葉だと思ったので、僕も座右の銘にします。

 

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でもここから面白いのが、これが「2017年刊行された雑誌」ということ。

もっと言うと2017年3月。

じゃあ、2021年2月・・4年後に当たる今、彼等が何をしているのか。現在彼らの会社(作品)はどうなっているのか。

検索すればすぐに分かる。

ああこの会社はコロナ禍でもまだ続いているんだな。コンセプトは変えず細々としかししっかりと続けているんだな。あ、会社の名前変わってるな。講演会の仕事がメインになってきているんだな。同じ事業だけど業界を絞って違う形で提案しているんだな。等々。

 

ただぱっと見、この3年で成功している事業と微妙な結果になっている事業には一つの共通点があることに気づいた。

「何をしているのか分かりやすく言える事業は強い」。これだ。

この号で「フレンチトースト専門店を手掛ける」女性が出てきている。今現在どうなっているか検索したところ店舗が増えて、テレビにも出演していた。ツイッターに何千と言うフォロワーがついている。

一方で「バズるイベントを企画する」会社の代表2人が出ている。今現在は会社名が替わり、1人が離脱した模様。「works」で挙がっている事業も、本誌に掲載刺されている事業のまま。刊行時以降ここに並べられるような大きい仕事は手掛けていないということだろう。当時は勢いがあったのだろうがその後はいまいち・・・といったところか。

また、「人が集まれる場所を作る」というユニットがクリエイターのページに出ている。今現在は解散し、その場所自体も設立で来たのかどうか・・・までは知らないがとりあえず今は現存しないようである。

「バズる」「イベント」「人が集まる」こういった耳障りがいいけれど、具体性が伝わってこない事業は継続率成功率がそこまで高くない・・・気がする。

あと、やたらと「スポーツ観戦型」「休日提案」「お笑い」「クリエイター」・・・等々登録制のプラットホームサイトを運営している方が多かったけれども、今現在一日に一体どれだけの人がこのサイトを訪れているのだろうか。

曖昧ないい感じの言葉でも誤魔化してもダメだ。

スキマを狙ってサイトを作るだけでもダメだ。

自分が何をしたいのか。社会に対してどう貢献していきたいのか。

その手段のひとつとしてあるのが「起業」なのであって、

「起業」を目的としてはダメなんだと思った。

 

僕は何をしたいのか。

僕は一体社会に対してどう貢献して・・・生きていきたいのか。

僕の人生の目的は。

とりあえず、「生きる」ために起業はやめておくことにした。

 

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以上である。

なんか雑誌自体、誌面自体は20代編集者によって作られたものだから非常に薄く感じられたけれど、その分いろいろ考えさせられてしまった。

働くって、何なんだろ。

僕はいったい・・・うう。

 

幼稚園の時一人だけ塗り絵が圧倒的に下手でそれが妙に気になっていた。小学校の時から前なら絵をすれば角度が変だと怒られた。中学の時はピアノの下にもぐっていたらヘンな子と陰口をたたかれ同級生から距離を置かれた。高校時代は授業ずっと寝ていてつまらない先生の授業何故聞く必要があるのか本当に謎だった。大学時代は恋愛も不器用過ぎてうまくいけず女の子同士の友情もスピードが早くてちょっと苦手て就職活動ではいろんな会社があることが分かったけれどどこに入っても私が働いていて働いていないイマジン、そして1年半で会社辞めニートしてフリーターして社員もう一度して、フリーターして・・・「まぐろどんさん、真っ直ぐ立ってる?」「え?」「傾いてるけど」塗り絵を綺麗に塗るのが下手で、動きがぎこちなくて、まっすぐにすらどうやら立てていないらしい僕に、いったいなにができるだろう。

もしかして、起業まではいかなくとも、就職以外に何か道を捜せというのか・・・?

 

ある意味、生き方を考えさせられる一冊。

 

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この雑誌も一種の、ただの「耳障りがいいだけの雑誌」な気がしないこともない。

 

*1:なお枻出版社は、この「20代が20代にむけて20代の作る」雑誌をU-29シリーズとして出版していたようです。巻末での宣伝を見ると、他の号の特集は「マナー」とか「休日の過ごし方」とか。POPEYEとBRUTUSでよくね、と思ったのは僕だけではないらしく2021年現在には続いていないシリーズのようですね。そして今検索して知ったんですが、この会社ほとんど潰れてて草・・・生えない。荒野です。枯荒野。

つくみず『シメジ・シミュレーション02』-ぼっとうしているときひとはもっともひとのかたちをしている。-

 

 

 

みたしゅんかん、

なみだがでそうになった。

 

 

 

つくみず『シメジ・シミュレーション02』(KADOKAWA 2021年)の話をさせて下さい。

 

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【あらすじ】

ちゃんとしていなくても

全然いい気がする。

 

日常4コマで展開するシュールな学校生活

 

帯より

 

待望のつくみずハイテンションハイスクールラヴ♥コメディ最新刊!!

何と今回は!?部活の先輩や「自称・美少女」を初めとする新キャラと、

ショッピングモールや穴掘り機等しめじちゃんに新しい出会いがいっぱいまっているぞ!!

いよいよ穴掘り部本格始動!?

そして今巻で意外な人にスポットライトが!?

 

しめじのお姉ちゃん「埴輪とモササウルスの化石が同じ地層にねぇ」

しめじ「穴から歌も聞こえる」

しめじのお姉ちゃん「それはずいぶんと・・・ちゃんとしてないな」p.70

 

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【感想】

シメジ・シミュレーション(略してしめしみ)2巻である。

僕はこれを見た瞬間「ああ~~!!!!!!」とその場で声をあげそうになった。
下手すれば続きが出ないと思ってたから。都築がよめないと思っていたから。

 

というのも、このつくみず先生はぶっちぎりで最近ツイッター病んでいる漫画家ランキング2021(まぐろどん調べ)ナンバーワンなのである。

マイナス思考の呟きと、閉塞感溢れる少女達のイラストが繰り返し投稿されている。

ネガティブな発言があるたび日本語英語国境を越えて作者を励ますようなリプが無限に飛んでくる。しかしに英語は愚か日本語でもその言葉は彼には届かないようで投げかけたファンは己の無力さを思い知らされるのである。

灰色を基調とする即席で描かれたと思われるイラストは、どこか病んでいるものが多い。無表情な子は無表情泣いている子も無表情、笑顔の子も無表情。

しかしのその鬱屈が僕の心にクるものがあって、ずっとフォローしている。

病んでいる。

健康になってほしいけれども、

なってほしくない。

彼の紡ぐ「病んでる」言葉たち・表情に乏しい即席で書かれた少女たちは、

なんか自分の心に抱えたモヤモヤや不安を可視化してくれる。

日々鬱屈不安に潰されそうなのは普通のことだと何度も教えてくれる。

辛い死にたいもう嫌だ、そういうのをすべて肯定してくれる。

気がして。

 

だから、昨年の冬頃にツイッターの更新がパタリと途絶えたのは本当に焦った。

とうとう●んだのかと思った。

とうとう自●したのかと思った。

どうすればいいどうすればいい。

どうしても生きていてほしい。どうしていも生きていてほしい。

その、非常に自己内省的な絶望を全て総じて肯定する尊き存在・・・。

だからまぁその、僕にとってつくみず先生は漫画家・・・以上に命を繋ぐツイッタラなのである。

 

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あさもひるもうまくこないなかでぶんしょうをうつことがわたしのしめい。

さけにおぼれてゆくなかであなをほることがせんせいのしめいであったのように。

だからこれがうまくいかないときわたしはくびをしめてそのばでばたーんしたくなる。ばたーんばたーんばたーん。

なんどもたおれていくよ。

まいにち。

ばたーんばたーんばたーん。

どみののように。

 

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左がまじめちゃんで右がしめじ。かわ。

 

だから、新刊を丸善で見た時本当に驚いた。

まさか新刊が出るとは。

ああいった押しつぶされそうな中でも作品を連載し続けて下さっていたとは。

続きなんて絶対読めないものかと思っていた。

また、読めるとしてもこんなに短いスパンで続きが読めるなんで思いもしなかった。

 

1年。

とはいえど、1巻を手に取った時と僕と僕を取り巻く状況が大きく変わってしまった。

独り暮らしになったしコロナ親の病気は進行するし抗うつ剤がないと不安になるしコロナ下手すれば朝が来るまで眠れない、コロナ、一度リスカ未遂を職場でしたこともあった、気がする。

ああ。

つくみず先生は無事に2020年を耐え延びて2021年こうやって新刊を出すことが出来た。

ああ。

そしてその一介の読者である私も2020年を耐え伸びて2021年こうやって新刊を目にすることが出来ている。

この1冊を購入することは、その当たり前のようで当たり前でない奇跡の重なり合いで成立する事象・・・なんと尊いんだろうと思った。

だから僕はこの新刊を見た瞬間、涙が出そうになった。

 

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しめじをちゅうしんに

みんなちがってみんないいがせいりつするようしみゅれーしょんされたせかい、

だから「しめじ・しみゅれーしょん」なのではないか。

そんなのげんじつにかんぜんせいりつしないのだから。

 

隣人さん「オセロだったら全部入居なのに!」p.32

 

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作品自体は少し雰囲気が明るくなる。

新キャラが登場する。部活の二年の先輩、三年の先輩。加えて1巻でもちらっと出てきた隣人や才能あふれるクラスメイト。

新場所が登場する。ショッピングセンター、土器、骨、埴輪、水着、他の部活に入っている人々。

しかし佳境に入ると、僕達読者は思い出す。

この話は、絶望と直面する話だったと。

 

今巻は先生が主役の巻でもある。

彼女はダメな人間である。部活動の顧問としての活動おロクにやらず常に酒を飲んでいる。ぐびー。言葉はポジティブではなくネガティブ。どこかペシミスト的なところもあって、彼女には常に緩やかな絶望感が漂っている。

そんな彼女がある日夢中になれることに出会い、それを喪失するのが今巻。

何もかもを諦めていた彼女の、生きがいと思っていたずっと集中していた一つのことが喪失した時彼女はどうなってしまうのか。

心の穴を埋めていたものが亡くなった時。その穴の深淵はいったいどれほどに深いのか。

そしてその果てに見た情景は。

これは喪失と、明日を生きる僅かなる希望の物語。

 

先生「教師になったんだからこんなもの作ってちゃだめだと思ってやめたのに・・・そのせいで結局大きな穴を開けようとしてたんですね」p.128

 

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意外と使える帯についている人間関係表。今巻は本当この表に尽きます

 

各話簡単に残す。

 

 

■11 いろいろな人

先生「その間 先生は穴を掘ってますね」p.7

一番初めのページで今巻の方向性が提示されていることに気づく。先生は髪を切るほど本気だった。今作は連載の単行本化ではあるけれども、本当にそうなのかと思う。それにしては計算されすぎてはいないか。あ、あと、あたらしいふたごのかたち。

 

 

 

■12 いろいろな言葉

まじめ「しめじちゃんは私の知ってる言葉しかしゃべらないよね」p.23

僕は年々喋り下手になっている気がする。すみだちゃんのようにスケッチブックをもって総てを伝えたい。日本語だけじゃ足りない。言葉だけじゃ足りない。言葉と言葉の隙間にあるこの先生な感情をあなたはどうしたら理解してくれるのことはばはふかんぜんなじょうほうでんたつしゅだんのつーる。

 

 

 

■13 お隣さん

お隣さん「あなたも食べる?かまぼこ焼いちゃったし・・・」p.31

僕は最近人を笑わせるために色々様々言っていたら情報伝達がさらに遅れをとって下手になったような気がする。でもまあ実際本当は真実とか嘘とか僕の言いたいこととかどうでもいい、目の前にいる人に笑ってほしいそれでじぶんのそんざいがぜんこうていされたようにかんぢる。

 

 

 

■14 まじめちゃんの家

まじめ「それぞれ名前があるんだよ この子はカブの”なお” みんな私のお友達」p.42

分かる僕もぬいぐるみ一つ一つに名前を付ける、デデ・ビューゲル。クリームチーズ、めいじ、エゴン・シーレ、哀しみのダンテ、アナスタシア・・・寄り添ってくれる言葉華朝長僕を滅多に裏切らないなんてとうときああぬいぐるみはおともだちだった。にんげんのことばがつうじなくなってもきみたちのことばはわかるよ。まじめちゃんはちゃんと女子高生して親と良好な関係を築いていて真面目だなあと思う。僕はフリーターで親とも良好と言い切れる形でもなくて真面目ではなくふまじめちゃんである。

 

 

 

■15 図書室の人

よみかわ先輩「読む本を選ぶときは#木”えおイメージするといいんだよ」p.55

読んだ本の数だけ触れた者の数だけそれがやがて合流し太い幹となるのならば僕達人間は読み続けなければならないよむのをやめたとたんにほそくておれてしんでしまう。

 

 

 

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ぜつぼうとうっくつとあきらめにうちのめされてすべてにむきりょくになったときにこううつざいをのんでぼくはむりやりにほんのあしでたつけれどもそれでもおもい。げんじつはおもい。そのおもさにたえかねてだからぼくはなでかたで、つねにかたこりしているんだよ。

 

 

 

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■16 掘り出しもの

古代の人「狩りに行こうかな」p.65

ちゃんとしていないことを否定しなくてもいいようにちゃんとしてない人を否定しなくてもいいでもできればぼくはちゃんとしたひとでうまれたかったしいきたかったちゃんとしていないことはじゆうだけれどもときにさすごくいきぐるしくかんじられることもあるからね。

 

 

 

■17 ショッピングモール

しめじ「眠ると引力が弱くなるんだろうか」p.82

トゥルーマンショー見たい見たい見たい見たい見たい5年以上言い続けているけれど未だ見られていない、見たい。5年と1日目。うつはえいきゅうきかん。

 

 

 

■18 先生のかたち

まじめ「すっかり”あな中”だね」p.88

何が好きか何に没頭するのか何に心を奪われるのかそういった積み重ねでぼくたちのかたちはできている。

 

 

 

■19  穴ほり機

しめじ「だけどみんな自分のやりたいことなんて わかってるのかな・・・私はよくわからない・・・」p.109

やりたいことをやっているつもりでもいつの間にか心に虚無感しか残っていなかったりする。気づけばやらなければならないこととやりたいこととやりたくないことが混同して混乱してしまって一体自分が何をやっているのが何をしたかったのか分からないそんな日々をずっと大学卒業してから過ごしている気がする。だから総てに折り合いをつけながらやっていくしかないのだと思う。やりたくないことがやりたいことなのかもしれないしやらなければならないことがやりたいことかもしれないしやりたいことがやりたくないことかもしれないから。

 

 

 

■20 地球ドーナツ

すみだ先輩「だけど校舎裏で何か作ってる先生を見て・・・初めは何を作ってるかわからなかったけどものすごく真剣に作っててそれ見たら私学校にちゃんと来なきゃと思って・・・」p.120

僕達は、知らないうちに誰かを傷つけているようにしらないうちにだれかにきぼうをあたえてていることをもっとじかくしなければならない。

 

 

 

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本当にしめじってこの角度で映えてるんだなびっくり!の図。

 

 

 

以上である。

無論内容も素晴らしかったんだけど、でもそれ以上に新刊が出た喜びとそしてそれを買うことが出来た喜びの方が勝った。

この漫画は一読だけだはなく何度も読むこと、そして本棚にあることによって真価を発揮すると思うので、今巻をペラペラ読み返しながら、灰色のツイートに一喜一憂しながら、来年もまた奇跡の出会いを果たせること信じて、

気長に3巻を待ちたいと思う。

 

 

しにたいといっているやつはほんとうはしにたくはない。だってほんとうにしにたいやつはもうしんでいるのだからだからそういってへらへらりすかしているうちはおまえはつよいのだああ、すべてがゆるされろああすべてがゆるされろ。このげんじつこそが「みんあなちがってみんないい」がせいりつしないしみゅれーしょんであればよい。

まぐろどん・しみゅれーしょん。

 

 

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先生「掘り続けるうちにだんだんこれこそが自分のすべきことなんだって気がしてきて・・・このために自分は生まれてきたんだって」p.66

 

***

 

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1巻の感想。今多分僕のなげやりぽいんとは80点くらい。

 

tunabook03.hatenablog.com

 

高宮智『黒猫恋愛組曲』-ブックオフ無限に広がる記憶の森。-

 

 

 

記憶の森で、

また会おう。

 

高宮智『黒猫恋愛組曲』(小学館 2004年)の話をさせて下さい。

 

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【あらすじ】

魔女と黒猫が仲良く暮らしている世界を知っている?

そこは辛いことも哀しいこともない楽園。

だけど、魔女が死んでしまい残された猫が一匹・・・。

どうやら彼女は人間に生まれ変わっているみたい。

魔女を捜しに人間界へ行った黒猫の運命は?

 

胸に響くファンタスティック純愛物語集♥

 

*収録作

黒猫恋愛組曲

記憶の森

真夏の銀の夢

氷の熱度

時色迷宮

 

裏表紙より

 

【読むべき人】

ショコラの魔法とか、ゴシック系の女児漫画に胸をときめかせていた元少女

ショコラの魔法「ちゃお」でしたが、ショコラ台頭前に作家もちゃおで活躍されていました。その後、ちゃおのお姉さん雑誌「chuchu」(廃刊)に異動しましたが)

・2000年代特有の尖った少年少女のイラストが好きな人

・なんかちょっと深読みできる少女漫画が好きな人

(改めて読むと言い回しやキャラクター設定など練られていることが分かり再発見があったので)

 

【感想】

 

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証左

 

この漫画は、いつどこで入手したか鮮明に思い出せる数少ない漫画である。

2004年12月ブックオフ清水岡町店だった。

当時この高宮先生の存在は知っていたが、別に好きでも嫌いでもなかった。変わった瞳の描き方をする作家だなくらいにしか思っていなかった。

そんなある日2004年12月、「エンジェルハント」購読の為に日々買っていた「ちゃお」にてこの作家の新刊が出ることを何気なく知る。

そして家族でブックオフに行ったある日・・・

「あ!!!」

今月発売した漫画がすでにもう並んでいる!!!ブックオフ!!!

しかも今月出た漫画が半額で買える!!!ブックオフ!!!

すごいぞ!!!ブックオフ!!!!

衝撃だった。このあたりから一人でブックオフに行くようになり、やがて女子中学生女子高校生になるとブックオフだけでは飽き足らず、a-too・鑑定団*1自転車で一時間強かけて中古屋へ行く日々が始まるのですが・・・それはまた別の話。

親にお願いして買って貰った。

それからずっと私の所有物となっている一冊である。

 

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よく見ると表紙の奈緒は手書き、裏表紙の志季はデジタルです。今はこういうのは滅多にないですね。

 

高宮智(たかみやさとる)先生。

は、2000年代の小学館「ちゃお」を中心に活動していた漫画家である。ちゃお本誌・ちゃおの増刊含め、読み切り掲載が主な活動だったと記憶している。確か中学生・高校生デビューが珍しくない少女漫画界において、一度OLを経てデビューしたのではなかったか。

度々三話で完結する連載*2ももっていた。「おとぎ話で秘密のキス」。長い直毛の女の子が主人公だったと記憶しているが、それ以上はよく思い出せない。その作品自体はあまり好きではなかった気がする。

作風は「ちゃお」っぽくねぇなと当時から思っていた。

ゴシック的な世界観で、ちょっと大人な内容。ファンタジーで基本色は黒。スクウェア・エニックス」「Gファンタジーチックな絵柄作風。

「ちゃお」のターゲット層である小学生女児でも低学年ではなく、高学年女児読者に向けて陣営に組み込まれた作家のようにも思う。そしてこの作者の世界に魅了された無垢なる少女たちはその後、黒執事」「パンドラハーツと出会いBLという世界を知り、順調に腐っていったのではないかと推測する。

現在検索してみると、掲載誌・媒体は違えど漫画家として活動されているようで嬉しく思う。作風も変わっているようで変わっておらず、安心する。

 

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今もこのロゴは使われているのかしら。このロゴは僕がちゃおっ子だった2000年代初頭にできた。それまでは単にFCと書かれたピンクのロゴだった。

 

久々に一通り読み返した。

以下簡単に収録された作品の、当時と今の感想や、思い出を簡単に記しておく。

 

 

♥黒猫恋愛組曲:【あらすじ】参照

志季「でも猫じゃないだろ 女の子じゃん」p.23

飼い主である魔女を亡くした黒猫が、

人間界で生まれ変わった魔女と再会する話です。

ただし魔女は「志季」という人間の男の子として生まれ変わっており、

猫も奈緒」という人間の女の子になって人間界に君臨します。

ところがどっこい、志季は魔女としての記憶を失っており・・・?

そこで志季の前で元黒猫の奈緒が思い出してもらおうと自由奔放ににゃんにゃん振舞うとやがて二人の間に・・・?

人間界で「黒猫」が「恋愛」するキュンキュンラヴストーリー♥

てな感じ。

話の大筋書いて思ったけれども、相当ややこしい話ですね。よく32ページにおさまったなっていう・・・。

ちなみに「組曲」要素はないです。

 

当時、この一冊の中で本作が一番好きでした。

そして改めて読んでもやっぱりこれが一番好き。

というのも、元猫現女の子である奈緒ちゃんがとにかく可愛いんですよね。

容姿もそうなんですけど、元魔女である志季に対して「ふりむいて~~~」「思い出して~~~」とにゃんにゃん奮闘する姿がとにかく可愛い。そしてちょっと冷たくされるだけですぐ泣いちゃうっていう。猫だから。

純粋かよ。可愛い~。

あと、黒猫姿。登場場面は非常に少ないんですけど、キャラデザが凄く凝っていてこれもまた可愛いんですよ。瞳の描き方が凄い。

猫姿人間姿共に可愛いって最強じゃないですか? 

 

そして再読すると志季君もこれまたカッコいいという・・・。

朝方、前世もそのように寝ていたからと、志季のベッドにいそいそ入り込んでいた奈緒を、

ドサッと押し倒して言う訳ですよ。

「でも猫じゃないだろ 女の子じゃん」p.23

ああ~~~~~~この一言最高です。

もう最高過ぎて二回抜粋しちゃったけどそれくらい最高。今(27しゃいフリーター)が読んでもグッと来るんだもん。強いですよ。ちゃおの台詞じゃないですよ。おこちゃまにはこの良さは分からないのではないか。

あと佳境で二人が喧嘩する場面があるんですが、そこでの台詞がこちら。

「好きだからぶつかることだってあるだろ おまえとオレの考えてることはズレてるけどそれが別れる理由にはならないだろ・・・」p.30

もうちゃおの台詞じゃないですよ。断言。このセリフを高校生で言える彼の良さ、おこちゃまにはまあ分からないでしょうよ!

 とにかく出てくる女の子と男の子、共にかわいい&カッコいいという最強の話ですね。

 

元魔女と

元黒猫の

新しい絆の名は

恋で p.36

 

あと「黒猫恋愛組曲」のタイトル通り、全体的に可愛く仕上げられているんですよね。[

「恋です」で普通物語が結びますか?いえ結びませんよ!!

32ページの読み切りであるのが非常にもったいないくらい、平均点数高めの作品だと思います。これが表題作になるのもわかる。

やっぱ当時「いいな~」と思ったものはマジでいい作品なんだということを教えてくれた一作。

 

 

 

 

♦記憶の森:朝吹珠生(あさぶきたまき)が一人暮らす館に突然現れた、黒衣の青年・賢木。彼が持っている鈴の音を聴くと頭痛がして・・・・?

待ってた あなたを 記憶の森で p.67

ネタばらしをすると、この珠生という女の子はとうの昔に殺されていて、でもそれを自覚せずに本人がぐるぐる館のなかを回っていて、そこに除霊師?の賢木がやって来て除霊をするって話です。

物語が珠生視点から入るので、所謂簡単な叙述トリックものになっています。

 

2001年増刊号の作品とのことですが・・・。

20年前の作品とは思えないくらい、朽ちてないと思います。

魅せ方・コマの動かし方が非常に良いんですよね。

且つ鋭利なタッチのキャラデザ・雰囲気も相まって、そこまで古い感じがしない。

この作品の年数隠して読ませたら「去年の作品?」とまではいかないまでも、「10年前?」「15年前?」くらいでしょうね。20年前?とはならないと思います。

多分当時の漫画オタクがこの作品読んでたら、物凄く持ち上げていたと思います。当時のサブカルに間違いなくぶっ刺さったはず。

そういった意味でもやっぱスクウェア・エニックス」「Gファンタジー」的漫画家さんだなぁとは思うのですが。何を思って小学館のましてちゃおに応募したんだ・・・。

 

本書の中で一番好きなのは表題作「黒猫恋愛組曲と言いましたが、

本書の中で一番記憶に残っているのはこれ、「記憶の森」です。

 

というのも、この作品と初めて出会ったのは、小学2年生の時に買った「ちゃおホラーコミックス」でした。

アンソロジーでした。表紙は確かあらいきよこ先生*3が描かれていて、いろんな作家さんのいろんな作品が掲載されていました。その中の一つが本作でした。

でもまぁ当時この物語のあらすじが理解できたかと言うと・・・全くできませんでした。

「あれ?これはどういう意味なの?」

と母に何度も聞いた覚えがあります。

「女の子がしんでたってことじゃない・・・?」

「生きてるけど」

「いや・・・殺されてるんだよ。これ多分」

「・・・?」

要するに、人生で初めて出会った「実は主人公が幽霊でした」物語だったわけですね。本作は。

そんなことを当時小2の私が理解できるはずもなく。

なんかもやもやを抱えたまま、次の話を読んだ記憶があります。

 

本書を購入した小6の時にはさすがに大まかに意味は分かるようになっていました。あーそういうことね、みたいな。主人公がお化けってことね、みたいな。

そして現在27歳フリータの時には細かいところ含めて分かっているようになっている・・・と自認しております。最後のシーンは、賢木とのキスで現世に対する未練が完全になくなって完全に成仏したことを表しているんだな、とか。最後鈴を落としたのは賢木が冷静さを完全に欠いていることを表現してるんだな、とか。初めに珠生が賢木を見たときに「真っ黒な死神」p.40と言いますがその直感は合っていたとか。

似たような話で最近話題になった映画「私はゴースト」、あれSNSで流れたときは見たくて見たくてたまらんかったけどなんだかんだまだ見てないな、とか。

 

でもまあやっぱり、ちゃお読者には普通到底理解が及ばない話ですよね。そら主人公の女の子なんて生きてて当たり前ですよ。死んでるなんて思いもしない。

それでも「ちゃおホラーコミックス」そして本書と2回コミックスに収録されるに至ったのは、前述したように作品自体に不朽の魅力が宿っているからだと思います。

 

最後のページが一番好きです。

賢木に抱きしめられた珠生が、最後の最後に本来の姿・・・朽ちた遺体になって言うんですよね。

「待ってた あなたを 記憶の森で」p.67

このフレーズはなんかずっと残ってた。

「あなたを記憶の森で待ってた」だったら残らなかったでしょうけど、「待ってた あなたを 記憶の森で」。良い倒置法の使い方だと思います。

なので本作のタイトルはずっと「記憶の森で」だと思ってたんですけどいま改めて見たら「記憶の森」でしたね。ちゃんちゃん。

 

 

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♠真夏の銀の夢:豪邸に住む病弱な美少女・千秋の家には、吸血鬼を閉じ込めた部屋がある。そこの扉がある日、開き・・・?

「・・・かわいそうに

生きたい気持ちと僕のことを好きな気持ちでいっぱいだ」pp.105-106

夏衣という吸血鬼がこの話と次の「氷の熱度」でも出てきます。が、この吸血鬼の話はあんまり好きじゃないかな・・・。単に好みもあるとは思うのですが、なんか32ページにおさまる情報量が圧倒的に少ない気がする。

 

この話では、館に住む美少女千秋ちゃんが、まぁ結論血を吸われて死ぬ話です。

こういう読み切りでも女の子・千秋のキャラクターが練られているのがいいですね。ストレートロング・細い身体・ただ見かけは大人っぽくても中身は多分年齢以上に押さないところとか、強がりなところとか。恐らく見えないところで、幼少期とか家族構成とかも考えられているキャラクターな気がする。

ただいかんせん、作者の画力が足りずいまひとつ可愛さが伝わらないのが惜しいかなあと思う。もっと過度にキャラデザしていいと思うのだけれど。特に大きな起承転結がなくキャラクターのやり取りで終わる今回は。

あと、最後のシーンがセクシーなのがいいですね。血を吸われて死ぬシーンがあるのですが、今は何とも思いません。童貞(メス)とはいえど27なので。でも小学5年の時は「エッッッ!!!」になった覚えがあります。

やっぱドラキュラの伝説が今でも語り継がれるように・・・エロいよね。吸血。いいよね。吸血。心の下半身にビンビンくるんだ。

 

♠氷の熱度:そんな夏衣にもかつで本気で愛した少女がいた・・・。

「吸血鬼や悪魔が教会を恐れるというのは嘘だ。本物の信仰で清められた教会など見たことがない」p.112

作中の冒頭で何気なく出てくる夏衣の言葉なのですが、なかなか厨二心をくすぐられるカッコいいセリフだと思う。

 

今作は夏衣の過去譚です。作者曰く美少女千秋ちゃんの血を容赦なくずっぴずっぴ吸っていた吸血鬼にもこういう過去があったんやで~という順序とのこと。p.108

当時は全く気付きませんでしたが・・・、確かに比べてみると繋がりや共通点が多くみられます。

繋がり。夏衣のいる場所。

中盤夏衣が、少女・紗希子を自身の住処である館へ連れて行きます。山中にある大きな洋館・・・というのがよく見ると前作「真夏の銀の夢」で出てきた千秋の住んでいた館であることが分かります。紗希子が死ぬ前からずっと夏衣はそこにいた、ということなのでしょう。

共通点。二つ。

一つは、ヒロインである紗希子・千秋共に死にそうな少女であること。見た感じ普段健康な人間の命の貪い吸ってそうですが、ここでも言及しているようにやっぱ死ぬ直前・消える直前の命が美味で、そして記憶に残っているのでしょう。

なんかわかんないけど、健康な人間だったらそのままちゅーぽいーで終わりそうな気がする。「真夏の銀の夢」の最後の吸血シーンがエロかったと書きましたが、例えばこの夏衣が童貞(メス)の私の血を、こんなエロく吸うかというと想像できなくて・・・。ガオー!って襲って気絶したところをちゅーって吸ってポイ!みたいな。ちゅーって吸ってポイ!多分この2人のバックにたくさんのそういう食事としての吸血があったのではないでしょうか。

もう一つ。綺麗なモノを見せる。

千秋の時には泉を、紗希子の時には鏡の間を見せています。「綺麗だろ?」みたいなことを言ってラブい雰囲気にしております。ただし千秋の時にはしなかったキスを、紗希子の時には容赦なくしておりそこに「遊び」と「本気(マジ)」の差が見られますが。

なんでしょうね。綺麗なものを見せることによって、消える直前の命の輝きが増すとかそういうことなんでしょうか。

以上のように、よくよく見ると結構丁寧に組み込んで作られていることが分かります。ただまぁちゃおの読者だと「同じ吸血鬼が別々の女の子の血をエロエロに吸っている!」くらいしか分かんないのが関の山ではないのでしょうか・・・。

あとこのイケメンどS冷酷吸血鬼の名前・夏衣の意味を調べたのですが、「夏に着る衣」から、「うすい」といった旨の意味もあるそうです。確かに奴は薄情ではある。

 

この「氷の熱度」本編の感想で言えば、後半ガラス玉がこの話では出てくるのですが・・・当時女子小学生だった僕はこの話を読んでビー玉をそれっぽく眺めていたことを思い出しました。でもいくら眺めてもいくら転がしても、紗希子のようにそれの美しさに胸を打たれることはありませんでした。

今は、どうだろう。

紗希子のようにろうそくの光を楽しめる大人になれているのだろうか。なれていない気がする。

 

 

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よく見ると英語ではなくわざわざフランス語で「黒猫恋愛組曲」と書かれていることが分かる。

 

♧時色迷宮:彼氏の川久保君と喧嘩して後悔している伽耶のもとに、時を戻せる魔女が現れる。長い髪の毛と代償に、喧嘩の時まで何度も遡る伽耶だったが、身体が勝手に動き何度も同じ喧嘩に至ってしまい・・・?

「時間を戻しただけなんだから

ビデオを何度巻き戻したって同じ映像しか流れないでしょ?」p.165

そう、この話では時間は巻き戻ってもただ巻き戻るだけで自分の行動すら制御できないんですよ。某ほむらちゃんガン泣き。

でもそういった逆境でも気弱な主人公が打開策を頑張って見つけて、明日へつなげていく展開がいいですね。

 

「川久保君の「そうじゃなくて」の続きの言葉が聞きたい」p.165

 

あと最後のモノローグも凄い深いんですよね。

 

あなたのおかげでわかったよ

ああしたかった こうしたかった 

やり直して全部 未来でできること  p.178

 

凄い深い。

後悔ばかりしていても仕方ない、まではよく聞くんですよね。でもその後悔したことは全部未来で出来ること、まで断言するのってなかなかないですよね。しかも言われてみれば確かに・・・、とも思ってしまう。

 

大人になると自然と視界が狭まってきがちで、過去は足引っ張るものにしか思えなくなるけれど、そうでもない。

明日の為に、今までの過去が全てある。

大人になると「時色迷宮」に迷いがちだけれど、その出口の鍵を握っているのは自分しかいない。

 

27にもなって「ちゃおコミックス」でまさかこういう感じで心打たれるとは思わないじゃんかよ・・・。

 

あと時々2ちゃんねる系の掲示板のスレッドで「髪の毛切ってブスになったキャラクターは?」みたいなものが挙がりますよね。

僕は、「時色迷宮」の伽耶ちゃん!!

まぁ僕が少女漫画に関しては過激ロング派というのもありますが。

 

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以上である。

なんか思った以上に長くなってしまった。

そんなに思い入れのある漫画、という訳でもないしたまたま目についたから実家から持ってきたにすぎないのだけれど・・・ちょっと予想以上に好きだったかもしれないの一冊であった。

 

記憶の森に埋もれた一冊・・・。

しばらくはまた実家の本棚にそっと戻し、大切に置いておこうと思う。

*1:静岡市内ローカルの中古屋。a-tooは現役であるが、鑑定団は潰れた

*2:当時新人作家に3話で完結する連載をさせる習慣が少女漫画界にはあった。それでとりあえず一冊コミックを出させるのと、その後長期連載が出来る実力があるのかどうかの見定めの意図があったように思う

*3:代表作:「Drリンに聞いてみて!」「ビューティ・ポップ」等。当時のちゃおの圧倒的カリスマ漫画家だった。

小川洋子『不時着する流星たち』-ロマンチックに狂う。-

 

 

 

10の物語。

 

静謐に幸福静謐に不幸。

 

 

 

 

小川洋子『不時着する流星たち』(KADOKAWA 2019年)の話をさせて下さい。

 

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ヘンリーダーガーを意識した表紙の絵。

【あらすじ】

盲目の祖父の足音と歩数のつぶやきがひとつに溶け合い、音楽のようになって僕の耳に届くーーー

稀代のピアニスト、グレン・グールドにインスパイアされた短編「測量」。

ほか、女優のエリザベス・テイラー、作家のローベルト・ヴァルザー等、

世界のどこかでひそかに異彩を放つ人々をモチーフに、

その記憶・手触り、

痕跡をひとつらなりの物語世界に結晶化。

静かな人生に突然訪れる破調の予感をとらえた美しく不穏な10の流星群。

 

裏表紙より

 

【読むべき人】

・どっちかというとバッドエンドの短編集がお望みの人

・小川先生の作品が好きで本作をまだ読んだことない人

・寂しい人

 

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【感想】

とても良い短編集だった。

最近読んだ小川洋子先生の短編集「偶然の祝福」がとてもイマイチだったのに対して、

本作は僕の心を掴み穿ち絶望させた。

 

10の物語の順番は、よく練られて配置されている。

「第一話 誘拐の女王」から本作は全体的に不穏な短編集であることを提示、その後カタツムリの競争や手紙をそっと置くだけのアルバイト、盲目の祖父の散歩等を経て、「第七話 肉詰めピーマンとマットレスで繊細な音楽は唐突に終わりをつげ、「第八話 若草クラブ」「第九話 さあ、いい子だ、おいで」盛大な不協和音が読者の心を震わせ、「第十話 十三人きょうだい」で静かに一冊は終わりを告げる。

第一話が「起」

第二話ー第七話までが「承」

第八話第九話が「転」

第十話が「結」

となるように緻密に計算している。

いや、「配置する」と前述したけれども、

もしかして「起」一話「承」六話(可能であれば六話目・トータルでいえば七話目の話は後の2話との落差をつけるためにハッピーエンドで結ぶ)「転」二話「結」一話

順番から考えて、一話一話書いていったのではないか。

 

コンセプトとなる人物も然り。

第一話は小川洋子が好きな人なら必ず知っているであろう孤独引き森障害童貞挿絵画家を配置して、第十話は名前すら知らない植物学者で静寂に締める・・・。

最初の主題はヘンリー・ダーガー、最後の主題は牧野富太郎、は決めてから書いたいったように思う。

 

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10、という数字も少し意味深に感じられる。

9の物語といえば、サリンジャーナイン・ストーリーズである。僕も読んだけども結構サッパリプーだった覚えがある。

そして11と言えば本作のモデルとしても登場しているパトリシア・ハイスミス「11の物語」である。未読。積読

その間の数字。

10。

に、すっぽり収まるように書いたのが本作なのではないか。

「日本を代表する女性作家の短編集」の一つとして、後世に残ることを意図して書いたのではないか・・・とまで言うのは過言かもしれない。

けれど「10」の数字の意図は明らかにサリンジャーとパトリシアを意識したものだと僕は思うのだ。

証左として、パトリシアのなかで「11の物語」は代表作の一つにも関わらず紹介文でその書籍については触れられていない。意識していることをあえて隠すためでは?

 

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東京行ったときに新宿の紀伊国屋で買ったはいいもののかれこれ1年以上積んでいる



 以下簡単に各話の感想を述べていく。

各話コンセプトとなる人物・物事について触れているので、そこをノータッチで読みた人には以下読まないことを勧めておく。

僕が一番好きなのは「第八話 若草クラブ」

 

第一話 誘拐の女王:親の再婚で出来た17も歳が離れた姉は、幼い時に誘拐された過去を打ち明ける。

誘拐という言葉の意味を初めて教えてくれたのは姉だった。p.7

 

小川洋子得意のロマンチック基地外がやって来る話である。

小川洋子得意のロマンチック基地外には、ざっくり言って以下3つの条件があるように思う。

 

1.社会的生活を営む能力がない

普通に働いて生活できる能力が彼等には決定的に欠如している。何故なら彼等は普通に狂っているからである。大抵病院にいるかニート、もしくはワーキングプアしていることが多い。

2.  外国人の写真を「昔の自分」となにかと見せてくる

「これは昔の自分だ」と言って、高確率で海外の人物の写真を見せてくる。大抵映っているのは美女で、古い白黒の写真であることが多い。無論見せてくるのは基地外の中でも女が多い傾向にある。というか彼女の各基地外の7割は女性な気がする。

3.今はもう会えない。

大抵彼等は今は会えない状況にあることが多い。主人公か「こんな基地外と過ごした日々最高やったわ」と話す形で進む短編が多い。大抵「美しい人だった」「無垢な人だった」「優しい人だった」みたいな感じで、+で捉えられている傾向。主人公の幼少時代に遭遇することが多い。

 

ちなみにこの「誘拐の女王」は満貫です。おめでとうございます。

あと、本作はヘンリー・ダーガーが主題だとは僕は最後まで読むまで全く気付きませんでした。まぁ大抵の物語がコンセプト元と無関係に築かれている物語が多いのですが・・・。

それでもあのヘンリーダーガーの独特の絵柄のドレスをまとって現れた彼女は、僕の中でもしばらく「女王」の座に座り続けている気がする。

要するに小川洋子世界によく現れる人物だけれども、この話にでてきた彼女のロマンティック狂気に僕は魅了されている。

「誘拐」。この二文字の並びを見るたびに僕は心の奥に彼女を召喚するのだろう。

 

第二話 散歩同盟会長への手紙:男は囲いの中を散歩する。心の中で手紙をしたためながら。

これ以上、他に何が必要でしょう。私には思いつきません。もう十分ではありませんか。世界を囲えば、そこにはまた世界ができる、と何かの本に書いてありました。p.41

今作はモデルとなる人物に最も接近して描かれた一編である。

精神病内を散歩し続ける男の内心が延々と書かれている。非常に繊細である男の心の平穏が緻密に緻密に書かれているので、読み終えると自身の心がどこかささくれだっていることに気づく。

与えられるものすべてに満足し生活を編んでいく彼を見ていると、己の日々と心がどれだけ粗雑なものなのか身をもって分からせられる。何も持たない彼が幸福でいるのを読むと、不幸を嘆く自らがとても愚かなものにすら思えてくる。いや、彼は狂っている。外れている。だから小さい囲いの中の幸せで満足できるのだそう分かっていても、自身の乱暴さが際立ってちょっと嫌だなぁと思った。

散歩する時、頭の中で誰かに手紙を書くという感覚は、とてもよく分かる。

それは大抵今では会えない人に書くことが多い。

例えば大学時代に鬱病を患った同級生、全力で片想いをしたが今はピンともこなくなった同級生、市役所に就職して結婚して絵にかいた幸せを紡いでいる要領のいいその同級生の元カノ。ゼミと卒業論文で主に世話になった教授。自殺したよく知らないサークルの先輩。かつて若く美しかった僕に想いを寄せていたっぽい人々。高校時代によく寝ていた僕を注意して来た先生達。結婚し司法試験も受かりもう僕から遠く離れてしまった同級生。高校中退した同じホルンパートだった先輩。高校を卒業し無事に国立音大へ行ったらしい先輩。小学校時代の中良かった子達。諸々。主に学生時代にまで遡るのは、僕の人生が順調だったのがそこまでだったからだろう。大学卒業後のことなんて、1の良い思い出に1000に暗い影が付きまとう日々だった。

でもそれは大抵1言、2言で終わる。「宮崎帰っていい人に出会えるようにな」「なんで今の君にはこんなにピンとこないんだ」「第一子まだかな」「今でも美術館に行きますがコロナで東京のは行けてません」「先輩の同人誌の作品混沌としててすきでした」「今の私を好きでいてくれることはないだろう。知らない人と添い遂げてくれ」「授業中ずっと寝ていた自分はやっぱり社会不適合者でした」「お前は早く結婚すると思っていた」「今何してるんですか」「LINEのアカウントの幼児はやっぱりお子さんなんですか」「ねえ今何考えてる。私はちょっと死にたいけど概ね大丈夫」

そしてその次にはこの一言で集結する。

「私の知らないところで幸せでいてくれ」

 

第三話 カタツムリの結婚式:選ばれた同志を見つけることに心を割いていた私(八か九になる頃)は、家族で訪れていた空港でカタツムリの競争をさせている男と出会う。

「こうびって、何?」

「結婚式だよ」p.81

このやり取り一つに、男の魅力総てが詰まっているように思います。

いや間違いなく空港のトイレの前でカタツムリを競争させている人がまともな訳なく間違いなく小川特有「ロマンチック基地外です。

でもカタツムリの競争なんて結婚式なんて見ていて、何が面白いんでしょうね。

そういった意味でも彼等は確実に「同志」だったのだと思います。カタツムリに愛情を注げる非常に数少ない人々・・・。かつて主人公が夢見た、空港に着陸離陸する飛行機のように壮大な使命を背負っていなくとも、「同志」は「同志」。カタツムリ同盟。

ちなみにこの短編の主題となった女性作家・パトリシア・ハイスミス300のカタツムリを庭で飼育し、飛行機に乗る際はおっぱいの下に隠していたそうだよ。やんばい。

 

第四話 臨時実験補助員:23年前、通行人がそっと目に付くところに手紙を置く実験に参加した私。当時ペアを組んでいた年上の赤ん坊がいた「あなた」と偶然再会し・・・。

あなたの作業を中断できるのはただ、芝生の上に落ちる木の葉だけだった。p.104

はっきりと不穏な匂いがたち込める一遍。

前半の手紙を置く作業をしている間は非常に平穏だった。その実験自体は非常に奇妙とはいえど、主人公と彼女はうまくいっていた。彼女が時節トイレで出す母乳は、慣れればそれは健全なる母性に思えた。

だから仕事をやめた後、彼女の歪な母性に、まだ19の小娘だった私は非常にショックを受けたのだと思う。ババロアに母乳を無心で入れ続け、赤ん坊が泣いていてもそれは無関係で、作業が中断されるのは庭に落ち葉がひとつでも落ちようとする瞬間のみ。

多分、この主人公である「私」は非常に健全な人間で、健全に育ち健全に大人になり健全に社会生活を営んできたのだと思う。

でも彼女との再会でそれが一瞬で崩れると思ったから・・・、再会した後「レストラン」「お酒」と楽しそうに告げる彼女から急いで逃げたのではないだろうか。

多分誘拐の女王も、第一話の主人公からは非常に魅力的に映ったけれども、第四話の主人公から見れば、この女と同じ・不穏な基地外にしか写らないように思う。

「彼女はいつも自身の妄想に浸るように視線は宙をさまよっていた。彼女から、誘拐を救ってくれた英雄の話を聴く度、私の心は沈んでいった。鉛をつけられたように彼女正解へ深く、深く。それでも決定的に存在を無視できなかったのは、彼女の態度が常に穏やかだったからである。気づけば彼女は私の心の真ん中にいるのであった。穏やかににこにこと笑顔を浮かべて。」とでもいうように。

いや・・・誘拐の女王を主人公が受け入れられたのは彼女が子供だったからかもしれない。大人は、それがどんなに静寂で優しくとも、狂気・自身の理解に及ばないものに対して過敏に反応しがちなのだから。

基本「大人」とロマンチック基地外は、相性が、悪いのだ。

 

第五話 測量:老衰のために盲目になった祖父はやがて歩数で物の距離を測るようになり生活を営むようになった。そしてやがてかつて自身の持っていた土地も己の歩数で測量したい旨を孫に告げ・・・

「ノートに記される柵はまばらとなり、余白ばかりが目立ち、一続きの囲いを作るにも苦心する」p.136

一人の老人の静かな死を描いた短編である。その老人の死因が「老衰」であること、彼を見届ける大学生の孫がいたこと、そして鎮魂歌を謳う虫がいたことで、それは非常に穏やかに終わる。

僕は何故この話が「不時着する流星」なのか分からない。

この10の物語の中で一番美しく一番穏やかに収束し、読者の心に静かな余韻を残す。

流星、よりかは夜空にただ一つ確固たる輝きを放つ北極星のような話だと思った。

だって、象の死体の上の夜空には流星より静かな、北極星の方が似つかわしいと思わないかい?

 

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 第六話 手違い:「お見送り幼児」の姪を連れて葬儀場を訪れたが、何かしらの手違いにより、今日は葬儀の予定はないと言われ・・・。

あちら側へゆく道の途中は一面、苔に覆われているらしい。p.149

「のんのさん、のんのさん」

何度もそう呟いて目を半開きにした。p.154

僕はこの話が二番目に好きかもしれない。恐らくこの10の話で人気投票しても上位にくる話じゃなかろうか。

まず「お見送り幼児」という発想が好き。

あの頃はまだ、葬儀には小さな子どもがどうしても必要なものだと皆思っていた。幼児の見送りがなければ、死者は無事にあちらの世界はたどり着けない、未熟でか弱いものだけが、死者が行くべき正しい方向を目配せできる、と信じられていた。p.142

という記述があるように、「お見送り幼児」というのは死者の為に葬儀に参列する幼児のことである。

はえー、そんな習慣あったんか。日本に。と思いつい検索してしまったが、この文化はどうやら作者がこの短編の為だけに作ったものであるようだった。

凄いと思った。「お見送り幼児」。まずその設定を聴いただけで、葬列に並ぶ幼児の姿が浮かぶ。黒いワンピースを着て、お気に入りのぬいぐるみを抱きしめながらずっとうつむいている少女。時節ぎゅっとぬいぐるみを抱き寄せて、涙を堪える。無垢な哀しみがそこにはある。

加えて葬儀という場所に彼女がいる理由も明瞭に説明されているものだから、すっかりあるものだと思っていた。吃驚だった。

でも僕がこの物語を好きなのは、この設定だけではない。

この姪自体が好き。

中盤、姪と私が湖水公園に寄ってベンチに座るシーンである。26ページ中15ページをこの一場面が占めている。無論ワンシーンが続くのではなく、途中姪のおもちゃの描写であるとか死者があちら側へ行く際に通る道の描写が挟まっているが、短編とはいえど半分以上場面を変えず進む小川先生の小説は珍しい気がする。

その間を縫うようにベンチに座って休んでいる姪の所作が事細かに書かれているのだけれども、何ともこの幼女、不穏なのである。幼女が不穏。

偲んで寄付された石に彫られた名前(要するに死者の名前)の読み聞かせを喜んだり、石を積み上げて塔を作ったり(これは幼くして死んだ子が三途の川近辺で鬼にどつかれながらやっているという遊び)、葬儀の主役・死人に履かせる毛糸の靴を自身のおもちゃ全部に履かせたりするのである。そしてそれに頬ずりするのである。目を半開きで。p.154

彼女の周りには常に「死」が漂っている。

お見送り幼児という役目に対し「まるでこのために生まれてきたかのよう」で、お見送り幼児の中でも「特に人気があった」p.142のも頷ける。だってこんなに死が似合うのだもの。

ところがどっこい、この短編のルーツとなる人物は、彼女と全くの無関係である。

ルーツとなる女性はヴィヴィアン・マイヤー。生涯のほとんどを住み着きの乳母として生きた女。

彼女をモデルにしたのは、主人公達が休んでいた湖水公園の湖水の周囲で遊んでいた男の子達の子守の女性である。もう簡単に言うと知らない人なのである。まじで赤の他人。赤の子守。

ただその不穏な幼女が泣いているところを、持っているカメラでシャッターを切って撮影したのがこの女性だった。

恐らく、この女性はシャッターを切らなければこの不穏な物語の主題になることはなかった。普通のただの通行人だった。無関係でいられた。しかし、そのお見送り幼児に生まれたかのような幼女の泣き顔をシャッターで撮ったがために、この物語の主題になってしまったのである。

シャッター音と共に彼女の運命は変わってしまった。

シャッターを切ってしまったばかりに・・・。なんと不運な。なんと不穏な。

まるでこの女性がこの物語の主役になることが「手違い」とでもいうような出来事。

不穏な幼女と、その不条理さも含めて、この物語は好き。

 

第七話 肉詰めピーマンとマットレス:私は留学中のRの下宿先へ泊ることになった。

調理台から食卓、ワゴン、食器戸棚の上までずらっと一面肉詰めピーマンだった。p.178

これはもうネタバレしちゃうのだけれども、1992年、母子家庭で育てた息子の留学先に母親が訪れる話である。その際の大家が親切で、そして余った肉詰めピーマンをあげたら喜んでくれましたよと言う話。

第五話で一旦収束した後第六話で再び揺らがせ、ここにきて第七話でほっと一息、といったところか。ロマンチック基地外も出てこない。人も死なない。不穏な匂いも一切しない。

この話単体で思い出したのはよしもとばなな『キッチン』。それくらいなんてことはないがふと心の琴線に触れるような話なのである。

音階でいうと、ドミソ。

読後感は第一話よりしんなりと穏やか。

そしてこの物語のモデルもまた、ほとんど主要人物とは無関係である。最後の最後、息子と別れを告げる空港のシーンで出てくる。

バルセロナオリンピックの男子バレーボールアメリカ代表。

きっと当時の映像が作者の心に残っていて、彼等が使った空港にこんな日本人がいたかもしれないと、世界を広げて拾った物語なんだろう。

そしてそういう日本人はきっといたはずだ。オリンピック選手の華々しい空港着離陸の背景のエクストラの人々ひとりひとりにも物語はあるはずなのだ。

 

第八話 若草クラブ:四人の少女達は若草物語の劇をやることになり、それは無事上演された。しかしその後も四人は集まって劇の練習をするようになる。

「あんたはエミイ」

異論も苦情も代案も出ることなく、平和的にまず私の役が決定した。p.191

若草物語に魅了された三人の少女と、若草物語に身が狂う程魅了された一人の少女の物語である。

若草物語僕が人生において初めて読んだ分厚い本がこれだった。

内容は四人姉妹がああだこうだするものなのだけれども、僕にはひどく新鮮に映って大人に感じられてずっと「一番好きな物語」だった。小公女も、秘密の花園も、赤毛のアンもいつ読んだかどこで買ってもらったかそもそも買ってもらったのかさえ思い出せないけれど、若草物語は、今は亡き「谷島屋」の児童書のコーナーで、小学一年生の時に買って貰った、ことも、挿絵も背表紙のイラストも、カラーも、大まかな金額も、鮮明に思い出せる。メグの赤いドレス、ショートになり〇⇒△になったジョー、儚げの表情のベス(人生初の「好きなキャラ」だった。)、一人だけ金髪碧眼だったエミリー。緑色の装丁で、シリーズのナンバリングは「1」で・・・。

僕が幸運だったのは、小学一年生の時にこの物語に出会ったことだ。

出会うタイミングがもっと遅かったらそう例えば本書のように、思春期で多感になってくる中学生の頃だったらどうだったろう。

きっと毎日四人姉妹のことを考えて考えて考えて何も手がつかなくなるだろう。「私はベスだから(病弱です)」と不登校一直線だったろう。「私はベスだから(本が好き)」と無理して岩波文庫に手を出していただろう。「私はベスだから」と青木のおじいさん※(今はもう亡くなった。当時70代後半と思われる。やさしげ。)に偶然を装って出会おうと、隣の青木さんちの周囲を四六時中うろうろしていたかもしれない通報不可避。恐ろしい。

※ベスが隣の家のおじいさんと懇意になりピアノをいただくエピソードが物語中盤にある。僕(14)だったらきっときっと、隣の家のおじいさんと懇意になり部活で使うホルンをいただく計画を練っていると思う。僕(27)だったら断然金です。金。

 

その「恐ろしい」話が本編である。

 違う点は主人公が「ベス」ではなく、「エミィ(エイミー)」であったこと。

エイミーというのはなんとなく「美人」というイメージがあり、私が読んだ児童書でもそうだったのだけれども、そのイメージの根源には昔実写映画でエイミー役を演じたエリザベス・テイラーの存在がある・・・ことを本編で知った。

「エイミー」役の上に、「エリザベス・テイラー」という設定が載ったらもう大変である。どうしようもない。

 

彼女にとってエリザベステイラーは、僕(14)にとって誰だろう。外国の映画はあまり関心がなかったが、強いて言うならば当時流行っていた某ポッター映画のヒロイン・エマワトソンじゃなかろうか。

 「僕はベス・・・僕はベス・・僕はベス・・・」

ベスだっら髪の毛を伸ばさなきゃいけないし栗色に染めなくてはならないし毎日たくさんの本を読んでハリーポッターを毎日読破して杖を持って魔法を使わなければならないし病弱だから不登校だけど頭良くならなければならないし毎日毎日英語英語英語英語英語英語英語国語数学世界史日本史倫理政治経済現代社会地学生物化学物理道徳環境問題総てに通じて居なければあらないから一日15時間は勉強して静岡新聞朝日新聞毎日新聞ニューヨークタイムズを読まなければならない。そして僕はベスて太眉の美人であるから毎日毎日眉をアイブロウもしくはもう茶色いサインペンで書いて整えなければならないし睫毛もくるんとしていなければならない体型もスリムでいたいから毎日5キロは箸って腹筋をしてそして読書は無論洋書で一日一冊は読む必要があるだろうそれくらいしないと、僕はベスになれない。

 

じゃあベスにならない僕は何か?

 

三人はほどなく、私の胸の小箱が空っぽになのにも気づくに違いなかった。p.212

 

少女のための恐怖綺譚。

少し前の小川洋子の短編集に見られるような(「薬指の標本」「まぶた」「刺繍する少女」など)

繊細に縁どられた少女の狂気。好き。

 

ちなみに無事にエマワトソンはベスを演じることはなく、最近の実写映画で長女のめぐを演じていましたね。正直ベスの女優さんは可愛いけれど憧れるような美人ではなく、僕(27)も上記のような狂気に陥ることもありませんでしたさんきう!

 

第九話 さあ、いい子だ、おいで:子供に恵まれなかった夫婦は文鳥を飼うことにした。妻である「私」はその文鳥を買ったペットショップ店の青年が気になるようになり・・・?

私たち夫婦は子宝に恵まれなかったので、代わりに文鳥を子どもとして可愛がることにした。p.217

本作10短編収録されているけれども、この短編の一番初めのこの一行が一番好きですね。

【恵まれなかったので、】【代わりに】【子供として】

「なぜこの二人に子供が出来ないのか」。総てが凝縮されている。

 

不妊に悩む善良な夫婦を書いた作品ではありません。どちらかというと非道な夫婦を描いた作品です。雰囲気も不穏で結末も陰惨で目も覆いたくなる。

でも主人公のような人間って少なからずいると思います。

愛するふりは出来ても愛することは出来ない。

世の中そういう体裁になっているから合わせて生きて来たけれども、

本当の心の底では夫も文鳥も自分も全く愛していない。

「さあ、いいこだ、おいで」p.225

だから本当の愛を知っている人を見ると心が揺らぐのです。

そういう瞬間、そういう一編。

 

不妊に悩む夫婦。

 

僕達世間は勝手に二人を「善良な夫婦」と考え、当たり前に不妊治療はしているだろうと推測し報われない日々を想像してなんてかわいそうなんだと捉える傾向にあると思います。 

そして二人のハッピーエンド・幸福・・・(子宝、もしくはそれは養子かもしれない)の形をささやかながらに祈るのです。

そういうところにメスを入れるのが、相変わらず小川先生は、お上手で。

彼女の芥川賞受賞作・『妊娠カレンダー』を思い出しました。あれもタイトルと表紙だけ見れば妊娠に悩む女性が主人公でいつかくるその日を楽しみにしている情景が浮かぶ一冊でした。※

※実際は、女性の妹を主人公とした不穏な雰囲気をぷんぷん匂わせる中編小説です。妹は姉の死産を願ってああだこうだする話・・・、あの表紙・タイトル詐欺凄いと思う。かなり昔に二子玉の蔦屋書店で「妊娠・出産」コーナーに一冊置いてあるのを見たことがある。店員(コンシェルジュ)の性格悪すぎる。

 

第十話 十三人きょうだい:父方の兄弟の十三番目にあたる「サー叔父さん」と私は仲が良かった。

叔父さんは私が何か頼み事をするたび、たとえ絡まった綾取りの紐を解いてほしい、というささいなお願いであっても、姿勢を正し、「アイアイサー」と言って敬礼した。p.243

どうなんですかね。この叔父さんは人間だったのでしょうか。

祖母の口から数多い兄弟のことは出てきても「13人」という具体的な数字は出てきていないんですよね。主人公の父親も然り。

もしかしたら、この物語の主人公のような寂しい子供のところへ、三輪車に乗って現れる存在なのかもしれない。ロマンチック基地外らしからぬまじでロマンチックな存在。

第八話・第九話と続き最後の話で「13」とくれば、どんな悲惨な終わり方をするのかと思ったら、まさかの静かに終わるハッピー寄りの終わり。

 

読み後心地よくてとても好きでした。

 

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以上である。

前読んだ「偶然の祝福」がぐう微妙だったからどうしたものかと思っていたけれどそんなこたぁなかった。最高だった。

特にこの短編集は「ロマンチック基地外が現れて主人公の周りを引っ掻き回していく」という小川先生特有の短編が多く、

個性様々なロマンチック基地外が見られて良かったです。

その話が事実に基づいてたら尚更。

 

なのでこの書籍は、小川先生の作品が好きな人にこそ薦めたい。

もしくは、寂しい人。

だってこの書籍にはお前なんかより、ずっと寂しいロマンチック基地外がたくさん出てくるのだから。

 

***

 

註:ちなみに「ロマンチック基地外」が登場するのは、第一話第三話第四話第十話です。主人公が「ロマンチック基地外」なのは第二話第八話第九話

 

***

 

LINKS

3年前の記事・・・24の時に書いた記事ですね。この頃は仕事をやめて一人暮らしで寂しく二ーーーートしておりました。

tunabook03.hatenablog.com

 

これは実家に帰って二ーーーーーーートしておりました。週1-2のバイトをはじめるのはこの半年後。

tunabook03.hatenablog.com

 

小川洋子先生の他作品の感想群。

上記2つは最近。「夜明け」は本当に昔。

書いてませんが、ブログや住んでた時期に「ミーナの行進」も読んだ。あれはなかなか面白かったわね。昭和がロマンチックに描かれていて良かった。

 

tunabook03.hatenablog.com

 

 

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「20±SWEET〔トゥエンティ・スウィート〕2021JANUARY」-推しの20歳を永遠に刻む一冊。-

 

成人おめでとうございます。

大園玲さん。

 

「20±SWEET〔トゥエンティ・スウィート〕2021JANUARY」(東京ニュース通信社 2021年)の話をさせて下さい。

 

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【概要】

そして君はキレイになった。

 

ハタチの”今”を駆け抜けるアイドル達に、

ハイクオリティーなグラビア&インタビューで迫る新感覚マガジン

 

SWEETCOVERGIRL

与田祐希乃木坂46

 

SWEETGIRLS

早川聖来(乃木坂46

原田葵(櫻坂46)

井上梨名(櫻坂46)

大園玲(櫻坂46)

富田鈴花(日向坂46)

丹生明里(日向坂46)

倉野尾成美AKB48

横野すみれ(NMB48

来栖りん26時のマスカレイド

 

【必ず読むべき人】

・上記に推しがいる人

 

【読むべき人】

・上記グループ箱推し

・推しがいる人

・今の坂道アイドルどこからはじめたらいいか分からない人:3坂道、AKB・NMB26時のマスカレイドまで掲載されているのでこれをきっかけに入るのもあり

・振袖が好きな人

・bltgragh読者

 

【感想】

待っていました。トゥエンティープラスマイナススイートジャーナリー!!!!!(正式な読み方があやふや)

何故待っていたか!!!!

それは!!!

私の神推し★大園玲さんが!!!!

掲載!!!されているからです!!!!!!

 

ただ掲載されているだけじゃあ正直ここまで盛り上がらない!!じゃあなぜ!!!!ここまで!!!盛り上がっているかと言うと!!!!

この雑誌は神グラビア+ロングインタビューという豪華仕様!!!

そして、推しの20歳を永遠に心に刻めるという素晴らしい!!本!!!だからです!!!!!!!!

今年も出してくれてありがとう東京ニュース通信社!!!ありがとう東京ニュース通信社!!!!!!

 

閑話休題

 

まぁこのシリーズは毎年1月その年に成人式迎えるメンバー中心に振袖のグラビア+ロングインタビューを掲載しているもので、

大きめの本屋のグラビアコーナーの隅に平積みされているムック本である。

発行元はBLT、bltgraghを刊行している東京ニュース通信社ただ制作陣・編集長の名前を見るとどうやらbltgraghのチームが作ってるっぽい。

bltgragh編集長が女性なんですよね。だからかこのシリーズは近年の傾向として、女である僕も一冊1000円という強くの価格にもかかわらず、ついつい買っちゃう美しいグラビアが多い、気がする。映りがとにかくいいんですよね。あと過度に性的じゃないし、不快にならない。っこりはしますが・・・。

そしてそのシリーズ陣営のムック本が20±SWEET。だからアイドルの20歳を「最高にキレイに」切りとってくれている訳なんですな。ただ今まで僕が欅から離れていたり、推しの日向坂メンバー(特に高瀬)が取り上げられていなかったのもあって、しばらく離れていた。1800円。結構するし。

でも今回。今回!!!

なんと、我らが神推し櫻坂二期大園玲さんを取り上げてくれるとのことではありませんか!!!

もう僕はこのことを知った11月からもうずっとうずうずしていた。すっごい楽しみにしていた。超楽しみにしていた。生きててよかったと思った。というかもうこのために2020年は生きていた。

本当に。本当に。大好き。

大園さんを取り上げて下さって、ありがとうございます・・・!

 

ところがまぁどっこいいざ届いてみれば、大園さんのところは一通りグラビア確認、いや二通り、三通り、四通り、十通りくらいグラビアは確認したもののインタビューまでは全部読むに至らず。

というのも、欅⇒櫻に代わるに至り、別冊カドカワを読むのに必死だったからである。なんだあの文字量。凄まじかったぞ。アイドルは読むもの。カドカワさんはよくわかってらぁ・・・。

まぁそちらの感想は別の記事であげるとして、それを読破した後に、先日ようやく読み終えた次第。

 

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裏は武元大歓喜滋賀県のスター・西川



 

中身はもう言うまでもなく大満足です。

推しの大園さんは無論、櫻の原田・井上、日向の富田・丹生、全員写真が素晴らしい。特に丹生ちゃんはバラエティメンバーの印象が強かったのですが、今回の写真のギャップにやられた。

無論、よく存じてはいないが、AKB系列の倉野尾さんとすみれさん、来栖ちゃん、乃木坂の2人も素晴らしい写真で・・・。それぞれの魅力が最大限に出るように調節されたシチュエーションが良いですね。

 

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人数も量もあるから結構厚みと重みが毎回しゅごいことに定評がある。20×10、200年分の重みや~~~(白目)

 

以下簡単に各メンバーのグラビア・インタビューの感想を述べていく。

 

与田祐希乃木坂46

さすがに乃木坂に対は詳しくない僕でも名前は知っている。なんか写真集が凄く売れた人ではなかったか。ただ名前は聞いたことあっても顔はいまいちピンとこなかったので、今回知られて良かったです。

いやいや可愛いですね。問答無用に可愛い。身長低いんですけど、被写体力が半端ないですね。櫻坂の小林のように、一枚一枚表情に惹きつけられるものがある。

ドール好きとしてはpp.12-13の白ニット×室内のシチュエーションはグッときましたわー。可愛い。からの、pp.14-17の振袖それくる~~~~!?感。攻めてる振袖。童顔と、森×メリーゴーランド×振袖という謎のシチュエーション相まってすっごい良い!!好き!!てかこの振袖にメリーゴーランド考えた奴誰!?天才か!?

特にぐっときたのは、p.16の一枚。振袖を着ながらのお人形のようなちょっとだるそうな表情、からのメリーゴーランドから始まるメランコリック。好きです。

インタビューも3期・・・要するに欅1期とほとんど同じだから約5年・・・やっているだけあって凄い大人ですね。読んでいると人気メンバーになるのもわかる。

(メンバーの卒業についてふれられて)「ただ、グループが変わってほしくない気持ちはメンバーもファンの人たちもあるけど、変わらなきゃ前に進めないじゃないですか。そこで変われなかったら、もう止まるだけ。止まらないように、変化があったときにちゃんといい方向に進めるようにするのが、グループにいるメンバーの役目だし、(以下略)」p.22

え20歳でそれ言えるの!?って思った。凄くないですか。

卒業・加入が多き女性アイドルの本質をとらえているというかなんというか。

「生きるとは変わること」坂の二人セゾンの歌詞にあるのですが、それを体現するかのような存在。永遠なんてない。変わり続けることを前提として僕達はどのように生きてくのか。

だからグラビアでもそんな切ない表情をしていたの?

「満足したらそこで終わりだと思うし、このお仕事は特に自分に厳しくしないとダメだと思うので」p.23

強いなあと思う。

人気あるアイドル・持続するって、やっぱり見えないところで進化を続けていく女の子なんだろうな。

見込みある一般人の女の子を出来るだけ搔き集めてどれだけ進化を遂げることが出来るのか。ある種秋元系のアイドルって、「実験」だと思う。実験成功例。

 

早川聖来(乃木坂46

4期生ですよね。最近遠藤・賀喜さんに続いて名前をよく聞く気がする。田村さんと並んでお姉さんメンバー云々。

可愛いですね。彼女も本書で顔と名前が一致しました。可愛いです。人気が出るのもわかります。ただ笑顔が若干洗練されていないかなと言った印象。でもクールな表情だとモノによっては与田さんに匹敵するものがある。

好きな一枚はp.29の下半分。こういう片目に花をもってくる構図は王道ですがいいですね。

あとクールな表情が映えますけど意外と童顔なのかな。若干櫻の上村を思い出す。あれはもう合法ロリですけど。身長どれくらいなんだろう。

「まずは乃木坂の活動に集中したい。そういう時期なのかなと思います」p.41

「乃木坂に入った時の私は女子高生で、いい意味でも悪い意味でも自由だったんです。思ったことはすぐに言うし、入ったばかりで何も分からないから、ただ言われたことをやっているだけでしたし。今は、できているかどうか自分ではわからないけど、ちゃんとしなきゃ、しっかりしなきゃって意識するようにはなりました」p.42

と言う彼女は、与田さんとは同い年といえど、アイドルとしては「ぐっと伸びている時期」といったところでしょうか。成長期。

今の調子であれば、人気はこの先更に開花していくと思います。目の前の仕事に一生懸命に取り組みながらも、「まずはシングルの表題曲の選抜メンバーに入って、その上で胸を張ってセンターに立ちたいって言えるように」p.43と野望もちゃんと口にしているあたり、彼女の乃木「坂」は険しくも、けれどもしっかり拓けていくでしょう。

ここで「乃木坂で必要とされる存在に」「今を大切に」とか言ってたらダメなんですよね。特に選抜・人気格差・人数が多い乃木坂は。

これからが楽しみですね(こなみ)

 

原田葵(櫻坂46)

で葵ちゃんですよ!!!!え!!???もう成人なの!!!???僕でもびっくりした。衝撃だった。だって2016、サイレントマジョリティーの時本当子どもだったじゃん!!てかその時僕は新卒の年で・・・

いやぁ~。本当時の残酷さを感じる。いやまじ確かに大学受験でお休みとかしてたけどさぁ、まだ大学1年生だと思ってた。2年でしょ?マジ?え?僕が口開けてる間に卒業しちゃうじゃん!!!本当に怖いよ!!!

で、振袖でもうさ、ボートとか漕いじゃうんだね!!!そういうときめきデートショットが映えるお年頃になっただね!!可愛いな!!可愛いぞ!!!こんちきしょうめ!!!原田!!!こんちきしょうめ!!!

という訳で一番好きな一枚はp.50の下半分です。

ただ、ちょっと気にあるのは、休業明けからあの元気いっぱいの笑顔の写真が少なくなったことでしょうか。大人っぽい表情も確かにいいんですけど、あのジャパリパーク」を元気いっぱいツインテール揺らして歌っていたはらだあおいちゃん(17)にはもう出会えないんでしょうか。

休業後はどうも「大人な葵」を意識している気がします。でも、そういう「ゲンキな葵」を出しても、葵ちゃんは葵ちゃんで、しっかり20歳だと思うのです(日本語)無理して大人になろうとしているというか・・・。

そこがバランスよく出せるようになっていったら、既存のファンも振り返って、もっと人気上がると思うんですがね・・・。ツインテールみたいよお・・・。

インタビューでも、やっぱり何かそういったところにとっかかりがあるんですかね。

「私、大人になっていいですよね?」p.62なんて言葉、なかなか聞かないですし。

あと自信なくしちゃってるんでしょうか。

「5年間で学んだこと、経験したことを無駄にちゃってるんじゃないかって」p.62

それは無いと思います。

だって最後に「アイドルとして全力で活動して、ずっと支えて下さるファンの方々に恩返しをしたいなと思っているんです」p.63なんて言葉、5年間の積み重ねがない人からは出ませんよ。

ある意味アイドルとしての原田葵「蛹」の状態にあるのかもしれません。

最近そういう童顔メンバーで振り切った高瀬愛奈ふぃーはすこです。ライブの度にツインテールしてくれるんだけど凄い似合ってんだよね。何あれ。え?雑誌表紙やんの?買うけど。でも同時にちょっと大人な写真も見せてくれる。ツインテールが似合うこと、童顔であることが武器だと気づいたんですよね。分かるよ。ツインテール高瀬本当可愛い。LARMEは早く取り上げろ。最近日向は高瀬推しになりつつあります。

 

井上梨名(櫻坂46)

逆に最近「羽化」・・・進化しているアイドルは井上でしょうか。

髪切った時に「お?」となりましたが、最近更に「お?」「お?」となっております。2nd3rd選抜はいるんじゃないかと睨んでいる二期でもあります。(他睨んでるのは守屋れ)

なんでしょうね。よく彼女の魅力で「愛嬌」「愛嬌」言われるんですけど、まぁ僕も「愛嬌」だと思います。そこさくでは松田に次いで頑張っていると思います。やっぱりそこが評価されているようで、この前「しくじり先生」出ておりましたが。

あとスタイルがいいんですよね。写真映えするというか、大人っぽいというか。そこに愛嬌が重なれば最高ですよね。笑顔も良いし。

そしてまぁ顔、薄いじゃないですか。アイドルの顔としては欠点かもしれないけれど、最大の長所だと思います。だって「覚えられる顔」なのだから。

グラビアも凄いいいですね。表情が多彩。雰囲気ある。笑顔が自然。可愛い。はじけてる。櫻エイトのにほひを感じる。「MORE」「with」のにほひを感じる。

一番好きなのはp.79の悪戯っぽく笑うショット。輝いているアイドルにしか出せない、ぐっと惹かれる笑顔ですね。可愛い。

インタビューも将来をしっかり見据えていますね。。

「アイドルとして活動していく中で主張しないと、単にグループの中にいる人になってしまう」p.82

「今は自分にできることをしっかりやっていこう」p.83

「『自分と言ったら、これ!』というものを見定めたい」p.83

櫻坂1st選抜落ちて、凄い落ち込んだと思うんですよね。

でもそこから自分のすべきことは「自分のできることをしっかりやって、『自分と言ったらこれ!』というものを見定め、存在感を発揮していく」と見定められた。

これからが楽しみな櫻坂メンバーのひとりです。

 

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色気顔の例。この前の初のソログラビア掲載のbltの特典。これをゲットするために私は同じ雑誌を2冊買いました。

大園玲(櫻坂46)

いいですねー。あー好き。完全ひいき目。でも一枚一枚の表情が良い好き。特にp.87のオトナっぽく微笑んでからのピースあー好き。なんでそんな表情多彩なの可愛いじゃん。あとp,50のお水飲んで「ぷはー」顔。あーそのお水に僕もなりたい。違う。こういうなんだろう自然な表情と眼差しにちからをいれた表情のギャップがいいんですよね。好き。

それが後半の衣装になるとより顕著ですね。ていうかこの服可愛いな。どこのブランド。5万までならこのニット買いたい。そして公道で大園さんごっこをするんや・・・!!

からの、p.100の「色気顔」ですよ。本当凄い。こういう表情されるともう僕の心がとまる。危なかった。僕が男だったら死んでた。女に生まれてよかった。

「決め顔」「自然な顔」「色気顔」この3つを巧みに使い分ける大園さん最高かよ。えー好き。もう凄い好き。三白眼顔が好きと言うのもあるけど。あー。かわいい。ほんまかわいい。

でも僕が大園さん好きなのは顔も!だけど、顔だけじゃないんですよ!内面もちゃんと好きです。ちゃんと好きですってなんだ。まあいい好きです。

内面も凄い好きなんですよね。2回言った。

まず「不器用でも正直に生きたい」p.102と言い切るところ。そしてその後「妥協をしたくない」p.102と続くんですよね。

自身の不器用さを認めたうえでストイックに生きようともがく。強さ。

大抵の不器用人間って、不器用であることに自己嫌悪して終わると思うんですよ。でも彼女はその先を切り拓こうとする。

加えて貪欲さ。「”櫻エイト”に入れたら、シングルの収録曲前部に参加できるじゃないですか。でも、自分にはまだそこに入れる実力が足りてないんだって思ったら、悔しくて。活動をしていく中で、経験値ってものすごく大事なんだなって思う場面が何回もあって、もっともっと経験を積みたい気持ちがあるのに、全曲に参加できない」p.103と言うんです。

多分裏では不安になったり泣いたりネガティブになったりすることもあると思うんです。そういう言葉が「まずは櫻坂の知名度に貢献できるように」とか「先輩を見習って」とかなんか薄い言葉に昇華されていったりするんです。

でも彼女はそういった部分を打克ってでも「櫻エイトに入れないことが悔しい」と言い切る・・・もうそこが彼女の強さだと思うんですよね。

うまく言えないんですけど、アイドルとして「前しか向かない姿勢」を見せる大園さん・・・100点。

 

富田鈴花(日向坂46)

最近富田の色気凄くないですか?特にセンター分けにしてからぐっと大人っぽくなった。そして、「花ちゃんズ」をはじめとしてアイドルとしても輝きが増したというか何というか。

特に体型がすらっとして美しいですよね。もともと背が高いというのもあったんですけど・・・多分裏で凄い努力しているんだろうな。完全にヴィジュアルメン張れると思います。今の富田なら。

特に好きな一枚はpp.118-119の寝転んでいる見開きの一枚。色気甘さ富田総てが詰まった一枚だと思います。

インタビューは結構初知りなことが多かった。例えば「(欅坂の)デビュー1周年のアニバーサリーライブのチケットが取れて、生まれて初めて1人でライブを見に行った」p.121こととか、そこで知ったひらがなけやきのオーディションを受けていたこととか。

「東京の景色が見える高層ビルのオフィスで、カッコよく働いている女性になりたいな」p.122と思っているキャリア思考とか。

結構控えめな印象が強かったんですが、意外とバリバリ系なのですね。心に秘めているだけで。そしてそれをようやく口に出し、発揮しはじめられたのが、去年くらいから・・・って感じかな。

あと日本のアイドルの本質を見抜いてるのも印象深かった。「『何もかも完璧にこなせることが必ずしも正解じゃないんだな、この世界は』って知ることができたのは、それこそ成長だったかなって」p.122

気づいた~?その完璧に限りなく近づきつつあるヴィジュアルで気づいちゃった~??

そしたらもう最強なんですよ。最強一直線でございます。

出来れば富田・松田は、25超えても日向にいてもらって、お姉さんメンバーとして頑張ってもらいたいですね。まぁ日向のメンバー全員に言えることなんですけど。

 

丹生明里(日向坂46)

丹生ちゃんナメてました。

p.125の一枚目で僕の心はずっきゅんです。

笑顔が強い印象だったんですけど、こういう、不意にクールな表情されると目が離せなくなる。何が言いたいの。何をしてほしいの。

今までのイメージを覆すかのような格好良さ。

丹生ちゃんのグラビアの構成だけはっきりと特殊に感じました。表情で前半と後半をはっきり分けている。前半のモノクロームの洋装の時には「クールな表情」。後半の商店街×振袖の時には今まで見てきた「丹生スマイル」全開。

正解だったと思います。もう20歳になったんだよ、という大人な丹生を見せてからの、いつもの向日葵のような笑顔の丹生ちゃんを見せる。

こういった二面性を使い分けて行けばええんやで・・原田、お前に言うとるんやで・・・。無理しなくてええんやで・・・。

インタビューを読むと、天真爛漫ながらもしっかり考えているんだなぁとおもいました。

「『あの頃は良かったな』って後ろ向きになるんじゃなくて、『そうそう、20歳になる頃の私はこんなことを考えていたんだな』って、素直に懐かしく思える自分であり続けられるように、素敵な毎日を送る心がけをして、過ごしていきたいです」p.143

最後の言葉、凄くないですか?

そして多分この生き方・言葉って20歳に限らずどの年齢・どの人物でも言えることだと思うんですよね。

未来から振り返った時に「あの時は良かった」と思えるように、一日一日を大切に濃密に素敵に生きていく。

生き方を、学びました。

丹生先生、ありがとうございます。

 

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日向坂の5thシングルまだですか!!まだですか!!!!!



倉野尾成美AKB48

この子凄いですね。一番童顔なのに一番色気があって怖い。

まぁ、アイドル歴が長いからでしょうね。だから自分の魅力も知り尽くしているしどう映ったらいいのかもすべて把握・見通している。

特に好きなのはp.146の一枚。なんかこの一枚に・・・今の倉野尾成美の総てが詰まっている気がするからです。まあ彼女のことよく知らないんですけど。

それでもこの一枚からは目が離せない。

少女だけど大人なんだよ。大人だけど少女なんだよ。アイドルだけど女の子なんだよ。女の子だけどアイドルなんだよ。倉野尾だけど20歳なんだよ。20、私20になったんだよ。

「このお仕事って儚いんだなって。かけがえのない時間を過ごしているんだから、今を楽しまなくちゃいけないんです」p.162

やっぱり長年アイドルやっていて・・・且つ数いるであろうAKB系列のなかでこの2枠に選抜されるメンバーの言う言葉は、鮮烈ですね。分かっている。

「でも、実際は計画通りになんてならないし、ならなくても褪せることはないなと思うようになりました」p.162

本書で一番大人な発言だなと思いました。分かる。

そう、高校までは大抵計画通りにすすんで来たけれども、大学から計画通りに進むことなんてめったになくなってきた。計画は、たてた地点で破綻する。なんとなく、映画のパラサイトを思い出した。

 

横野すみれ(NMB48

ほとんど同級生と言えど、もう一人、AKB枠から選ばれたすみれさんは18年から活動開始。でもなんか、凄いですね。やっぱり選ばれる程人気があるのが分かります。

というのも、2019年12月に開催した生誕祭で、20年に向けて目標を「昇格」「選抜入り」「写真集発売」を3つ掲げてそれをすべて達成したらしいんですよ。p.181

強いね。

まずそういう目標を口にできるところも強いし、それに向けて宣言したからには全力を傾けて達成していくところも強い。凄いと思う。

私もそういう人になりたい。

「自分の中で、まずは2年間やってみようって決めたんです」p.182

 

短期間でやっぱり人気になっていく子って、ビジュアルだけじゃなくて内面的なところに決定的要因があったりするんですよね。大園さんとちょっと似ている気がする。

グラビアも良い。おっとりとした雰囲気ながらも、ちゃんと色気ある表情研究しているんですね。p.179の「押し倒した」1枚が良い。

渡辺麻友菅井友香渡辺梨加のいい所を全部混ぜたような・・・ちょっとこの子がいる限り、NMBは注目です。

 

来栖りん26時のマスカレイド

26時とBLTはずぶずぶですからね。あと、新メンバーも入り勢いあるグループと言うのもあって彼女が選ばれたのでしょう。

所謂アイドルグループの中で「ロリ枠」のメンバーのようなのですが。どうも若干弱いかなと感じる。グラビアもインタビューも。

p.185の一枚目がすごくいいんですけどまぁその・・・その後がどうしても「日向坂の東村の劣化版」にしか見えないんですよ。顔の濃さも中途半端だし表情の大きさも中途半端。髪型と着物が悪かったのかな・・・。

まだ「ロリ」枠に甘えている印象も受けます。

目標が「みんなにパワーをあげられる存在になりたい」p.203といってるうちは、甘い。ファンはもうパワーを貰っているんだから。

そのファンたちを引き連れて自分が、グループがどのようになっていきたいのか。もっと具体的な未来論が欲しい。

 

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この雑誌の特典は無論大園さんです。この前のそこさくの「人生最高の一枚」もこの撮影の時のお写真でしたね。「櫻坂」だからと白を選ばれたのでしょうか。意外な色ででもこれがまたとても似合っていて上品で最高でしてね、ええまた以下略

 

以上である。

なんか思ったよりひとりひとりアツく見てしまった。

強いて言うならば、もうちょっとAKB枠で20歳メンバー見たいなあと思った。まぁ坂道で7枠いたので不可能っちゃ不可能なのですが・・・。AKB系列単体で出しても売れないだろうしなぁ。でもNGTとかSTUとかからちょっと見て見たかった気はする。

 

そして一通り読んで最後のバックナンバー見て思ったのは、去年の気になる。

小林由依表紙からの、日向は美玲・松田・美穂。櫻も松田が出てるんですよね。

今のグループを牽引する五人がそろっているわけです。

ちょっと積んでいるアイドル雑誌片づけたら考えようかな。

 

あと・・・実はこのシリーズ、バックナンバー一冊持ってるんですよね。

「欅坂」特集守屋茜が表紙を務めていた一冊。

「推しの20歳を永遠に心に刻める!!!」と前述したのですが、

この一冊に収録されていた当時の推しの石森虹花ちゃんのグラビア、今でも鮮明に思い出せるんですよね。赤っぽいタートルネック着て、ハンモックだかにもたれかかっていた。瞳の色彩が美しかった。虹色。

鈴本、長沢も収録されていて・・・ちょっとプレイバックも込めて、実家から持ってきて再読してみようかなぁ、とか思った次第。

 

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LINKS

 大園玲ちゃんが参加した1stシングル表題曲がとても響いた件について延々語ってる。あとミーグリのレポート。

tunabook03.hatenablog.com

 

 最近買ったbltの記事。

実は一冊齋藤京子表紙のを積んでいたりする。雑誌だから買っとかないと通販だけになっちゃうからね。仕方ないね。

 

佐々木さんがめちゃえろだった。

tunabook03.hatenablog.com

 

みなみは強い。

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影山はようやくアイドルとしてアクセル全開になってきた感ある。

強いよ。あいつはアイドルとしても。

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大園玲さん・・・。

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